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#逃げ上手の若君 6巻 評論(ネタバレ注意)

「魔人探偵脳噛ネウロ」「暗殺教室」の松井優征の新作は、鎌倉時代末期〜南北朝時代〜室町時代初期を舞台にした歴史物。設定・登場人物は史実ベース。

「逃げ上手の若君」6巻より(松井優征/集英社)

鎌倉幕府のトップ・執権として世襲で地位を継いできた北条氏の嫡子の少年・北条時行。しかし、幕府と敵対する後醍醐天皇側に寝返った足利高氏(尊氏)により、鎌倉幕府は滅ぼされてしまう。

北条氏の滅亡により大切なものを全て奪われた時行は、信濃国の国守にして神官の諏訪家を頼りに落ち延び、足利への復讐を誓う。

という伝記もの。シリアスに史実を追いつつも、演出としてギャグコメディ色も強い作品。

「逃げ上手の若君」6巻より(松井優征/集英社)

主人公・時行の持ち味は強い生存本能に基づく逃げの天才。

まだ9歳の時行を後見し成長を導かんとする諏訪頼重によって、小〜中のミッションが課されるような展開。

1335年3月、信濃動乱を経て。時行が歴史にその名を轟かす「中先代の乱」まであと1ヶ月。

「逃げ上手の若君」6巻より(松井優征/集英社)

足利の忍び集団「天狗面」が諏訪に迫り、雌伏する時行は諏訪頼重の勧めで叔父の泰家とともに少数の郎党を率いて密かに京に昇る。

舞台が花の都に移り、楠木正成、佐々木道誉、そして『破軍の星』こと北畠顕家など、

それぞれが一作品の主役を張れるクラスのこの時代の名バイプレイヤーたちが、今のところまだ名前だけですが徐々に露出するようになってきて、南北朝時代を愛好する歴オタさんとか、

ja.wikipedia.org

北方謙三のその辺の小説のファンには眼福な感じになってきましたね。

「逃げ上手の若君」6巻より(松井優征/集英社)

時行がWikipediaに載るレベルの「中先代の乱」を起こすまで作中あと1ヶ月となりました。

この辺から時行及び関わる人物たちの史料が充実し始めて歴史好きにはたまらない展開に入る反面、作者が自由に「少年漫画」できる余地が徐々に狭くなっていき、作中3ヶ月後には作品をコメディ面で引っ張っている頼重が死にますが、

「逃げ上手の若君」6巻より(松井優征/集英社)

それらの史実・史料・学説を踏まえた上で、この作品の持ち味を維持したままどう演出されていくのか、楽しみです。

 

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