#AQM

あ、今日読んだ漫画

#2.5次元の誘惑 1~6巻 評論(ネタバレ注意)

「…それは
 753の最新のコスプレとは酷く対照的で
 誰もが一目でわかった
 そのキャラを選んだのは『愛』ゆえだと

 …それは
 もはやイベントで見る事は無くなった 古臭いキャラクター
 しかし この場にいる誰もが
 かつて一度は恋をした 天使」

「リリエル…!!」

熱すぎんだろ。

作品の存在自体は知ってたんですけど、表紙などのビジュアルから「エロコメ枠だろう」との先入観があって敬遠してた作品。

少年漫画のエロコメ枠の意義というのは私も十二分に認めるところなんですけど、一方でエロとビジュアルに全振りしてその他の要素のクオリティが低い作品が多いのも確かなので。

あとはてなブログにエロ系コンテンツ取り上げると各種プラットフォームや広告屋から怒られます。この作品もappleのアプリだと白消しだらけになるんだとか。

そんな中、先日はてなブックマークのホッテントリにこの作品のジャンプ+のネット連載の最新話が2話連続で入ってて、「へー」と思って読んでみたんですが、

b.hatena.ne.jp

初めて見た回が神回だった。

というわけで、アンテナの高い諸氏に対してはお恥ずかしいことながら、自分にとって凡百のエロコメ枠から「約束された名作」に今さら格上げされたこの作品を大人買いして読んでみました。既刊6巻なのでお求めやすく、かつこの作品の魅力の本質を存分に味わえる巻数で、タイミングも良かったです。


先輩たちが卒業し、高校の一人漫画研究部として日々部室で二次オタ活動に勤しむ奥村(高2♂)。

f:id:AQM:20201005213022j:plain

「2.5次元の誘惑」6巻より(橋本悠/集英社)

学校が新入生を迎えたある日、漫画研究部のドアを叩く一人の新入生がいた。奥村と同じく古の名作「アシュフォード戦記」「リリエル外伝」とそのヒロイン「リリエル」をこよなく愛する彼女・天乃リリサは、キャラ愛が高じて高校生になったらコスプレイヤーになることを夢見ていた。

f:id:AQM:20201005213059j:plain

「2.5次元の誘惑」1巻より(橋本悠/集英社)

というコスプレ青春もの。

正直2巻の前半ぐらいまでは「コスプレをテーマにしたちょいエロ部室ラブコメ」という感じで、取り柄が見えない主人公、都合が良すぎるヒロイン、多用される微エロ描写など、コメディのキレはいいものの自分の先入観からそんなに外れた作品ではないんですけど(それでもこの時点で「買い」のクオリティですけど)、2巻の後半の初めてのコスイベントあたりからエンジンの回転数が上がっていく感じ。

 

同じテーマで1年先輩の「その着せ替え人形は恋をする」が同じくコスプレへの情熱をベースにしつつもラブコメ寄り路線なのに対して、こっちの作品は恋愛要素薄めに、熱いバトルと友情という少年ジャンプらしい路線に舵を切る暴挙で大成功。

なんつーかあれよね。各キャラが背負ってきた行き詰まりやコンプレックスのバックストーリーをコスプレで解放させるカタルシスの「エモい」作り、ジャンプの冒険バトル漫画の要素を上手く抽出して乗っけてる感じありますよね。

キメのコマの絵とセリフの魅せ場のための展開を積み上げてリソース集中させる感じが「ワンピース」的というか。

f:id:AQM:20201005213157j:plain

「2.5次元の誘惑」4巻より(橋本悠/集英社)

バトル漫画が夢と冒険と能力バトルで駆動してるのに対して、この作品は愛と表現と可愛いで武装しているとでもいうか。

描写もバトル漫画的で、ギャラリーに解説役がいて、

f:id:AQM:20201005213236j:plain

「2.5次元の誘惑」2巻より(橋本悠/集英社)

コスプレ四天王がいて、五新星がいて、

f:id:AQM:20201005215553j:plain

「2.5次元の誘惑」5巻より(橋本悠/集英社)

卍解かな?

f:id:AQM:20201005213453j:plain

「2.5次元の誘惑」4巻より(橋本悠/集英社)

コスプレ自体が、コスプレイヤーと観る人・撮る人で成り立ってる文化なので、ギャラリーのリアクションがとても熱くて漫画映えします。かっけーなー。

勝ち負けのないコスプレって一見バトル要素と相性悪そうに見えて、対抗意識や競争心の機微をうまく拾い上げていて、そういえば「ガラスの仮面」「アクタージュ」とかも演劇で勝負してるしね。

f:id:AQM:20201005215637j:plain

「2.5次元の誘惑」4巻より(橋本悠/集英社)

最新鋭キャラのコスプレのライバルたちに対して、旧作キャラの「リリエル」一本で勝負するメインヒロインが、旧車のハチロクで勝負する主人公の「頭文字D」を彷彿とさせたり。

 

部として実績を挙げないと部室を失う危機!とか零細部活ものの定番イベントもあるんですけど、これまでであればエキセントリックな悪役に回りがちだった生徒会長や校長などの「体制側」「大人側」のキャラたちも良い意味で「普通」で、普通ゆえの含蓄と思いやりが感じられて、とても良いです。

f:id:AQM:20201005213625j:plain

「2.5次元の誘惑」5巻より(橋本悠/集英社)

巻が進んでもパンツやおっぱいやエロコスが見えるエロ要素があるのは確かなんですけど、熱いシリアスとキレの良いコメディのバランスもよく、決してエロだけが売りの作品ではなかったです。ぶっちゃけおっさん何回か泣いた。

逆に序盤をエロとビジュアルで繋いでただけあって、絵に関しては申し分なし。出てくる女の子たちクッソ可愛い。それでいてヒロイン多数の割りにあんまハーレム路線に走らないところも良い。

主人公男子が狂言回し的に良い意味で「空気」ながら、要所でキーパーソンの役割を果たすのも良い。

f:id:AQM:20201006054713j:plain

「2.5次元の誘惑」4巻より(橋本悠/集英社)

マギノ姉さんもいい女だぜ。あと753のマネージャーさんもいいよね。

嫌いなキャラがいねえというか、なんというか作品全体がキャラクターたちの情熱と愛で支えられていて、泣けんだよコレ。

f:id:AQM:20201005215717j:plain

「2.5次元の誘惑」4巻より(橋本悠/集英社)

「アクタージュ」ロスで空いた心の穴は「アクタージュ」でしか埋まらないんでしょうけど、同じぐらい夢中になれる漫画に出会えたかもしれん。

既刊6巻程度のうちに追いつけてラッキーだったわ。ありがとうはてブのお前ら。

 

2.5次元の誘惑 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

2.5次元の誘惑 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

  • 作者:橋本悠
  • 発売日: 2019/10/04
  • メディア: Kindle版

 

aqm.hatenablog.jp

 

(選書参考)

blog.livedoor.jp