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あ、今日読んだ漫画

#紛争でしたら八田まで 13巻 評論(ネタバレ注意)

表紙のメガネ美女、「地政学リスクコンサルタント」の八田百合がクライアントの依頼を受けて世界を股にかけて紛争を渡り歩き、地政学の知識と思考と調査能力と護身術で解決していく、

美女!メガネ!インテリ!ハードボイルド!ワールドワイド!な、かっけーお仕事もの。

ぼっちでメガネで日系で手ぶらのココ・へクマティアル、という感じ。

『紛争でしたら八田まで』13巻より(田素弘/講談社)

下品な方の出羽守っぽいというか、ちょっと「ブラック・ラグーン」みたいな洋画吹き替えワールドな感じ。

差別や不和、対立に満ちた社会の縮図で苦悩する依頼主たちを、「たったひとつの冴えたやり方」で少しだけビターなハッピーエンド、イバラの道ながらも融和と協調と成長に導く、シビアな現実で始まりながらも人間の善性を信じた希望に満ちたあっ軽いラスト。

というスタイルで作劇はほぼ一貫してます。

無駄のない、無駄のなさすぎる構成と展開。

『紛争でしたら八田まで』13巻より(田素弘/講談社)

漫画で得た知識でイキるのはいかがなものかと思いますが、エンタメと「知るきっかけ」の両立という意味で大変優れたコンテンツ。

バーターで、主人公がデウス・エクス・マキナな装置であること、作劇がキレイすぎてややご都合主義的なのは、致命的な錯誤や恣意的な思想誘導がない限りは、目を瞑るべきかなと。

『紛争でしたら八田まで』13巻より(田素弘/講談社)

今巻は近くて遠くてやっぱり近い、台湾編の完結、南アフリカ編を頭からラストまで、そして奇祭「バーニングマン」編。

時代の流れ、政治体制の変化で翻弄され続けた台湾のアイデンティティ。

アパルトヘイトから30年、eスポーツ(格ゲー)を通じて若い世代が人種を超えて新たな「南アフリカ」を創り世界に発信。

最強格闘ゲーマーの日本人「タニハラ」を「オール南アフリカ」で打倒できるか。

『紛争でしたら八田まで』13巻より(田素弘/講談社)

そして前巻あたりから、本作の単行本でもウクライナ-ロシア情勢が取り入れられるように。

この記事の冒頭に限らず本作の感想に度々書いてきたことですが、「ご都合主義」を感じなくはないです。

あらかじめ組み上がることを前提に揃えられシャッフルされたパズルのピースがハマっていくのを見ているような感覚。

『紛争でしたら八田まで』13巻より(田素弘/講談社)

が。

「こんなに上手くいくはずがない」

と思うと同時に、

「こうなって欲しい」

「こうなったらどんなにいいだろうか」

「こうなる可能性はゼロではない」

と思わずにはいられない、願いが込められているようにも思います。

格ゲー好きの縁で結ばれた少年たちが、黒人と白人の人種の垣根と軋轢を超えて、世界に向けて

「南アフリカは、俺たちはここにいる!」

『紛争でしたら八田まで』13巻より(田素弘/講談社)

と叫んでいるような熱い展開。名エピソードだ。

 

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