AQM

あ、今日読んだ漫画

#ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 1巻 評論(ネタバレ注意)

「昭和19年 7月7日 サイパン島玉砕
 同8月2日 テニアン島玉砕
 同8月11日 グアム島玉砕

 同9月4日 アメリカ第3艦隊 艦艇約800隻 兵員4万が出動
 向かう先は約1万の守備隊が置かれたパラオ諸島ペリリュー島」

「この作品は史実を参考に再構成されたフィクションです。
 実在の人物・団体・事件などとは、いっさい無関係です。」

 

ここ4年ぐらいはすべて目を通すことが日課になっている増田で、名指しで「この作品をぜひ読んでもらいたい」という変わった投稿がありまして、

anond.hatelabo.jp

自分は基本的に実録の戦争もの、特に先の大戦をテーマにした作品は正直、暗いわ重いわイデオロギーの話に巻き込まれるわ癒し要素も美少女も出てこないわ押し付けがましくて読ませ方が下手な作品は多いわで、敬遠というか目を逸らしがちで、「私に一体何を期待しているんですか」とも思いつつ、ググって探してとりあえずkindleで1巻を買って読みました。

作品に対して予断を持ってしまうかもな、とも思ったんですが、まったく知らない作品で、ハズレはなるべく引きたくないですし、太平洋戦争を題材にした作品でもあり、無知や誤った知識で臨んでおかしなことを書いてはいけないだろうと思い、AmazonのレビューとWikipediaを薄目で読み、買って読もうと決めました。

作者は2015年(平成27年)の、現在は上皇・上皇后に退位された当時の天皇・皇后 両陛下のペリリュー島の慰霊訪問のニュースを通じて、初めてペリリュー島を知ったとのことです。

1巻の発売は2016年7月、既刊9巻で、現在もヤングアニマルで連載が続いているとのことです。2017年日本漫画家協会賞優秀賞を受賞。

戦争の史実をベースにした歴史フィクションとのことです。ノンフィクションではないです。

ただし、例えば自分がいまハマっているゲーム「Ghost of Tsushima」のように主人公がヒロイックに活躍する英雄譚の歴史フィクションではなく、悲惨な戦場の現場を描写し生き残る過程がドキュメンタリー的に描かれる作品になろうかと思います。


徴兵・動員されたと思しき若者・田丸は昭和19年夏、南太平洋パラオ諸島のサンゴ礁に囲まれたわずか13平方kmの小さな島・ペリリュー島で一等兵として軍役についていた。

飛行場を備えたこの小さな島は戦略的要衝として、日本軍守備隊1万と米軍上陸隊4万が相争う地獄と化していく。

漫画を描くことが趣味な田丸は小隊長から「功績係」として、戦死した戦友の遺族への手紙のゴーストライターを任される…


全国紙の4コマ漫画のような3頭身のキャラデザに似合わない、常に死の影が付き纏う描写。

登場人物が出てきた端から死んでいきますが、その死の瞬間や損壊した遺体からカメラを逸らすことなく淡々と描写され、絵柄は違いますが作者のその性癖(「性的嗜好」の意味ではない方)や自らをカメラとマイクに徹するかのような姿勢は山本直樹を彷彿とさせます。

勇しく「無駄死にはしたくない」と決意を語った戦友が次々とあっけなく無駄死にしていく乾いた展開。

戦場に置かれた一個人の視点と恐怖などの感情に主眼が置かれ、作者の淡々とした姿勢からはイデオロギーの左右をあまり感じられず、なにを感じ取るかは淡々と読者に一任している印象。

また漫画として「面白くなければ読んでもらえない」と、読みやすく読ませることに腐心していて、実録系の戦争ものにありがちな「読む手が進まない、気が進まない」「作者の思想が押し付けがましく説教くさい」を排除して「この先どうなるのか」という漫画らしい興味の引き方でグイグイ読ませる工夫と力量を感じます。

歴史について「読むべき、知るべき、学ぶべき」という高尚な動機付けは、成り立ちが大衆文化でありエンターテインメントである漫画メディアや読者のモチベーションとの相性が正直極めて悪く、押し付けがましい「べき論」ではない、「漫画の読者」に興味深く読ませる見せ方が必要だと思いますが、この作品はそうした意味でも、私のような歴史音痴が歴史を知っていく動機の入り口としての意味でも、成功しているように思います。


作品冒頭で現代時間の「誰か」がペリリュー島を訪れ「ここに祖父がいた」とのモノローグが流れることから、誰かが生き残るであろうことが予告されています。

Wikipediaによると史実では米軍の戦死者 2,336名、戦傷者8,450名に対し、日本軍の戦死者10,695名、捕虜 202名、最後まで戦って生き残った者34名とされます。

生き残った34名は終戦を知らないまま?終戦後も現地で2年近く生き残り、1947年に投降。「三十四会」と名付けられた戦友会の最後の一人が、昨年2019年に亡くなったとのことです。

 

終戦から今年で75年、「地続きの過去」と「歴史」の狭間の時期に差し掛かってきていて、当時から現代に連綿と地続きで繋がるイデオロギーに浸ることを排して、歴史として「何があったか」、また個人的な主観を通して「どう感じたか」、「戦争は女の顔をしていない」のようなノンフィクション作品や、作者の創作を通じて疑似的に戦争を振り返る「この世界の片隅に」や本作のようなフィクション作品が、戦後100年に向けて今後更に増えていくのかもしれないなと思いました。

 

面白くなさそうな漫画は読みたくないし面白くなかった漫画の感想も書きたくないので、リクエストがあれば必ず読むというつもりはないですし読めば必ずブログ記事にするというつもりもないです。

でも今回は面白い漫画を紹介してくれて、増田さん、ありがとうございました。

読んでよかったし、続巻も読んでいこうと思います。

 

 

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 (選書参考)

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