AQM

あ、今日読んだ漫画

#アクタージュ act-age 12巻 評論(ネタバレ注意)

「山野上のバカといい
 どいつもこいつも本番で役者を変えようとしやがる

 時間の取れねぇ映画じゃねぇんだぞ
 どんだけ稽古期間があったと思ってんだ勿体ねぇ

 稽古で変えろ稽古で せっかくの演劇だろうが」

天才女優の卵・「夜凪 景」のサクセスストーリー、映画女優版のガラスの仮面。現エピソードも舞台演劇だけども。

恋愛要素をバッサリ捨てて最短距離を走って、甲組・乙組で同じ演目で勝負する、ガラスの仮面でいうところの「紅天女」編相当。

演じる役は、西遊記で孫悟空と対峙する、牛魔王の妻で芭蕉扇の持ち主の女神・羅刹女。

通常、演劇・音楽などの芸術系や料理系などの主人公側とライバル側の対決ものは、先攻のライバルのパーフェクトな舞台を、後攻のヒロインの神がかった演技が大逆転で超えていく、という描かれ方をされてきたものですが、今回はヒロインが先攻でした。

前巻で描かれたヒロイン側の舞台は非常に瑕疵の多い描写をされ、この大一番での不出来に読者である私は大変立腹してこのような感想を書きました。

いい加減で野放図で独りよがりで、演劇関係者が身内で「あれはすごい」って内輪褒めして、最後に取ってつけたように「プロ」とか言ってっけど、ヒロイン最初っから徹頭徹尾、観客なんて眼中になかったじゃないの!

インプロヴィゼーションと言えば聞こえはいいけど、んなこたぁ稽古場でやっとけ!自作自演の感情ドーピングでこんな凸凹で不安定で再現性のないアンコントローラブルな内輪揉めの結果のラッキーパンチを良しとするなら、プロだの女優だの名乗らずに仲間で山に籠もって一生座禅組んで瞑想してろ!「天才女優漫画」というジャンルの、この辺が限界か!

aqm.hatenablog.jp

端的に言うとこれらの瑕疵はすべて作者に用意された伏線で、今回の後攻、ライバル側の演出家の黒山の冒頭のセリフで完全に回収された形になりました。

すべては作者の掌の上で転がされていたわけで、ヒロイン側の不出来に怒り心頭の感想を表明した読者(私)は赤っ恥をかかされたわけなんですが、いっそ痛快ですらあります。おみそれしました。いや、俺はわかってたし信じてたぜ!(手のひらクルー

ガラスの仮面の紅天女編は完結していないので軽々しく評価できないですが、天才・北島マヤに相対する姫川亜弓の演出にMOBの小野寺をつけたことは美内すずえの最大の失敗の一つではないかとずっと私は思っています。

愚痴る亜弓さん可愛いけど、亜弓さんチームのメンツが雑魚すぎて可哀想。

 

aqm.hatenablog.jp

一方の亜弓さん、孤軍奮闘するも監督・クソ小野寺、共演・雑魚俳優なので稽古もろくにつけてもらえず可哀想。

 

aqm.hatenablog.jp

本作の今巻、ヒロインの才能を見出し今回はライバル側となった演出家でキーマン、黒山の無双。ひたすらの黒山無双。私の不満は一つ残らず全て伏線としてこの男によって回収されました。あのハプニングまでこういう形で回収するとは、ちょっと鳥肌ものでした。

火花を散らしながら互いを高め合っていくヒロインとライバル。なにより舞台演劇が決して個人競技ではないということ。

私が「ガラスの仮面」の続きで見たかった景色をこの巻で見せてもらって、そしてその先のビジョンも見せてもらいました。すべては「その先」を描くための布石。

同じ女優・演劇物ジャンルの作品として、この作品が「ガラスの仮面」が築いた土台の上に立脚していることは間違い無いですし、今後も似通ったディティールが出てくることがあるかもしれませんけど、まだ足跡のついていない展開を歩き始めたこの作品は、この巻でもう偉大な先達と比較される立場から卒業したように思います。

次巻もとても楽しみです。待てば次巻が出ることの、なんと幸福なことか。