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#ゲーミングお嬢様 4巻 評論(ネタバレ注意)

ジャンプ+でWEB連載されている、オマージュやパロディを散りばめ中毒性のある言語センスを伴った、基本ギャグコメディ進行の格闘ゲーム×お嬢様のゲーマー漫画。

格闘ゲームとお嬢様は「ハイスコアガール」といい「対ありでした」といい、なんか相性よろしいですわね。

数ある「格ゲー×お嬢様」作品の中でも最もイカれた世界観設定の作品。

わざわざ作画担当を付けているにも関わらず、すごく絵が上手いわけでも美少女が可愛いわけでもないという不合理な建て付けですけど、世界観も話の展開も不合理なので全体として調和が取れているという、ツッコミどころの多いギャグ漫画のような作品。


富野由悠季による「機動戦士Zガンダム」の原作小説1巻に、TVアニメ版などでは描かれなかった、シーンというかジェリドのモノローグがあります。

なにかというと、ジェリドは最新鋭機のガンダムMk2よりも汎用量産機のハイザックの方が好きだと感じる、という話。

ジオン系のザクに連邦系の技術をミックスして「なんでもありの魔改造」として高い自由度で開発されたハイザックと比べて、「ガンダムとは」というコンセプトをガッチガチに背負って生まれたガンダムMk2は設計思想の柔軟性に欠けて引き出しが少ない、そういう話です。


自分から見ると、お嬢様言葉とスラングをミックスした会話芸がぱっと見は注目を集めるものの、「ゲーミングお嬢様」の本質は格ゲーの対戦シーンを通じた各キャラの生き様の描写で、その際たるものの大会編は"ガンダムMk2"です。

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「ゲーミングお嬢様」4巻より(大@nani/吉緒もこもこ丸まさお/集英社)

現実のシーンのオマージュを散りばめて格ゲーマーのファイティングスピリッツ・生き様の魅力を強いリスペクトをこめて再現することを目的に描かれており、およそ「目の前のコイツには絶対に負けたくねえ!」という「闘争本能の表現」という意味では現役漫画作品の中でも随一ですが、その反面「遊び」を入れる余裕がありません。

これを装飾するのは汚く痛快なお嬢様言葉の会話芸と、擬似百合的な「クソデカ感情」、あと「ストV」のメタとその攻略・駆け引きの解説ですが、どんなゲームであれその本質は突き詰めると幅は狭く二択・三択に収束していき、

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「ゲーミングお嬢様」4巻より(大@nani/吉緒もこもこ丸まさお/集英社)

解説うんちくの幅も似たような説明の繰り返しに収束していかざるを得ません。

作品の根幹部分に「遊び」を入れる余地を許さないガチガチのコンセプトと「闘争本能のぶつかり合いの果てに隆子が勝つ」という基本的な展開は変えられず、

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「ゲーミングお嬢様」4巻より(大@nani/吉緒もこもこ丸まさお/集英社)

故に対戦シーンは熱くて派手なものの二度目の描写以降は常に単調で、本来、4〜5巻まで引っ張って保つような作品ではないように思います。


自分から見ると、大会編に毎回突如挿入される箸休めの与太話回、これが"ハイザック"です。

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「ゲーミングお嬢様」4巻より(大@nani/吉緒もこもこ丸まさお/集英社)

作者のゲーマーとしての博識と、汚いお嬢様言葉の会話芸が存分に活かされ、あるあるネタ・メタネタ・コメディオチと縦横無尽のなんでもアリで、途中から自分はこっちの方が読んでて楽しかったりするし、ネットの反響もこちらの方がどうも大きいように感じます。

なんでかというと、おそらく読者の大半は現役の「ストV」プレイヤーではないからです。なのでブームの時期とカチ合った箸休めの「ウマ娘」回の方が反響が大きかったりする。


この辺の、作者の「本来描きたいものと読者にウケるものの倒錯のジレンマ」を2巻あたりから既に強く感じる作品。

おそらく完結は遠くないんじゃないかと思います。

 

作者自らが認めるとおり本来この作品にとっての"ガンダムMk2"は「汚いお嬢様言葉×格ゲーマーの闘争本能」の一発ネタで、"ハイザック"はもともと余技に過ぎなかったように思います。

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「ゲーミングお嬢様」4巻より(大@nani/吉緒もこもこ丸まさお/集英社)

伝えたいことを繰り返し描くことはアジテートとしてはとても大事なんですが、自分から見るとこの作品の本質にあたる"ガンダムMk2"は商業エンタメとしてそろそろ限界であるように思います。

でも、自分はこの原作・作画コンビの中毒性のある作風が大好きなので、作者の興味や才能の開花に合わせて"ハイザック"のように自由に形を変えながらでも、この先も読み続けていけると良いなあ、とあれこれ空想したりします。

 

 

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