10巻到達、と今巻の内容、諸々おめでとうございます。
10巻にして、ブッこんできたなあ。
実録ガチ系の下ネタ・風俗ネタ・ドMネタ、お下劣でやたら面白い怪作 、「エムさん。」の作者。
無駄に女の子が可愛く「ヒロイン立ててストーリーもの描いてくんないかな」と思ってたら、カースト「下の中」の漫画オタクの男子中学生と、カースト上位でスカート短い美少女ギャルの、王道の隣の席ラブコメ。やったぜ!
きっつ…お、王道の隣の席ラブコメのセリフか…?
作品としては「中学生の未満恋愛」の同じセグメントに『僕の心のヤバイやつ』という超強力な作品があって、その陰に隠れている感じはあります。開始時期も同時期で巻数も近く、また作者がラブコメ畑の外から参入してきたあたりも似ています。
桜井のりおとはまた違った意味で従来のラブコメにない切り口や視点が提示されて、自分もとても期待していて1巻以来追いかけている作品。
『僕ヤバ』と比べるとヒロインをもうちょいエッチに、主人公をもうちょいキモくした感じです。
陰キャな青春を過ごした作者が陰キャな少年を主人公に飛び切りの美少女との恋愛未満を妄想で付け加えて描くという、外形的に大きな共通点があるんですけど、それ以上に「あー、青春時代の後悔をずっと大切に抱えている作者なんだな」と強く感じて、だからこそ同じように後悔を抱えている自分はこの作品にも惹かれるんだろうなー、と思います。
陰キャな青春に妄想上のヒロインを放り込んでもフィクションでやり直しても、後悔は形を変えただけで結局存在していることは変わらない、苦い何か。
お、王道の隣の席ラブコメ…
ルックス的には一見して「売らんかな」なラブコメでありながら、どこか「ラブコメの勝利の方程式」に背を向けちゃってる漫画。
ラブコメと呼ぶにはラブ要素と鬱展開の高低差が激しく、またラブコメのテンプレにハマってるようでハマってない作品。
今巻は修学旅行編。
「修学旅行編」といえば、学園ラブコメの華。ネタバレですが、今巻でついに告白イベント発生。
という外形的にはラブコメのテンプレを踏襲しているように見せかけていますが、中身はもうめちゃくちゃですw
メイン2人のうち、ヒロインは体調不良で修学旅行キャンセル、主人公は途中でバックれて、ほとんど修学旅行不参加です。
お、王道の隣の席ラブコメ…
語られるのは、
「やりたいことに出会えない地獄」
「やりたいことに出会ってしまった地獄」
作中の編集者の口を借りて語るこの作者にとっての「漫画論」、
そしてウロボロスのようにグルグル互いの背中を追いかけ続けた二人が、立ち止まって交わしたファーストキスと告白、
です。
あれ、これファーストキスだっけ…? まあいいや。
もう、やってること全然ラブコメ漫画の「修学旅行編」じゃないんですけど、奇を衒ってこうなったわけではなくて、かといって「どうしても描きたいシーン」「どうしても描きたいセリフ」をただパッチワークのように繋ぎ合わせたわけでもなく。
キャラクターの出会いの組合せ、吐かれるセリフ、この「修学旅行」のタイミングしかなかった、「修学旅行をブッチした」ことによってのみ起こせた今巻の旅と出会いと言葉。
青春の混沌、恋愛感情の混沌、創作論の混沌、混沌なまま一緒に鍋にぶち込んでよくかきまぜずに高温で煮込んで熱いうちにハイどうぞ、という感じ。
特に作中で編集者にあんなことを語らせてしまったこともあって、「セオリーに背く」というより「セオリーを無視して」描きたいように、ちょっと軽く魂を削って描かれたようなラブコメ漫画。
ラブコメ漫画は「付き合った後こそ難しい」のは自分の中では定説ですが、この作者なら定説もセオリーも関係なさそうというか、今巻終盤で既に、
「オイ何をする気だオイやめろ」
作者! 憶えてる!? これ「ちょっぴりエッチなラブコメ」!
「ちょっぴりエッチなラブコメ」ですよ、この漫画!!
という感じ。
一旦、10巻到達と、二人の想いが成就したこと、おめでとうございます。
1巻以来追いかけた結果この巻に出会えて、読んでて本当に良かったです。
次巻以降もどうか、お手柔らかに。何をする気なのよ一体。
aqm.hatenablog.jp
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