口下手な陰キャを自認する少年・二宮は、クラスの図書委員でペアになった、クラスメイトの荻野目さんが苦手だった。
荻野目さんはスクールカースト上位の陽キャなギャルで、住む世界が違うと感じていた。
しかし根っからの陽キャで話好きの荻野目さんは、そんな劣等感を抱く二宮の陰キャ性など気にすることなく、気さくにぐいぐい話しかけてくる。
荻野目さんを眩しく思い、自分を引き比べて劣等感に苛まされながらも、二宮は彼女に惹かれ、人気のない放課後の図書館で図書委員として二人で過ごす月曜と金曜の放課後を心待ちにするようになる…
という、秋★枝先生の新作の青春ラブコメ。お久しぶりです。
Twitterのbioを見る限り、ご出産・育児で休業からの復帰っぽい。
著作はこのブログを始める前に読んでいて、
かろうじて前作がこのブログの開始後にカブりました。
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あ、2巻出てる。読もう。
陰キャ少年と陽キャギャル、という、ラブコメ漫画としては今どき珍しくもないというか、令和の世においてはもはや定番・スタンダードと言っていい初期設定。
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もともと初期設定のユニークさより、ネームで読ませる作家さんですしね。
よく
「カースト上位の美少女が、長所のない陰キャ少年に惚れるのはリアリティがない」
「イッチは山田に惚れられるだけの美点があるので納得感がある」
とか目にしますけど、いろんな魅力的な異性を見比べてきた経験をしたからこそ言えることのような気が、自分はするんですよね。
雑なようですけど、若い男女なんて狭い空間に閉じ込めとけば長所や美点がたいしたことなかろうが、恋に落ちるもじゃねえかなって。
経験の浅さと教室の狭さ(と思春期特有の性欲や好奇心や焦り)が、彼女ら彼らの視野を狭くしているものですし。
『僕ヤバ』のイッチを超える速度と量で、自分を脳内で分析し卑下し自省する主人公。
昨今の「陰キャ少年と陽キャギャルのラブコメ」ブームを超えて、80年代に口下手な陰キャ少年の恋と妄想を好んで描いていた、
安達哲まで先祖返りしたような印象。
タイトルに含まれる「メタバース」がバズワードとして目を惹きます。
込められた意味の一つは今のところは「教室とは別の世界」ぐらいの意味に見えますが、今巻最後のエピソードを見ると今後更に拡張するかもしれません。
もう一つの意味として、常々自分は「ギャルヒロインのラブコメ漫画」ブームについて、常々こんなことを思っている(いい大人なのに…)んですが、
b.hatena.ne.jp
本作は「違う自分になれる世界」に連れて行ってくれる存在というよりは、「自分が肯定される世界」を創生してくれる存在としてのギャル、という印象が強い1巻。
主人公の少年の、
「恋をして変わってしまうこと」
がまだ怖くて一歩を踏み出せない様子と、ヒロインが創る世界で小さな一歩を積み重ねる様子を、図書室を舞台にした二人芝居で丁寧に。
主人公の少年の自己分析は内省的で自虐的ながらも、かなり客観的かつ正確なようにも見えます。
一見、それだけ理解ができていれば、あと足りないものは慣れによる自信と度胸だけにも見えますけど、「だけ」と言えたら苦労しねえんだよ、というのと、どうも自分が荻野目さんに傷つけられることよりも、自分が荻野目さんを傷つけることを、恐れているように見えるんですけどね。
という漫画です。
主人公の少年の内心が執拗にモノローグで擦られるのと対照的に、思ったことをなんでも喋っているように見える分、荻野目さんの内心がモノローグで描かれることはほとんどありません。
むかし見たヒロインの誰かの描かれ方に似ているような気もしますが、さて?
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