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#望郷太郎 5巻 評論(ネタバレ注意)

「デカスロン」「へうげもの」の作者の現作。

突如地球を襲った大寒波に際し、財閥系商社・舞鶴グループの創業家7代目、舞鶴通商のイラク支社長・舞鶴太郎は、駐在するバスラで極秘に開発させていた冷凍睡眠シェルターに妻と息子を伴って避難。1〜2ヶ月の冷凍睡眠で大災害をやり過ごす心算だった。

太郎か目を覚ますと、隣で眠っていた妻も息子もミイラ化し、装置が示す数値はあれから500年が経過していることを指し示し、シェルターの外には廃墟と化したバスラの街並みが広がっていた。

人が絶えたように見える世界を前に太郎は、自らの死に場所を娘を残してきた故郷・日本に定め、長い旅路を歩き始める。

旅路で出会う、わずかに生き残った人類たちは、過去の文明の遺産を再利用しながら、狩猟と採集で食いつなぐ原始に還った生活を営んでいた。

で始まるポストアポカリプスなサバイバルなロードムービーもの。

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「望郷太郎」5巻より(山田芳裕/講談社)

としてスタートした作品ですけど、もう既にジャンルが少し変わったというか本質が表れていて、実態は原始環境における経済もの、「金と人間」をテーマにした作品に。

先に「ロードムービーもの」と書いたけど、ヤープト村に滞在してだいぶ経つね。つってもまだ5巻ですけど。

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「望郷太郎」5巻より(山田芳裕/講談社)

文明がリセットされ原始化した社会が再び貨幣経済圏を形成する過程に、現代の経済人が「なろう」よろしく介入することができたら、というお話になるのかなあ。

人を動かすにあたって、暴力の支配を貨幣経済文化が駆逐するお話になるのかなあ。

と一旦思ったんですけど、貨幣経済が暴力を駆逐って、別に21世紀の現代でもそんなこと起こってないんですよね。

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「望郷太郎」5巻より(山田芳裕/講談社)

経済と暴力って対立軸ではなくて、むしろ「両者を揃えたものが(米中のように)強い」という話で、本作も今のところ貨幣と暴力が力の源泉の両輪のように回っています。

3つ目は信仰になるんですかねコレ。

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「望郷太郎」5巻より(山田芳裕/講談社)

作者が描きたいものが、過去の人類史の再現なのか、それとも現代の経済人が介入することによって過去とは異なる歴史を描きたいのか、未だ判別つかず興味深いですけど、太郎が日本に帰るという元々の縦軸にどうやって戻るんだろコレ、という。

 

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