#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#チェンソーマン 16巻 評論(ネタバレ注意)

父親の借金を背負って臓器を売りながら生き延びてきた野良犬少年デンジ。

悪魔ポチタとコンビを組んでヤクザの下で搾取されながら悪魔狩りを営むも、ヤクザが悪魔に乗っ取られ絶体絶命のピンチ。

ポチタと融合してヤクザを皆殺しにしたデンジは、チェーンソーの悪魔として公安幹部の美女・マキマにスカウトされ、美少女魔人・パワーと組んで公安デビルハンターとして悪魔と戦う。

悪魔との戦いを通じて知己や友人を得て、そして喪って、裏で全ての糸を引いていたマキマをすら打倒して、あれほど渇望した愛をささやかながら与える側になったデンジ。

第一部・完。

『チェンソーマン』16巻より(藤本タツキ/集英社)

作者の数本の読み切りを挟んで約1年半ぶりの連載再開、第二部開始。同じ世界観で新キャラを主人公のように扱って、従来の主人公のデンジをはじめ旧作のキャラが登場しない導入、からの満を持してのデンジ登場。

「黙示録の四騎士」と称される「戦争の悪魔」「飢餓の悪魔」が登場、「死の悪魔」は未登場、いろんなキャラがチェンソーマンたるデンジに、やれ戦え、やれ戦うな、やれ崇拝する、やれ軽蔑する、やれニセモノ登場、とデンジ本人の意思をよそに策謀し、あるいは妄動する展開。

『チェンソーマン』16巻より(藤本タツキ/集英社)

『チェンソーマン』という漫画作品と作者・藤本タツキ本人に対する現実社会の期待や毀誉褒貶のメタファーと読み取ることが自然なんでしょうか。

そうであれば、漫画がヒットして自分を取り巻く状況が変わったことに対する心境もまた「作者が本当に描きたいこと」であることには間違いなんでしょうが、おそらくそれを本作のメインテーマに据えるつもりがないであろう藤本タツキの「客イジリ」には、自分はあんまり興味が湧きません。

「第一部で激戦を生き抜いた主人公が第二部で第一線を退いて」

という展開も王道というか、別に奇を衒った展開ではありません。

お約束に従えば、

『チェンソーマン』16巻より(藤本タツキ/集英社)

「そのうちやる気を取り戻して戦いの渦の中心に復帰するんでしょ」

ってなもんで。

「支配の悪魔」が第一部でああだった以上、同じく「黙示録の四騎士」と称される「戦争の悪魔」、「飢餓の悪魔」、未登場の「死の悪魔」を含めて真正面からチェンソーマンと対峙して勝てる器とも思えませんし、

「チェンソーマンをいかにまともに戦わせないか」

が作品の現在の肝です。

同じく主人公自身がデウス・エクス・マキナな『FSS』の天照みたいなもん。

なので、「デンジ=チェンソーマン」以外がやたら「勝手に」アレコレしてます。クァンシ先輩、大復活からの大活躍!

『チェンソーマン』16巻より(藤本タツキ/集英社)

「『チェンソーマン』=デンジの物語」

という意味では、割りと「ほっといてもいい巻」のように一見、見えてしまうんですけど、ほっとけない理由が、今巻でデンジが何をしたいと言っているか、アサの「何をしたい」がどう変化してるか。

デンジって別に悪魔を倒すことが目的なんじゃなくて、その結果ヒーローになってチヤホヤされて、その結果としての「たくさん女とセックスしたい」が、相変わらずの生きる目的の一つなんですよね。

でも夜な夜なトイレでシコりながらも、夜な夜な抱き合って眠るナユタには決して手を出さないのは、「デンジがロリコンじゃない」ということ以外に、父性愛や兄妹愛とも何か違う、なんか性欲と愛がデンジの中で完全に分離しているように見えますね。

『チェンソーマン』16巻より(藤本タツキ/集英社)

第一部のラストに還っているというか。

「男女の愛と性欲は分離可能か」

というのは数多くの恋愛もの・ラブコメもので取り上げられてきたテーマですが、「愛のある暮らし」を既に手に入れたデンジが、性欲のために(「第二部」を)これ以上戦う必要があるのか、という疑問はなかなか面白いな、と思います。

そう考えると、

「第二部の主人公・アサちゃんの役割ってなんだろう」

ってのは、「愛のある暮らし」の象徴・ナユタの対比としての、性欲の象徴としての

「代わりに戦ってくれてセックスの対象にもなる女」

なんでしょうか?そんな少年漫画あるかな。

それともデンジが「愛」と「性欲」の他に、

『チェンソーマン』16巻より(藤本タツキ/集英社)

泣きながら戦う理由を見出す話になるんでしょうか。

そうやって考えていった辺りで、

「『チェンソーマン』がこれからどうなるか」

なんて考えたって、楽しくはあるけどどうせ当たりゃしねえよな、とも思いました。

 

aqm.hatenablog.jp

aqm.hatenablog.jp