#AQM

あ、今日読んだ漫画

#スキップとローファー 11巻 評論(ネタバレ注意)

岩倉美津未(いわくら みつみ)、15歳(その後16歳)。

「石川県のはしっこ」、学年8人の中学から、東大法学部卒・中央省庁官僚を経て地元の市長となる大志を抱いて、叔父の住む東京の「高偏差値高校」に進学。

同級生8人の中学とはまったく違う大都会・東京の高校の人間関係、クラスメイトたちの「珍妙な田舎者」という視線が突き刺さる、予定に反してあまり順風満帆とは言えない高校デビュー・東京デビューと、思われた、が。

東京のクラスメイトたちは思ったより優しい良い人たちだった…

という学園青春もの。

「楽しい日々が始まったよ」

「きっと素敵な高校生活が待ってるよ」

と、まるで誰かを励ましているかのようで、タイムスリップして高校生活をもう一度過ごすのも悪くないなあ、なんて思ってしまいます。

『スキップとローファー』11巻より(高松美咲/講談社)

「若い・狭い・本人の苦悩はそこにはない」とは言え、これ「持たざる者」のつもりで他人に言葉をぶつけてる側の子も、健康に東京有数の進学校で学ぶ、相対的・世間的には「とても恵まれてるエリート」の側なんですよね…

「生きづらさは人それぞれ」

ならば、彼には恵まれて見える志摩くんだってそうだろうに、面と向かって「傲慢」て。

さて。

高校2年生、夏休みが終わり、今巻は中高生主人公の青春ラブコメ漫画の華、修学旅行編。

なんですけど、本作、恋愛要素はあれど「ラブコメ」ってほど恋愛要素が真ん中じゃねえしな、という。

『スキップとローファー』11巻より(高松美咲/講談社)

美津未たちの「一生に一度の高校の修学旅行」、そして夏休みの能登半島への帰省でも楽しむみんなの輪の中でどこかぎこちなかった志摩くんと、クラスのモテ女子・八坂にスポット。

演劇部の「フランケンシュタインの怪物」役に、手応えと、他人の評価に依らない満足を感じる志摩くん。

そんな志摩くんとミカのクラスは、修学旅行の班割りでの志摩くんを巡る、女子の政治的駆け引きでめんどくさいことになっていた。

一方、美津未のクラスでは、美津未は親友のメガネ女子・誠や馴染みのメガネ男子・氏家と同じ班だったものの、謎多きモテ女子・八坂ちえりも同じ班だった。

そこそこ面倒くさかったクラスのラブ相関図は、「ラブコメの華」修学旅行の舞台で美津未と関係あったり関係なかったり、様々に弾けてだいぶ面倒くさいことに…

という修学旅行巻。

アレですね、「モテ側の精神病理」みたいなw

『スキップとローファー』11巻より(高松美咲/講談社)

結月もモテますが、容姿と素でモテ過ぎて生きづらさになってる結月と違って、処世術のついでに容姿と合わせてモテてそんなに支障もない志摩くん、容姿と合わせてモテ目的でキャラ作ってモテてる八坂、の二人の「モテ側」の内面を覗く巻。

美津未への未練?でもやもやしっぱなしの志摩くんは、

「自分を偽らないと愛してもらえない」

「偽った自分を愛されても満たされない」

のやつなんかな。赤坂アカもライフワークのようにしつこく擦ってるテーマですね。

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八坂はなあ…

「自分もモテ側です」と言うつもりはないんですけど、ある意味、自分が一番感情移入できるの八坂なんですよね。そういう読者、実は多いんじゃないかな。

反面、二人ともあまりにも「自分中心で世界が回ってる」のが見え透いてしまっていて、クラスにいたら、ミカじゃないけどちょっと距離を置きたい、深く関わりたくない。

『スキップとローファー』11巻より(高松美咲/講談社)

『ハッピー・マニア』に限らず、恋愛・性愛で他人に求められる・チヤホヤされるのって、「恋は盲目」で欠点にも目を瞑って自分の良いところだけを見てくれて(冷めたら反動で欠点ばっか目につくんですが)、「親の無償の愛」と並ぶ究極の「他者からの承認」の一つですよね。

こっちはたとえ

「恋をしたい」「彼氏/彼女が欲しい」

と繋がってなくても、異性からチヤホヤされる・モテる・求められるのは、心の深いところで気持ちがいいし。脳汁出ますよね。

もちろん度が過ぎると、結月のように生きづらさになってしまうんですが。

志摩くんと八坂が、親に問題ありそうなのが、また…

『スキップとローファー』11巻より(高松美咲/講談社)

「青春の内面の葛藤の禅問答の答え、他人からしたら意味不明」問題。

高校生の美津未が全面的にそうだとは言いませんが、他人の評価より自分の軸を貫くって、大人になってもなかなかできねーですからね。

正直、読んでて、今巻で志摩くんが自覚したように、美津未に今の志摩くんがふさわしいとも、すぐくっついて二人が幸せになるとも思わないし、美津未については安定感や信頼があってあんまり先々を心配してないんですが、志摩くんと八坂については

「もうちょっと自分で自分を褒められる人間に、

 そのぶん他人に目を向けられる人間に成長して欲しい」

と願ってしまいます。

いったい何様のつもりなのかwww 自分も!自分もそうなれるようにがばります!

あと単純に「顔が良いキャラが好き」というのもあるんですけど。

さて。

『スキップとローファー』11巻より(高松美咲/講談社)

本作の主人公ヒロイン・美津未の出身地は石川県の架空の町「鈴市凧島町」、モデルは富山出身の作者の母方の実家がある石川県珠洲市。

ご存知のとおり大きな地震がありました。

ja.wikipedia.org

作者は前巻のあとがきで自身の過去のスピーチを引用して

人生が後悔と喪失との戦いのように思えた時、

そればかりではなかったと思わせてくれる友人のような

ただ寄り添える作品になれたら幸せ

と記していました。

「スキップとローファーと能登」と題したチャリティーサイトが先日開設されたようです。よろしければ是非。

skiloa.kodansha.co.jp

第1話、志摩くんはあんま変わらんけど、美津未の顔けっこー違うなw

 

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