
オノ・ナツメの現作、煙草が超高級品な『ACCA』世界観、首都・バードンが作品タイトルで舞台。

『BADON』9巻より(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)
リコ、ラズ、ハート、エルモの4人の男は、それぞれ犯した罪でヤッカラの刑務所に収監されていたが、国王代替わりの恩赦・減刑で刑期が明け、4人で煙草店を営むべく揃ってバードンへ。前科持ちのハンデを抱えつつ煙草店「プリミエラ」を開業。
「二度と悪事にもサツにも関わらない人生」
を夢見る男たちの商売繁盛記にはならず、良かれ悪しかれ罪を犯した過去がつきまとうハードボイルド風味。

『BADON』9巻より(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)
唯一短編集だった6巻を除いて「単巻で中編を1エピソード」という基本形態で、一冊ごとの読後感の満足度が高い作品でしたが、前巻はエピソードの途中で今巻に続きました。
リリーの高卒資格検定の合格と大学受験、ラズの煙草職人合格。
少しずつ距離が近づく、ヤッカラの男・ハートと、バードンの女・ドナの関係。
ハートの古巣・ヤッカラのマフィア組織「ユーカー」が営む煙草店「ピルクル」が首都バードンにも出店。
バードンの煙草大手卸売業者の撤退。
ハートは話題の新規煙草店「ピルクル」の背後にマフィア組織「ユーカー」の麻薬のキナ臭さを疑う。

『BADON』9巻より(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)
そんな中、ハートの組織足抜け後も「プリミエラ」の開業にあたって資金を貸すなど、「恩人」として縁を切るに切れなかった組織「ユーカー」の首領の死期が近づき、後継者とソリが合わないハートは当代の首領が存命のうちに借金を完済しようと焦るが…
作品のユルい縦軸とも言える仕掛かり中や未解決のパーツが少しずつ片付いていき、「プリミエラ」を含むバードン煙草業界を巻き込んで、今まで語られることのなかったハートの過去編に接続されるエピソード。
ハートは「ユーカー」内でどんな立場だったのか、未だに組織と完全に縁を切れない理由はなんなのか、ハートとドナの淡い(?)恋は成就するのか。

『BADON』9巻より(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)
今巻で完結。
初めて語られたハートの過去、ジャコモの意外な正体。
大団円、と呼んでいいラストで、彼らを心から祝福したいと思います。
が、実は今巻の問題解決そのものはプリミエラの面々、関わってないですよね。
仕事をしたのは警察で、決断したのは組織ユーカーの幹部エリオでした。
「普通の」ハードボイルドなら、ハートが単身ヤッカラの組織に乗り込んで自分の生命と引き換えにプリミエラを守る…という展開でしょうか。
でもハートには未来を共にしたいプリミエラの面々がいて、ドナがいて、もう孤独なハードボイルドではなかった。

『BADON』9巻より(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)
密かにジャコモを引き受けた以外は、組織を警戒しつつもハートの行動は徹頭徹尾、「裏社会にはもう戻らない」を貫いて煙草屋として真っ当なものでした。
運が良かっただけかもしれないし、もともとハートが作った縁と信頼によるものだったとも言えます。
いずれにせよ、ハードボイルドに孤独に死んだり、手を汚してみんなの前から姿を消すより、ずっと好きなラストです。
もう一度。
大団円、と呼んでいいラストで、彼らを心から祝福したいと思います。

『BADON』9巻より(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)
『ACCA』『BADON』ときて、『C』で始まる何かが描かれる機会があったら、プリミエラの面々ともう一度会えるチャンスがあれば、と楽しみにしています。
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