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#瑠璃の宝石 2巻 評論(ネタバレ注意)

アクセサリーショップで水晶のアクセサリーに身惚れた女子高生・瑠璃は、母親に小遣いの前借りをせびるものの断られる。

母親が断る口実に言った「水晶なんて爺ちゃんが山菜採りのついでに山で拾ってた」を真に受けた瑠璃は、バスの終点の山奥に一人分け入るものの、どうすればいいかわからない。石を抱えてうずくまる瑠璃に声をかけてくれた女に、瑠璃は意を決して尋ねる。

彼女、鉱物研の大学院生の凪は、こともなげに水晶が取れる場所を告げ、瑠璃の頼みを聞いて案内をしてくれる。そこには巨大な水晶鉱床が広がっていた。

から始まる、ガール・ミーツ・ガールで鉱物採集をテーマにした、ハルタらしいニッチな趣味・学問もの。ややコメディ寄りの専門ジャンル漫画。特に百合ではない。

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「瑠璃の宝石」2巻より(渋谷圭一郎/KADOKAWA)

凪と水晶との出会いから、銭ゲバ気味に金目の鉱物を狙っていた瑠璃が、徐々に鉱物そのものの魅力と知的好奇心に目覚めていく。

最近、「古畑任三郎」の全話入りBD-BOXを買って順次観ていってるところなんですけど、

アレは誰が犯人かを、視聴者が推理しないんですよね。

視聴者が観ている冒頭で犯人とその犯行が提示されて、もっと言うと視聴者は最終的に古畑が犯人を逮捕する結果も知った上で、毎回楽しんで観てた作品です。

要するにアレは、結果・結末ではなく、古畑が犯人を推定し確証を得ていく「プロセスの面白さ」を端的に示している作品の一つなんですけど、今巻のこの漫画もなんか似た面白さを感じます。

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「瑠璃の宝石」2巻より(渋谷圭一郎/KADOKAWA)

川底の砂からサファイアの粒を発見した瑠璃が、その一粒のサファイアからその産地を突き止める話が地味に丁寧に展開されるお話。

たぶん登場人物たちが可愛い女の子たちでなければ商品として成り立たない、地味で地道なことをずっとやってる漫画で、もっというと我々読者は主人公の女子高生がサファイアの産地を突き止めようができなかろうが本来どっちでもいいはずなんですけど、とても面白く読めました。

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「瑠璃の宝石」2巻より(渋谷圭一郎/KADOKAWA)

知識欲や好奇心と隣接しながらもちょっと違う、消去法で残った可能性を絞り込んで少しずつ真実に近づいていく過程と、その結論としての事象(そこにサファイアがあった)に対する経緯や構造が目の前で解き明かされる面白さ、というのかな。スリリングですらあります。

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「瑠璃の宝石」2巻より(渋谷圭一郎/KADOKAWA)

神社のエピソードと絡めたオチもオシャレで、地味で地道ながら事実と科学に対して誠実な描写も良いです。地味で細かい作業が追うものが、物理的にも時間的にもスケールがとてもデカい、その対比も良いよね。

1巻の時に思っていたよりもこの2巻はもっと面白かったんですけど、ハルタが悪いわけではもちろんないですし週刊少年ジャンプに載せて保たないのもわかるんですけど、ほぼ大人だけが読むメディアに載ってるのはちょっと、いやだいぶもったいない漫画だなー、と。

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「瑠璃の宝石」2巻より(渋谷圭一郎/KADOKAWA)

漫画に対して「読むべき」「読まれるべき」という形容は自分は嫌いなんですけど、それでもこういう地道な調査や研究が持つ面白さを現した作品が、もっと子どもや若い人が読むメディアに掲載できる懐の広さがもっと日本にあったらいいのになあ、と思ってしまいます。そもそもこの地味で興味深い作品を載せてる時点で、ハルタの懐が深すぎるって話なんですけど。

こんなもんさっさとNHKあたりで子どもが観れる時間帯でTVアニメ化しなさいよ、って話でね。

 

 

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