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#かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ 26巻 評論(ネタバレ注意)

名門の子女が集う名門学園の生徒会長・白銀御行と副会長・四宮かぐや。プライド高いエリート同士、美男美女同士の「告白した方が負け」。稀代のラブコメメーカーによる恋愛マウント駆け引きバトル、現役最強ラブコメ。

「信者」と言っていいぐらい自分はこの作品が好きなので、新刊の度に何を書こうか悩ましいです。褒め言葉のバリエーションがあんまり多くないので。

この作品の新刊に関する自分の感想記事を次の日に読み返すと、毎回「ちょっと気持ち悪いなあ…」と思います。

白銀とかぐやが3年生になり、新キャラも登場し、飛び級でスタンフォード大への進学を決めた白銀に残された高校生活は残りわずか。

四宮家と四条家の抗争がついに勃発・表面化。

それを契機に、幽閉同然にかぐやは登校しなくなりついには白銀への別れをすら切り出し、高校生たちの手の届かないところで事態は進んでいく。名門校の生徒会長とは言え一介の高校生に過ぎない白銀は、それでもまだ、かぐやを救い出すことを諦めていなかった。

ということで最終章、秀知院学園生徒会 vs かぐやを呪縛する四宮家、クライマックス、&決着。

 

連載時以来、正直、評判悪いです。

自分も珍しくこの作品を少々DISります。

この大事な最終盤にきて失速したというよりは、これまであれほど裏設定や要素の膨らましで読者を唸らせてきた同じ作家とは思えないほど、竜頭蛇尾というか、いろいろ雑に。

「描きたいシーン」「描かれるべきシーン」はきっちり押さえていて流石ながらも、そこに至る道程・描写のディティールが、まるで打ち切り漫画が決まった作品のような無理をしたダイジェストな駆け足感で、細かいツッコミどころがノイズになって肝心のシーンで感情移入を損ねています。

なんかスケジュール的に早々に『かぐや様』を畳まなければいけない事情が発生したのか、vs四宮家シリーズが重すぎて読者のストレスになっている自覚からなのか、ネームの資質の本領がコメディであってシリアスではないという自己分析なのか。

でも『【推しの子】』のシリアス展開は面白いんですよねえ…

 

この人が戦犯の主犯です。

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」26巻より(赤坂アカ/集英社)

悪役としてあまりにもテンプレ的に卑俗で小物すぎて能力的にも人格的にも何の魅力もない上に、コメディ適性も皆無で、登場すればするほど読者のストレスになって作品の評価を下げるだけでした。

この人が戦犯の共犯です。

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」26巻より(赤坂アカ/集英社)

当初の大物感と比較して、「実はいい人」のパターンで、蓋を開けたら中途半端な無責任さも含めてあまりにも普通に人間的すぎました。

コメディ適性はね、高くて好きなんですけど。

結局、読んでいて頷かされたり、「悪のカリスマ」の快感を感じるような悪役が描かれず、それゆえに対決そのもののスケールも思っていたより二回りぐらい小さいものに感じ、それゆえにカタルシスに欠けました。

 

展開が雑で性急に感じた原因は、10億円余りまくりとか、物理的に無理がある描写とか、他にもあるんですけど、最終章の直前にいかにも重要ポジションぽく登場した新キャラ、四条帝・担任教師・不知火ころも、あたりの見せ場が前フリに反して全く作られなかったことが、「予定変更=打ち切り」感、雑な性急さを感じさせているように思います。

思ったより人気出なかったんで、早々に見切りをつけた、ということなんでしょうか?

四条帝、

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」26巻より(赤坂アカ/集英社)

かぐやにこのセリフを言わせるためだけの「装置」で終わってしまいました。

シーン自体、セリフ自体は、いいシーン、いいセリフなんですけどね。

 

一連のシリアスなエピソードに挟まるギャグコメ回のキレは相変わらずなので、あるいは「重くて不評な四宮家エピソード」をさっさと片付けることにした、と言うことなんかな。

同じシリアスなエピソードシリーズでも、泣かされた花火大会・体育祭・スマホの写真などの名エピソードに比べると、「宿題をこなした」感がどうしても拭えません。

それでも本屋のコミックコーナーに並んでる漫画の、上位10%に入る面白さではありますけど、読者の、というか私の期待は上位3%とか1%とかに入ってくれることなので、期待のハードルが上がりすぎたせいかもしれません。

 

まあでも、

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」26巻より(赤坂アカ/集英社)

二転三転ブレブレで強引な「為めにする展開」の果てに辿り着いたシーンですけど、このシーンを描きたかったんだと思うし、俺も見たかったシーンなんですよね。

ちょっと笑みを浮かべて、自信と希望を抱えて走り出すかぐや。

 

ヘリのローターに当たって死ぬだろとか、会長の腕力どうなってんだとか、東京からの移動時間計算は大丈夫ですかとか、物理的なツッコミ入れたくはなりつつも、

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」26巻より(赤坂アカ/集英社)

聞きたかった白銀の言葉、見たかったかぐやの表情、見たかった肝心のツボだけはキッチリ押さえて見せてもらったので、いいかな、と思います。

このかぐやの泣き笑いの表情さえ描いてくれたなら。

「終わりよければ全てよし」と言いますが、なによりまだ作品終わってないですし、なんつったって自分、信者ですし。

チープな感想なんか吹き飛ばして手のひらクルクルさせるようなエンディングを期待してます。

 

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