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#【推しの子】 11巻 評論(ネタバレ注意)

地方の病院に務めるアイドルオタな産婦人科医師・ゴローのもとに双子を妊娠したお腹を抱えて訪れた少女は、彼が熱狂するアイドル・アイ(16)だった。驚きショックを受けたゴローだったが、身近に接するアイの人柄に魅了され、彼女の出産を全力でサポートしようと決意する。

だが出産予定日の当日、ゴローはアイのストーカーに殺害される。驚くべきことに、ゴローはアイが出産した男女の双子のうち一人として転生する…

『【推しの子】』11巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

『かぐや様』の赤坂アカの作話を『クズの本懐』等の横槍メンゴが作画、という期待作。

要約すると二周目人生は伝説のアイドルの双子の子どもだった転生チートな芸能界サクセスストーリー、サスペンス・ミステリー付き。

サスペンスでミステリーな縦軸はありつつも、横軸は主人公の2人が芸能界の様々な仕事を渡り歩いて、作者が見知った芸能仕事の裏側の機微を描写していく建て付けに。

アイドル編、リアリティショー編、2.5次元舞台編、バラエティ編ときて、前巻からスキャンダル編。

『【推しの子】』11巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

芸能界で起こりそうなことを全部やっていこう!みたいな元気な展開で、スキャンダル編ですけどまあ、「スキャンダル編(枕営業?編)」ぐらいの。

ルビーの活躍もあって躍進するB小町のメンバーとしてそれなりに忙しい日々を送る有馬かなだったが、女優としては天才子役から「大人の女優」へのブレイクが思うように果たせず、片想い相手で彼女持ちのアクアには塩対応で避けられ、鬱屈していた。

そんな かな に、芸能人御用達のバーで新進の映画監督と知遇を得る千載一遇のチャンスが訪れるが、2軒目に誘われたのは彼のマンションだった。

マンションの中に消えていく かな達を、週刊誌のカメラのレンスが狙っていた…

『【推しの子】』11巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

という、主要サブヒロインである かな に芸能界の洗礼、スキャンダル勃発、という巻。

横軸のエピソードをバネに縦軸に向かって跳ねて、アクアの復讐劇が進展する縦横の絡みも良いし、かなを巡る人々の描写も良いです。

かなのスキャンダルの直接の原因となった映画監督にしろ週刊誌記者にしろ、「悪役」相当ながらどこか憎めなさを残しているのも良い。

ちゃんと進展してて謎が少しずつ明らかになって、サスペンス在り、ラブコメ在り、サクセスストーリー在り、やー、面白いね、この漫画。

なんですけど、『かぐや様』も非の打ち所がないぐらい面白かったんですよね、途中までは、というね。

あれで原作者の信用ポイントが少し減っちゃったというか、終盤になったら作者の興味が「次の仕事」に移って「今の仕事」が雑になる、という前例を繰り返さずに、この勢いで最後まで走って欲しいな、と思います。

『【推しの子】』11巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

やっぱ作品最大の見せ場は、アクアとルビーが互いの正体を知る瞬間なんでしょうか。

アクア、あれだけ聡い子が、

「自分が誰かの転生である以上、ルビーも誰かの転生なんじゃないか」

と思い至らないのはもはや少し不自然なんじゃないか、と思わないでもないです。

でもどうかな、あかねが気づいていたことに気づけなかった、抜けたところもある子だしな。俺もわかんなかったけどw

前世持ち設定を活用しているアクアに比べてルビーの前世設定が今のところ物語にまったく寄与していないのと、ヒロインとしての見せ場を完全に あかね と かな に持って行かれているのもちょっと気になります。

前巻の あかね の涙は美しかったし、今巻の かな はとてもキュートでしたけど、ルビーには

「亡き母の遺志を継いでどんな手を使ってでも東京ドーム級アイドルになる」

「手段を選ばずに復讐を果たす」

という強力な妄執ばかりが描かれて、今のところ読者が感情移入したり萌えたり恋をしたりするキッカケが、ないんですよね。

どこか心中がブラックボックス的というか、「一人だけ鬼殺隊の柱みたい」というか。

アクアが狂言回しとして縦軸を引っ張ってるけど、どこかでルビーの巻き返しが待ってそう。

『【推しの子】』11巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

そういえば、前からちょっとずつ書いてたことなんですけど、

aqm.hatenablog.jp

今巻でアイドルや芸能界に対する自己否定的な描写が出てくるんで、あらためて。

【推しの子】 ってタイトル、本来 【 】 、要らないですよね。

Twitterのハッシュタグにしようと #【推しの子】 って書いても、仕様で 【 の時点でハッシュタグにならないんですよね。

で、結果的にSNS上で表記揺れが起こったり。

計算高い原作者がそれに気づかずに作品タイトルに意味もなく 【 】 を入れたわけもなく、なにか伏線的に意味があるはずだ、と思うんですが。

まるで言外に

「ハッシュタグとか付けて推したり、するな」

と言っているようだな、と、今巻のアイドル文化や芸能界に対する自己否定や諦観の描写や、「人々(読者)の醜悪な好奇心」への言及を見て、あらためて。

『【推しの子】』11巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

最終回に心おきなく推せるようになって、 【 】 が取れたりすんのかしらね。

 

 

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