『みつどもえ』の作者の現作。
ラブコメ漫画は数あれど、WEB連載で既読にも関わらず新刊が一番楽しみな作品。
主人公は、雑誌の専属モデルもこなす陽キャ美少女・山田、を殺す妄想をする中二病で陰キャでぼっちな男子中学生・市川。
図書館で偶然見かけた彼女は、一人でおにぎりを頬張りながらゴリラのような鼻歌を歌う、意外と割りと残念な感じだった…
コメディの皮をかぶせた、エロで独りよがりで優しい中学生の、初恋の繊細な機微の描写。
今巻から学年が上がって、市川や山田をはじめ主要人物たちが中学3年生に。
新学期、新クラス、新キャラ登場、体育祭、修学旅行とイベント盛りだくさんな巻。
ちょっとした「足立巻」でもありましたね。
山田本人以外に告白し続ける主人公。なんなんだよお前はw
盛りだくさんなイベントに、曇らせ展開と、それらを乗り越える過程をバネに、「とうとう」、「ようやく」、「やっと」、あとなんでしょね。
普通に考えたら昨今の恋愛・ラブコメ漫画で両片想いが気持ちが通じて「両想い・恋人同士になるのが8巻」ってだいぶ早い方ではあるんですけど、
一話あたりのページ数の割りに展開や情緒の情報密度が濃い分、話数を重ねているのと、特に本作は「陰キャぼっち少年」と「学園のアイドル」「高嶺の花」から始まったラブストーリーというのもあって、感無量というか、「随分かかったな」という印象があります。
ヒロイン・山田の「ポンコツ美少女」の意外性も割りと出尽くしてて、読者(私です)の「美少女キャラ萌え」対象も近刊では萌子が可愛いとか今巻のにゃあの私服がエロヤンキー可愛いとか新キャラの半沢さん可愛いとか、いろいろ浮気気味なんですけど、
今巻久しぶりに山田の「ギャップ萌え」が可愛かったですねというのと、あとはまあ、王道ですよね。
ギャップに頼らないメインヒロインの王道の威力。
見た目は恋愛ラブコメ漫画ですけど、縦軸の要素としては作者のあとがきのとおり、挫折を抱えて「(自分が嫌いな)陰キャ」だった市川と山田の
「高嶺の花の彼女に(/彼に)ふさわしい自分になりたい」
「(相手に肯定・承認される前に)自分を肯定・承認できる自分になりたい」
の成長がメインで、「くっついた/くっつかない」はその結果論、とも見える描かれ方。
恋仲の進展に注目しがちな読者が思っていた以上に、陰キャぼっちだった市川や、彼と山田の過去の挫折と「自分が嫌い」、その超克・成長って、作者にとってはより真摯に向き合うべきテーマだったんだな、と今巻読んで思いました。
大人でも自分を肯定・承認できてない人、たくさんいますもんね。
自分が持たない要素を持つ相手に、互いに憧れ合って自分を引き上げ合う、おじさんおばさん達も、少年期に山田や市川に出逢いたかった…という。
恋愛ラブコメ漫画は「想いが通じて付き合いだして」がゴール、エピローグ最終回で「そして〜年後」に飛ぶ作品が歴史的に多く、
「くっついた後の世界」の描かれ方はまだ未発達というか、読んでる読者側にも「くっついた後の青春恋愛ラブコメ漫画に何を期待すれば良いのか」わかってないところが残っていて、イチャラブ日常以外にもまだ開拓の余地、フロンティアが多く残されているように思います。
半沢さんの「恋とは何か」という疑問に対して、市川と山田が答えを見せていくことも、作品の軸になっていくんかしらん。
「日本で一番有名(になるかもしれない)な女の子と、学業優秀な男の子」の青春恋愛ものだと、自分なんかの世代だとどうしても『キラキラ!』を思い出してしまうんですが。
aqm.hatenablog.jp
ということで、市川と山田の成長が眩しくて振り落とされる読者が出るぐらいの、「くっついた後の青春恋愛ラブコメ漫画」の新境地を引き続き期待しつつ、イッチと山田おめでとう。
あ、あとアニメ化もおめでとう。
近年めっきりTVアニメ(特に原作付き)を観るのが億劫なんですが、『僕ヤバ』アニメは観たいな。
natalie.mu
第1回が2023.4.1って、気がつけばあと1ヶ月切ってるやんけ。
aqm.hatenablog.jp
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