AKB的なグループで総選挙13位ながら握手会でファンに「キモチワルイ」つって炎上、追放されるように卒業した元アイドル、無表情クールで人嫌いの愛。
すみれの花咲く頃、宝塚的な歌劇団に付属する養成機関・音楽学校への入学を果たし、そこで出会ったのは長身と強い体幹を持ち天然で天真爛漫で天才肌の少女・さらさ。
10代半ばで人生を自分の意思で歌劇に投じた"強い"女の子たちの、清く正しく美しく、熱くてシビアな楽しい青春。
前々巻以来の、「オルフェウスとエウリュディケ」を題材とした課題に挑む本科生たち。
さらさの暴走、転向した男役で好評を博す愛、不可解というか難度の高い演出家・高木先生のレッスン。
歌劇団トップ、そしてアイドルグループJPXのトップの言葉を絡めて、「トップでいる」とはどういうことなのか、エヴァ初号機のように暴走するさらさの体質と絡めて語られる巻。
珍しく巻末に読み切り短編が収録されず、本編のみ、「オルフェウスとエウリュディケ」の決着まで。
本巻でさらさを評して「憑依型」という言葉が出てきましたが、演劇漫画には皆さんご存知の「憑依型の巨星」、『ガラスの仮面』のヒロイン・北島マヤがおりまして、『ガラスの仮面』の『舞台あらし』編に相当するエピソード。
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一匹狼のマヤに課せられた課題は「周囲に合わせて出力を落とす」こと(というより、「脇役の時は脇役にふさわしい演技を」)でしたが、『かげきしょうじょ!!』でもそうした面はあるものの、
それ以上に「チームとしてさらさを含めていかに調和するか」の道が探られます。
愛の決意が「さらさのスピードを止めるに足るブレーキに成長する」ことなのか、「さらさのスピードを殺さずに制御するハンドリング」を目指すものなのか、今はまだわかりませんが、トップスターを目指すことを公言するさらさを「独りにしない」ことであることは確かなようです。
あるいは憑依型の天才にライバルとしてではなく良き相棒として並び立つ努力型として一緒により高みに登っていく物語、『ガラスの仮面』で見ることが能わなかった展開が見られるかもしれないと、少しワクワクしますね。
「憑依型の暴走」という共通のトピックに対して、一匹狼としての克服ではなく集団としての調和を目指すというのは、
いかにも現代的というか、この作品らしいな、と。
まあでも、「さらさ&愛」のトップスターコンビの際はそれでいいと思うんですが、そこに至るまでの下積みに相当する「No.2以下のスター(十分スターです)」時代はどーすんだ、ってのはあるんですけどw
さらさがこの先「(娘役としてではなく男役No.2として)トップをアシストする演技」とかできる気がしねえw
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