日比谷の高層マンションに、作家でイケメンで子煩悩なお父さんと二人暮らしのファザコン小学生・知世ちゃんの、ちょっと詩的でたまにメルヘンな単話の日常もの。
1987年連載開始なので『ガラスの仮面』とまではいかなくても結構な長寿シリーズ。
若くに亡くした奥さんを今なお愛しながら、忘れ形見の知世ちゃんを大切に育てるお父さんがとてもイケメン。
こういう大人になりたかった。
「父娘もの」という明確なジャンルが確立されているんだかいないんだかよくわかりませんが、その走りの一つ、と言えるだろうと思います。
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また「父娘もの」ではないですが、最近『君たちはどう生きるか』の漫画版を読んで(と言っても読んだのは数ヶ月前ですし、発売されたのは数年前ですし、その原作は戦前〜戦時中ですが)、ちょっとこの『Papa told me』のことも思い出しました。
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当初は父子家庭、独身、離婚、働く女性、子どもの居ない夫婦などのテーマで、 理不尽な世間に知世ちゃんが喧嘩を買う、という怒りを原動力にした、はてなのホッテントリみたいなちょっと尖った話が多かったけど、前のシリーズの終盤あたりでメンタル系のインナースペースの話が多くなった後、
特に雑誌移籍後は話も知世ちゃんの性格も顔も丸くなったなあ、という印象。
近刊の傾向どおり、今巻も父子家庭とそれを取り巻く人々、あるいは全然関係ない人々の日常を少し詩的に、少し空想的に、どこか少しヨーロピアン(?)に。
アメリカンではないですよね?w
初期の作風を思い起こさせる「困ったさん」もちょいちょい登場するんですが、昔のようにはやっつけず、戦わず、言い争わず、腹を立てず。
するりと躱すように、あるいは物理的に走って逃げたり。
まるで「それより大事なことがある」と言わんばかりにある意味では投げっぱなしジャーマンな、各エピソードのエンディング。
信吉、可愛いなw
もうなんと言うかご意見番の「ズバリ言うわよ!」的な答えを、作者も読者も、求めてないんですよね、という。
「誰かが代わりにズバリ言わない代わりに、
あなたも私もそれぞれ考えることにしましょう」
「でも別に考えたくなかったら、考えなくてもいいです」
というか。
巻末には、二人で暮らすマンションの部屋を決めた、どこかで見た覚えのある女性たちに関する読み切りを収録。
更に今巻末に2022年の「35周年記念インタビュー」が掲載されています。
以前の巻にもインタビューが載ってたような記憶もありますが、自分は漫画家が作品の外で自作を解説している文章を読むのがあまり好きではないので、読んだことがありませんでした。
が、近年(というには時間の単位が大きいですが)の作風の変化が如何なる心境によるものなのか、興味があったので読んでみました。
大きな納得と、少しの驚き。読めてよかったです。
アリスカフェのお姉さんたちと知世ちゃんの組み合わせ、毎回「夢」「ファンシー」「空想豊か」というよりは正直ちょっとラリってて面白いw
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