空飛ぶ龍を捕龍船(飛空艇)で狩る「龍捕り(おろちとり)」にまつわるファンタジー。
狩った龍は解体して売ったり食ったり。
若干、風の谷の天空のなにか風味。
「船喰い」と恐れられる伝説の龍「震天王」テュポーンとの対峙でダメージを負った、主人公たちの捕龍船「クィン・ザザ」号。
その大規模改修の長い期間、船のメンバーの故国にまつわるサブエピソードなどもありつつ、カメラが戻ってフルメンバー、クィン・ザザ号の復活、前巻でガッツリ一冊かけて「震天王」テュポーンとのリベンジ戦。
今巻はその後始末と、メンバーの過去の掘り下げ。
テュポーンの解体と料理、なし崩しで戦友みたいになっちゃった屠殺船チームとの通過儀礼的な一悶着、片腕を失った古参の甲板長・ギブスの予後、その治療のためのドラクエ的なお使いクエスト、ギブスの苦い過去の思い出、屠殺船に乗っていたジローの父親、ジローの過去。
良い、というか好きなエピソード群。
力仕事の屈強な男たちの殴り合い、でも女には頭が上がらない男たちなど、ジブリっぽいって思っちゃいますねw
「お母ちゃんは強い」は別にジブリの専売特許なわけでもないんですけど。
展開予想や要望、あと思想信条の話は、何かと作家のご迷惑というか「ウザいだろうな」と思ってなるべくしないようにとは思うんですが、バトル漫画ではないので「最強の龍を倒したから終わり!」という作品ではないですけど、「今後どうすんのかな」、「何を描くのかな」とは思います。
ヒトの生活圏から「向こう」へ越境して組織と装備で「モンスター狩り」を生業にする本作の主人公たちと『ナウシカ』の「蟲使いたちの先祖、呪われし武器商人たち」との違いって、「狩った獲物を食うかどうか」だけだよな、とか、ぶっちゃけ捕鯨問題の話とかともテーマが一部カブってるよな、とか。
「人類の生活圏の内と外と境界線」
「境界線上で野生生物と対峙する人間たち」
「人間は自然の一部か」
「野生生物との共存の在り方をコントロールする責任」
「食ってこそ供養は普遍か」
「"モンスター狩り"アクションの持つ娯楽性」
など、現実社会の暗喩・風刺も含めていろんな切り口・テーマに派生できる建て付けの作品で、それぞれごとに偉大な先達と言うべき作品が漫画に限らず映画・ゲーム・ドキュメンタリーなど多々ありますけど、どの方向に行くんかな。
「強力な主人公が引っ張る物語」と言うよりは群像劇で、
ルックスは一見ジブリ作品に似ている様に見えて、「人間と自然」にまつわる主義・思想は今のところ宮崎駿ほどの指向性は感じず、エンタメ寄りの作品なのかなと思うんですけど。
ここ数巻の「屠殺船」との肌感覚の対比が、いかにも何かヒントっぽくは見えますよね。
aqm.hatenablog.jp