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#あかね噺 9巻 評論(ネタバレ注意)

浅草の阿良川一門の落語家(二ツ目)阿良川志ん太の娘、小学生・朱音(あかね)は父親の落語を誇りに思い憧れていた。

朱音も応援する父親の真打昇進試験、しかしその顛末は予想だにしないものだった。

内密かつ非公認に、父に倣って一門ナンバー2の落語家・阿良川志ぐまに師事して6年、高校生となった朱音は父親の意志と夢を継ぐべく、正式に志ぐまに弟子入りし阿良川一門に入門。

『あかね噺』9巻より(末永裕樹/馬上鷹将/集英社)

父の叶わなかった夢、真打を目指す朱音の落語家人生が始まった!

という、落語をモチーフにした成長譚の青春譚のサクセスストーリー。

週刊少年ジャンプ本誌連載ながらモチーフが落語という変わり種ですが、まあ「なにやってもジャンプ」というか「落語やってもジャンプ」というか。

ジジババイメージが強い伝統芸能の世界の中心で元気で可愛いJKが主人公、というのもギャップがありつつ、いかにも今どきでキャッチーで、世代間コミュニケーションの楽しみや「男社会の中の女」という切り口にも派生できそうで、見た目の印象以上に拡張性が高い作品だな、と。

『あかね噺』9巻より(末永裕樹/馬上鷹将/集英社)

当面の目標を「前座」から「二ツ目」への昇進に定め、阿良川一門の昇進ルールに則って、レベルの高い阿良川一門の「前座」たちがシノギを削る、実質「予選」の錬成会、そして「本戦」の選考会へ。目指すは若手の登竜門「四人会」の最後の一枠。

実質「荒川一門前座ナンバーワン決定戦」たる前座錬成会・選考会編が今巻冒頭で完結。

勝負で勝ってルールに負けたが、得たものの方が大きかった、という決着。

『あかね噺』9巻より(末永裕樹/馬上鷹将/集英社)

特に原動力にも聖域にも呪いにもなっていた「父の背中」を、盲信の対象ではなく客観視した上で朱音が飲み込んで、自らの血肉にしたことが大きかったですね。

主人公の動機そのものを超克させるのを10巻いかないうちに、というのは割りと早い気がする。

コンペのギリギリの緊張感が緩和されて幕間的なエピソードを踏みつつ、朱音の当面の目標が「二ツ目」昇進に絞り込まれ、そのためのルートや次の目的地が再設定された巻。

『あかね噺』9巻より(末永裕樹/馬上鷹将/集英社)

どうでもいいけど、師匠・先生が弟子・教え子の女の子に「褌を締めろ」っつってスベってる漫画、他でも最近見ましたw

『かげきしょうじょ!!』14巻より(斉木久美子/白泉社)

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次々と登場する大物と主人公が対峙していく展開や描写は、ジャンプバトルものの定番というか『ワンピース』に非常によく似ていますが、大物をぶん殴って倒すことで成り上がっていくルフィに対し、大物に稽古をつけてもらうことで成長していく朱音、という感じ。

本作における阿良川一門、その中でも四天王の「阿良川志ぐま」の「志」も、なんだか「Dの一族」っぽくも「紅天女」っぽくもなってきましたねw

『あかね噺』9巻より(末永裕樹/馬上鷹将/集英社)

「志の字の芸」をめぐる、同門ながら阿良川志ぐまの阿良川一生に対する屈折と確執、名跡の謎。

それらが明かされる頃には作品自体にクライマックスでしょうか。

そういえば、本作を本作たらしめていたのは他でもない主人公の朱音が「女子高生落語家」であることでしたが、昇進にモタモタしてたら女子高生じゃなくなっちゃうな、と思いながら過去巻読み返してたら、忘れてたけどとっくに高校卒業してました。

どうりで最近この子、学校行ってる様子がねえなと思ったわ…

『あかね噺』9巻より(末永裕樹/馬上鷹将/集英社)

という、主人公が高校卒業したことを読者がすっかり忘れちゃうぐらいのめり込んだ熱血落語漫画、前座から二ツ目への昇進目指して、次巻に続く。

 

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