#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#忍者と殺し屋のふたりぐらし 2巻 評論(ネタバレ注意)

忍者の里で修行して暮らす さとこ は、周りの仲間の雰囲気に流されてなんとなく里抜けに参加(8回目)、抜け忍となったが、特に里抜けしたい目的があったわけでもないので普通に行き倒れていたところを、女子高生殺し屋の このは に拾われる。

忍者としてはポンコツ気味ながら物体を木の葉に変える さとこ の能力に目をつけた このは は、見返りに忍者の里の追手を返り討ちにしてやる代わりに殺し屋仕事の死体処理係の相棒として さとこ を自分の部屋に住まわせる。

『忍者と殺し屋のふたりぐらし』2巻より(ハンバーガー/KADOKAWA)

忍者と殺し屋の奇妙な同居生活が始まった…

という、日常エッセイ漫画の鬼才による非日常な日常コメディ。

殺し屋という職業は現実世界ではなかなかレアですが、漫画の中では割りとポップな職業。

『忍者と殺し屋のふたりぐらし』2巻より(ハンバーガー/KADOKAWA)

女子高生をはじめ女性が殺し屋稼業を営んでる漫画は珍しくありませんが、本作で人を殺すことの罪悪感が除菌されてヒロインたちが明るく楽しくアッケカランと人を殺すことのギャップ・違和感・狂気は、作中でも少し言及されている通り意図された効果で、だからこそヒロインたち自身が死ぬ陰惨な展開すらも作者が必要と思えばこの可愛らしい絵であっさりやりそうな、怖さを感じます。

1巻のあとがきで作者が「読切のつもりで描き始めたので、どうなるのか私にもわかりません」って書いてて、「あっコイツやべえ」ってなりました。

『忍者と殺し屋のふたりぐらし』2巻より(ハンバーガー/KADOKAWA)

今巻も人間にしろロボにしろ、コメディキャラとして登場した美少女(?)たちがサクサク殺されていく、というか、もう殺されるシーンすら省略されて本当に生命が軽いです。

「芸のためなら女房も泣かす」という歌がありましたが、この作品は「ギャグのためなら美少女も殺す」という感じ。

『忍者と殺し屋のふたりぐらし』2巻より(ハンバーガー/KADOKAWA)

このコマが最期の出番とか、ある?www

露悪趣味が過ぎるような気もする反面、このは に人を殺すことの罪悪感の萌芽も描写されるんですけど、文法的には「冷徹な殺し屋が殺した相手の人生に想いを馳せる」は「自分が死ぬフラグ」です。

倫理としてではなく、エンタメとして。

『忍者と殺し屋のふたりぐらし』2巻より(ハンバーガー/KADOKAWA)

前もどっかで書いたけどサイレンススズカに激似だなw

既に文法を逸脱している作品ではありますが、生命倫理を手放してもエンタメ性は手放していない作品なので、この作品に「美少女たちの明るいゆるふわ日常コメディ」だけを期待している筋には、そろそろ離脱しておくのも、描く方と読む方の、お互いのためかもしれません。

 

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FSS (NT2023年1月号 第18巻相当) 評論(ネタバレ注意)

ファイブスター物語、連続掲載継続中。

「第6話 時の詩女 アクト5-1 緋色の雫 Both3069」。

扉絵コミで15ページ。

  

他の号はこちらから。

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  • (余談)
  • (扉絵)
  • (本編)
  • (所感)
    • 扉絵
    • 本編

以下、宣伝と余談のあとにネタバレ情報を含んで論評しますので閲覧ご注意。

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#アルスラーン戦記 18巻 評論(ネタバレ注意)

表紙はエステル(エトワール)。

何度も書いてますが、自分はエステルの"あの"扱いで原作小説の第二部に愛想が尽きて、読むのをやめてしまいました。

「アルスラーン戦記」18巻より(荒川弘/田中芳樹/講談社)

お前らエステルいじめんなっつってんだろ!この子が何したってんだよ!ぶっ転がすぞ!

田中芳樹の高名なファンタジー戦記を荒川弘がコミカライズという鉄板漫画。

原作でいうと第一部の終盤、原作全7巻の7巻相当ぐらい、『王都奪還』あたり。

虜囚の身から自力で脱出し、救国の軍を起こした息子の軍勢に合流したアンドラゴラス王に「兵力5万を集めるまで帰参するにあたわず」と追放されたアルスラーン王子。

彼を慕って軍を脱出した少数精鋭・一騎当千の部下たちと訪れた港町ギランで海賊や悪徳領主を制圧。

一方、アンドラゴラス率いるパルス軍はペシャワール城を進発、王都エクバターナに向かって進軍を始めた…

「アルスラーン戦記」18巻より(荒川弘/田中芳樹/講談社)

ということで、今巻はアンドラゴラス軍とルシタニア軍が平原で激突、暗躍するヒルメスや力を蓄えたアルスラーン軍は漁夫の利の間隙をついて王都へ向かう。

「風は王都へ」という感じで全ての勢力が決着を求めて王都に集まりつつ、というところ。

「アルスラーン戦記」18巻より(荒川弘/田中芳樹/講談社)

連載始まった頃は「このペースでコミカライズなんて第一部終わんのに何年かかるんだ」と思ったものですが、原作6冊分を9年(ぐらい)かけて、終わりが見えてきましたね。

原作リスペクトの強い忠実な構成、大量の主要登場人物の描き分け、描くのが大変ながら労を惜しまない会戦の描写と、相変わらずコミカライズにあたってこれ以上ない「当たり作画」。

「アルスラーン戦記」18巻より(荒川弘/田中芳樹/講談社)

「蛇」絡みも原作に忠実なので、第二部もおそらく描かれることになるんだろうと思います。

遠い先のことだと思ってましたけど、コミカライズの第一部も最終決戦展開を残すのみで、そろそろこっちも「第二部を読むや読まざるや」、考え始めないといけない。

コミカライズを担当する荒川はここまで原作にとても忠実で、「わかりやすくすること」「少年漫画ナイズすること」を除けば展開の改変をほとんど封印してきてますが、極めて個人的な好みを言えば、第二部からはその封印を解放して欲しい。

ぶっちゃけ原作の第二部、全然面白くない。

「アルスラーン戦記」18巻より(荒川弘/田中芳樹/講談社)

まあでも、ないだろうなー。

 

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#転生したらスライムだった件 22巻 評論(ネタバレ注意)

サラリーマン(37)が刺されて死んで異世界に転生したらスライムだったけど、付与された特殊能力で強力な魔物スキルをガンガン吸収してスライムにして最強、人型にも顕現可能に。

リムルを名乗り、多くの魔物を配下にジュラの森の盟主となり「魔国連邦」を建国。襲来した人類国家ファムルス王国軍2万の兵をリムル自ら直接殺害して魔王に覚醒。暗躍する魔王クレイマンとも、10人の魔王による会議・ワルプルギスで決着をつけ、並行して魔王領各地で勃発したリムル陣営vsクレイマン陣営の闘争はリムル陣営が完勝。

『転生したらスライムだった件』22巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

次いで「魔物を駆逐するべし」との教義、配下にリムルと同じ転生者の聖人(魔王級)や聖騎士団を擁する西方教会。影の支配者に壟断され、操られるように魔国連邦と戦闘に突入する聖人ヒナタと聖騎士団。

戦闘の決着がついたところで、西方教会の影の真のトップというか「神体」である魔王ルミナス・バレンタインが登場!

という前巻のラストを継いでの今巻。

『転生したらスライムだった件』22巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

平たくネタバレすると、教会の真のトップであるルミナスの介入により、争いを誘導した黒幕が処断されて、魔国連邦と西方教会が和解する巻。

もっと平たくネタバレすると、和平会議と、社員旅行みたいな宴会と、ヒナタとルミナスの温泉回の巻。

典型的な「なろう」「異世界転生」もので、転生の際のギフテッドによる主人公と仲間たちの「俺TUEEEE」に目が行きがちな作品ですが、現代日本の知識を持ち合わせた主人公が、異世界に現代日本の良いところを再現しようとする「実業家」としての面が強く出ている巻です。

『転生したらスライムだった件』22巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

侵略戦争に勝利することによる豊かさの独占よりも、和平と外交、貿易による豊かさの共有を是とする、坂本龍馬みたいですよね。

(※私の坂本龍馬像は司馬史観の影響が大きく、史実と異なる可能性があります)

他にも、ヒナタの過去と現在を通じて宗教とカルト宗教を、魔術戦闘を通じて量子コンピューティングの概念を、魔族と人間の対立と融和を通じて人種間差別を、

『転生したらスライムだった件』22巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

リムルの混浴問題を通じてジェンダーの概念を。

現実社会のテーマに対する個人の葛藤を、エンタメの範囲を逸脱しない程度に触れて描いてみせています。大きなテーマを、キャラ個人目線に落として描いているのが良いですよね。

展開的には「悪の黒幕」が罪を全部引き受けて「善玉」同士の和解イチャコラの仲人役をやってくれる、いわゆる「王道」「ベタなご都合主義」展開ではあるんですけど、そのたどり着いた先にこういうシーン、こういうセリフに繋がるのなら

『転生したらスライムだった件』22巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

「ご都合主義、上等!」って思っちゃいますよね。

バトルパートの「俺TUEEE」にしろ、種族・民族・宗教・国家を超えた融和と平和を創ってくれるんじゃないかと期待させる治世・開発・外交パートのワクワク感にしろ、読者が読みたい展開・描写を媚びるでもなく過不足なく楽しく描くのがとても上手い作品で、数多ある「なろう」「異世界」作品の頂点と言っていい人気を博しているのも頷ける作品だなと、今巻を読んで思います。

この作品が仮にオリジナリティに欠けていたとしてもエンタメとして丁寧で誠実で、仮に性善説のご都合主義だとしてもその先で見せようとしている世界が美しい。

物語的にも、魔族に対して差別というより宗教的に「滅ぼすべし」との教義を持ち「人間族」で最も強硬派だった西方教会と平和条約を結べたのは、「魔族と人類が融和した世界」に向けて意義が大きいエピソードでした。

『転生したらスライムだった件』22巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

あと、魔国連邦で再現された日本食や温泉が羨ましくてずっとキレ気味なヒナタが可愛い巻でした。

 

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#空挺ドラゴンズ 14巻 評論(ネタバレ注意)

空飛ぶ龍を捕龍船(飛空艇)で狩る「龍捕り(おろちとり)」にまつわるファンタジー。狩った龍は解体して売ったり食ったりする。若干、風の谷の天空のなにか風味。

「船喰い」と恐れられる伝説の龍「震天王」テュポーンとの対峙でダメージを負った、主人公たちの捕龍船「クィン・ザザ」号。

『空挺ドラゴンズ』14巻より(桑原太矩/講談社)

その大規模改修の長い期間、船のメンバーの故国にまつわるサブエピソードなどもありつつ、カメラが戻ってフルメンバー、クィン・ザザ号の復活。

今巻はガッツリ一冊かけて、「震天王」テュポーンとのリベンジ戦。

ストーリー的には「テュポーンと戦った」以上のものはないんですが、見応えのある討伐が展開・描写されます。

『空挺ドラゴンズ』14巻より(桑原太矩/講談社)

良い意味での「ライバル」ではなく、ポリシーから対立する悪い意味での「競合」「商売敵」である屠殺船とまたも現場で競合しつつ、索敵から決着まで。

「震天王」の「いやソレ食らったらみんな死ぬでしょ」級の必殺技を受けつつも総力戦で逆転しての勝利で、

『空挺ドラゴンズ』14巻より(桑原太矩/講談社)

バトル描写のリアリティよりも「ややファンタジー」寄りを採った代わりにエンタメ性に満ちた展開が、いよいよもって「空飛ぶモンハン」じみてきましたねw

見開きを効果的に使って空戦のスケール、「空戦ファンタジーならではの見たことのない景色(シーン)」をこれでもか、と。

そういえばアニメ化済でもあることだし、1回ぐらいモンハンコラボとかないんかな。自分が知らんだけでもうコラボしてたりすんのかしらん。

屠殺船と競うようにテュポーンと戦った結果、言葉ではなにも合意できていないのに結果的に無言のまま「戦友」になったような展開。

『空挺ドラゴンズ』14巻より(桑原太矩/講談社)

最強の竜との戦いの敗北・挫折からの再起・再戦・勝利と、ハリウッド映画の三幕構成だったらこの辺で解決してもよさそうなとこではあります。

「震天王」テュポーン以上に竜の強さが際限なくインフレしていく、というのも、ゲームのモンハンでも少年バトル漫画でもないこの作品的には意義が薄いでしょうし。

『空挺ドラゴンズ』14巻より(桑原太矩/講談社)

屠殺船周りと、あとなにより主人公格のミカのキャラクターが、まだ読み足りないというか、深掘りの余白が残ってるかなという気はします。

テュポーン戦の後始末のあとは日常回に戻って、次の山場に備えるなら、それはそれで楽しみな、という。

 

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#キメツ学園! 3巻 評論(ネタバレ注意)

本編のおまけ漫画で作者自らによって度々描かれた二次創作「キメツ学園」が、他の漫画家によって連載化されたキャラもの公式スピンオフ。

『キメツ学園!』3巻より(帆上夏希/吾峠呼世晴/集英社)

小中高の一貫教育校キメツ学園の日常ギャグコメディ。キャラはみんな二頭身のSD化。

柱の面々は主に教師役に、その他の鬼殺隊の面々や鬼が生徒役に。

当然、正統続編ではなく、本編とはパラレルな世界観の作品。

まあ鬼滅ファン、特にキャラ萌え勢向けの楽しいファンアイテムです。「この人間関係を平和な世界観で見てみたい」という需要に応えた日常ギャグコメ。

『キメツ学園!』3巻より(帆上夏希/吾峠呼世晴/集英社)

炭治郎が割りと品行方正で単品でギャグコメのキーになるトラブルを起こしにくく、脇を伊之助と善逸で固めて3人で狂言回し、という感じ。

なんですけど、3人まとめてもそれでもやや陰が薄いというか、柱人気を背景に先生たちにスポット当たったエピソード多いですねw

『キメツ学園!』3巻より(帆上夏希/吾峠呼世晴/集英社)

無惨様は今巻初登場かな?

あと甘露寺が学園卒業済の大学生なので「出番が少ないのかな」と思ってたんですけど、毎巻コンスタントに出番が与えられてて嬉しい。

『キメツ学園!』3巻より(帆上夏希/吾峠呼世晴/集英社)

SDキャラのほのぼのゆるふわ進行ですけど、ちょいちょいシュールというか狂気じみてて良いですね。ほのぼのゆるふわな漫画でもアクセントの「ひとつまみの狂気」大事。

この手のスピンオフは2〜3巻で完結するかしないかが分水嶺になりがちですけど、この作品は4巻も刊行予定とのことで、まだ全エピソードのアニメ化も完了してないこともあって2年前に最終巻が出た「鬼滅」人気は息が長いです。

というのもありますが、他愛なく可愛いキャラものスピンオフとしてなかなか楽しい仕上がりで、自分けっこう好きですコレ。

 

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#アオのハコ 8巻 評論(ネタバレ注意)

週刊少年ジャンプ、本誌連載の青春恋愛漫画。

中高一貫校、バドミントン部の1年のホープ・大喜(♂)と、同じ体育館で練習する女子バスケ部の2年で学校のアイドルで大喜の憧れである千夏先輩(♀)。

部活違い・学年違いながら、早朝自主練で千夏先輩と言葉を交わすようになった大喜が、ある朝自宅で目覚めてリビングに降りると、そこには千夏先輩の姿が!

千夏先輩は親の海外転勤に際してもバスケの夢を諦められず、バスケ部OG同士の母親同士のツテで大喜の家に下宿することになった。

という同居設定の青春恋愛もの。コメディ要素ももちろんありますが、成分比的にラブコメ作品じゃないですね。青春恋愛もの。

『アオのハコ』8巻より(三浦糀/集英社)

千夏先輩のバスケにかける覚悟を知った大喜は、彼女にふさわしい男になるべく、自分もバドミントンでインターハイ出場を目指すことに。

新体操部の期待のホープで大喜の幼馴染で片想い中のサブヒロイン・雛を交えた片想い三角関係。王道のメロさ。

図にするとこうなる。

雛→(好き)→大喜→(好き)→千夏先輩

この図、要る?

『アオのハコ』8巻より(三浦糀/集英社)

インターハイの夏が終わって季節は秋、文化祭編の続き。

「火事と喧嘩は江戸の華」と言いますが、「メイド喫茶と演劇・白雪姫はラブコメ文化祭の華」みたいになってきましたね。

ラブコメいっぱい読んでるので「ネタ的に尺を稼げるイベントありがてえ」ってのは痛いほどわかるんですが、こういうベタイベントを律儀に消化する必要がある作品とも思えないので、意外っちゃ意外でした。

『アオのハコ』8巻より(三浦糀/集英社)

軽音部のライブ中の「ラブコメ主人公・ヒロインの難聴ネタ」も含めて、ちょっと義務感で「ラブコメイベントの実績埋め」やってるみたいにも見えてウケる。

あとは、少年誌の青春ラブコメでは「ピュア」「一途」が求められて、複数ヒロインを出す割りに「二人を同時に本命として好きになる」自覚を「ハッキリ」描写するのはタブー気味なんですけど、今巻少し踏み込んで、「この漫画どーすんだろね」という。

『アオのハコ』8巻より(三浦糀/集英社)

この辺、「二人が好き」のメロドラマ展開は青年誌や少女漫画の恋愛もの・ラブコメではタブー感が薄くてちょいちょい登場して、そして読者から嫌われたり(でも文句言いながら最後まで読んでくれたり)するんですけど、特に週刊少年誌だと読者の好感度がマイナスの主人公だとアンケート順位低下に直結して連載が保たないんですよね。

あともう一つ「メロドラマ要素」として今巻から新キャラで恋愛マスター気取りのおせっかい応援キャラが雛の援軍(?)として登場したんですけど、

『アオのハコ』8巻より(三浦糀/集英社)

尺を伸ばしたり「きっかけ」の事件作りにこの手の「引っ掻き回しキャラ」が便利なのはわかるんですけど、頼まれもしないのに恋愛プロデューサー気取りのキャラって自分の恋愛観で他人同士の恋愛を「あるべき姿」の型に嵌めようとしがちで、思い通りにならないと本人たちにキレがちなんですよね…

ムカつくウザキャラもスパイス程度ならいいんですけど、この他人の恋愛感情に対する支配欲の強い新キャラが、この先あんま幅を効かせるようだったら、この漫画読むのやめます。

早めに可愛げのあるとこ出してくれるといんですけど。

 

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#あかね噺 4巻 評論(ネタバレ注意)

浅草の阿良川一門の落語家(二ツ目)阿良川志ん太の娘、小学生・朱音(あかね)は父親の落語を誇りに思い憧れていた。

朱音も応援する父親の真打昇進試験、しかしその顛末は予想だにしないものだった。

内密かつ非公認に、一門ナンバー2の落語家・阿良川志ぐまに父に倣って師事して6年、高校生となった朱音は父親の意志と夢を継ぐべく、正式に志ぐまに弟子入りし阿良川一門に入門。

『あかね噺』4巻より(末永裕樹/馬上鷹将/集英社)

父の叶わなかった夢、真打を目指す朱音の落語家人生が始まった。

という、落語をモチーフにした成長譚の青春譚のサクセスストーリー。

週刊少年ジャンプ本誌連載ながらモチーフが落語という変わり種ですが、まあ「なにやってもジャンプ」というか「落語やってもジャンプ」というか。

『あかね噺』4巻より(末永裕樹/馬上鷹将/集英社)

ジジババイメージが強い伝統芸能の世界の中心で元気で可愛いJKが主人公、というのもギャップがありつついかにも今どきでキャッチーで、世代間コミュニケーションの楽しみや「男社会の中の女」という切り口にも派生できそうで、見た目の印象以上に拡張性が高い作品だな、と。

因縁の相手・落語会トップの阿良川一生が主催する、学生アマチュア落語大会編。今巻前半で決着。

『あかね噺』4巻より(末永裕樹/馬上鷹将/集英社)

阿良川一生との対談会を経て、プロ落語家としての下積み開始編へ。

ネタバレですけど、学生アマチュア落語大会で優勝したんですけど、優勝しても一生との対談以外は特に何のメリットもなく業界内で悪目立ちしただけでウケる。

『あかね噺』4巻より(末永裕樹/馬上鷹将/集英社)

まあプロとしては脇道、物語としては単発イベントのエピソードで、ヒロインあかねの動機の強化、あと"からし"という面白いキャラが登場したのが収穫でしたね、というところ。『ダイ大』のポップ枠っぽいねコイツ。

阿良川一門の第一人者の一生と、一生に弟子を破門にされたNo2の志ぐまの、同門トップ同士の確執の機微がまだよくわかんないんですが

と前巻の感想に書いたんですけど、どうも『美味しんぼ』の「究極の料理」や『ヒカルの碁』の「神の一手」や『ガラスの仮面』の「紅天女」的な、

『あかね噺』4巻より(末永裕樹/馬上鷹将/集英社)

「幻の落語」みたいなのがあって、一生はそれを追い求めることから降りて、志ぐまは未だそれを追い求め、あかねの父親もそれに追随したゆえに昇進に響いたっぽい感じっぽい。

「究極の」とか「神の」とかってのは、概念というか、漫画作品において具体的な描写がはぐらかされるケースが多かったり(それが悪いわけではないです、作劇に必要なければ要らないです)、逆にソレを追い求めすぎて『ガラスの仮面』みたいに作品そのものがフリーズしてしまったりするんですけど、この作品における「幻の落語」はどんな描かれ方をするんでしょうか。

『あかね噺』4巻より(末永裕樹/馬上鷹将/集英社)

まだだいぶ先の話だろうとは思いますが、今から楽しみですね。

 

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#ラーメン赤猫 2巻 評論(ネタバレ注意)

ジャンプ+のインディーズ連載から好評につき異例のコミックス発刊、正式連載に昇格した作品。

ブラック企業を退職した人間・社 珠子(やしろ たまこ)が人づての紹介で次の職場として採用面接を受けたのは、猫と虎がラーメンを作り猫が接客する、猫と虎で営業するラーメン屋、「ラーメン赤猫」だった。

『ラーメン赤猫』2巻より(アンギャマン/集英社)

ラーメン丼に毛を落とせない従業員猫たちのブラッシング係、次いで皿洗いを任された社さんと猫たちの、お店日常もの。コメディに寄りつつ人情噺が中心。

本作の猫は人語を解し話しラーメンを作りラーメン屋を経営し、人間並の完全な人権は未整備っぽいものの店舗の経営ぐらいまでは社会から許されている世界観。

たぶんちゃんと納税もしてる。

『ラーメン赤猫』2巻より(アンギャマン/集英社)

主人公というか狂言回しヒロインが人間ということもあり、日常ものが自然、異種間コミュニケーションのお話に。

理屈をつければ「SDG's的な多様性を重視したお話」とも言えますが、教条めいた硬さや押し付けがましさを感じさせない、さらっとした優しいお話。

『ラーメン赤猫』2巻より(アンギャマン/集英社)

「ほっこり」って表現が嫌いな人もいることは存じ上げてはおりますが…そんな人は猫がラーメン屋やるような漫画そもそも読まないかw

ギスギスした社会に疲れた人間を癒してくれる、二重の意味でファンタジーなほっこり系です。

今巻も優しい単話エピソードを重ねつつ、ちょいちょい店員猫たちの過去話の深掘りなど、「お店人情もの」の王道展開。

『ラーメン赤猫』2巻より(アンギャマン/集英社)

ちょいちょい「悪役」を立てたお店のピンチに繋がりそうなトラブルもあるんですけど、解決が早いというか、猫店員たちの対応がしっかりしてて頼もしい。

『スラムダンク』の単行本で、エピソード間の幕間ページの丸コマの描き下ろし「一コマ漫画」が好評でしたが、この作品も幕間ページに丸コマの描き下ろし「一コマ漫画」が、しかも1ページに4〜5コマ収録されています。

『ラーメン赤猫』2巻より(アンギャマン/集英社)

数えてみたら2巻では描き下ろし一コマ漫画が45本も収録されていて、WEB連載で読んだ人にもお買い得な単行本。

こういう「深掘り」というより「浅掘りがたくさん」なおまけ漫画って、軽いんだけど作品のイメージが拡がって嬉しいですよね。

ラーメン屋で席にサービスで置いてる漬け物みたいw

 

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#ELDEN RING 黄金樹への道 1巻 評論(ネタバレ注意)

「死にゲー」で有名なフロム・ソフトウェアのオープンワールド「ライク」な大ヒットアクションRPG『エルデンリング』の公式コミカライズ。

『ELDEN RING 黄金樹への道』1巻より(飛田ニキイチ/KADOKAWA)

退廃的で陰鬱で重厚な雰囲気の世界観、かつて美しくも陰鬱な「狭間の地」から追われそして帰還した「褪せ人」を主人公に、王を目指して戦う血生臭くダークでシリアスな冒険を描く。

という原作ゲーム。

公式コミカライズはなぜかバカ系ギャグ漫画だった…

『ELDEN RING 黄金樹への道』1巻より(飛田ニキイチ/KADOKAWA)

なんでだよwww

と思わなくもないですが、原作を「真面目に」コミカライズしようと思ったら、重厚な超本格派のファンタジー戦記としての展開・描写が必要で、なかなか大変だったろうなと思います。暗いシーンが長大に続いてエンタメ性も低くなりそう。

奇策の変化球のようでいて、コミカライズするにあたっては唯一の解のような気もします。

まあ、成功例に対する後付けの結果論ですねw

『ELDEN RING 黄金樹への道』1巻より(飛田ニキイチ/KADOKAWA)

そもそも今更『エルデンリング』の販促にはならないわ、『エルデンリング』プレイヤーしか楽しめないわ、「そもそも誰得のコミカライズだよ」ってのは置いといてw

自分は『エルデンリング』既クリアなので楽しく読めてます。

ゲームで物言わぬキャラだった主人公はフンドシ一丁のツッコミキャラに。ボケなのかツッコミなのかハッキリしろよお前w

『ELDEN RING 黄金樹への道』1巻より(飛田ニキイチ/KADOKAWA)

キャラデザというか半分クリーチャー混ざったようなムサくてグロくて汚いキャラが多いゲームだった上に、キャラメイク可能だった主人公もフンドシ一丁の兄ちゃんになり、全体的に絵ヅラが汚い漫画ですが、数少ない女性キャラの描写は凛々しく美麗です。

原作ゲーでは二大ヒロインたるメリナ、ラニともに割りとクールで落ち着いたキャラでしたが、本作コミカライズのボケツッコミ時空に巻き込まれて、面白いのと併せてギャップ萌えでなんか可愛いですねw

『ELDEN RING 黄金樹への道』1巻より(飛田ニキイチ/KADOKAWA)

自分は存じ上げなかったんですが、WEB連載開始時のネットの反応を見るにギャグ畑で有名な作家さんらしく、冒頭のシリアスなカラーページを見ても画力もなかなか尋常じゃないですが、描いてる内容は完全にギャグ漫画、ノリとしては『ピューと吹く!シャガー』を彷彿とさせます。

1巻でまだゴドリックをクリアしてないぐらいの進展なので、完結まで時間がかかりそうな割りとじっくり(じっくりとは)ペースでやってますが、ギャグ漫画ということもあって進展はまあ割りと自由自在なんかな。

『ELDEN RING 黄金樹への道』1巻より(飛田ニキイチ/KADOKAWA)

ラダーンやマレニアを早く見たいね、っていうのと、メリメリとラニラニの出番が多いといいな、と、ファンとして。

 

blog.livedoor.jp

#ぷにるはかわいいスライム 2巻 評論(ネタバレ注意)

Amazonの商品紹介文(出版社のコメントでしょう)によると、「コロコロ史上初のラブコメ、ここに誕生!!」とのことです。

コタローが小学生時代に作ったスライムが生命を宿して7年、「ぷにる」と名付けられたスライムは中学生になったコタローと相変わらず暮らしていた…

『ぷにるはかわいいスライム』2巻より(まえだくん/小学館)

という、美少女オバQもの。

主人公が中学生というのはコロコロコミック的にはやや年長気味ですが、本誌ではなくWEB連載、「女の子に興味が出たら卒業」のコロコロコミック本誌より、もう少し想定読者層を上に拡げた日常ラブコメ作品。

『ぷにるはかわいいスライム』2巻より(まえだくん/小学館)

『ドラえもん』『オバケのQ太郎』などの藤子不二雄フォーマットは小学館の外も含めて多くのフォロワーを生み、一部作品は闖入した居候を美少女化・作品をラブコメ化したいわゆる「美少女オバQ」になりまして、他誌で珍しくもなくなった「美少女オバQ」フォーマットを、コロコロコミックが逆輸入、という構図。

経緯が経緯なので、連想して思い浮かぶ作品はたくさんあって、物質に美少女が顕現と言う意味では『かんなぎ』とか、無性別の人外との恋愛・性愛という意味では手塚治虫作品とか、ほのぼの牧歌的なジュブナイルのギャグコメディノリは『イカ娘』とかを彷彿とさせる作風。

『ぷにるはかわいいスライム』2巻より(まえだくん/小学館)

いかにも低年齢向けの人畜無害系のほのぼのギャグっぽい体裁ですけど、やってること『ちょびっツ』っぽいというかジュブナイルながら「美少女オバQ」に対する男の願望はきっちり込められていたり、ギャグコメやキャラ付けにも『ドラえもん』にも共通する狂気が潜んでいたりと、大人が読んでもなかなか楽しい作品。

『ぷにるはかわいいスライム』2巻より(まえだくん/小学館)

本来、大人向けに描かれているものではないので、(大人の)読者を選ぶところはありオチもユルいですが、『イカ娘』お好きであれば楽しめると思います。

2巻ということで、作品世界観やキャラのプレゼンテーションは前巻で終わって、通常クルージングに入っています。この作品の「通常クルージング」は、ヒロイン・ぷにるのスライム特性を活かして、エピソードのテーマごとにぷにるのルックスのバリエーションが変わる「ヒロイン七変化」。

裏テーマとして、主人公の少年・コタローの「可愛いものが好きだけど恥ずかしくて隠してしまう」思春期らしい精神性が、いつか超克する対象として描かれます。

『ぷにるはかわいいスライム』2巻より(まえだくん/小学館)

「裏テーマ」というほど隠されてもいないですけど。

「可愛い無性別の人外との淡く幼い恋愛未満」という、割りと業と含蓄の深いことをやってるとも言えます。

「可愛いと思う」「(性愛として)好きだと思う」とはなんなのか。

相手のルックスが好きなのか、相手の属性が好きなのか、相手の性格が好きなのか、すべてひっくるめてあるがままの相手の実存が好きなのか。

『ぷにるはかわいいスライム』2巻より(まえだくん/小学館)

MOBがある意味、一つの答えを言っちゃってんですけどw

大人が雑に読んだら「ユルくてぷにるが可愛いだけの漫画」ですけど、児童向けの名作は往々にして「空想の余地」「思索の余地」とのバーターで業が深いテーマを懐に抱えているもので、この作品にもその萌芽が見られます。

いつになるかわかりませんがラストはおそらく「日常が続いていくエンド」だろうと思いますが、「泣ける最終回」のバリエーションを勝手にあれこれ空想してしまいすね。

 

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#悪いが私は百合じゃない 4巻 評論(ネタバレ注意)

女子校に通ういつみは男性教師に片想い中。想いを叶えようと、いけないサイトで手に入れた惚れ薬を、

とりあえずいけ好かないお嬢様委員長に試しに飲ませてみたところ効果覿面すぎて委員長は性欲丸出しでいつみに襲いかかってきた!

というバカ百合コメ。まじバカなんですけどこの漫画。

『悪いが私は百合じゃない』4巻より(もちオーレ/KADOKAWA)

その後も困ったらその場凌ぎに相手に惚れ薬を飲ませてなんとかしようとする同じような展開が毎回続き、三股四股五股と頭の悪い百合の多角関係が増えていく。まじバカなんですけどこの漫画。

ただでさえ漫画としてバカなのにヒロインは人間のクズ丸出しで、友人はゴミクズという、どういう百合漫画なのこれはw

『悪いが私は百合じゃない』4巻より(もちオーレ/KADOKAWA)

ほぼ百合をモチーフにした作品しか描いてない作家さんですけど、一般的に一途でピュアなキャラ描写・青春描写が多い百合漫画界隈にあって、一貫して性欲・肉欲・エロ目線に基づいてキャラが動く、一般商業漫画の範囲では異端の百合作家。

一応、作中で18禁な直接的なエロ描写はないです、念の為。

『悪いが私は百合じゃない』4巻より(もちオーレ/KADOKAWA)

今巻は、えーと、なんだこりゃ、不登校のクラスメイト、ヤクザの娘を登校させるために、お嬢様委員長と一緒に説得に行ったところ、ケイドロ勝負で勝ったらヤクザの娘が登校するということで、ヤクザの娘のペットのプロの殺し屋相手にケイドロをすることに。

この文章、意味わかんないですよね。俺も書いてて意味がわからないです。

『悪いが私は百合じゃない』4巻より(もちオーレ/KADOKAWA)

ドロボウを捕まえるためにケイサツが軽トラで轢くのはケイドロじゃないと思う。

『悪いが私は百合じゃない』って当たり前だよ!www

こんなの百合じゃないよ!www

『悪いが私は百合じゃない』4巻より(もちオーレ/KADOKAWA)

俺らは一体何を読まされてんだよ!www

 

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#宝石の国 12巻 評論(ネタバレ注意)

「先生」と呼ばれるお坊さんと28人の宝石たちが暮らす地球。彼らは月から宝石を攫いにくる「月人」たちを撃退しながら数千年の時を過ごしていた。宝石たちの中で最も若年のフォスフォフィライトは戦いで身体を欠損する度に、記憶と人格を少しずつ失い、別の宝石で補修したパーツの記憶や能力で、先生と月人、世界に対する疑いを強めていく…

『宝石の国』12巻より(市川春子/講談社)

そそのかした8人の宝石たちと一緒に月に移住したフォス、残された宝石たちに真実を語る先生。

願いの成就の為に硬軟あらゆる策で繰り返し月から地球へ出撃するフォス。TV版エヴァの終盤のように終末に向けてキャラ同士が傷つけ合う描写が延々と続く。

『宝石の国』12巻より(市川春子/講談社)

複雑に類似するデザインとややこしい名前を持つキャラクターたちによる二転三転の複雑な展開、二年も間が空いた刊行と、「細かい話、憶えてるかな…全巻読み返した方がいいかな…」と不安でしたが、新刊を読んでみると杞憂でした。

もはやキャラ群を個として認識する必要はなく、「フォスフォフィライトと、それ以外」のシンプルな区別さえつけばよく、それは容易です。

『宝石の国』12巻より(市川春子/講談社)

今巻中で更に1万年が経ちました。

もはや自分が読み始めて好きになった頃の『宝石の国』ではなくなってしまっていますが、低くない確率で「作者は最初からこうする予定だった」と認識した上であのちょっとしたブームを振り返ると少し可笑しくなります。

『宝石の国』12巻より(市川春子/講談社)

まだこの作品を読み続けている読者がどんな心持ちで読んでいるんだろうかと、気になるような気にならないような感じです。

自分の今巻の感想としては、

・これでもまだ完結しないのか

『宝石の国』12巻より(市川春子/講談社)

・(フォスフォフィライトのように怒りながら)今更そんな話をされたって全てが遅いし、もつれて解きほぐせなくなった糸は、一度全部、燃やすしかないように見える

・進化した先の未来の人々が、過去や進化に対して感謝するとは限らない

というもので、およそ漫画を読んでこんな感想を覚える作品は確かに他になく、稀有な作品であることだけは否定できません。

数万年かけた種の世代交代と進化を超えた、人類の緩慢な自殺のような話。

『宝石の国』12巻より(市川春子/講談社)

もはや読んでいてたいして楽しくも面白くもありませんが、美しいのかも知れず、また「作者と読者を傷つけ続けるこの作品が最期に何を語るのか」、好奇心に抗うことができません。

 

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#神さまがまちガえる 2巻 評論(ネタバレ注意)

百合漫画『やがて君になる』の作者の新作。

ほぼ現代の日本。世界は少し、おかしくなった。

異常気象ならぬ、異常現象・超常現象が断続的に起こるように。

「周期性例外事象」、通称「バグ」。

『神さまがまちガえる』2巻より(仲谷鳰/KADOKAWA)

ある時は1日が27時間になったり、ある時は人類全員が突然迷子になったり。

大規模・影響大なバグは短期で収束し、逆に小規模・影響小なバグは長期化する傾向に。政府の「例外庁」が収束予測を発表する世界。

主人公の中学生男子の"紺"は親元を離れて(?)シェアハウスに下宿。

ヒロインの、シェアハウスの大家の美女"かさね"は、兼業で大学の教員・バグの研究者。

『神さまがまちガえる』2巻より(仲谷鳰/KADOKAWA)

世界規模で起こるバグは当然、彼らが暮らすシェアハウスや紺の通う中学校でも発生し、今日も紺はかさねの助手として、バグの不思議と向き合うのだった。

という、非日常を舞台にした日常もの。

今のところ発生するバグは人死にが出たりする深刻なものではなく、「神様が地球にいたずらしたような」ものが中心。

作品全体のテイストものほほんとした日常ものテイストで、主人公たちが解決に向けて活躍する、というよりは「わー、ちょっと困るけど、おもしろーいw」とリアクションしてる間にバグが勝手に解消するものがほとんどです。

『猫が西向きゃ』を読んだことがあれば、「ああいう感じ」で通じるかな。

『神さまがまちガえる』2巻より(仲谷鳰/KADOKAWA)

ざっくり言うと「おねショタSF日常もの」、と形容して良いと思います。「おねショタ」という言葉が想起させるほど恋愛要素はなく「仲良し」ぐらいの匙加減。

今巻のバグのお題は

・すべて(?)の民家の部屋数が増殖しダンジョン化

・あらゆる物体が壊れなくなる

・すべての人類が眠れなくなる(眠る必要がなくなる)

・特定の種のミジンコが縞模様になる

・(回想エピソード中編)紺とかさねの出会い

いや、びっくりしましたね。

『神さまがまちガえる』2巻より(仲谷鳰/KADOKAWA)

叙述トリックではないけれど、「叙述トリック的」とでもいうか。

「狂言回し」自身が狂言だった、「観測者」自身が事象そのものだった、みたいな展開。

我々がなんの疑問もなく信じている、実はあやふやな「実存」のあり得る可能性、存在のスリリングな真実。もう一つの特異点。

正直、1〜2巻を「前後編」「上下巻」として、このまま完結としてしまっても、フリが効いたショートSF中々の良作であるように、最後のページに「完」と描かれていても自分は満足したように思います。

終わったと解釈できなくもない今巻の終わり方でしたが、「完」の文字もあとがきもなかったので、おそらく3巻も出るんだろうと思いますが、これ以上なにを描くのかな、と思わないでもないです。

『神さまがまちガえる』2巻より(仲谷鳰/KADOKAWA)

「成人と中学生のおねショタ匂わせなSFラブコメ日常もの」として続いていくのかしらん。

それとも今回提示された「設定」を活かした更なる展開が待っているんでしょうか。

特異点ヒロイン・かさねの、特異点たる由縁が、まだ謎と言えば謎ではあるんですが。

 

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#ぼっち・ざ・ろっく! 5巻 評論(ネタバレ注意)

内気で引っ込み思案な少女・ひとり、通称"ぼっち"が、陰キャな自分をなんとかしようと中学1年で一念発起、ギターの練習を始め毎日6時間を欠かさず2年。アカウント「ギターヒーロー」としてネットのギターソロ「弾いてみた」系動画のカリスマにはなったものの、ぼっちのまま中学卒業。

『ぼっち・ざ・ろっく!』5巻より(はまじあき/芳文社)

頭2つあって何に使うんだよ。

高校デビューを目論んでギターケース背負って登校するも誰からも声をかけられず、公園で途方に暮れてるところを女子高生にナンパされ、「ギターヒーロー」と気がつかれないまま、その足で下北沢のライブハウスでバンドデビュー。

ぼっちの多事多難なバンド人生が始まった…!

『ぼっち・ざ・ろっく!』5巻より(はまじあき/芳文社)

な感じのコメディ4コマ。

コミュ障の凄腕ギタリスト少女ということで「けいおん!」の唯と真逆のスタート。夢はバンドでプロデビューして高校中退。

前巻で「フェス編」が終了。

今巻はスカウトされての「レーベル(デビュー)編」。

『ぼっち・ざ・ろっく!』5巻より(はまじあき/芳文社)

ぼっちたち「結束バンド」がスカウトされたのは古くて小さな雑居ビルに事務所を構える、大手とは言えないレーベルだったが、さすがにその道のプロだった。

夏休みが終わって高校の二学期も始まりつつも、結束バンドはアルバムデビューすべく作詞・作曲・編曲・スタジオレコーディング、そしてMV撮影に挑むこととなったが…

高校生で曲がりなりにもプロデビューって結構すごいことだと思うんですけど、デッカい野望の割りにぼっちの陰キャっぷりは相変わらず留まることを知らず。

『ぼっち・ざ・ろっく!』5巻より(はまじあき/芳文社)

いいなコレ、ぼっちがぼっちのままメジャーになってデカい舞台や「ミュージックステーション」や「紅白歌合戦」の控え室でぷるぷるしながら出番を待ってるところをぜひ見たいw

巻の後半1/3ぐらいは非4コマの番外編。描き下ろしかな。

結束バンドでドラムを務める虹夏と、12歳差の姉・星歌の伊地知姉妹の、9歳と21歳の頃の過去エピソード。

重たい話ですが引きずりすぎず、悲しい話ですが決して珍しい話ではなく、思春期の家族あるあると、二度と戻れない後悔、残された約束。

『ぼっち・ざ・ろっく!』5巻より(はまじあき/芳文社)

不意打ちズルいぞ、こんな引き出しあるなんて聞いてねえぞ。

こっちはギャグコメ4コマ『ぼっち・ざ・ろっく!』を泣くつもりで読んでなかったんだぞ。

 

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