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あ、今日読んだ漫画

#藤子・F・不二雄トリビュート&原作アンソロジー F THE TRIBUTE 【完】 評論(ネタバレ注意)

現役で実力派で第一線級の漫画家たちによる、藤子・F・不二雄作品群の二次創作短編集。

自分は電子書籍で買いましたが、

「どうしたの?」ってぐらい価格が高くて、

「紙版が豪華装丁か版のサイズがデカいかなんかで、電子版がそれに引っ張られてんの?」

と思ったんですが、16人の漫画家のトリビュート(二次創作短編)+アンソロジー(フェイバリット原作エピ)、併せて32編の短編漫画に、各漫画家のインタビューもついて、kindle版のカウントで

466ページ、通常のコミックス単行本の2〜3倍ぐらいあります。

ただ、藤子・F・不二雄の原作漫画、全作全巻持ってる人にとっては、「各漫画家のフェイバリット原作短編」はコンテンツへの二重課金になっちゃって、不要だったかもしれません。

でも、多くのトリビューターが、選んだアンソロジーをモチーフにしていて、直後に読み比べできるのも楽しい。

一作ずついきましょうか。

 

渡辺航 『ドラえもん』

代表作は

トリビュートは『ドラえもん』の二次創作短編。

『のび太のさがしもの』より(渡辺航/藤子・F・不二雄/小学館)

タイムマシンのキーをなくしてドラミちゃんに叱られるドラえもん。見かねたのび太は…

渡辺版のジャイアン、スネ夫、しずちゃんも出演。

『自転車ペダル』作者らしすぎるシーンに笑ってしまったw 怒ってるドラミちゃん可愛いね。

アンソロジー(フェイバリット原作エピ)は『どらえもん』より「未来からの買いもの」。

 

高松美咲 『チンプイ』

代表作は

トリビュートは『チンプイ』の二次創作短編。

『エリさま、お料理する』より(高松美咲/藤子・F・不二雄/小学館)

同じ『チンプイ』の料理ネタですが、原作の方(アンソロジー)が狂気じみてて、ほっこりエピの二次創作の方が読んでてホッとします。

これが原作と二次創作の内容が逆転してたら「『チンプイ』をなんだと思ってんだ!」と藤子版の方が怒られそうw

アンソロジー(フェイバリット原作エピ)は『チンプイ』より「魅惑のマール料理」。

 

奥浩哉 『パーマン』

代表作は

トリビュートは『パーマン』の二次創作短編。

『Another Perman』より(奥浩哉/藤子・F・不二雄/小学館)

ネットやSNSが隆盛する現代にパーマンがいたら、という奥浩哉ナイズ。

自分も「パー子=星野スミレ」は魔美を僅差で上回る藤子ヒロインのベストガールで「1号×3号」ロマン派カプ厨なので、年頃になったパーマンとパー子、とても嬉しい。

このまま連載してほしい。

アンソロジー(フェイバリット原作エピ)は『パーマン』より「はじめましてパー子です」。

 

浅野いにお 『ドラえもん』

代表作は

トリビュートは『ドラえもん』の二次創作短編。

『D』より(浅野いにお/藤子・F・不二雄/小学館)

高校生になって孤高のイケメン優等生化したのび太と腐れ縁?なしずちゃんの下校中の追憶。

「別に私、彼女じゃねーし!!」

と若干ギャル化?したしずちゃん可愛い。

アンソロジー(フェイバリット原作エピ)は『ドラえもん』より「もしもボックス」。

 

高橋聖一 『イヤなイヤなイヤな奴』

代表作は

トリビュートは二次創作というより『イヤなイヤなイヤな奴』に着想を得たオマージュ創作短編。

『今日が地球の最終回』より(高橋聖一/藤子・F・不二雄/小学館)

滅亡を控える地球の命運をかけたラストバトル、その裏側。

キャラや世界観を活かした二次創作ではなく、陽と陰の間の「シニカル藤子」のアイデアを換骨奪胎して取り入れた意欲作。ルックスは全然違うのにすごく藤子Fっぽい。

アンソロジー(フェイバリット原作エピ)は『イヤなイヤなイヤな奴』。

 

石黒正数 『エスパー魔美』

代表作は

トリビュートは『エスパー魔美』の二次創作短編。

『音速の箱』より(石黒正数/藤子・F・不二雄/小学館)

ああ、アレかーw という、勝手に藤子Fキャラ同士をコラボさせる「掟破り(その1)」ネタが楽しい。なお、そんな掟はない。

石黒版の魔美が可愛いのと、石黒版の高畑くんの高畑くん感すごいw

アンソロジー(フェイバリット原作エピ)は『エスパー魔美』より「地底からの声」。

 

大童澄瞳 『作品』

代表作は

トリビュートは『ドラえもん』の二次創作短編。

『ねがい星の災難』より(大童澄瞳/藤子・F・不二雄/小学館)

親の金で「野比家の自宅」を再現した『ドラえもん』マニアが、ひょんなことから『ドラえもん』世界に迷い込む。無事にドラえもんたちに邂逅して元の世界に帰れるのか。

終始『ドラえもん』マニアのメタネタ・マシンガントーク(独り言)が冴え渡り、もはや何言ってんだかよくわかんねえw

アンソロジー(フェイバリット原作エピ)は『ドラえもん』より「ねがい星」。

 

小玉ユキ 『キテレツ大百科』

代表作は

トリビュートは『キテレツ大百科』の二次創作短編。

『キテレツな彼のこと』より(小玉ユキ/藤子・F・不二雄/小学館)

高校生になったキテレツとみよちゃんの甘酸っぱい未満恋愛模様と、最近様子がおかしいキテレツのその理由。自分はカプ厨なのでこういうの大好き。

なんかどこかで見覚えあるような絵のタッチやネームの雰囲気が大変好みなので、著作の『狼の娘』、買って読んでみよう。

アンソロジー(フェイバリット原作エピ)は『キテレツ大百科』より「空き地の銀世界」。

 

木村風太 『T・Pぼん』

代表作は

トリビュートは『T・Pぼん』の二次創作短編。

『運命のT・P』より(木村風太/藤子・F・不二雄/小学館)

似たような仕事の現場でカチあった巻戻士とT・Pは共闘することに。

「掟破り(その2)」ネタ、自分の作品のオリキャラを藤子F作品世界観とコラボさせるずうずうしさ。いいね、楽しいw

なお、そんな掟はない。

アンソロジー(フェイバリット原作エピ)は『T・Pぼん』より「ピラミッドの秘密」。

 

今井哲也 『ドラえもん』

代表作は

トリビュートは『ドラえもん』の二次創作短編。

『FはフューチャーのF』より(今井哲也/藤子・F・不二雄/小学館)

ドラえもんの故郷、22世紀の都市で一人泣く少女。彼女のもとに奇妙な来訪者が訪れる…

ドラは登場しませんが、未来世界設定を活かしたシニカルな語りとどこか間が抜けたオチ。

日本中の子ども達にこうやって「未来を思いを馳せる」時間を作ったFの仕事、やっぱデケえな…

アンソロジー(フェイバリット原作エピ)は『ドラえもん』より「ボールに乗って」。

 

山口つばさ 『流血鬼』

代表作は

トリビュートは『流血鬼』の二次創作短編。

『もう1人の流血鬼』より(山口つばさ/藤子・F・不二雄/小学館)

藤子Fのホラー面、『流血鬼』の裏話、「サイドB」という建て付け。

銃で撃たれて主人公とはぐれたメガネ坊主のその後。

原作の「風刺のような、風刺視線に対する風刺のような」テイストを継承。

正義や価値観の手のひら返し・ちゃぶ台返し・盤面がひっくり返った時。

変節か、目覚めか、屈服か。

なんか最近そんなニュースありましたね。

アンソロジー(フェイバリット原作エピ)は『流血鬼』。

 

モリタイシ 『パーマン』

代表作は

トリビュートは『パーマン』の二次創作短編。

『ラーマン』より(モリタイシ/藤子・F・不二雄/小学館)

パーマン世界観と接続しない、「藤子Fのパチモン」世界観。

ミニスカで空を飛ぶパー子はたまにパンツが見えてましたが、モリタイシが描くパンツはエッチすぎる上に、仮面も相まっておかしな性的嗜好に目覚めそうw

アンソロジー(フェイバリット原作エピ)は『パーマン』より「お金のはじまり」。

 

真造圭伍 『ドラえもん』

代表作は

トリビュートは『ドラえもん』の二次創作短編。

『スネオボーイ』より(真造圭伍/藤子・F・不二雄/小学館)

大人になったスネ夫の日常、とある日。

スケボーで滑走しタケコプターでジャンプする、パルクールのような疾走感、かっこいいし、気持ちよさそう。

最後、いい写真だけど出来杉くんに一体なにがあったのw

アンソロジー(フェイバリット原作エピ)は『ドラえもん』より「バッジを作ろう」。

 

とよ田みのる 『ポコニャン』

代表作は

トリビュートは『ポコニャン』の二次創作短編。

『にゃんポコ』より(とよ田みのる/藤子・F・不二雄/小学館)

にゃんポコと暮らす女は泥酔し、にゃんポコの力を借りて平行世界の自分たちに会いに行く。

在ったかもしれない可能性、パラレルワールドの概念も藤子Fに教わった。

アンソロジー(フェイバリット原作エピ)は『ポコニャン』より「けっさく映画をつくる」。

 

山本さほ 『ドラえもん』

代表作は

トリビュートは『ドラえもん』の二次創作短編。

『大人になりたくない』より(山本さほ/藤子・F・不二雄/小学館)

「中年になった今の自分のそばにドラえもんがいてくれたら」

というダイレクトな欲望・願望、シンパシーがすごいw

とても現代的ながらすごく藤子Fっぽいオチもいいw

アンソロジー(フェイバリット原作エピ)は『ドラえもん』より「人生やりなおし機」。

 

吉崎観音 『ドラえもん』

代表作は

トリビュートは藤子・F・不二雄本人を登場させた創作短編。

『時空の島にて』より(吉崎観音/藤子・F・不二雄/小学館)

時空を超えてイースター島を訪れた冬樹殿とケロロ軍曹は、超有名人と遭遇する。

ある意味で『ドラえもん』などの藤子Fワールドの正統後継者・吉崎観音のトリビュート、自作のオリジナルキャラのコラボ相手は、まさかの若き日の藤子・F・不二雄、本人だった。

という「掟破り(その3)」なやりたい放題。ケロロ軍曹のコラボ相手がドラえもんではなくその作者なのは、むしろ遠慮というか奥ゆかしさが発露した変化球なのかもしれないw

なお、そんな掟はない。

水を粘土化して家具や建物を作るの、確か『ドラえもん』にもあったけど、いいですよね。

アンソロジー(フェイバリット原作エピ)は『キテレツ大百科』より「水ねん土で子どもビル」。

 

 

総じて、藤子Fモチーフ縛りの制約がある中で、何かどこか普段は閉まってるリミッターが解除されたような作家が多かった気がします。

未読だった作家の作品を初めて読む機会も得られて、何人か気になったのでオリジナル著作の方も読んでみようと思います。

ボリューム満点、楽しい一冊でした。

 

あと特に近年の漫画の発展や進化を否定するものではないですが、こうして現在の現役最前線の作家達の誌面と読み比べてみても、藤子Fの漫画の読みやすさ・わかりやすさ・可愛さ・テンポの良さ・発想の奇抜さ・狂気・業、遜色なく感じて「どうなってんだ」という。

これ、おっさんの「読み慣れ」「思い出補正」ばかりではないと思うんだよなあ…

 

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