#AQM

あ、今日読んだ漫画

#アナトミア―解剖してわかったことだが、人間は必ず死ぬようにできている― 2巻 評論(ネタバレ注意)

ルネサンス期、15世紀末のミラノ公国。

当時の医療従事者「理髪外科医」を営む父親の助手・見習いを務める少年・サルヴァトーレ(通称・トト)は、しかし1000年前の医術書による旧態依然の医療知識体系や技術に疑問を持っていたところ、同じく人体の構造に強い執着を示す男と出会う。

『アナトミア―解剖してわかったことだが、人間は必ず死ぬようにできている―』2巻より(高城玲/秋田書店)

画家を名乗るその男は、芸術と医療、目的こそ異とするものの、「人体についてもっと知りたい」という同じ強い情動を示すトトに興味を抱き、

「俺と一緒に死体とか盗んで解剖しまくろうぜ!」

と誘う。その男こそルネサンス期の超人として歴史に名を残す、レオナルド・ダ・ヴィンチその人だった。

という、少年トトをワトソン役にしたレオナルド・ダ・ヴィンチの伝記フィクション。

『アナトミア―解剖してわかったことだが、人間は必ず死ぬようにできている―』2巻より(高城玲/秋田書店)

BL匂わせ風味というか、ダ・ヴィンチ青年がトト少年に壁ドンしたりとか、サービスシーンは基本的に女性向けかなと思います。

世界の原理が神から科学に移行しつつある時代、人間主観の知と好奇心の対象の最大単位が「宇宙」であるのに対し、最小単位である「人間(自分)の身体」をテーマに据え、『チ。―地球の運動について―』と対になるような位置付けの作品。

好奇心の超人レオナルド・ダ・ヴィンチと、医療の進化を模索する少年トトの、医療&解剖&芸術&死体泥棒ドラマを通じて、ルネサンス期の個人の「真理と真実を知りたい」という好奇心の渇望と希求、「変えたい」という情熱のドラマが、人類の進歩の歴史に繋がっていく野心的なテーマ。

舞台を解剖医学の黎明期に置いたこと、それをレオナルド・ダ・ヴィンチという超人を通じて芸術と連動させて、医療と芸術の両面から解剖学を攻めてるところが目新しい。

『アナトミア―解剖してわかったことだが、人間は必ず死ぬようにできている―』2巻より(高城玲/秋田書店)

○○○○○○○を「ガキ」呼ばわりするレオナルド・ダ・ヴィンチwww

自分はダ・ヴィンチの「最後の晩餐」しか知らないですけど、そうか、考えたら当たり前ですけど、「最後の晩餐」をダ・ヴィンチはその場で見て描いたわけでもないし、描いた人もダ・ヴィンチ以外、ダ・ヴィンチ以前にも居たんですよね。

今巻は、前巻ラストで墓場から死体を盗んだ際にヘマをして、トトを庇ったダ・ヴィンチが役人に捕らえられたくだりの続きから。

ダ・ヴィンチのパトロンのミラノ公が不在の折り、処刑されてしまいそうなダ・ヴィンチを救うべく、歴史に名を残す大パトロン・メディチ家を頼りにフィレンツェに走れメロス。メロスじゃないトト。

『アナトミア―解剖してわかったことだが、人間は必ず死ぬようにできている―』2巻より(高城玲/秋田書店)

解放と引き換えにメディチ家の令嬢の見合いのための肖像画を半強制的に依頼されたダ・ヴィンチは、トトをフィレンツェに誘うが…

理髪外科医の父親のもとで見習いを務める少年トトの巣立ち、画家志望の黒髪の少年との出会い、そして舞台はフィレンツェへ。

トトの父親は頑固で高圧的でパワハラ気味で旧態依然とした医療職の「親方」として描かれて読者の印象において割りを食らってますけど、不徳を為すでもなく誠実な職業人。

それだけに、跡を継いでほしいと願って鍛えた息子と道が分かれるのは、自分の仕事、ひいては自分の生き様を「古くて間違っている」と全否定されているようで、親として辛いよな、と思います。

割りと現代においても身につまされる話。

『アナトミア―解剖してわかったことだが、人間は必ず死ぬようにできている―』2巻より(高城玲/秋田書店)

職業人としては道を違えても、親子としての情愛は残った別れの描写。いいエピソード。

あと見どころは、レオナルド・ダ・ヴィンチによる「最後の晩餐」の正しい描き方講座、

ja.wikipedia.org

そして幼いながらダ・ヴィンチと張り合う画家志望の黒髪の少年の正体。

おおう、俺でも知ってるビッグネーム。

って、ダ・ヴィンチにしろ、メディチにしろ、黒髪の少年にしろ、トト親子以外の主要登場人物、だいたい史実のビッグネームなんですよねw

この「歴史の上を歩いてる」感、日本の歴史ものコンテンツでは作品数が多いこともあって慣れて麻痺しがちなんですけど、

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個人的にも漫画的に縁が薄いルネサンス期のイタリアで、それでも「俺でも知ってる名前」が登場する新鮮な高揚感。

シャアやアムロと違って登場させるにあたってサンライズの許可も要らないw

『アナトミア―解剖してわかったことだが、人間は必ず死ぬようにできている―』2巻より(高城玲/秋田書店)

次巻からは新章・フィレンツェ編で、どうやら墓場泥棒も卒業っぽい雰囲気で、トト少年の将来の展望も拓けて、新展開になるんでしょうか。

 

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