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あ、今日読んだ漫画

#幼女戦記 31巻 評論(ネタバレ注意)

サラリーマンがリストラ逆恨みで殺されて、成仏の際に神に反抗した罰で、近代欧州っぽい異世界、WW1前のドイツそっくりな帝国の魔導師の素質持ちの女児に転生。

戦勝と栄達と安穏な後方勤務を夢見つつ、少佐の階級、エース・オブ・エース「白銀」「ラインの悪魔」の二つ名、第二〇三遊撃航空魔導大隊大隊長として、戦場の空を支配する主人公ターニャ・デグレチャフ11歳。12歳になった。

『幼女戦記』31巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

ちなみに、初期巻で度々描かれた「後世の記者が十一番目の女神の謎を追う」後世のエピソードは、同じ作者が描くスピンオフに移行したようです?

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北のレガドニア、西のフランソワ、南の南方大陸ときて、お次は東のルーシー連邦。

帝国(擬ドイツ)東方に国境を接するルーシー連邦、言わずもがなにソビエト連邦をモデルにした国家。

参謀本部の指令でターニャたちがルーシー連邦へ侵入を果たしたまさにその時、ルーシー連邦は帝国に対する宣戦を布告。

第二〇三遊撃航空魔導大隊、魔導師とはいえたった48人で大国・ルーシー連邦の首都・モスコーへの浸透作戦、蹂躙、敵国首都の首脳を心胆寒からしめることに成功。

次いで、前線を支える重要補給拠点ながら、ルーシー連邦首脳部にいる一人の変態の剛腕によって変態的な目的で大戦力を投入されたルーシー連邦軍に包囲され窮地に陥る、ティゲンホーフ市防衛戦。

『幼女戦記』31巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

前巻では

・西暦を識るターニャの予測を上回るルーシー連邦の攻勢

・航空機・戦車の進化・発展に伴って、相対的に機動力・火力の価値が下がっていく「航空魔導師」という兵科

・遊撃航空魔導大隊の大隊長に納まっているターニャの裁量権限の限界

が語られました。

西暦と違う経緯を辿りつつあるのがスリリング。

今巻は突然開催された、ターニャに対する査問会議と、その後の「ターニャの身の振り方」に関わる人事面談。

『幼女戦記』31巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

バトルシーンが一切ない、一部の戦記もの作品名物の「会議巻」。

これまでの、ターニャとレルゲン大佐、ターニャとゼートゥーア中将との会話は、ターニャの後方勤務志望の意図が相手に勝手に裏読みされて戦闘狂と曲解される、作品通じてのすれ違いコメディの強力なパターンでした。

今回もすれ違いっちゃすれ違いなんですけど、前述のとおりターニャが西暦の知識のアドバンテージに限界を感じ始めていることと、もう一つの理由もあって割りとシリアスです。

『幼女戦記』31巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

プクーって可愛いなw

ターニャはこれ、

「もっと戦略的な権限と裁量が大きい、参謀本部の『頭脳』になりたい」

という野心ゆえなのか、

「物理的・社会的なリスクの低い後方で楽をしたい」

なのか、今巻ではちょっとわかりにくい。というより両方なのか。

当初からずっと

・危険は避けたい

・帝国は勝たせたい

で、今巻も一貫はしてんのか。

なんか昔は参謀系じゃなくて事務屋になりたがってたイメージありますよね。

出世させると大隊長でいられない、という事情はあれど、素人目には正直、軍大学を出て戦時に戦功・大功を重ねた割りにはずっと少佐のままで、「出世しなさすぎ」にも見えます。こういうもんかな。

『幼女戦記』31巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

もう一つの理由は、とある政治体制やその後継国家に対する、原作者の深刻な不信と痛烈な批判、になるんでしょうかw

これ、原作、いつ描かれたのかなあ。

もしくはコミカライズにあたって、原作からアレンジが入ってんのかしらん。

ターニャの口を通じて語られる「深刻な不信と痛烈な批判」が、ルーシー連邦の向こう側の、現実のとある国やその軍事行動を痛烈に批判しているようにも見えますね。

「ルーシー連邦の、西暦の経過の超越」の原因は、漫画的には例の変態1名が負ってる部分ですけど、どう処理するんだろう。

次巻からちょっと新展開でしょうか。

帝国の戦局というより国運としては、ターニャの活躍で保ってる反面、その活躍でリスクの風船が先延ばし・温存どころか膨らみ続けて、割れた時の被害がデカそうというか。

『幼女戦記』31巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

今巻の政治と軍事、首都と前線の空気感の乖離の描写を見ても、ターニャがいなくて傷が浅いうちに早々に「敗戦」しといた方が、(負け方にもよりますけど)帝国にとっても世界にとっても幸福だったように見えますね。

初期から、というか「未来回想」で帝国の敗戦が規定されている以上、作品コンセプト自体そうかw

 

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