「ガラスの仮面」と同年、1976年から秋田書店の「月刊プリンセス」で連載開始された少女漫画。
作者の細川智栄子は89歳。『ガラスの仮面』作者より16歳年長。
1月1日がお誕生日でいらっしゃるので、あと数ヶ月で90歳になられます。
また連載開始が1976年なので、「20世紀の漫画」「昭和の漫画」なイメージがありますが、年が明け2025年になると連載期間に占める20世紀と21世紀の割合が並びます。
89歳で現役で年イチで単行本を出しているというのは、『ガラスの仮面』をはじめ、いろんな漫画の読者にとって希望の光ですね。
近刊は「細川智栄子あんど芙~みん」として、「芙~みん」なる人物が共著者としてクレジットされています。おそらくアシスタント的な役割や作話の相談役を果たしていらっしゃるんじゃないかと思いますが、こちらは5歳下の実妹さんとのことです。
アメリカの財閥令嬢でエジプトに留学中の高校生・キャロルは、古代の墓を発掘したことから王家の呪いを受け、古代エジプトにタイムスリップする。いろいろあって、未来を識る「ナイルの姫」として古代のエジプト王・メンフィスと恋仲になり、結婚して「ナイルの王妃」となったキャロル。
その後、アレンジや変化球はあれど基本的に
①キャロルが近隣諸国のどれかにさらわれる
②メンフィスが救出に向かう(戦争)
③束の間のイチャラブ
④なにかの拍子で現代にタイムスリップ(古代の記憶は消えてる)
⑤行方不明扱いだった現代で実家に保護され穏やかな日々
⑥なにかの拍子で古代にタイムスリップ(古代の記憶を思い出す)
の基本的なサイクルを48年70巻かけて繰り返している作品。
誌面はやや白くすっきりした気がしますが、画風・演出ともに70年代の空気が50年の時を超えてそのまま生き残っているような作品。
演出もこう、何回もやる、何回も言う、っていうw
同じことを何度でも嘆く、何度でも喜ぶ、何度でも怒る、という繰り返しで感情を表現するスタイル。
ドラマティックな感情表現や美麗で豪奢な描写が、ちょっと宝塚歌劇が思い浮かびます。
また近年隆盛する「異世界(過去世界)転移もの」の古典であると同時にイケメンパラダイス展開の古典でもあって、作品のカタルシスとしては未来人の知識無双と、各国のイケメン王・王子たちからモテモテだけど独占欲強めな俺様系最強イケメンが護ってくれる、乙女ゲーの原型。
ここ数巻は、前述の
③束の間のイチャラブ
パート。
サイクルに倣えば④のタイムスリップ待ち、もしくはイレギュラーで①の攫われ待ち、というところ。
ですが、平穏は平穏でいろいろあり、
・準主人公格のヒッタイト国イズミル王子、トラキア国に拉致され姫との結婚を迫られ幽閉中
・トラキア王、イズミル王子の想い人・キャロルに暗殺者を派遣
・ソバージュボブカットのチンピラ、王位簒奪を狙ってエジプト王子(メンフィスの弟)を騙って王宮に潜入中
・パサルガダイ国(後のペルシア、イラン)、キャロルに興味を示し国に招待
・エーゲ海ミノア王国、大地震
と不穏要素は満載で同時進行。平穏か?
引退を視野に風呂敷を畳む、とかの発想とは無縁。
次なる展開に向け風呂敷を拡げまくりというか、拡げた風呂敷を棒にくくりつけて旗にして振り回しまくり、もはや頼もしいわ。
何回拉致られ幽閉されてもまったく反省しない女・キャロルはパサルガダイ国に行く気満々、ミノア王国を救う気満々。
伏線というか、今巻の展開に素直に従うと、
・イズミル王子のヒッタイト帰還
・エジプトとヒッタイトの合同での?トラキアへの報復戦
・偽王子チンピラの暗躍と末路
・キャロルの外遊もしくは拉致によるパサルガダイ国入り
・火山大噴火によるミノア王国の消滅?もしくはキャロルの予言による避難
が予想され、「いま拡げてる風呂敷」だけでも短く見積もっても畳むのに20巻、20年ぐらいはかかりそう。
まあ20年なんて、悠久のナイルの流れと比べたらほんの一瞬ですし、正直、古代エジプトのこと考えすぎて先生の時間感覚がバグってる気がしなくもないですけど、「48年続く漫画」が「68年続く漫画」になっても大して変わらないような気がしてくるのは、読んでるこっちもバグってきてるんでしょうかw
引き続き、長生きして漫画を読むぞ。
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