人間関係で生きづらさを感じる高校生たちと、クソバイスするでもなく彼女ら彼らにさりげなく寄り添う用務員のお姉さんの、単話完結のエピソード群。
「原義の意味でのカタルシス」漫画、になるんでしょうか。
「無自覚に人を傷つける無神経人間」に、思春期の純粋無垢な高校生が傷つけられ、立ち上がる話。
という説明でおおよそ説明がついてしまうところがあり、
「ステロタイプな擬似悪役を中心に回す作品」
との評も目にします。
なんですけど、「無自覚に無神経に人を傷つけるステロタイプな擬似悪役」が「あるある」というか生々しいというか、まあよく描けていて、その分読んでて重く、イライラモヤモヤし、なかなか読んでて愉快な漫画でもありません。
スカッとする「広義の意味でのカタルシス」展開もありません。
身も蓋も無い言い方をすると、エピソード主人公の高校生の「気の持ちよう」でオチをつける、
「優しく繊細な人が、イヤな人にイヤなことを言われたけど、仕返しするでもなく負けずに明日もがんばる」
な作風。
ちょっと重たいんですけど、重たく暗く終わらずに「明日」とか「いつか」とかに希望が持てるオチの付け方なのが良いですよね。
あとは「重さの軽い表現」というのか。
読者にテーマについて考えさせる、もっと「重たい」作品になるはずのところを、各エピソードの尺の短さと救いが持つ明るさでスパッと、読者が重さを引き摺らない建て付けになっていて、現代的なようでいて、昔からある手法のようでもいて。
1巻を読んでから今巻を読むまでの間に、『君たちはどう生きるか』を初読したんですが、
aqm.hatenablog.jp
換骨奪胎というのか、ディティールは現代ナイズされてこそいますが、やろうとしていることは共通しているように思います。
自然体すぎてややもすれば無感情な超人めいて見えかねない「大人の用務員さん」が、実は高校生たちと同じく悩んだり凹んだり怖がったりする等身大の同じ人間で、
それでも高校生たちの前では虚勢を張って相手を安心させようと、「大人の背中」を見せようとしているところ、良いですよね。
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