
歩兵や騎兵が剣や槍で、弓兵が矢を撃って戦う、中世ぐらいの文明レベルの世界、「樹木歴」1294年。

『戦奏教室』7巻より(空もずく/十森ひごろ/集英社)
幼くして拾われた傭兵団でラッパ手(ラッパの音で指揮を伝達する、通信兵のようなもの)を務める少年・リュカは、殺し合いと略奪に明け暮れる傭兵団のクソみたいな暮らしにウンザリし、いつか楽師になることを夢見ていた。
いつものように敵軍と遭遇、一人の敵兵の怪物じみた戦闘能力によりリュカも重傷を負うが、最後の力を振り絞ってラッパで自軍に撤退指示を出し、頭から「枝」が生えていたリュカの超常能力が発動、リュカのラッパの音は光となって自軍を撤退成功に導く。
瀕死のところを敵軍の能力者たちに救われたリュカは、音楽を学ばせてもらうことと引き換えに、敵軍だった「教皇領」軍の能力者「枝憑き」として、戦うこととなった…
という、中世ファンタジー世界の戦争もの。

『戦奏教室』7巻より(空もずく/十森ひごろ/集英社)
古代(現代の延長線上?)の超技術がアーカイブされた塔ごとに国家を形成し相争う世界観。
「枝憑き」リュカの能力はアレですね、将棋・ボードゲーム・戦争シミュレーションゲームなどでプレイヤーが戦場を俯瞰して駒を動かして勝利するムーブを、盤の中でやる感じ。
ラッパの音がビームっぽい光で視覚化され兵団がそれに従うのも、ゲームっぽい表現。
その他の枝憑きたちの能力も、戦闘特化・走力特化・千里眼特化・重砲撃特化?など、ピンキリ・千差万別っぽく、リュカは歩兵・騎兵・弓兵と能力者である枝憑きを自分の能力で戦術指揮というか操る「棋士」に相当する能力者。
バトル描写としては「駒の能力×リュカの戦術指揮」が醍醐味になっていきそう。

『戦奏教室』7巻より(空もずく/十森ひごろ/集英社)
物語的には世界に9つある塔を巡る覇権争い、その中でさっさとラスボス級「枝憑き」を倒して戦争から足抜けして、音楽を学んで念願の楽師になりたいリュカ、という感じ。
「9つの塔」のシンプルな世界観に、能力バトルでは珍しい「戦術指揮に特化した能力持ち」の主人公、と、ジャンプらしく粗いところもありつつ、わかりやすくて拡張性も高そうな、「男の子心をくすぐる」出だし。
敵味方の能力者「枝憑き」たちの能力と人格の顔見世、能力バトルのルール説明、が関数を進めるごとに少しずつ追加されていってます。
【教皇領】
リュカ:ラッパの音を視覚に変換して兵団や「枝憑き」を操る、メタな棋士のような能力 苗木候補「星灯りの枝憑」
デミ:千里眼と、その視界の仲間への共有
ゾーイ:能力の前借りによる短期的な超戦闘力 前借り分の長期睡眠と成長障害のデメリット有り リュカ以外の人間の顔がジャガイモに見えている 実年齢(身体年齢)27歳 精神年齢9歳 苗木候補「時編の枝憑き」
ミウラ:自身の動体視力をも超える超人的な走力と跳躍力 ノルマンディー公国出身
ポピー:軽いものを動かす念動力 矢を操って超長距離スナイパー
オスカー:不死身 負傷を重ねると再生能力が落ちていく?塔の効力範囲外では死ぬ(これは当たり前か
コーラ:他人の負傷や病気を自分に移植し、それをまた他人に移植できる 治癒能力
殺害した他の枝憑きの、空気を武器化する能力・重力を操る能力も塔下から授けられている
ザヒード:超幸運特化 幸運付付与アイテム・装備などの作成など後方支援型 幸運は「自分のため」だけに発生
ウード:傭兵 血液を操って武器化・攻撃する
塔下(教皇?):死者を蘇生する能力があるが、蘇生者は時間が止まって成長せず傷も治らない 仮面の下の素顔が変化する(保護した枝憑きの旧保護者の顔?) 鏡面の力を入手 塔から死者の生前の情報をダウンロードして自身の姿を変えたり死者の複製体を作り出すことができる
【エリン帝国領】島国
花冠:弾道砲撃かと思ったら隕石落とし、メテオ 射程限界で照準ズレと威力減衰 少女 アキラの娘
カール:磁力?で金属(武器)を操って攻撃
サラ:重さを操作し弓矢の威力を砲撃のように超強化?
?:触れずに遠隔で物体の重さを操作する能力?
アキラ:黒い鎧の戦士 枝憑きではない 花冠の父親 予知者? 異時代者?
テム:触れたものの動きを遅くできる 開花間近 リュカたちと交戦し死亡
【ガリア王国領】国王失踪 国王派と鏡面派で内乱
国王:塔下の旧友?失踪理由不明 消滅?
鏡面:王国の英雄 鏡を用いた空間移動・空間断裂の能力
【ノルマンディー公国領】花冠により滅ぼされ現在は帝国の属国
複命の枝憑き:髪の毛などから自身の分身を(実質無限に)生成できる 奴隷兵として帝国に提供中
【その他のルール】
・枝憑きの能力は9本の塔のどれかを中心に一定距離内ゃないと発動できない
・枝付きは教区外で一月程度以上暮らすと死ぬ
・花冠の能力は国ごと吹っ飛ばす力があるが1ヶ月程度の溜めが必要
「枝憑き」毎にあんまり被る能力がない、味方との戦術・敵との相性ともに「組み合わせ」と「応用」が左右する戦術型の能力バトルという感じ。
今巻は、「奴隷の国」ノルマンディー公国領での「花冠」捜索の最終局面、「花冠」が潜伏するモン・トンブ城に塔下が鏡面の力を使って大兵力をワープさせての攻城戦、大決戦。

『戦奏教室』7巻より(空もずく/十森ひごろ/集英社)
作画が超大変のコーナー。
ずっとバトってる巻でバトル描写に見応えがある代わりに、ストーリーの進捗は大したことない巻ですが、「花冠」の父親がらみで世界観情報の開示が。
・「花冠」の父親の黒鎧の戦士の名前はアキラ
・帝国のミカドが復元したウォークマンのレプリカを持ってる
・予知能力者で異時代者っぽい
・枝憑きではないが、負傷時に体内の枝が露出しており、ミカドに召喚?複製?された存在っぽい

『戦奏教室』7巻より(空もずく/十森ひごろ/集英社)
この辺から、
・現代の地球の延長線上の未来の、ポスト・アポカリプス世界らしい
・「島国」「ウォークマン」「アキラ」「ミカド」などから、エリン帝国は旧・日本?
って感じでしょうか。
エリン帝国の塔は、東京スカイツリーや六本木ヒルズの形をしてるかもしれないですね。
「花冠」の追跡・殲滅作戦もいよいよ大詰めですが、普通に倒すと大量の謎を残したまま完結フラグなので、逃げられるか、次なる中ボスの登場か。
会戦自体、ほとんど全員に死亡フラグ立ってるような「生命、散って」みたいな展開に。

『戦奏教室』7巻より(空もずく/十森ひごろ/集英社)
戦場でそんなこと思い出しちゃらめぇ。
aqm.hatenablog.jp