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#海が走るエンドロール 4巻 評論(ネタバレ注意)

65歳にして連れ添った夫を亡くした、うみ子。

夫とデートで行った映画館の記憶に触発されて20年ぐらいぶりに映画館を訪れる。上映中に昔からの癖で客席を振り返って見回すと、先ほどロビーで肩が当たって挨拶した美しい若者と目が合ってしまう。その若者は名を「海(かい)」という実は男性で、話すうちにうみ子に「あなたは映画を作る側では?」と指摘する。

『海が走るエンドロール』4巻より(たらちねジョン/秋田書店)

海の言葉で「映画を撮りたい」気持ちに火がついたうみ子は、海が学ぶ美大の映像科を受験して入学。かくして齢65のうみ子の、映画人生が始まった…

という、老境のご婦人を主人公に置いた青春もの。

主人公に老境のご婦人を置いていて必ずしも読者層ターゲットが少女なのかどうかはわからないものの、ヒロインが「王子」と「自分の運命」とに同時に運命的・衝動的に出会う導入、多用されるヒロインのモノローグ、ガワは違っても骨格自体は純然たる少女漫画であるように、自分には見えます。

『海が走るエンドロール』4巻より(たらちねジョン/秋田書店)

「『65歳で映画監督を志して美大入学』で起こりそうなこと」を奇を衒わずに丁寧に描写。

高尚そうなテーマ、俗っぽいキャラ萌え、擬似恋愛的にも見える人間関係を織り交ぜつつ、地に足のついた丁寧な展開と描写で、いろんな切り口で楽しめそうな作品。

今巻はうみ子の夫の一周忌、海くんの毒親との対峙などを挟みつつも、二人それぞれがコンテストに出展する作品作りを進める巻。

映画制作にかける情熱と、創作論、そして監督論の話。

『海が走るエンドロール』4巻より(たらちねジョン/秋田書店)

近年は『ポンポさん』、『映像研』、『さよなら絵梨』と映画制作にかける青春の漫画作品が激戦区でレベルが上がってますけど、少女漫画誌を代表してそれらの作品群と堂々と渡り合ってる印象があります。

個人的にはアニメ監督・富野由悠季の映画制作に関わるインタビュー集を最近読んだこともあって、今巻中でも頷かされる部分が多々あったりしました。別に自分は映画創らないですけどw

映画監督は、作家であると同時にマネージャーであり、モチベーターでもある、という。

海くんが今読んでる漫画作品の中で一番美人で、登場するとちょっと嬉しく思うのは、

『海が走るエンドロール』4巻より(たらちねジョン/秋田書店)

「これキャラ萌えだよなあ」と思ったり。ちょいちょい可愛かったりするのもズルいよなあw

『ポンポさん』にこういうセリフがありますが、

『映画大好きポンポさん』より(杉谷 庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA)

海くんを魅力的に描けてる時点で、既にこの漫画成功してるよな、と思います。

でもうみ子が今撮りたいのは海くんじゃなかった、ってのがまた良いですよね。

「新しいことを始める老人の話」「老人が活躍する話」というのは、殺しても死なないようなタフで鉄血な健康体で描かれることが多い印象があるんですが、この作品はそうはしないようです。

65歳って年齢は自分は未経験ですけど「すわ病気」「すわ寿命」ってイメージがなくて全然元気な印象(庵野秀明が62歳)ですけど、当たり前ですけど、人によりますよね、っていう。

「65歳から映画監督を志したって、作品が完成する前に病気になって引退、もしくは死ぬんだ」って漫画を描きたいわけでは決して無いはずだと、勝手に思ってはいるんですが。

『海が走るエンドロール』4巻より(たらちねジョン/秋田書店)

同時に、まだちゃんとした作品を完成させたわけでもないにも関わらず、ヒロインのうみ子の映画にかける狂気や、自分の属性が持つ物語を消費して利用する執念の描写が頭抜けてきて、海くんと肩を並べて、下手をしたら上回りさえしつつあります。

さて。

 

 

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