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#ペンションライフ・ヴァンパイア 1巻 評論(ネタバレ注意)

吸血鬼などレガシーな怪物たちが「カタラレ」と呼ばれ現代に実在し、人類に仇なす世界。

『ペンションライフ・ヴァンパイア』1巻より(田口囁一/集英社)

エリは幼少期より彼らを倒すエージェント「改訂官(リライター)」としての訓練を受け、将来を嘱望されるエリート訓練生だったが、彼女が実戦デビューする前に人類とカタラレは講和条約を締結し、和睦。

存在意義を失った改訂官・訓練生たちは、組織も消滅し一般人として社会に還され、エリも「普通の高校生」として残りの人生をやり直すこととなった。

『ペンションライフ・ヴァンパイア』1巻より(田口囁一/集英社)

そんなある日、エリは偶然見かけた吸血鬼を訓練生時代の習性で尾行。

警戒するエリに対し、その吸血鬼の少女・ヴェローニカは

「人間と仲良くなるためにペンションを経営したい」

と告げる。

ペンション経営にはポンコツすぎるヴェローニカを放っておけないエリは、彼女のペンション経営を手伝うハメに…

という、「現代×ファンタジー」な「戦後もの」。

『ペンションライフ・ヴァンパイア』1巻より(田口囁一/集英社)

重たくダークにもできる設定を背景に、しかし明るく軽く描写して、少年漫画らしいジュブナイル仕立ての雰囲気に。

ヒロインのエリも訓練生で実戦デビュー前、「手を汚していない」経歴。

テーマ的に『亜人ちゃんは語りたい』や『白暮のクロニクル』と近接したテーマですが、

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人類社会に生まれる突然変異であることの葛藤とその受容を描かれたあちらの「亜人」「オキナガ」に対し、こちらの「カタラレ」はより具体的に超常能力を持ち、また人類と攻撃しあう戦争状態だった旧敵として描かれます。

マクロで「異なる存在」であると同時に、ミクロでは「相互に怨恨を抱えた存在」。

戦後直後の日本とアメリカみたいね。

『ペンションライフ・ヴァンパイア』1巻より(田口囁一/集英社)

強大な力を持つ吸血鬼の女王・ヴェローニカの、率先して融和に向けた草の根活動に明るく能天気に身を投じる姿勢が作品を支え、人類とカタラレの協定を前提にジャンプブランドらしいバトル展開を封印し、美少女同士の友情・シスターフッド・擬似百合の描写に種族を超えた融和を乗せる構図。

背後にダークな過去を匂わせはしつつも、明るく能天気なオバQ展開の日常ものですけど、友情にしろ愛情にしろ人間とカタラレの間には「寿命ギャップ」も控えています。

無邪気に笑うニカですけど、「痛みを知るもの」の笑顔として描かれているように見えます。

やってることは普通に「オバQもの」なのに、『デビィ』をやるには不似合いな重たくダークな過去設定。

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ギャップから作者の描きたいことが透けて見えますが、重さと軽さ、暗さと明るさのバランスの制御がなかなか難しいギャップであるにも見えます。

『ペンションライフ・ヴァンパイア』1巻より(田口囁一/集英社)

まずは顔見世というところですが、「美少女オバQ」の日常コメディとして引っ張りつつも、テコ入れでシリアス路線への方向転換の余地も残してる感じもする1巻。

「赦す強さ」を含む、志の高い美しいテーマで、「今後が楽しみ」というより「成功してほしい」と感じる作品ですけど、地味になりがちなテーマでもあります。

さて。

 

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