AQM

あ、今日読んだ漫画

#宙に参る 1巻 評論(ネタバレ注意)

「僕らを司るリンジン回路の行動原理に
 『周辺幸福度の最大化』があります
 周囲が幸福であることが自身の幸福に繋がる、と

 僕の一番の身近な人は間違いなく母さんだけど
 僕が母さんでなく父さんに似ているのは
 父さんに似た立ち居振る舞いの方が
 母さんの幸福度が高く観測されるからです」

「客観的に見て二人はラブラブでしたよ」

 

人が脳以外なら挿げ替えが効き、AI・ロボットと親子関係となり、地球を遥か離れたコロニーに生活圏を拡げ、長距離バスに乗るぐらいのノリで宇宙旅行をするぐらいの未来。

夫を亡くした主婦・鵯ソラは息子のロボット・宙二郎ともに、コロニー・コウアから客船で45日間かかる夫の実家の日本の和歌山へ、遺骨を鵯家のお墓に納めに行く旅をする。

遠隔葬儀、宇宙客船、ロボット三原則を密かに超越した自律小惑星型将棋AI、宇宙チェーンのおでん屋の裏メニュー、ソラをマークする公安、「魔女」と呼ばれた伝説のハッカー・エンジニア、SF三ツ星レストランと人間の味覚、夫・宇一との思い出。

2月の刊なので「新作」と呼ぶには少々遅きに失した感はありますが、まあ、新作です。

SF作品を楽しむにあたっては、もちろん最終的には「SF的世界の中でどんな物語・ドラマが繰り広げられるか」というのも大切なんですが、特に作品の導入部においては、作者が空想した未来の世界で科学技術がどのように社会を変え、仕事を変え、生活を変え、人間を変えたか、SFな作品世界観を読者の前に展示して、いかに「ワクワクさせてくれるか」が大切なように思います。

よく考察され、見てきたかのようなSF世界観が展示される様は初めて士郎正宗の漫画を読んだ時が思い起こされ、また、まるで4コマ漫画のような人物でリアルな生活感を伴ってそれらが描写される様は、ギャグ漫画家だと思い込んでいたゆうきまさみが描いた「パトレイバー」の1巻を初めて読んだことを思い出します。

主婦が夫の遺骨を義実家に届けるだけの一見地味なお話ですが、各作家様への失礼を承知でものすごく雑に喩えるなら、まるで引退して主婦になった草薙素子がそれをするようなお話に見えますね。

隠喩と省略に満ちた「わかってる会話」が、作者が構築した世界観や知見に自信を持っていること、読者である自分の理解が一読ではまったく及んでいないことを感じさせて、余計にそれらの作品を思い起こさせます。

新しい作品の面白さを伝えるのに、過去の名作に喩えることしかできず恥じ入るばかりです。自分の言葉で言うならば「わぁー、頭がいい人が描いた漫画だぁー」という頭の悪い感想しか、今は浮かんできません。

作者が空想し構築したことを理解しようと考えながら読む作品、要するにSFが好きな方には結構たまらない作品だと思います。

おまけのように描かれた、宇宙規模の遠隔で行われる葬儀の段取りのシミュレーション「特殊慶弔性理論」一つとっても、生半じゃないですねw

 

「結局各地での合掌と会場での焼香は時差分ずれてない?」

「冥福の意も情報と考えれば参列者の映像と一緒に高速で届くんじゃねえの」

 

散々考証した挙句のこういう混ぜっ返しが好きな方は、ぜひ。

 

宙に参る (1)【電子版特典付き】 (トーチコミックス)

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  • 作者:助骨凹介
  • 発売日: 2020/02/27
  • メディア: Kindle版

 

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