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#葬送のフリーレン 9巻 評論(ネタバレ注意)

80年前、魔王を打ち倒し平和をもたらした伝説のパーティ。

勇者ヒンメル。戦士アイゼン。僧侶ハイター。魔法使いフリーレン。

王都に凱旋した彼らには、世界を救った功績に対する歓待と、その後の長く平和な人生が待っていた。

『葬送のフリーレン』9巻より(山田鐘人/アベツカサ)

80年が経ち、勇者も僧侶も寿命で世を去り、戦士のドワーフも老いた中、長命種エルフの魔法使いフリーレンだけがひとり変わることなく魔法を求めて彷徨いながら、かつての仲間の死と追憶に触れていく異色のファンタジーもの。

ヒロインからしたら一瞬にすぎない間しか同じ時間を過ごせない、エルフと人間の寿命と時間感覚のギャップの哀愁を淡々と。

フリーレンに、弟子の魔法使いフェルン、戦士のシュタルクを加えた一行は、一級魔法使い試験を経て、危険なため通行が禁止された北部高原へ。

『葬送のフリーレン』9巻より(山田鐘人/アベツカサ)

ちょっとハンター試験風だった一級魔法使い試験を抜けて、再びロードムービー風の短〜中編エピソード集のような展開に。

前巻が比較的短いエピソード中心でしたが、今巻は中編のちょっと長いエピソード。今巻で完結しません。

北部高原、ヴァイゼ地方。

一級魔法使い試験で知己となった魔法使いデンケンからの依頼。

『葬送のフリーレン』9巻より(山田鐘人/アベツカサ)

50年前に魔族の幹部・七崩賢の一人「黄金郷のマハト」によって丸ごと黄金に変えられた城塞都市ヴァイゼ。その北のはずれの村がデンケンの生まれ故郷だった。

老境に入り初めて自分の過去を振り返ったデンケンは、亡くした妻の墓ごとヴァイゼを黄金に変え今なお生き続けるマハトを倒すべく、策を案じていた。

「黄金郷のマハト」はフリーゼンがかつて敗北したことのある11人の魔法使いの1人だった…

『葬送のフリーレン』9巻より(山田鐘人/アベツカサ)

というわけで、勇者ヒンメル一行に討伐された魔王の配下だった「黄金郷マハト」討伐編。

たとえ言葉は通じてコミュニケーションが取れても、つくりが違いすぎて価値観を共有できない、人間と魔族。

にも関わらず人間に興味をもってしまったマハトが、今なお黄金郷と化したヴァイゼで暮らし、侵入者を殺し続ける理由。

捕食・食物連鎖が代表するように、異種間で善悪や罪悪感などの価値観・倫理観が共有できないことは現実でも珍しくもないですが、そんな異種のはずが人間と触れ合うことで本来の生態の行動様式が壊れて自滅していく敵キャラ、というと近年の作品でインパクトがあった作品だと

『HUNTER×HUNTER』24巻より(冨樫義博/集英社)

『ハンター×ハンター』を思い出しますね(近年か?)。

冨樫義博はよほどこのテーマが好きなのか、『レベルE』でも似たようなテーマの物語を描いています。

『レベルE』上巻(冨樫義博/集英社)

冨樫の解釈は「彼らにとって人間を理解し愛することは毒である」だったんですかね。

『葬送のフリーレン』では、魔族はこれまで「人間には理解不能なもの」として描かれ、真の意味で「人間側に寝返った」「人間と友好的に暮らしている」魔族は確か登場していませんが、最近の作品の中では結構珍しいです。

だいたい「寝返りくの一」的になろうの主人公にベタ惚れになる魔族サブヒロインとか、最近はいるもんですが。

マハトが人類とどうなりたいのか、というか、作者がマハトに何を語らせ何をさせたいのか、今巻では判然としませんが、本作で人間と魔族の可能性を示唆する初めてのケースになるんでしょうか。

『葬送のフリーレン』9巻より(山田鐘人/アベツカサ)

どっちみちロクでもないというか哀しい終わり方をする予感しかしないというか、エピソードが終わった時に「人間の毒」が回ったマハトが生きているとは思わないですけども。

 

 

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