#AQM

あ、今日読んだ漫画

#ウィッチウォッチ 17巻 評論(ネタバレ注意)

『SKET DANCE』『彼方のアストラ』の作者の現作。

『ウィッチウォッチ』17巻より(篠原健太/集英社)

カラちゃん、かわよ。

乙木守仁は、超人的な身体能力を持つ鬼の末裔であることを隠して普通に暮らしていた。

守仁の高校入学を控えた春休み、長期出張で海外へ出発する父と入れ替わりに、魔女の聖地に修行に出ていた幼馴染のニコが帰還。

両家の同意のもと二人は一緒に暮らし、守仁はニコの使い魔として彼女を予言された災いから護衛することに。

6年ぶりに再会したニコは可愛らしく、しかし強力ながらどこかポンコツな魔女に成長していた…

『ウィッチウォッチ』17巻より(篠原健太/集英社)

という、幼馴染の鬼ボーイ・ミーツ・魔女ガール・アゲインに、ニコの使い魔となる同居仲間が守仁以外にも天狗、狼男、吸血鬼と増えて、同居日常ギャグ学園ラブコメたまにシリアスバトルな漫画に。

シリアスなバトルもので人気を博したカッコよ可愛いキャラたちの、ギャグだったり緩かったりする日常や恋愛・ラブコメをもっとじっくり見てみたい、というのは人気作であれば多かれ少なかれ発生して、多くの場合その役割は公式スピンオフや二次創作に託されることになるんですが、

『ウィッチウォッチ』17巻より(篠原健太/集英社)

「一次創作内で自分で全部やっちゃおう!」

「バトル・ギャグ・コメディ・ラブコメ・日常・ホラー・ファンタジー、少年漫画のジャンルを全部一作品内でやっちゃおう!」

という作品。

ギャグコメディな日常をやりつつ、シリアスに悪役と対峙するバトル要素と、ニコと守仁のラブコメ要素が大きな縦軸。

でしたが、「友情・努力・勝利」なジャンプ王道のシリアス・バトル展開、「災いの日」編の決着を経て、守仁を救うためにニコが幼児化。

そのまま第二部「小さな魔女の冒険」編に。

『ウィッチウォッチ』17巻より(篠原健太/集英社)

ねむちゃん久々のメインエピソード、日常ギャグコメディの中で一人だけシリアスに秘めた恋をしていて、一人だけちょっと浮いているというか沈んでいるというか、その煽りで出番がやや少なめかな?という。

この三角関係未満、どうなるんでしょうね。

予言によると、「ニコが幼児の間は敵もやってこない」とのことでバトル要素は一旦休止、ラブコメ要素はニコの幼児化により、『よつばと!』のよつばや『SPY×FAMILY』のアーニャに代表される鉄板ジャンル「幼児ヒロインの父娘育児もの」に味変。

一見力づくなように見えて、シリアス要素、能力やニコの献身・自己犠牲と絡めたスムーズな味変展開。すげえなー。

幼児化したニコの世話役使い魔として新キャラ・ドラゴンのバンも登場。

『ウィッチウォッチ』17巻より(篠原健太/集英社)

森ひとみだけフルネームなの毎回笑うw

ついこないだまで生きるか死ぬかのシリアス・バトルとしてたとは思えない、平和で可愛い日常ギャグコメディに。

魔法のおかげで日常ギャグコメディに無茶なネタを許容できる幅があって良いですね。

魔法・超常・同居・学生と本当に便利な設定だなw

シリアスバトル路線の後始末の人情噺もさることながら、ほっこり系の

『ウィッチウォッチ』17巻より(篠原健太/集英社)

こういう短いエピソード・短いシーンで泣かせにくるの、ズルいよなあ。

こんなんもらい泣きするわ。

 

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#2.5次元の誘惑 20巻 評論(ネタバレ注意)

先輩たちが卒業し、高校の一人漫画研究部として日々部室で二次オタ活動に勤しむ奥村(高2♂)。

学校が新入生を迎えたある日、漫画研究部のドアを叩く一人の新入生がいた。

『2.5次元の誘惑』20巻より(橋本悠/集英社)

奥村と同じく古の名作「アシュフォード戦記」「リリエル外伝」とそのヒロイン「リリエル」をこよなく愛する彼女・天乃リリサは、キャラ愛が高じて高校生になったらコスプレイヤーになることを夢見ていた。

というボーイミーツガールから始まるコスプレ青春もの。それぞれの葛藤を乗り越え界隈を騒がすコスプレチームとなり、四天王と呼ばれる頂点のコスプレイヤーたちにも認知されるように。

『2.5次元の誘惑』20巻より(橋本悠/集英社)

コスプレデビュー、夏コミ、冬コミ、文化祭、と怒涛の一年が過ぎ年度が改まりまして、各自進級、まり姉は卒業して常駐OBに。

新一年生の新キャラ、ハイスペお嬢様・華 翼貴(はな つばき)も早々にコスプレ部に馴染み、近刊の「最後の四天王」編を通じて、リリサと奥村のコンビにとっての夢、「究極のROM」が完成。

まゆら様の恋人・エリからコスプレ衣装制作の依頼。

『2.5次元の誘惑』20巻より(橋本悠/集英社)

まゆら様は高校教師として就職して以来、「四天王」と呼ばれるまでに上り詰めたコスプレイヤーを半引退状態だった。

エリの願いはまゆら様のコスプレイヤー復活だったが、コスプレと並んで教師も夢だったまゆら様本人には複雑な想いがあった…

ということで、今巻は「夏コミ編」、「まゆら様復活編」、「四天王復活編」。

この作品のコミケ巻で毎回泣いてるので、毎回「今回こそは泣かないぞェ」と思って読むんですけどね。

『2.5次元の誘惑』20巻より(橋本悠/集英社)

ダメでしたわ。こういうさぁ、モブキャラのさぁ…

要はコスプレしてるだけの漫画で、今巻も教職についてコスプレやめた人がやっぱ復帰してコスプレした、ってだけの話なんですけど、コスプレにキャラの体重というか、人生・生き様の全体重が乗っかっちゃってんですよね。

あと絵力(えぢから)、ポエム力(ぽえむぢから)、シーン力(ぢから)、ぜんぶひっくるめた演出力(えんしゅつぢから)が強強(つよつよ)のキメキメで、

『2.5次元の誘惑』20巻より(橋本悠/集英社)

「このパターン、前もあったじゃん」

「一キャラの禅問答に決着ついただけじゃん」

とも思うものの、この作者が持つ得意な「型」、「溜めて溜めて見せ場ドーン!」の強力さ、「コスプレを通じて生き様を描く」作品の背骨と言っていいテーマの力強さに涙腺が抗えません。

ブログなんで野暮を承知で文章で書いたらこんなもんですけど、読んで泣いちゃってもう理屈じゃねんですよね。

『2.5次元の誘惑』20巻より(橋本悠/集英社)

だっておっさんが漫画読んで号泣してる姿を動画配信するわけにもいかないじゃない。

 

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#ELDEN RING 黄金樹への道 6巻 評論(ネタバレ注意)

ギャグコメ漫画の表紙に描くような絵じゃねえだろ…

「死にゲー」で有名なフロム・ソフトウェアのオープンワールド「ライク」な大ヒットアクションRPG『エルデンリング』の公式コミカライズ。

退廃的で陰鬱で重厚な雰囲気の世界観、かつて美しくも陰鬱な「狭間の地」から追われそして帰還した「褪せ人」を主人公に、王を目指して戦う血生臭くダークでシリアスな冒険を描く。

という原作ゲーム。

『ELDEN RING』より(フロム・ソフトウェア)

公式コミカライズはなぜかバカ系ギャグ漫画だった…

『ELDEN RING 黄金樹への道』6巻より(飛田ニキイチ/KADOKAWA)

なんでだよwww

と思わなくもないですが、原作を「真面目に」コミカライズしようと思ったら、重厚な超本格派のファンタジー戦記としての展開・描写が必要で、なかなか大変だったろうなと思います。暗いシーンが長大に続いてエンタメ性も低くなりそう。

奇策の変化球のようでいて、コミカライズするにあたっては唯一の解のような気もします。

自分は存じ上げなかったんですが、WEB連載開始時のネットの反応を見るにギャグ畑で有名な作家さんらしく、冒頭のシリアスなカラーページを見ても画力もなかなか尋常じゃないですが、描いてる内容は完全にギャグ漫画、ノリとしては『ピューと吹く!シャガー』を彷彿とさせます。

『ELDEN RING 黄金樹への道』6巻より(飛田ニキイチ/KADOKAWA)

そもそも今更『エルデンリング』の販促にはならないわ、『エルデンリング』プレイヤーしか楽しめないわ、「そもそも誰得のコミカライズだよ」ってのは置いといてw

自分は『エルデンリング』既クリアなので楽しく読めてます。

今巻は中盤のヤマ場、ゲームの最初のアップデート前までは超絶難易度で名を馳せた

gametokka.com

「ラダーン祭り」をまるっと。

『ELDEN RING 黄金樹への道』6巻より(飛田ニキイチ/KADOKAWA)

かつて「星砕き」と称され最強最大の武人として尊敬を集めながら、破砕戦争・エオニアの戦いでのマレニアとの勝者なき相討ちで、その腐敗の毒が回り自我を失って妄鬼と化して慟哭砂丘を彷徨う、大将軍ラダーン。

ラダーンと旧知の古戦士ジェーレンは、そんなラダーンの尊厳を守るべく、英雄たちを集めて彼を倒し武人としての最期を遂げさせるための、「ラダーン祭り」を開催する…

という、大将軍「星砕き」ラダーンへのリスペクトに満ちたイベント。

『ELDEN RING 黄金樹への道』6巻より(飛田ニキイチ/KADOKAWA)

メリメリやラニラニをアレだけイジる、どたばたギャグコメ漫画である本作でも、ラダーンに挑む褪夫を含む英雄たちがドタバタギャグコメを繰り広げても、物言わぬラダーン自身は決してイジらないリスペクトぶり。

馬の件、イジってますけど、ラダーンの優しさを示す美談ですよねアレw

ギャグコメ挟みつつも、エルデン世界の名うての武人たちがラダーンの尊厳のために力を合わせてラダーンに挑む、武骨に武張った侠気溢れるエピソード。

『ELDEN RING 黄金樹への道』6巻より(飛田ニキイチ/KADOKAWA)

自分も物言わぬ悲劇の英雄・ラダーンも「ラダーン祭り」も大好きなんですけど、作者のラダーン好きが伝わってくる、リスペクト溢れるコミカライズ。

「ラオウ的」というのか、男のロマンの一つですよね。

ケイリッド編も終わり、作品的には次は王都を目指すことになるのかな。

作画が大変そうだなあ…と思いますけど、作者の手によるものかアシスタントが優秀なのかツールによるものなのか自分は知りませんが、今巻のケイリッドやラダーンの描き込み密度を考えると、杞憂ですかね。

『ELDEN RING 黄金樹への道』6巻より(飛田ニキイチ/KADOKAWA)

すごいね、どうなることかと思ったコミカライズ、最後まで描き切りそうだ。

 

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#ダンダダン 15巻 評論(ネタバレ注意)

霊媒師の家系(かけい)のギャルと、いじめられっ子気味で孤独なオカルトオタクの少年の同級生ガールミーツボーイから始まる、オカルトバトルなバディもの。

『ダンダダン』15巻より(龍幸伸/集英社)

「ボーイ・ミーツ・ガール」、「オタクに優しいギャル」、「ラブコメ群」、「ちょいエロ」、「呪術廻戦、チェンソーマンなどの最近のジャンプのオカルトバトル漫画群」、「うしおととら」、「東京入星管理局」、「GANTZ」、「メン・イン・ブラック」、「漫☆画太郎」、

あたりを足して適当に割ったような感じ。

いろんなジャンルのごった煮、カオスな闇鍋みたいな漫画。クリーチャーも宇宙人から妖怪から幽霊から割りとなんでもあり。

『ダンダダン』15巻より(龍幸伸/集英社)

ちょっと奥浩哉的とでもいうか、「描きたい画」が先に在って、そこから逆算してエピソードを繋げていってる作り方?と思わなくもないですが、よくわからんねw

倒すべきラスボスも、辿り着くべき約束の地も、提示されないまま、ただただ降りかかり続ける火の粉を払い続け仲間が増え続け経験を重ね続けてより強く成長していき続ける、ステージ制のタワーディフェンス・ゲームのようにエピソードが重ねられます。キンタマ以外。

『ダンダダン』15巻より(龍幸伸/集英社)

「海賊王を目指す」でもなく「ひとつなぎの大秘宝」を求めるでもなく。

作品を貫く縦軸、キンタマしかない。あとラブコメ。

躍動感あふれる見応えのあるアクション描写、奇想天外な風景を緻密に描画する画力。

に対して、ストーリーテラーとしてはおそらく短中編に特化した作家さんなのかな、と思うようになってきました。

『ダンダダン』15巻より(龍幸伸/集英社)

金玉を一つ取り戻した「バモラ&カシマレイコ編」の完結を受けて、しばらく幕間回が続くのかな、と思ってたら息もつかせず新章突入、&完結かなw

幼い頃に残した後悔と、それによる霊障持ちのメガネ委員長。

彼女が語る「もう一つの金玉の行方」と、霊障解決。

『ダンダダン』15巻より(龍幸伸/集英社)

サイズ的には「軽め」なエピソードながら、相変わらずの奇想天外な構図の見せ場に向けてエピソード展開が瞬間沸騰。

一体なにを読まされているのかよくわからない、どういう状況か他人に上手く説明できる気がしない展開だけど、見たことのないなんかすげえ状態を見せられてる、というw

ハマる人にはどハマりする作風、自分は正直、そんなにハマってるとは思わないんですけど、それでもすげえもんはすげえなあw

『ダンダダン』15巻より(龍幸伸/集英社)

もう一つの金玉の行方と、敵か味方かサンジェルマン伯爵が潜入中が気になったまま、次巻に続く。

 

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#魔都精兵のスレイブ 16巻 評論(ネタバレ注意)

各地に突如出現した門の先に広がる魔都。人を襲う鬼が巣食い脅威となっていた。政府は能力者の女性で構成される「魔防隊」を組織し鬼に対抗。

『魔都精兵のスレイブ』16巻より(タカヒロ/竹村洋平/集英社)

褒美のやり過ぎだったらしょうがないな。

男子高校生・優希は帰宅中に魔都に迷い込んだところを魔防隊七番組組長・京香に救われる。

彼女の能力は生命体の潜在願望を叶える義務と引き換えに奴隷として使役・強化し戦わせる能力だった。

平たく言うとバトルでこき使われる代わりに勝ったらエッチなご褒美な感じだった。

和月のバトル絵、GS美神の設定とキャラ、ハーレムギャルゲー要素、ジャンプのバトル漫画の定番展開、という感じ。あと乳首!

『魔都精兵のスレイブ』16巻より(タカヒロ/竹村洋平/集英社)

美少女ばかりの魔防隊に10人ぐらい美少女な組長たちがいまして、使役主によって戦闘フォームを変える便利下僕ファイターな主人公が、順々に彼女たちに貸し出されて共闘しエッチなご褒美をしてもらう、というギャルゲーともエロゲーともつかぬ建て付けで、一巡したらラストバトルになるんかな。

『魔都精兵のスレイブ』16巻より(タカヒロ/竹村洋平/集英社)

超合金ロボやん。

バディを組む組長ごとに使役の際のバリエーションがあってブンドド心をくすぐりますが、優希の身体が一人分しかないのが悩みの種ですねw

「桃源郷」と呼ばれる時間の流れが遅い空間、『ドラゴンボール』でいうところの「精神と時の部屋」での合同訓練合宿ということで、合宿、新キャラたち八番隊の面々やピリペンコ組長も加わり美女だらけ、男は主人公だけ、作者はどすけべの変態、何も起きないはずもなく…

というハーレム修行編。

のはずが、敵の幹部「八雷神」中2人が桃源郷に潜入して襲ってくる一大バトルに発展。

『魔都精兵のスレイブ』16巻より(タカヒロ/竹村洋平/集英社)

ピリペンコ様、よかったね。

前巻でその「桃源郷バトル」編が集結して、今巻はその後始末&幕間巻。

「桃源郷バトル」編で初登場・大活躍し赤マル急上昇のピリペンコ様ですが、主人公を使役し共闘する展開なかったんで、ご褒美はお預けか…

と思わせてからの、ピリペンコ様ご褒美巻に。

バトルでシリアスだった前巻から一転して、ピリペンコ様のきゃわわでエロロなシーン満載のエロコメ読者サービス巻。

『魔都精兵のスレイブ』16巻より(タカヒロ/竹村洋平/集英社)

「らしい」んですけど、なんかちょっと…思ってたご褒美と違う…

※この後ちゃんとしたご褒美もあります。「ちゃんとした」とは一体…

書き下ろしも「ベルとピリペンコ様のご褒美の続き」と、眼福仕様。

ベルが無事でよかった。

ストーリー的には、桃源郷を舞台にした「総組長選挙」編に入るっぽいですが、

『魔都精兵のスレイブ』16巻より(タカヒロ/竹村洋平/集英社)

その前に気になるヒキも入りつつ、という。

「京香が総組長を目指す」という目標はあるものの、山城恋が選挙で負けるシーンもちょっと想像がつかなく、だったら…と考えると不穏といえば不穏な。

 

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#ウマ娘 プリティーダービー #うまむすめし 4巻 評論(ネタバレ注意)

やったー!ネイチャが表紙だー!

ネイチャが表紙なので★5つです!

『ウマ娘 プリティーダービー うまむすめし』4巻より(浅草九十九/Cygames/小学館)

お前はなんなん。野菜食ったら死ぬのかw

実在の競走馬を美少女擬人化した育成ソシャゲ『ウマ娘』の派生コミカライズ。

タイトルのとおり「ウマ娘×ごはん(グルメ)」の日常もの。単話ごとにエピソード主人公が替わっていくオムニバス形式。

愛すべきキャラたちのほのぼの可愛らしい日常が垣間見える、まあ公式(商業)二次創作。

「グルメもの」と「学園もの」は人気作品の公式スピンオフの定番です。

『ウマ娘 プリティーダービー うまむすめし』4巻より(浅草九十九/Cygames/小学館)

「サクラ」一族の瞳が「桜の花びら型」なのって全作共通ですっけ?

美味しそうな食事と、それを美味しそうに食べる人、というのはなにかこう、心が癒されるものがありますね。

『ウマ娘』ファン以外から見たら毒にも薬にもならないような他愛のない漫画なんですけど、毒にも薬にもならないような他愛のない『ウマ娘』の漫画をお金を払って読んで癒されたい読者というのは居て、例えば私です。

大事に預かったウマ娘たちを丁寧に、とてもキュートに活き活きと描かれる漫画家さん。

『ウマ娘 プリティーダービー うまむすめし』4巻より(浅草九十九/Cygames/小学館)

「一読者としてウマ娘のファンアイテムの公式グルメスピンオフに求めること」

は、ぶっちゃけ

・ウマ娘たちを可愛く描くこと

・(世界観やキャラ属性を壊すような)余計なことをしないこと

で、そういう意味でこのコミカライズは、深いキャラ理解が支えるクオリティの高い画面、超当たり作画。ハイレベルでプロフェッショナルな「普通」。

『ウマ娘 プリティーダービー うまむすめし』4巻より(浅草九十九/Cygames/小学館)

わーい、ミークと桐生院だ。ミークと桐生院大好き!

引き続き、強いて作家の新解釈や新カップリングなどの「爪痕」を残そうとすることなく、「流れに逆らわないコミカライズ」というのか、定番ネタ・定番カップリングを織り込みつつ、ウマ娘は可愛らしくあるいはかっこよく、ご飯は美味しそうに、食べる姿も美味しそうに、関係性は仲睦まじくほのぼのと、「素材の味」を活かしたとてもクオリティの高い「普通」。

ウマ娘世界観のキャラが多いので全ウマ娘の登場を目指すだけでネタは尽きませんが、難を言えば、その分ネイチャの出番が減ります。悲しい。

『ウマ娘 プリティーダービー うまむすめし』4巻より(浅草九十九/Cygames/小学館)

でも今巻はネイチャメインのエピソードがありました。嬉しい。★5つです!

あと自分はだいぶ前にソシャゲの『ウマ娘』はやらなくなって以来、コミカライズをメインで楽しんでるので、

知らないウマ娘がだいぶ増えたなー、と思います。

無課金で対人戦もなしで、シナリオをライブだけ目当てにまたソシャゲの『ウマ娘』やろかなー。

『ウマ娘 プリティーダービー うまむすめし』4巻より(浅草九十九/Cygames/小学館)

こう、「前世?の記憶の残滓」演出、ロマンというか、エモいよね…

あー、ネイチャがメインのコミカライズかアニメ化やってくんねーかなー。

 

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#ウマ娘 シンデレラグレイ 15巻 評論(ネタバレ注意)

実在の競走馬を美少女擬人化した育成ソシャゲ『ウマ娘』の派生コミカライズ。

日本の競馬史に残る名馬・オグリキャップの現役時代をモチーフにしたスピンオフ。

1〜2巻で地方レース(カサマツ)編が終わり、3巻から中央に移籍。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』15巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

ウマ娘世界観でいう「中央トレセン学園」に編入し、並み居る名バ達と本格的にシノギを削る展開に。

モチーフとなった史実が日本競馬史上最大級のシンデレラストーリーにして、トウカイテイオーと並ぶ日本競馬史上最大級の復活劇というドラマで、かつ現役時代を通じて魅力的なライバルにも恵まれていた馬のお話なので、更にifを加えた作話の骨組みの時点で優勝です。ありがとうございました。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』15巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

タマモクロスが去ったターフで新たなライバルたちとの激闘が開幕、題して「第三章 永世三強」編。

ja.wikipedia.org

dic.pixiv.net

オグリキャップの古バ1年目、永世三強を筆頭に多士済々のGⅠ戦国時代、伝説の秋シーズン。

天皇賞・秋はスーパークリークの2着に敗れ、現実の日本競馬のオグリキャップ古馬1年目でも物議を醸した、「マイルチャンピオンシップ(1,600m)→ジャパンカップ(2,400m)」の、わずか中1週間の連闘。

今巻は伝説のジャパンカップの「祭りのあと」。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』15巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

オグリキャップは2着に敗れはするものの、1着のフォークイン(ホーリックス)と同タイム、しかも2,400mの世界レコード。

「永世三強」の中からオグリは不動の「国内最強」の称号を手にし、「オグリキャップとトゥインクルシリーズ」は社会現象に。

オグリとの差に焦るイナリワン、虎視眈々と雪辱を期するスーパークリーク。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』15巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

アニメ化したらクリーク役の声優さん、「おっとり狂気」な演技が求められて大変だなコレw

「幕間巻」ですが、本作では脇を固める立場の「主役級」たち、シンボリルドルフ、マルゼンスキー、ミスターシービー、そしてトウカイテイオーなど豪華な顔ぶれに次々とスポットが当たる眼福な巻。

「プリティダービー」の冠が外れていることが示すとおり、勝負にかける執念と狂気、『ウマ娘』作品群の中でも異彩を放つ漫画。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』15巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

ウマ娘の衰えと短い競技生活、世代交代が、四苦八苦しつつも語られる稀有な作品でもあります。

「プリティダービー」シリーズは基本的にファンタジー、「終わらない楽園」ですしね。

モデルとなった競走馬になぞらえれば残りは1年、残り6戦。

「伝説のラストラン」の復活劇は、その前の「オグリキャップは終わった」という空気の裏返しでもあります。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』15巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

しばらくは読むのも描くのもしんどい展開が続きそうですが、さて…

 

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#チェルノブイリの祈り 2巻 評論(ネタバレ注意)

チェルノブイリ原子力発電所事故は、1986年4月26日午前1時23分(モスクワ標準時)に、ソビエト連邦の構成国であるウクライナ・ソビエト社会主義共和国のチェルノブイリ原子力発電所4号炉で起きた原子力事故である。のちに決められた国際原子力事象評価尺度 (INES) では深刻な事故を示すレベル7に分類された。

ja.wikipedia.org

『チェルノブイリの祈り』2巻より(熊谷雄太/スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/今中哲二/後藤一信/白泉社)

『チェルノブイリの祈り』は、1997年にベラルーシの作家、ジャーナリストであるスベトラーナ・アレクシエービッチによって発表された著作である。1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故を経験した人々に3年にわたってインタビューをしてまとめられた。岩波現代文庫版は2015年12月で7刷5万部を刊行。朝日新聞が2019年3月に発表した「平成の30冊」の20位に選ばれた。
2023年、『ヤングアニマル』にて漫画化。同年No.14から連載。作画は熊谷雄太。

ja.wikipedia.org

『チェルノブイリの祈り』2巻より(熊谷雄太/スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/今中哲二/後藤一信/白泉社)

チェルノブイリ原発事故の被害を、『戦争は女の顔をしていない』でも知られるアレクシエービッチによる被災者・遺族へのインタビューをもとに、火の玉ストレートで描写した(ように見える)ノンフィクション、ドキュメンタリーのコミカライズ。

イワン・ニコラエヴィチ・ジュムィホフは企業勤めの化学技師だったが、軍の招集を受けチェルノブイリへ。そこで待っていた仕事は、イワンの化学の知識など全く必要とされない、「穴掘り」の日々だった。

『チェルノブイリの祈り』2巻より(熊谷雄太/スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/今中哲二/後藤一信/白泉社)

猟師のリーダーを務めるヴィクトルは、原発事故で被爆し住民が避難した街で、残された人懐こいペットの犬や猫たちを、疫病防止のために射殺して回る仕事に従事した。せめてできることは、犬や猫と目が合わない遠くから、一発で仕留めることぐらいだった。

氏名不詳の当時8歳だった男の子は、「死の大地になった」と称される郷里の自然がそれでも逞しく回復し季節が巡り春がやってくる様を確かめる。自らの身体の変化には気づくことなく。

『チェルノブイリの祈り』2巻より(熊谷雄太/スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/今中哲二/後藤一信/白泉社)

農村の准医師、アルカジイ・パヴロヴィチ・ボグダンケヴィチは、子どもたちが死んでいくのを看取り続けた。

幼少期にチェルノブイリで被曝し疎開した少女・カーチャは、長じて成人となったが、その人生は、ある時は疎まれ、ある時は恐れられ、ある時は好奇に目に晒されるものだった。

『チェルノブイリの祈り』2巻より(熊谷雄太/スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/今中哲二/後藤一信/白泉社)

前の巻の感想でこんなことを書きました。

まずは、あらためて知って、祈るところから。

私に神はいませんが、それでも祈ることはできます。

カーチャの目が、作者と、読者である私を責めます。

『チェルノブイリの祈り』2巻より(熊谷雄太/スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/今中哲二/後藤一信/白泉社)

「あなたが知って、どうするんですか?」

「元カレだった画家の好奇心剥き出しの野次馬根性と、何が違うんですか?」

と。

 

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#1日2回 5巻 評論(ネタバレ注意)

園田れみ(39♀)は夫と死別して、実家の一軒家で母と中学生の娘と3人暮らし。

仲の良いお隣の、同い年の幼馴染・松宮季(とき)(39♂)が離婚で婿養子先から出戻ってくる。

不本意な離婚で傷心の季。そんな彼を、再開したご近所づきあいと昔からの腐れ縁で見守るれみ。回想される幼少期から青春期の思い出。

『1日2回』5巻より(いくえみ綾/集英社)

表紙のルックスはマーガレットコミックスですが、連載は「ココハナ」とのことで、アラフォーな主人公二人の少女漫画とも恋愛漫画ともつかぬ作品。

最近になるまで近作をあんまり読んでいなかったんですが、別マに連載していた頃に愛読していた経験から言うと、ほとんどの作品で思春期の恋愛を描き、ほとんどの作品で猫を描き、ほとんどの作品で思春期の主人公の家庭を描き、ほとんどの作品で思春期の主人公の家庭は片親だったような印象が強いです。

恋と家族と猫を執拗に描く少女漫画家、というイメージ。

『1日2回』5巻より(いくえみ綾/集英社)

数年ぶりに著作を読んだら、思春期に代わって中年の、思春期の子を持つ親を主人公に描くようになっていました。

今巻はー。

幼い頃からのお隣さんの、りら(れみ母)・れみ(幼馴染み)・るり(れみ娘)の居心地の良さに危機感?を抱いた季が、突然の無言の「れみ断ち」。

季が実家を出てマンションで一人暮らししていることもあり、LINEも未読無視されると音信不通に。

『1日2回』5巻より(いくえみ綾/集英社)

季から無視される心当たりのないれみは、「私、なにかした?」と結構なストレスに…

おっさんなのにというか、おっさんだからというか、自分は季の気持ちがわかる気がします。

「気持ちがわかる」も何も、作中でだいたい語られてはいるんですけど。

幼い頃からのお隣さんで、れみ母ともれみ娘とももう馴染みで、懐き懐かれているので、

「ずっとここに居たい」

と思ってしまうぐらい居心地が良くて、季が本気でそう願えば何の障害もなく叶ってしまいそうな立場なんですけど、その椅子には本当は亡くなった親友・チューやんが座っていたはずで、ネコババ・簒奪するようで気が引けますよね。

『1日2回』5巻より(いくえみ綾/集英社)

そもそも亡くなった親友が遺した家族を愛して支えつつ気兼ねする、って季にとってこの作品って最初からそうだったんですけど。

んで黙って「れみ断ち」って極端な方に走っちゃうんだけど、内心を全部語るのって

「れみたちと家族になりたい」≒「れみと結婚したい」

ってなっちゃうので、語れない、っていう。

男って煮詰まると無言で極端に走りがちよね、とスナックのママのようなことを。

『1日2回』5巻より(いくえみ綾/集英社)

なんか、性愛・恋愛として「れみと結婚したい」より、「家族みたいにずっと一緒に居たい」がメインですよね、この人。

れみも察して、でもね、っていう。

れみと季が結婚するのが、チューやんへの気兼ねさえ除けば一番丸くおさまるんですけど、簡単に「気兼ねさえ除けば」ができればこの漫画、1巻で終わってるし、恋愛面のキック力がないとなかなか結婚に踏ん切りつかないし。

「季がれみ母の養子に」なれば、それはそれで丸くおさまるんですけどw

もどかしく焦ったいような気もしつつ、この愛おしい人間関係をずっと眺めていたいような気もします。

『1日2回』5巻より(いくえみ綾/集英社)

まあ、漫画なんで、いつかは終わるんですけど。

 

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#女子高生除霊師アカネ! 2巻 評論(ネタバレ注意)

『ヒナまつり』の大武政夫の新作。

角川で10年描いて、ヤンジャン系に移籍とかあるんですね。

とか思ってたら、半年後ぐらいには角川系でも新連載開始で、2作同時連載の二毛作。

『女子高生除霊師アカネ!』2巻より(大武政夫/集英社)

女子高生のアカネは、インチキ除霊師の父親と二人暮らしだったが、その父親が貯金をほぼ全額握りしめてポエミーな書き置きを残してキャバ嬢と駆け落ち、蒸発。

独り残された事務所兼自宅に、それでもかかってくる除霊依頼の電話をとってしまったアカネは、父と同じく霊なんか見えなかったが(生活のための)金目当てに依頼を引き受けてしまい、かくしてアカネは2代目として父のインチキ除霊師稼業を継いでしまったのだった。

霊能力こそなかったが、アカネには稀代の詐欺師としての才能があった…

『女子高生除霊師アカネ!』2巻より(大武政夫/集英社)

という、インチキ除霊師JKコメディ。なんじゃそのジャンル。

掲載誌や出版社は移りましたが、読み味は『ヒナまつり』の大武ワールドのテイストそのまま。

シュールな成り行きと「どうしてこうなった」の絵ヅラとツッコミのキレで勝負!という。

笑いの種類が「失笑」なんですよね、この人のギャグw

『女子高生除霊師アカネ!』2巻より(大武政夫/集英社)

アカネが詐欺まがいのあの手この手の口八丁手八丁で「除霊できてるフリ」で事件を解決(?)していくお仕事(?)コメディ。

1巻のあとがきに作者自ら書いてますが、「生き汚い瞳ちゃん」という感じ。

最近、『ヒナまつり』を全巻再読してみたんですけど、瞳ちゃんとアカネって性格はだいぶ違うんですけど、アカネの詐欺師の才能に限っては「瞳ちゃんが引き受けさせられた仕事の中にインチキ霊媒師があったら」ぐらい有能。

『女子高生除霊師アカネ!』2巻より(大武政夫/集英社)

ヒロイン含めて作風が人間のクズというか、基本的に反社ばっかだなこの人の漫画のキャラw

今巻は、「霊が見える」との虚言のリカバリーで除霊(のふり)を依頼してくるクラスメイト、幼児期の父親(除霊詐欺師)との思い出、詐欺くさい占い師にハマってるクラスメイトの目を覚まさせる、アカネの親友で私立探偵JK・美咲との合同案件、などなど。

『女子高生除霊師アカネ!』2巻より(大武政夫/集英社)

アカネも可愛いですけど、探偵事務所の跡取り娘で常識人でジト目の美咲ちゃん、良いですよね。

クズヒロインのアカネとの対比で極めて常識人ないい人なんですけど、モノローグ含めてツッコミのキレがいい。

立場的に、腐れ縁的にアカネと長い付き合いになって苦労しそうなのが不憫なとこも含めて、

『女子高生除霊師アカネ!』2巻より(大武政夫/集英社)

『ヒナまつり』の新田ポジションというか。

 

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#望郷太郎 11巻 評論(ネタバレ注意)

『デカスロン』『へうげもの』の作者の現作。

『望郷太郎』11巻より(山田芳裕/講談社)

突如地球を襲った大寒波に際し、財閥系商社・舞鶴グループの創業家7代目、舞鶴通商のイラク支社長・舞鶴太郎は、駐在するバスラで極秘に開発させていた冷凍睡眠シェルターに妻と息子を伴って避難。1〜2ヶ月の冷凍睡眠で大災害をやり過ごす心算だった。

しかし太郎か目を覚ますと、隣で眠っていた妻も息子もミイラ化し、装置が示す数値はあれから500年が経過していることを指し示し、シェルターの外には廃墟と化したバスラの街並みが広がっていた。

人が絶えたように見える世界を前に太郎は、自らの死に場所を娘を残してきた故郷・日本に定め、長い旅路を歩き始める。

旅路で出会う、わずかに生き残った人類たちは、過去の文明の遺産を再利用しながら、狩猟と採集で食いつなぐ原始に還った生活を営んでいた。

で始まるポストアポカリプスなサバイバルなロードムービーもの。

『望郷太郎』11巻より(山田芳裕/講談社)

としてスタートした作品ですけど、もう既にジャンルが少し変わったというか本質が表れていて、実態は原始環境における経済もの、「金と人間」をテーマにした作品に。

周辺の村々を経済と軍事で支配する大国、マリョウ王国へ。

作品の大目的は日本に帰還して、残してきた娘の消息を探すことだったと思いますし、地理的には日本にだいぶ近づいてきているんですが、モンゴル自治区のハイラルやフルンボイル(作中ではマリョウ王国)で、足止めというかなんというか。

マリョウ王国では、国王を頂点にした階級社会でありながら、国王から独立した中央銀行、そして国王から独立した議会と選挙、間接民主主義が既に始まっていた…

『望郷太郎』11巻より(山田芳裕/講談社)

ということで、旧知ながら国母となったプリを頼って、ヤープト村をマリョウ王国の対等な外交相手に認めさせることが目的…だったはずが、クエスト形式に仕事が増えて膨らんで、気がつけばマリョウ王国の議員に立候補しつつ、紙による金銭(マー)・紙幣の発行に着手、経済、政治、軍事、ときて宗教も絡んでくることに。

選挙活動、それ以上に紙幣の普及活動と、既得権益を持つ対抗勢力との暗闘。

マーとは、通貨とは、カネとは一体何なのか。

マリョウ王国を舞台にがっつりと権力闘争が繰り広げられますが、闘争の戦線が多方面に拡大して、複雑ではないにしても複線で同時進行、終盤で絡み合ってきそうというかどう考えても絡み合う感じ。

『望郷太郎』11巻より(山田芳裕/講談社)

・選挙戦

・戦車戦

・紙幣発行権の争奪戦

の3軸に、それぞれのキャラクターの思惑が絡んで、というところ。

太郎の切り札も当初は「人類社会最盛期の知識」「マーの原石」「盟友・パルの武勇」だったのが、その後の「紙幣発行」に加えて今巻でとうとう「ガソリンの精製」「ガソリンエンジンの復活」とずいぶん増えましたが、それらを総動員しての多方面での総力戦。

複数の縦軸で多くのキャラの思惑が絡み合いながらも、一本に収束していく気配が見えたところで、前巻で戦車戦が、今巻で選挙戦が決着。

綿密に張ってきた伏線と何の関係もないパンダがサプライズニンジャ的に戦車戦の結末を左右したのに続き、選挙戦も決着はついたものの権力闘争に終わりは見えず、最終的には武力衝突に。

漫画・エンタメとしてクライマックスにアクションシーンを持ってきて、極限状態で主人公や脇役たちの胆力が試される展開は正攻法ではありますが、作品のコンセプトやメッセージを考えると

「やはり暴力…!! 暴力は全てを解決する…!!」

的に見えるのは、それでええんか、という気もしなくはないですがw 紙幣発行や選挙での苦労は一体…w

『望郷太郎』11巻より(山田芳裕/講談社)

エンタメとしては

「太郎が復活させたガソリンエンジン vs 温存されていた古のドローン爆弾」

はスペクタルで面白いので、楽しんで読んでる身としては別に良いんですがw

どれだけ発展・発達した気でいても、現実の現代人類が

「やはり兵器…!! 兵器は全てを解決する…!!」

の段階に留まっていることへの風刺・皮肉と見えなくもないです、というと少し贔屓が過ぎるでしょうか。

作品的にはマリョウ国編の終わりが見えてきて、次章・最終章であろうヒューマの国編(日本編)の足音が聞こえてきました。

『望郷太郎』11巻より(山田芳裕/講談社)

太郎の出身地で「太郎が日本に残してきた娘」の設定が残ってますし、太郎の子孫がいるかもしんないし、コールドスリープしていたのが太郎だけとも限らないし、と、ダイナミックなギミックの可能性がたくさん残されている章で、「作者が描きたかったこと」的には1巻を除くマリョウ国編までは「前座・前振り」に過ぎない可能性も高く、楽しみですね。

 

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#ダンジョンの中のひと 5巻 評論(ネタバレ注意)

父親の英才教育で一流のシーフに成長した少女・クレイは、3年前にダンジョンで消息を経った父親を追って日々ダンジョンに潜っていた。

冒険者ギルド登録パーティの最高到達記録が地下7階なのに対して、シーフギルド所属のクレイはソロで地下9階に到達。

かつてない強敵・ミノタウロスと対峙。ミノタウロスが投じクレイが躱した巨大な戦斧がダンジョンの壁を破壊した瞬間から、しかしクレイの世界は一変する。

ダンジョンの秘密を知る立場となったクレイの対応をミノタウロスから引き継いだダンジョン管理人の少女・ベルは、クレイに「ダンジョンのスタッフになりませんか?」と問いかけるのだった…

という変化球ファンタジーもののお仕事漫画。

『ダンジョンの中のひと』5巻より(双見酔/双葉社)

キマシ

特異な設定を転がして常識人の主人公がツッコむ、基本的にコメディ進行。

凄腕シーフ・クレイの、その雇い主となった実はダーク・シュナイダー級の魔導士でダンジョンマスターながらポンコツ生活力のベル。

レギュラーで登場する主要キャラも3人と少なく、舞台も一つのダンジョン内に基本的に閉じていて、決して壮大な世界観ではないですが、箱庭的というのか、作者の想像力がよく働いた設定で、うんちく読んでるだけでも楽しい。

『ダンジョンの中のひと』5巻より(双見酔/双葉社)

基本、クレイの「職場見学」を通じてダンジョンの仕組み・うんちくが語られつつ、余暇を利用して探索者としてダンジョン攻略を進めていく進行。

ベルから魔法制御の基礎を学んでクレイが成長を実感しつつ、ダンジョンで行方が知れなくなった父のその後、いつかベルを超えることができるのか、その時ダンジョンはどうなるのか、などが縦軸に。

クレイが積年、追い求めていた邂逅、そして対峙、超克。

『ダンジョンの中のひと』5巻より(双見酔/双葉社)

自分はヒロインのベル目当てで読んでるところがあるので、今巻、ベルの出番が多くて眼福ですが、作品としては

「父親との再会と超克」

「ベルと対決」

「ダンジョンの秘密」

の3つの山のうち、1つ目を前巻で超えてしまいました。

2つ目と3つ目は、たぶんセットで提示されることになるんでしょうが、少し先の話かなと思います。

『ダンジョンの中のひと』5巻より(双見酔/双葉社)

ということで、2つ目と3つ目の山に向けて地道な鍛錬と地下10階の探索を進めつつ、幕間の日常エピソードを挟みつつも、クレイの「直近の目標」が一時的に失われている状態に。

その分、ベルに出番が増えて個人的には嬉しいんですが、クレイの動機というのは

「ダンジョンがあるから攻略する」

「自分より強い奴がいるから修行して勝つ」

という、『ドラゴンボール』の悟空というか、てんとう虫の上に登る習性に似ているな、と。

『ダンジョンの中のひと』5巻より(双見酔/双葉社)

ベルたそ泣かすな馬鹿もの。

一読者としては

「そんなことより、『永遠の相棒』となってベルを孤独から解放すること」

の方が重要に感じてしまい、

「世話になっているベルと、そうまでして決着をつける必要があるのか」

と思ってしまい、主人公クレイの心情との乖離を、読者として感じなくもありません。

平たく言うと、感情移入できない。

『ダンジョンの中のひと』5巻より(双見酔/双葉社)

ベルたそ泣かすな馬鹿もの…

まあ、「キャラ愛(め)で」な読み方からくる自分のベル贔屓が過ぎるだけ、なんですけどw

 

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#スナックバス江 15巻 評論(ネタバレ注意)

ヤンジャンのギャグ枠を守って連載7年経過、今年アニメ化も果たした1話8ページのギャグ漫画。

『スナックバス江』15巻より(フォビドゥン澁川/ 集英社)

北海道は札幌市は北24条、氣志團のボーカルみたいなルックスの婆さんママと金髪のチーママ・明美が営む、場末のスナックで繰り広げられるシニカルだけどあるあるな会話劇。

1巻から面白さが安定して高止まりしてる漫画で、ずっと愛読し続けていてすごく好きな作品。

なんですけど、感想が書きにくいw

『スナックバス江』15巻より(フォビドゥン澁川/ 集英社)

ひでえツッコミw

フフッてなる面白さなんですけど、「情緒を揺さぶってくる」タイプでもなし、単話エピソードが単行本一冊に20話分ぐらい入ってるので、あらすじで文字数を稼ぐこともできねえw

近年、漫画作品でも「メインヒロインがクズヒロイン」な作品が一部でブーム?ですけど、明美ちゃん、7年前の連載開始当初からクズで、でも人並みの常識や優しさもあってクズに徹することもできない、本音が出過ぎな中途半端なヒロイン。

その中途半端さが良いです。

『スナックバス江』15巻より(フォビドゥン澁川/ 集英社)

トーク相手でボケとツッコミ両方いけて、客が常識人なら自らはクズ発言中心に、客がクズなら常識人的なツッコミ中心に、という便利キャラ。

可愛い、萌えというより作品のカラー的に「いい女」と形容すべきなんかな。「中身おっさん」系なわけでもない気がします。

自分は割りとたくさん漫画読んでますけど、連載現役の作品群の中でも五指に入るぐらい好きなヒロインで、明美ちゃんの出番が多くて可愛ければ許せちゃうみたいなとこあります。

ダメ男と付き合ってきたり、自己肯定感がそんなに高くなかったりと、高嶺の花ではないんけど、ガードは硬い、みたいなの、なんかちょっと男心くすぐりますよね。

チヤホヤしたらなんとかなりそうなんだけど、店でチヤホヤしてもどうにもならなそう、でも試しにチヤホヤしてるうちに毎日通っちゃう、みたいな。

『スナックバス江』15巻より(フォビドゥン澁川/ 集英社)

自分は独身のおっさんなので、作中キャラで年齢的にも社会的な立場的にも最も近いのは、常連の中でも中高年よりの「独身貴族」、タツ兄かなと思います。

というかタツ兄の語ることがいちいちあるあるすぎて、赤の他人な気がしないw

人並みの青春を過ごしながらも独りを選んで?中高年になってしまった、持たざる者ゆえの諦観と達観、恋とロマンに対する未練と憧れ、センチメンタリズム。

現在進行形で徐々に衰えていきつつある身体と、それから目を逸らす逃避。

を、実感を込めつつ、でも同情を求めるでもなく訥々と。

前巻作中でそのタツ兄のエピソードで「黒柳さんがいいこと言ってた」話がありましたが、

『スナックバス江』14巻より(フォビドゥン澁川/ 集英社)

自分にとってが「タツ兄さんがすごい理解る話してた」という感じ。

前述のとおり、明美ちゃんは現役連載漫画の中で五指に入るぐらい好きなヒロインですが、タツ兄は切迫してないユルーい共感ながら「自分も一緒だなー」といちいち思わされる、一番共感できるキャラだなーと。

長年「あいつも独身だから」と思ってた松井秀喜や松本人志や福山雅治がその後結婚した時も「それはめでたいね」としか思わなかったですけど、タツ兄が結婚したらショック受けて、焦るかもしれんw

『スナックバス江』15巻より(フォビドゥン澁川/ 集英社)

あーでも自分も明美ちゃんみたいな子からタメ口で「どうしちゃったか〜?」ってツッコまれてえなw

 

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#戦奏教室 7巻 評論(ネタバレ注意)

歩兵や騎兵が剣や槍で、弓兵が矢を撃って戦う、中世ぐらいの文明レベルの世界、「樹木歴」1294年。

『戦奏教室』7巻より(空もずく/十森ひごろ/集英社)

幼くして拾われた傭兵団でラッパ手(ラッパの音で指揮を伝達する、通信兵のようなもの)を務める少年・リュカは、殺し合いと略奪に明け暮れる傭兵団のクソみたいな暮らしにウンザリし、いつか楽師になることを夢見ていた。

いつものように敵軍と遭遇、一人の敵兵の怪物じみた戦闘能力によりリュカも重傷を負うが、最後の力を振り絞ってラッパで自軍に撤退指示を出し、頭から「枝」が生えていたリュカの超常能力が発動、リュカのラッパの音は光となって自軍を撤退成功に導く。

瀕死のところを敵軍の能力者たちに救われたリュカは、音楽を学ばせてもらうことと引き換えに、敵軍だった「教皇領」軍の能力者「枝憑き」として、戦うこととなった…

という、中世ファンタジー世界の戦争もの。

『戦奏教室』7巻より(空もずく/十森ひごろ/集英社)

古代(現代の延長線上?)の超技術がアーカイブされた塔ごとに国家を形成し相争う世界観。

「枝憑き」リュカの能力はアレですね、将棋・ボードゲーム・戦争シミュレーションゲームなどでプレイヤーが戦場を俯瞰して駒を動かして勝利するムーブを、盤の中でやる感じ。

ラッパの音がビームっぽい光で視覚化され兵団がそれに従うのも、ゲームっぽい表現。

その他の枝憑きたちの能力も、戦闘特化・走力特化・千里眼特化・重砲撃特化?など、ピンキリ・千差万別っぽく、リュカは歩兵・騎兵・弓兵と能力者である枝憑きを自分の能力で戦術指揮というか操る「棋士」に相当する能力者。

バトル描写としては「駒の能力×リュカの戦術指揮」が醍醐味になっていきそう。

『戦奏教室』7巻より(空もずく/十森ひごろ/集英社)

物語的には世界に9つある塔を巡る覇権争い、その中でさっさとラスボス級「枝憑き」を倒して戦争から足抜けして、音楽を学んで念願の楽師になりたいリュカ、という感じ。

「9つの塔」のシンプルな世界観に、能力バトルでは珍しい「戦術指揮に特化した能力持ち」の主人公、と、ジャンプらしく粗いところもありつつ、わかりやすくて拡張性も高そうな、「男の子心をくすぐる」出だし。

敵味方の能力者「枝憑き」たちの能力と人格の顔見世、能力バトルのルール説明、が関数を進めるごとに少しずつ追加されていってます。

【教皇領】

リュカ:ラッパの音を視覚に変換して兵団や「枝憑き」を操る、メタな棋士のような能力 苗木候補「星灯りの枝憑」

デミ:千里眼と、その視界の仲間への共有

ゾーイ:能力の前借りによる短期的な超戦闘力 前借り分の長期睡眠と成長障害のデメリット有り リュカ以外の人間の顔がジャガイモに見えている 実年齢(身体年齢)27歳 精神年齢9歳 苗木候補「時編の枝憑き」

ミウラ:自身の動体視力をも超える超人的な走力と跳躍力 ノルマンディー公国出身

ポピー:軽いものを動かす念動力 矢を操って超長距離スナイパー

オスカー:不死身 負傷を重ねると再生能力が落ちていく?塔の効力範囲外では死ぬ(これは当たり前か

コーラ:他人の負傷や病気を自分に移植し、それをまた他人に移植できる 治癒能力

殺害した他の枝憑きの、空気を武器化する能力・重力を操る能力も塔下から授けられている

ザヒード:超幸運特化 幸運付付与アイテム・装備などの作成など後方支援型 幸運は「自分のため」だけに発生

ウード:傭兵 血液を操って武器化・攻撃する

塔下(教皇?):死者を蘇生する能力があるが、蘇生者は時間が止まって成長せず傷も治らない 仮面の下の素顔が変化する(保護した枝憑きの旧保護者の顔?) 鏡面の力を入手 塔から死者の生前の情報をダウンロードして自身の姿を変えたり死者の複製体を作り出すことができる

【エリン帝国領】島国

花冠:弾道砲撃かと思ったら隕石落とし、メテオ 射程限界で照準ズレと威力減衰 少女 アキラの娘

カール:磁力?で金属(武器)を操って攻撃

サラ:重さを操作し弓矢の威力を砲撃のように超強化?

?:触れずに遠隔で物体の重さを操作する能力?

アキラ:黒い鎧の戦士 枝憑きではない 花冠の父親 予知者? 異時代者?

テム:触れたものの動きを遅くできる 開花間近 リュカたちと交戦し死亡

【ガリア王国領】国王失踪 国王派と鏡面派で内乱

国王:塔下の旧友?失踪理由不明 消滅?

鏡面:王国の英雄 鏡を用いた空間移動・空間断裂の能力

【ノルマンディー公国領】花冠により滅ぼされ現在は帝国の属国

複命の枝憑き:髪の毛などから自身の分身を(実質無限に)生成できる 奴隷兵として帝国に提供中

【その他のルール】

・枝憑きの能力は9本の塔のどれかを中心に一定距離内ゃないと発動できない

・枝付きは教区外で一月程度以上暮らすと死ぬ

・花冠の能力は国ごと吹っ飛ばす力があるが1ヶ月程度の溜めが必要

「枝憑き」毎にあんまり被る能力がない、味方との戦術・敵との相性ともに「組み合わせ」と「応用」が左右する戦術型の能力バトルという感じ。

今巻は、「奴隷の国」ノルマンディー公国領での「花冠」捜索の最終局面、「花冠」が潜伏するモン・トンブ城に塔下が鏡面の力を使って大兵力をワープさせての攻城戦、大決戦。

『戦奏教室』7巻より(空もずく/十森ひごろ/集英社)

作画が超大変のコーナー。

ずっとバトってる巻でバトル描写に見応えがある代わりに、ストーリーの進捗は大したことない巻ですが、「花冠」の父親がらみで世界観情報の開示が。

・「花冠」の父親の黒鎧の戦士の名前はアキラ

・帝国のミカドが復元したウォークマンのレプリカを持ってる

・予知能力者で異時代者っぽい

・枝憑きではないが、負傷時に体内の枝が露出しており、ミカドに召喚?複製?された存在っぽい

『戦奏教室』7巻より(空もずく/十森ひごろ/集英社)

この辺から、

・現代の地球の延長線上の未来の、ポスト・アポカリプス世界らしい

・「島国」「ウォークマン」「アキラ」「ミカド」などから、エリン帝国は旧・日本?

って感じでしょうか。

エリン帝国の塔は、東京スカイツリーや六本木ヒルズの形をしてるかもしれないですね。

「花冠」の追跡・殲滅作戦もいよいよ大詰めですが、普通に倒すと大量の謎を残したまま完結フラグなので、逃げられるか、次なる中ボスの登場か。

会戦自体、ほとんど全員に死亡フラグ立ってるような「生命、散って」みたいな展開に。

『戦奏教室』7巻より(空もずく/十森ひごろ/集英社)

戦場でそんなこと思い出しちゃらめぇ。

 

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#アオのハコ 15巻 評論(ネタバレ注意)

週刊少年ジャンプ、本誌連載の青春恋愛漫画。

『アオのハコ』15巻より(三浦糀/集英社)

中高一貫校、バドミントン部の1年のホープ・大喜(♂)と、同じ体育館で練習する女子バスケ部の2年で学校のアイドルで大喜の憧れである千夏先輩(♀)。

部活違い・学年違いながら、早朝自主練で千夏先輩と言葉を交わすようになった大喜が、ある朝自宅で目覚めてリビングに降りると、そこには千夏先輩の姿が!

千夏先輩は親の海外転勤に際してもバスケの夢を諦められず、バスケ部OG同士の母親同士のツテで大喜の家に下宿することになった。

という同居設定の青春恋愛もの。

『アオのハコ』15巻より(三浦糀/集英社)

コメディ要素ももちろんありますが、成分比的にラブコメ作品じゃないですね。青春恋愛もの。

千夏先輩のバスケにかける覚悟を知った大喜は、彼女にふさわしい男になるべく、自分もバドミントンでインターハイ出場を目指すことに。

新体操部の期待のホープで大喜の幼馴染で片想い中のサブヒロイン・雛を交えた片想い三角関係。王道のメロさ。

図にするとこうなる。

雛→(好き)→大喜→(好き)→千夏先輩

『アオのハコ』15巻より(三浦糀/集英社)

12巻で大喜と千夏先輩がくっついて、13巻で人間関係に与えた余波も描かれ、「未満恋愛もの」から「おつきあいもの」にクラスチェンジ。

恋愛・ラブコメ漫画の「くっついた後」というのは昔は割りと鬼門、というより「くっついたら最終回」がお作法でしたが、近年は「くっついた後」を描く作品も増えました。

冬の大会、バレンタインを経て、あっという間に新学年、新学期、新入生の新キャラ祭り、そしてあっという間に千夏先輩の最後のインターハイ予選。

『アオのハコ』15巻より(三浦糀/集英社)

今巻は恋愛面はほぼお休み、新入生ちゃんの片想い?描写ぐらいで、あとはもうスポーツモード。

各競技ごとにインターハイ予選が開始され、試合日程の多い女子バスケの千夏先輩は、大喜の男子バドに先んじて日程開始。

大喜は大喜で部活の先輩で恩人の針生先輩を準決勝で倒さないと全国に行けない組み合わせに。

そして迎える女バスの3回戦、対戦相手は昨年県2位の競合を倒して勝ち上がってきた、競技復帰を千夏先輩が支えた夢佳を擁し、彩晶。

「事実上の決勝戦」の行方は…。

という。

『アオのハコ』15巻より(三浦糀/集英社)

実際早いですけど、4月からインターハイ予選の開始って漫画だと本当にすぐですね。

『キャプテン翼』や『スラムダンク』のように、競技・試合の経過を逐一描写して技術や戦術、選手の能力や駆け引きなどを追いかけて描く「スポーツ漫画」ではなく、「青春漫画のスポーツ要素」としての展開・描写なので、本当にあっという間。

でもこの「あっという間」感、「もう終わり…?」感、それはそれで「スポーツのトーナメント制の大会で負ける」という体験を、リアルというか生々しく感じてしまいます。

3年生が何をするにも「最後」であることも度々描写されます。

目の前の挑戦に全力投球しつつ、恋愛もしつつ、将来のことも考えつつ、高校生は忙しいね。なにもかも瞬きしている間に終わってしまう。

『アオのハコ』15巻より(三浦糀/集英社)

スポーツ面、インターハイに関わる展開はしばらく続きますけど、そういえば千夏先輩の進路ってどうするんだろうね。

 

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