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#IDOL×IDOL STORY! 3巻 評論(ネタバレ注意)

『NEW GAME!』の

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得能正太郎の新作は、アイドル・オーディション・リアリティショーもの。

『IDOL×IDOL STORY!』3巻(得能正太郎/芳文社)

デビューの座とアイドルの高みを目指して、仲間&ライバルとしてシノギを削る少女たち。

渚 美海(なぎさ みみ)、22歳。通称「ミミ助」。

かつてインディーズ・アイドルとして舞台に立っていたが、向上心が低いメンバーに『スラムダンク』の赤木のようにゲキを飛ばす勇気を出せず、グループはそのまま芽が出ないまま解散。

現在は就職活動を控えた大学生、趣味はドルオタ、推しアイドルはインディーズ・アイドル「シュガースマイル」の七種依吹。

『IDOL×IDOL STORY!』3巻(得能正太郎/芳文社)

七種 依吹(ななくさ いぶき)、高校生。

かつてインディーズ・アイドルだったミミに憧れ、自分も「シュガースマイル」の一員としてインディーズ・アイドルデビュー。

向上心が低いメンバーに『スラムダンク』の赤木のようにゲキを飛ばしたことでメンバーに嫌われ、追放同然に脱退。

そんな彼女たちの目の前で、メジャー資本による新アイドルグループのオーディションが開催されることに。

『IDOL×IDOL STORY!』3巻(得能正太郎/芳文社)

ミミ助と依吹は互いを励まし合いながらオーディションに挑戦するが…

という、『スラダン』のゴリのように夢と向上心を持ちながら『スラダン』のゴリ(1年生時)のようにメンバーに恵まれず、というかアイドル活動への温度感が合わずに挫折した二人の元アイドルによる、オーディション・サバイバル漫画。

『NEW GAME!』は4コマ漫画でしたが、今作は非4コマの…「通常漫画」って呼び方、変よね。「非定型コマ割り漫画」?

よくわからん。「ふつー形式の漫画」です。

彼女らが受けるオーディションは作中でTV番組化されリアリティ・ショー仕立て。

サバイバル・オーディション、要するに「人が死なないハンター試験」みたいなもんなんで、主催者の性格が悪ければ悪いほど面白くなりますね。

『IDOL×IDOL STORY!』3巻(得能正太郎/芳文社)

あと予想はしてましたが、16人の候補者全員の「アイドルを目指す理由」、バックグラウンドをそれぞれ深掘りしていくようです。

予選を通過し、巨大クルーズ船に隔離された16人のアイドル候補者たちを待っていた初日の課題は、「パフォーマンス評価の順位づけを"自分たち"で決めること」だった…

というわけで、16人が4人組×4組に分かれて課題曲のパフォーマンスを客前で披露し、1人が脱落する、一次評価。

ストーリーとしてはアイドルのオーディションをやってるだけの話ですが、ディティールや見せ方の、『NEW GAME!』の作者らしい泥臭さが白眉で、16人それぞれにバックボーンを背負わせつつ、優れた青春ものになっています。

「友情、努力、勝利、そして誰かの敗北」。

これ本当にここで誰か1人落とすのか? 最終5人しか残らないのか? もう16人グループでデビューすればよくね?

と、つい思ってしまいますね。

『IDOL×IDOL STORY!』3巻(得能正太郎/芳文社)

「作られた過酷さ」とでもいうか、敢えて残酷な舞台を用意して彼女たちにストレスを与えるオーディションの主催者の大人2人が、どうにも「士道不覚悟」ならぬ「アイドル道不覚悟」というか、ヒロインたちの情熱に不釣り合いに薄っぺらく胡散臭く見えてしまうのは、物語上の嫌われ役の「役損」なのか、はたまた夢を語りながら「美しい若者たち」を性的にも経済的にも搾取していたことが明らかになった故・ジャニー喜多川とその日本最大のアイドル事務所の欺瞞の、時節柄のとばっちりでしょうか。

『IDOL×IDOL STORY!』3巻(得能正太郎/芳文社)

件のスキャンダルで「美しい若者たち」を扱ったショービジネスは今後はより厳しい目が注がれる公算が高く、現在のアイドルブームはもしかしたら「最後の花火」に、この漫画も「昔こういう時代があった」と参考文献扱いされるようになるのかもしれないですね。

それにしても、個人が生存する上でも、社会が運営され発展する上でも、本来まったく必要ではないはずの営為に人生を賭ける者たちの物語というのは、どうしてこう美しく見えるんでしょうか。

『ジェントル萬』1巻より(新谷かおる/メディアファクトリー)

実利がなくてドラマしかない故、見る者が余計に夢を見て託してしまうんでしょうか。

 

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