#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 16巻 評論(ネタバレ注意)

架空の自治体、岡島県・町山市が舞台、岡島県警 町山警察署 町山交番に配属された新人女性警察官・川合麻依と、彼女を取り巻く町山警察署の先輩・上司の警察官たちが織りなす、警察官お仕事漫画。

元警察官が描き、「パトレイバー」「踊る大捜査線」の香りのするギャグコメディに溢れた日常要素と、生々しくダークネスな事件や人間の側面が同居する奇妙な作品。

今一番面白い漫画の一つじゃないかなと思います。

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「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」16巻より(泰三子/講談社)

前巻までの長編エピソードもあらかた片付いて、今巻はコメディ主体の一話完結エピソード群ながら、この作品の一話完結は後の伏線になってるケースが多く油断ができません。なんてことなかったはずの描写が事件に膨らんでいったりします。

また問題回、「最後の昼餐」「聖子の知らない物語」を収録。こちらは一転してシリアス、不穏、憂鬱。

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「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」16巻より(泰三子/講談社)

およそ一冊の中での上がり下がりとは思えない、単話完結なのにジェットコースターみたいな。

特筆すべきはこの情緒不安定な印象が、作者の未熟さゆえではなく、作者の完璧なコントロール下に置かれた上でのことだと思われることです。

我々は作者の掌の上で、笑わされたり、憂鬱にさせられたり、愛すべきキャラたちの行く末を案じさせられたり、先々の展開に不安を覚えさせられたりします。すべて作者の計算通りに。

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「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」16巻より(泰三子/講談社)

忸怩たる思いもなく、作者に驚きを伴って転がされることを心地よくすら感じます。

自分は毎週木曜0時の新話の公開(有料)に飛びつくように読んでいます。そうする価値のある漫画だと思っています。木曜0時はヤンジャンも発売されるので至福ですね。

連載で一度読んだ話にも関わらず、今巻も面白かったし、ただひたすらに早く次巻が読みたいです。

 

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#宇崎ちゃんは遊びたい! 6巻 評論(ネタバレ注意)

既にラノベ風のタイトルをあえてラノベ風にすると「目ツキ悪くてボッチ好きの俺の後輩がバカうざ可愛い"ッス"口調のショートカット構ってちゃんチビ巨乳のわけがない」という感じ。

学祭の占い屋の恋占いで互いに異性として意識を強めてしまったサクと宇崎ちゃん!特に宇崎ちゃんは完全に調子こいて告られ待ちモードになっていた!友人やバイト先のギャラリー陣はイラッときた!そして相変わらず宇崎ちゃん母は一人勘違いを続けていた!

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「宇崎ちゃんは遊びたい!」6巻より(丈/KADOKAWA)

ちょっとウマ娘に時間取られて読むのと感想書くのが間が空いてしまいました。ユーザの財布と時間とディスプレイを奪い合う漫画のライバルは、漫画じゃなくてソシャゲってホントだな、と身をもって感じます。

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「宇崎ちゃんは遊びたい!」6巻より(丈/KADOKAWA)

アニメの二期が決まったんだそうで、おめでとうございます。

出オチのラブコメなのでパンチ力は有っても長続きは難しいだろうと思ってたんですけど、最近の漫画家さんは出オチから更に風呂敷広げて長く楽しませるのが上手ですね。

あんまりご無理し過ぎずに、でも楽しみです。

今巻も引き続き「宇崎様は告らせたい〜マッチョと巨乳の恋愛頭脳戦〜」みたいな花。

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「宇崎ちゃんは遊びたい!」6巻より(丈/KADOKAWA)

なぜか榊がすっかり早坂ポジションにw

その他、今巻である程度 宇崎家のエピソードが一巡して、今度は謎に包まれたサクの実家にスポット。

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「宇崎ちゃんは遊びたい!」6巻より(丈/KADOKAWA)

ええ〜w

サクの実家エピソードと、サクと花の高校時代の過去エピソードがもつれるように次巻に続く。

 

 

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#ゴールデンカムイ 25巻 評論(ネタバレ注意)

明治40年前後の北海道が舞台。日露戦争の二〇三高地で超人的な活躍をして「不死身の杉元」と呼ばれたけど上官半殺しにしてクビになった元軍人とアイヌの少女・アシリパのコンビを主人公に、網走監獄の囚人たちの刺青に刻まれたアイヌの隠し大金塊の地図を巡る血生臭い冒険もの。

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「ゴールデンカムイ」25巻より(野田サトル/集英社)

金塊を争う勢力は

①土方歳三一派
②鶴見中尉一派
③杉元・アシリパ一派
④海賊房太郎一派
⑤ソフィア一派

ですが、同盟などで段々と二極化に近づいていて、最終決戦・完結も遠くなさそうな塩梅です。これ的なこと毎回言ってんな。

札幌で活動する2人の無差別殺人者(うち一人は刺青持ち)を巡って全ての勢力が札幌に集結。

ジャック・ザ・リッパーの次の犯行地点予想と刺青の真贋を巡って高度な情報戦が交わされる中、アシリパはこの争いが終わった後のことを考え始めていた…

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「ゴールデンカムイ」25巻より(野田サトル/集英社)

そして札幌で火花を散らす、不死身の杉元vs老・土方歳三。

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「ゴールデンカムイ」25巻より(野田サトル/集英社)

&不死身の杉元vs老・永倉新八。

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「ゴールデンカムイ」25巻より(野田サトル/集英社)

石川啄木が良い活躍をしましたね。本当にバッタになればいいのに。

次巻、札幌麦酒工場を舞台に全勢力が入り乱れるバトルが本格化する予感。まだ最終戦って感じではないですね。その前哨戦というところ。

北海道の自然に始まり、争奪戦の頭脳戦にアクションに、無殺別殺人者の追跡に、過去の因縁に、と今巻もスリリングに読み応えのある巻でした。

そういえば札幌が舞台の中心ということもあり、今巻は珍しくジビエグルメがなかったような?

珍しくというか、初めてかな?

 

 

 

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#葬送のフリーレン 4巻 評論(ネタバレ注意)

80年前、魔王を打ち倒し平和をもたらした伝説のパーティ。

勇者ヒンメル。戦士アイゼン。僧侶ハイター。魔法使いフリーレン。

王都に凱旋した彼らには、世界を救った功績に対する歓待と、その後の長く平和な人生が待っていた。

80年が経ち、勇者も僧侶も寿命で世を去り、戦士のドワーフも老いた中、長命種エルフの魔法使いフリーレンだけがひとり変わることなく魔法を求めて彷徨いながら、かつての仲間の死と追憶に触れていく異色のファンタジーもの。

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「葬送のフリーレン」4巻より(山田鐘人/アベツカサ)

ヒロインからしたら一瞬にすぎない間しか同じ時間を過ごせない、エルフと人間の寿命と時間感覚のギャップの哀愁を淡々と。

突然現れて各所で評判で、少年サンデーのエースの座に居座った感がありますね。

前巻の続き、旅の途中で立ち寄った村で燻っている僧侶・破戒僧の男をパーティーに誘うフリーレン。そこには彼女のある想いがあった…

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「葬送のフリーレン」4巻より(山田鐘人/アベツカサ)

読者かよお前はw

いわゆる「普通」に歳をとって死んでいく人間ですけど、それ故にフリーレンが持たない魅力を持つナイスなキャラです。

定番展開ならなんだかんだの挙句仲間に加わるものですが、この作者は少し変わった味付けをしてきそうな気がしますね。

この男は旅を共にすることになるでしょうか。表紙が少しネタバレですけれども。

その他のエピソードも、短いエピソードを繋ぎながらい〜いエピソードばっかだなコレ。

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「葬送のフリーレン」4巻より(山田鐘人/アベツカサ)

アニメ化されたら、こことか尺をとってピアノかバイオリンのソロの劇伴で盛り上げて…とかついついあれこれ夢想してしまいますが、淡々としてるところがこの作品の味でもあるんで悩ましいところです。

いや、俺がアニメ作るわけじゃないんですけどw

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「葬送のフリーレン」4巻より(山田鐘人/アベツカサ)

ここのヒンメルの心中に思いを馳せると、もうさあ…切ねーんだよイチイチ。

しんみりと切ない系だけが売りじゃなくて、ギャグもスンッとしていつつもキレてていいんですよね。この漫画。

不老長寿のエルフのフリーレンを鏡のように使って、儚く短い人の営みを映して見せる作品ですが、次巻はエキサイティングな予感漂う、旅の通行許可のために渋々一級魔法使い試験編のようです。

ハンター試験みたいというか、

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「葬送のフリーレン」4巻より(山田鐘人/アベツカサ)

ヒソカみたいなんおるでオイ。

 

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#男子高校生を養いたいお姉さんの話 9巻 評論(ネタバレ注意)

親が蒸発、借金とともに残された可愛い顔の男子高校生・実が、マンションの隣の部屋の氏名不詳・職業不詳のクレイジーサイコ巨乳美人のお姉さんに養われる話。実が好きすぎて少し頭がおかしいのが7割とどこからか無尽蔵に金が出てくるのが2割以外は基本的に天然おっとりお姉さんなので微笑ましく読める癒し系。

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「男子高校生を養いたいお姉さんの話」9巻より(英貴/講談社)

短く読みやすくくだらなく楽しく毎回4ページをハイテンションな全力疾走で駆け抜けて黄金のワンパターンをゴリ押ししてくる日常バカコメ。

1話4ページで9巻ってすごいな。

作りとしては昭和テイストのドタバタ系のボケに対して平成・令和のツッコミが入る面白さ、と言う感じです。

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「男子高校生を養いたいお姉さんの話」9巻より(英貴/講談社)

難しいこと言ってる漫画でも考える漫画でもないので、気軽に楽しめます…と思ったら、

今巻は2人に横恋慕する立場のサブヒロインで実の従姉の花ちゃんのエピソードが良かったです。

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「男子高校生を養いたいお姉さんの話」9巻より(英貴/講談社)

花ちゃん、立派に戦ったよ…ちょっとグッときたけど、すぐにいつものコメディに飲み込まれてしまいましたw

実が18歳になってもう婚姻とかいろいろ洒落にならなくなってきて「ああ、時間流れるラブコメだったわ」ということで、実が「男子高校生」でなくなるそう遠くない未来にこの作品も完結でしょうか?

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「男子高校生を養いたいお姉さんの話」9巻より(英貴/講談社)

ラブコメあるあるで、サブヒロインに片をつけ始めたら終わりの予感、という気もします。

ずっと読んでいたい漫画なので、既に今から少し寂しいね。

 

 

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#呪術廻戦 15巻 評論(ネタバレ注意)

呪術・呪霊をめぐって特殊訓練教育機関な学園もの要素もありのダークな能力バトル漫画。ギャグコメ系の変化球な会話芸・顔芸と、直球シリアス展開のギャップ。

第126話「渋谷事変43」〜第133話「渋谷事変50」ということで、引き続き1巻丸ごと渋谷事変の途中。何かって言うと悪玉集団が渋谷で起こした大規模テロで、味方側も総動員の大規模バトル。

主人公の師匠で作中最強キャラの五条が封印されてピーチ姫状態、殲滅戦が五条救出作戦に移行。

リアルで丸一年「渋谷事変」をやってることになります。

さすがに双方の構成メンバーもどんどん脱落していって、今巻は主人公の虎杖vs悪役副将クラスの真人の対決を延々と。仲間の次々の死に壊れていく虎杖の心。

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「呪術廻戦」15巻より(芥見下々/集英社)

彼のピンチを救い振るい立たせたのは、参戦した東堂だった。2vs1に。

ストーリーとしてはまあ、バトルしてるだけなんですけど。1年も続くとさすがに「これアニメ化するときどーすんだろ」とは思わなくもない。

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「呪術廻戦」15巻より(芥見下々/集英社)

バトルしかやってないこともあってバトル描写は相変わらず熱くてかっこいいです。

おまけ漫画で求道的に作者が設定をこねくり回してんですけど、正直なにを言っているのかはよくわからない。

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「呪術廻戦」15巻より(芥見下々/集英社)

よく動く絵だな。

作品全体の中の中盤戦の位置付けかと思うですけど、思いのほか長いのと、主要キャラがよー死ぬなっていう。

 

 

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#ウマ娘 シンデレラグレイ 1~2巻 評論(ネタバレ注意)

うちのブログは本来、漫画感想ブログなんですけど、先月末以来、ソシャゲの「ウマ娘」にハマってしまいまして、漫画の感想そっちのけでウマ娘の感想やら攻略やらばっかり書いてしまいまして。

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本分を忘れて流行に流されてウマ娘のことばっかり考えるのは良くないな、と反省しまして、今日はちゃんと読んだ漫画の感想を書きたいと思います。

今日取り上げる作品は、えー、「ウマ娘 シンデレラグレイ」1〜2巻です。

結局ウマ娘かーい。ってタイトルでバレてるというね。

 

1巻も発売当時に読んだんですけど、いくつかの理由で感想記事を書きませんでした。

・ウマ娘の世界観にハマりきれなかった

・1巻終わりがいかにも「エピソードの途中」で、続きを読んでからの方がよさそうに思った

・ヤンジャンのゲームコラボ作品が「商機の切れ目が縁の切れ目」感があって、あんまり信用していない

人間なのかウマなのか、人権とか納税とかどうなってますか?って余計なとこが気になっちゃって。

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「ウマ娘 シンデレラグレイ」1巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames)

その後、めでたくソシャゲ版がリリースされ、自分はウマ娘にハマり倒し、世界観に違和感も感じなくなり、エピソードは2巻でキリのいいところまで進み、どうやらこの作品はソシャゲの人気も背景に気合を入れた作品になっていきそうだ、ということで、感想記事を書こうと思いました。

要するに2巻が面白かったです。

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「ウマ娘 シンデレラグレイ」1巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames)

史実を知ってる人向けの説明になりますが、オグリキャップが中央に行く前、地方競技場のカサマツでひっそりとデビューし、才能を見出され、カサマツを卒業するまでのエピソード「カサマツ編」が2巻で完結。

次巻から「中央編(仮)」になるとことです。

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「ウマ娘 シンデレラグレイ」2巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames)

ウマ娘やってる人向けに言うと、オグリキャップが中央トレセン学園に移ってくる前の話になります。

1巻だけだと、地味な地方競技場でジト目で天然系のオグリが才能の片鱗を見せつけて俺TUEEEEしかけてる途中で終わるので、2巻まとめて読むともっと楽しめるかなと思います。

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「ウマ娘 シンデレラグレイ」2巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames)

ネタバレもクソも、史実のオグリキャップになぞらえた展開の話ですが、漫画上では地方の三流トレーナーが突然、国の宝のような才能を持つウマ娘と出会う話。

圧倒的な才能という魔性によって、夢を誓いあい一緒に走っていた者たちが、置いて行く者と置いて行かれる者に分かたれるお話。

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「ウマ娘 シンデレラグレイ」2巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames)

所詮はゲームコラボのスピンオフだとタカを括ってナメてかかると、意外とヤられます。

ハルウララのシナリオのように。

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「ウマ娘 シンデレラグレイ」2巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames)

 

 

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(選書参考)

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FSS (NT2021年4月号 第17巻相当) 評論(ネタバレ注意)

ファイブスター物語、連続掲載継続中。

「第6話 時の詩女 アクト4-4 カーマントーの灯火 Both 3062」。

扉絵コミで13ページ。

  

他の号はこちらから。

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  • (宣伝)
  • (余談)
  • (扉絵)
  • (本編)
  • (所感)
    • エスト
    • メヨーヨ朝廷
    • ダイアモンド・ニュー
    • デモール
    • アウクソーとデルタベルン
    • マキシ

以下、宣伝と余談のあとにネタバレ情報を含んで論評しますので閲覧ご注意。

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#うちの師匠はしっぽがない 5巻 評論(ネタバレ注意)

大正時代、淡路島の豆狸・通称「まめだ」は、おつかいで訪れた大阪で禁を破って人間を化かす気満々ながら上手くいかない。

化かし損なったボブカットのモダンガールを尾けて行った先は落語の寄席、彼女は狐が人に化け大黒亭文孤を名乗る落語家。言葉で人間を化かすような文孤の落語に魅せられた"まめだ"は押しかけ弟子として文孤のもとで落語家を目指す。

大正浪漫で上方落語なファンタジーコメディ。

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「うちの師匠はしっぽがない」5巻より(TNSK/講談社)

前巻までで試練を乗り越えて関係各所に大黒屋の弟子として正式に認められ、前座に出世。有馬記念に興行出張、まめだの身体に現れ始めた異変、若手落語家の演芸大会、そして長編エピソード「地獄八景亡者戯」へ。

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「うちの師匠はしっぽがない」5巻より(TNSK/講談社)

相変わらず落語にかける情熱をテーマに、落語の噺をモチーフとして巧みに絡めて進める出来は出色。キュートでポップな絵、温泉回もあるよ!

ですが、巣立ちの予感が語られたり、まめだに変調が起こり始めたり、長編エピソードに突入したりと、終わりの予感がしてこなくもない。

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落語の噺をネタ元のモチーフとして使うのは、ネタが無限にあって作劇に苦労しないもんなのか、それとも難度も負担も高いものなのか。落語に詳しくなくてわからないですが。

最初っから疑問なんですけど、作品タイトル「うちの師匠はしっぽがない」の「うちの師匠」とは誰のことでしょうか。当初は文狐が実はただの人間だったというオチかなとも思ったんですが、もしかしたらまめだのことかもしれないな、と思い始めたり。

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「うちの師匠はしっぽがない」5巻より(TNSK/講談社)

いずれにしろ、間違いなく最終回で回収されるタイトルだと思います。

 

 

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#怪獣8号 2巻 評論(ネタバレ注意)

現代、ただし頻繁に怪獣に襲来され「怪獣大国」となった日本。「防衛隊」が組織され、襲来の都度、怪獣を討伐することで社会が保たれていた。

かつての防衛隊志望に挫折した怪獣死体処理清掃業者・日比野カフカ(33♂)は、防衛隊志望の後輩に触発され再び入隊試験受験を決意するものの、いろいろあって人間サイズの怪獣に変身する体質となってしまう。

目撃情報から防衛隊に「怪獣8号」として指名手配されたまま、怪獣変身体質を隠したカフカの防衛隊入隊受験が始まった。

という、「SF」でいんだよねこれ。「バトル」もつけていいんかしら。

前巻後半の入隊試験で起こった、倒した怪獣が蘇るアクシデントで試験は大混乱。サブヒロインでエリート候補のキコルも絶体絶命のピンチ!

というタイミングで変身したカフカ登場!

王道ですね。

結局試験結果はカフカは見習い扱いの候補生としてギリギリ合格。その裏にはカフカを不審がる副隊長の意向が働いていた…

入隊後の新人同士の親睦も深まりつつ、

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「怪獣8号」2巻より(松本直也/集英社)

ついに初任務、初の出動へ。

という2巻。

変身ダークヒーローな主人公、清掃業者の後輩で同期入隊のイケメン、高嶺の花のメインヒロイン、フレンドリーツンデレなサブヒロイン、リヴァイっぽい副隊長と、キャラ造形で多く設けられたフックをシリアスとコメディの両面で動かす、楽しくかっこいいバトルもの、という感じ。

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「怪獣8号」2巻より(松本直也/集英社)

銃の描写もなかなかいいですよね。ちょっとデカいけどゴツくて。

今後も「身バレのリスクを伴うヒーローの変身」というカードをどこでどう切ってくるか、が切り札として作用してカタルシスの量が決まる感じかな。

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「怪獣8号」2巻より(松本直也/集英社)

隊員Aにバレるカード、Bにバレるカード、副隊長にバレるカード、隊長にバレるカード、みんなにバレるカードと、同じ展開でもカードを切る相手が変わるごとに美味しそうで、良い設定だなコレ。

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「怪獣8号」2巻より(松本直也/集英社)

ピンチのクライマックスにヒーロー登場という、作劇自体は時代劇のようにオーソドックスですけど、オーソドックスの良さを存分に活かしてスカッと熱く。かっこいいわ。

 

 

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#空挺ドラゴンズ 10巻 評論(ネタバレ注意)

空飛ぶ龍を捕龍船(飛空艇)で狩る「龍捕り(おろちとり)」にまつわるファンタジー。狩った龍は解体して売ったり食ったりする。若干、風の谷の天空のなにか風味。

クィン・ザザ号の大規模修理で身を持て余す一行は、世話になってる工場のよその船の完成セレモニーにドレスアップして参加。

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「空挺ドラゴンズ」9巻より(桑原太矩)

野外パーティで料理に舌鼓を打ってる最中、ヴァニーが姿を消す。

彼女には、龍に眠らされた故郷の国・アレーナから「迎え」が来ていたミカたちは選抜メンバーで彼女の行方を追う。


最近、「ウマ娘」にどっぷりハマっていて、何を見てもウマ娘のことを考えてしまいます。

ウマ娘にはサラブレットのサイアーラインをモチーフとした「継承」というシステムがあります。強いウマ娘の持っていた素質(想い)が受け継がれていく、というシステム。

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「空挺ドラゴンズ」9巻より(桑原太矩)


ぶっちゃけた、この「空挺ドラゴンズ」は宮崎駿作品のテイストにとてもよく似ていて、しばしば批判や揶揄の対象にもなります。

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「空挺ドラゴンズ」9巻より(桑原太矩)

宮崎の精神性は複雑で難解なので置いておいて、ワイルドでどこかノスタルジックな世界観や空への憧れは、唯一無二と思われた宮崎のテイストを見事に継承しているように思います。。

この作者が宮崎駿とどういう関係なのか、ジブリの出身者なのか、ただの宮崎ファンの赤の他人なのか私は知りません。

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「空挺ドラゴンズ」9巻より(桑原太矩)

でも、もはや今後の多作を望むべくもない宮崎のテイストを継承してこうやって新たな作品を創ってくれることは、なんてんだろ「血の繋がらない弟子」とでもいうか、宮崎の因子が確実に遺されているように感じてむしろ心強く思います。


「金を遺して三流、仕事を遺して二流、人を遺して一流」とよく言いますが、自分も歳のせいか、独身で子どももいないせいか、「他人に影響を与えたい」「自分の生き方の因子を他人に遺したい」という、若い頃には思いもしなかった欲が生まれて、自分でも少々驚きます。

そういう意味で、「ウマ娘」で育てたウマを継承元としてフォロワーにレンタルできる仕組みというは、代償行為としてよくできてるなと思います。

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この作者のように(おそらく)宮崎本人の知らないところで良い意味で影響を受けて、因子を継いでくれるような優れた人間がいたら、自分が宮崎だったら「俺のパクリやんけ」なんてつまんないこと思う前に、嬉しくでしょうがないけどな。

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「空挺ドラゴンズ」9巻より(桑原太矩)

なんの話でしたっけ。

そうそう、空挺ドラゴンズはいいぞ、って話です。

 

あとウマ娘もいいぞ。

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#手品先輩 8巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

いい笑顔。

部活強制の高校に入学した1年生男子「助手」が、ちょっと覗いた奇術部にいたのは手品大好きだけどアガリ症で人前じゃろくに手品が出来ないポンコツ巨乳美少女の「先輩」だった、1話6ページのショートギャグコメディ。ポンコツだけど楽しそうに手品に興じる可愛い先輩を愛でる漫画。

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「手品先輩」8巻より(アズ/講談社)

「美少女とニッチな趣味の世界に」という趣味ものコメディはたくさんあって、コメディを引っ張る存在のヒロインはどこかポンコツ要素があるもんですが、メインテーマである手品そのものに対してポンコツという、趣味ものとして崩壊してるかわりに下品をぶっこんでエロくだらなパンチラ可愛おもしろい、よくわからない漫画に。

アニメ化もしたんでしたっけか。

今巻で完結。

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「手品先輩」8巻より(アズ/講談社)

先輩の高校卒業をもって完結します。

くだらないドタバタエロコメを気軽に楽しめる作品でしたけど、卒業にからめたエピソードは散りばめられているものの、最後までいつものノリは変わることなく。

ネタバレですけど、最終回をエモく盛り上げるでもなく、先輩と助手がくっつくでもなく「楽しい日常は続いていくエンド」。

癖(へき)というべきかもしれませんけど、こういう軽めのギャグコメディ作品の、日常ものの節を通したあっさりした最終回って、逆に読んでて切なくなるんですよね。

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「手品先輩」8巻より(アズ/講談社)

むかし「ぎゅわんぶらあ自己中心派」って軽めの麻雀漫画があったんですけど、あれも軽めながら「ああ、もう読めなくなっちゃうんだ…」って切なくなる、あっさりした良い最終回だった。

この作品も、いろんな賞やランキングで派手に上位を飾って歴史に残るような大作では決してなかったですけど、いつもそこにあった手品先輩がもう読めないかと思うと寂しいです。

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「手品先輩」8巻より(アズ/講談社)

1巻1話で一人ぼっちで手品の練習をして人前で緊張して手品の失敗ばっかりしていた先輩が、最後はたくさんの仲間に囲まれて卒業して、よかったね。

折しも発売日も卒業シーズンの、良い日だ。

ご卒業、おめでとうございます。楽しそうに手品を失敗する先輩にもう会えないと思うと寂しいです。

 

 

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#チェンソーマン 11巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

父親の借金を背負って臓器を売りながら生き延びてきた野良犬少年デンジ。悪魔ポチタとコンビを組んでヤクザの下で搾取されながら悪魔狩りを営むもヤクザが悪魔に乗っ取られ絶体絶命のピンチ。

ポチタと融合してヤクザを皆殺しにしたデンジは、チェーンソーの悪魔として美少女・マキマにスカウトされ、美少女魔人・パワーと組んで公安デビルハンターとして悪魔と戦っていく。

 

今巻で完結。

「北斗の拳」の主題歌も「愛をとりもどせ!!」だったよな、と思いました。

 

作品としてのクライマックスは前巻10巻で、今巻はラスボスとの激しいラストバトルが描かれながらも、一冊かけたエピローグのようなものだったかなと思います。

連載時、残り1話の時点で「この作品はどう終わるんだ」と騒然となりましたが、作者が描きたかったテーマに見事に帰結。

ヒストールが語ったように、何も持たなかった少年が愛を知り愛を手に入れる物語として本懐を遂げました。

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「チェンソーマン」11巻より(藤本タツキ/集英社)

表に出ない膨大な裏設定が類推される作品ですが、残念ながら自分には全てを読み解く教養がありません。こんなハードルの上げ方は怒られるかもしれず、また既にご存知の方も多いかもしれませんが、「チェンソーマン」フリークを自認する未読の方は、ぜひヒストールのブログを読まれる方を強くお勧めします。

tenfingers.hatenablog.com

物議を醸した描写もありましたけど、

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「チェンソーマン」11巻より(藤本タツキ/集英社)

過激だからというより愛の表現の究極の一つとして意義があったんじゃないかなと思います。自分は賛否の賛です。

 

「第一部 完」とされており、ジャンプ+での第二部再開が予告されてます。

自分は楽しみにしてますが「いつから」が書かれていなかったので、「スラムダンク」の「第一部 完」のようなものじゃないかと、あまりあてにせずに待つようにしたいと思います。

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「チェンソーマン」11巻より(藤本タツキ/集英社)

人気の絶頂に11巻で完結、というのは三つの意味で漫画家・藤本タツキの天才性を示すもので、

一つは作品に人気が出たことを「千載一遇の当たりくじを引いた」と思ってしがみつこうとしなかったこと、

一つは漫画の歴史の中に身を置いているという自覚が後世の読者にも読まれるサイズで作品を完結させたこと、

もう一つは描きたい物語が頭の中にまだまだたくさん溢れていて順番待ちをしているであろうことを容易に想像させることです。

なるべく早く藤本タツキの漫画をまた読みたいですが、次の作品は強いて「チェンソーマン」の続編ではない別の作品であっても、どうせ面白いに決まっているだろうと思います。

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「チェンソーマン」11巻より(藤本タツキ/集英社)

残酷な作品でしたけど、「闇の中にまたたく光」のように、本質的にはとても優しい話を描きたい人なんだな、と。

ここまで正面切って愛を語って愛を手に入れるために戦ったバトル漫画は「北斗の拳」以来ですね。

 

次回作もとても楽しみにしています。

 

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#ぼくたちは勉強ができない 21巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

かつてTVでトレンディドラマがその隆盛を終えようとしていた時に放送されたのが、織田裕二と鈴木保奈美が主演の「東京ラブストーリー」でした。非常に評価が高かった同作は「トレンディドラマが打ち上げた最後の花火」と評されました。

関係ない話ついでにもう一つ、ロックバンド「ユニコーン」がかつて解散した時、解散宣言をするラジオで最後に、既に脱退していた川西のドラム抜きの「すばらしい日々」がラジオで流れたのだそうです。


同級生ヒロイン3人+先輩ヒロイン1人+先生ヒロイン1人、受験勉強がテーマ、過去の蓄積に立脚した週刊少年ジャンプの最新鋭の看板ラブコメ。

最新鋭すぎて実験始めやがったというか、終盤にきてまさかの5人のヒロインごとのマルチエンディング展開。巻頭のあらすじを見るに、うるかルートが正史扱いで、残り4人のヒロインがifルート扱いのようです。

 

ということでラストを飾るのは社会人の教師ヒロイン・真冬先生編。

作品としては文系がメインヒロインであって欲しいと文乃メタ推しでしたが、個人的には真冬先生が一番好きなヒロインです。

高校生活から数年後、教師として母校の教師となった唯我は、真冬先生の同僚となる。 

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「ぼくたちは勉強ができない」21巻より(筒井大志/集英社)

から始まる中編エピソード。

一人暮らしを始めたら向かいのマンションの向かいの部屋が真冬先生の部屋だったりと、今巻も臆面もなくご都合主義の偶然を重ねた「ぼく勉」らしいドタバタバカコメ。

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「ぼくたちは勉強ができない」21巻より(筒井大志/集英社)

作品全体の話とこのエピソードの話は本当は分けて話したいんですが、理由があってやっぱり分けがたく感じます。

が、この真冬先生のエピソード自体は、「ぼく勉」らしさにあふれた良エピソードです。

真冬先生は唯我のアンチテーゼとして出したはずが、思わぬ人気を博して2回の人気投票でいずれもぶっちぎりでトップに輝くなど、正直「ぼく勉」の作品としての運命をねじ曲げてしまった強力な存在です。

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「ぼくたちは勉強ができない」21巻より(筒井大志/集英社)

またかと思われるかもですが、「GS美神」のルシオラや「Re:ゼロ」のレムを思い出します。

ですが、いくら人気があってもメインヒロインに持っていくには、少年漫画であり更に昨今の情勢を鑑みても、成年の教師と未成年の生徒の恋愛成就を描くことは難しかったでしょう。

ということで穏便に「数年後」「唯我が社会人になってから」、更に「マルチルートの一つ」として描かれました。自分はエンディングがマルチルートになった苦渋の決断のメタな理由は、真冬先生のためだったろう、と勝手に思ってます。物議を醸すことも覚悟の上だっただろうとも。

唯我のモノローグももメタ的ですね。

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「ぼくたちは勉強ができない」21巻より(筒井大志/集英社)

 

いつからかと言えば、2巻の184ページからだよスットコドッコイ野郎。

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「ぼくたちは勉強ができない」2巻より(筒井大志/集英社)

クールビューティだけど実は生徒思いの優しい女教師が、休日コンビニ前でジャージで肉まん立ち食いしてるのを見た時から、ギャップで恋に落ちたんだよ。

 

自分はハーレムラブコメであるこの作品が、特にヒロイン同士の横のつながりが仲良くて好きでした。

良いエピソードです。良いエピソードなんですけど、

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「ぼくたちは勉強ができない」21巻より(筒井大志/集英社)

文乃も理珠もうるかもあしゅみー先輩も出席していない唯我と真冬先生の結婚式に、「これが見たかったぼく勉のエンディングだっただろうか」「自分が好きだったのはこれだっただろうか」と、ドラム抜きの「すばらしい日々」を聴いたように少し寂しくなりました。

作者や作品の問題というより、ここ数年ずっといろんな作品で終盤が荒れ続けてきたハーレムラブコメというジャンルの、金属疲労的な構造的な限界かもしれません。

 

楽しくて大好きな作品だけに、この作品の完結をもって、自分はもうハーレムラブコメを読むのはやめよう、と思っていました。ハーレムラブコメでこれ以上は無理なんだと。

この先、世間的にハーレムラブコメの人気が続いていくのか、人気ラブコメの描かれ方が移り変わっていくのかわかりませんが、自分にとってこの作品は「ハーレムラブコメが打ち上げた最後の花火」だったなあ、と思います。

 

いや、そんなん言いながら、「カノジョも彼女」がハーレムラブコメの骨を拾ってくれるんじゃないかと期待しているんですけど。

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初の週刊連載、お疲れ様でした。ヒロイン全員大好きでとても楽しく読んだ4年間は自分にとってすばらしい日々でした。

 

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#ワールドトリガー 206話 (ジャンプSQ. 2021年4月号) 評論(ネタバレ注意)

遠征選抜試験のドラフト会議回。

 

前回まではこちらから。

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「第206話 絵陰性選抜試験④」。
本編計29ページ。

  • (余談) 
  • (扉絵)
  • (第206話 本編)
  • (所感)

以下、余談のあとにネタバレ情報を含んで論評しますので閲覧ご注意。

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