AQM

あ、今日読んだ漫画

#BADON 5巻 評論(ネタバレ注意)

オノ・ナツメの現作、煙草が超高級品な「ACCA」世界観、首都・バードンが作品タイトルで舞台。

リコ、ラズ、ハート、エルモの4人の男は、それぞれ犯した罪でヤッカラの刑務所に収容されていたが、国王代替わりの恩赦・減刑で刑期が明け、4人で煙草店を営むべく揃ってバードンへ。前科持ちのハンデを抱えつつ煙草店を開業。

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「BADON」5巻より(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)

「二度と悪事にもサツにも関わらない人生」を夢見る男たちの商売繁盛記にはならず、良かれ悪しかれ罪を犯した過去がつきまとうハードボイルド風味。

既刊に続き、今巻も単巻で中編を1エピソード。読後感が良く、一冊の満足度がとても高い。

今巻は初めてかな? 店の電話番を買って出るラズにスポットが当たったお話。

ヤッカラから上京して4人と1人が首都バードンで高級煙草店「プリミエラ」を営み初めてもうすぐ1年。

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「BADON」5巻より(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)

先日の誘拐事件が発端で、リリーの年齢が実は12歳ではなく17歳であることが明らかになりましたが、心無い闖入者によってリリーの出生の秘密がさらに明らかに。それはラズが過去に犯した罪と、それに伴って起きた悲しい出来事に深く関わっていました。

動揺したラズは…

という、主人公たち5人の人間関係が揺らぐお話。前巻のように大事件が起こる話ではないんですけど、しみじみと良いエピソード。プリミエラの仲間に自分も入れてもらいたくなりますね。

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「BADON」5巻より(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)

以前にこの作品について「罪と赦しをテーマにしたハードボイルド風味の〜」とか書いた覚えがあります。

前科を持ち服役を終えた彼らを赦さなければいけないのはもしかしたら社会や他人じゃなく彼ら自身かもしれない、というのは置いておいても、これまで基本的に「赦される」のは主人公の彼らの側でしたが、今巻で語られる話では彼らの一人・ラズは「赦す・赦さない」の側に回ります。

人質立て篭もり事件現場で逃げる人質を追う犯人、という局面で犯人を射殺する判断は警官として止むを得ないように思え、「赦す」といってもラズの怒りは社会的に見ると理不尽な逆恨みのようなもので、また恨みの対象も既に死んでいてその怒りは行き場がなく、身代わりのようにリリーという係累の少女がそこに置かれているだけです。

ラズがこのやり場のない怒り・やり場のない悲しみを飲み込めるのか、昇華できるのか。ある意味で前科そのものよりも重いかもしれない過去のわだかまり。

私を含めた多くの人間が怒りや悲しみの甘美な呪縛を、しばしば超克できずに囚われ耽溺して人生を失敗します。ラズの場合は彼女の「自業自得」として処理されたであろう非業の死を、復讐もしくは正規の行政・司法手続きなどで決着をつける機会さえ未来永劫やってきません。

「赦す」には時間と、慰めあるいは余裕や度量のようなものが必要で、一部の人間を除いてほとんどの人間はそれを持ち合わせておらず、ましてやそのやり場がないとなれば尚更です。

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「BADON」5巻より(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)

 

いいセリフだなあ、コレ…

今回示される「慰めあるいは余裕や度量のようなもの」は、「夢」と「仲間」です。

あるいは罪を背負った故の孤独と「戻れなさ」が彼らをそうさせたようにも思います。

少年漫画のようにベタで陳腐なキーワードなのにチープには見えないのは、彼らの「戻れなさ」、後悔や葛藤、人生の苦さが真に迫って見えて、だからこそその果てにようやく手に入れかけているそれの貴重さを感じさせる描写に由来するように思います。

俺もうちょっと上手に言葉にできないものかな。もどかしい。

プリミエラの仲間に自分も入れてもらいたくなります。本当に。

ルックスはおじさんたちのハードボイルド風味ですが、ここに描かれているのは後悔と追憶に耽溺するナルシスティックなダンディズムではなく、彼らにとっての二度目のがむしゃらな青春なのかもしれない、と思ったりします。

あと、偉そうなことを言える立場ではないんですが、ハートは女心を少しは勉強していただきたい。あ〜る君並みの朴念仁だぞお前w

 

 

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#ウマ娘 プリティーダービー アンソロジーコミック STAR 3巻 評論(ネタバレ注意)

この表紙、サンデーサイレンス産駒縛りなんでしたっけか?

TVアニメにソシャゲにと大ヒット中のウマ娘の商業アンソロジーコミック。

の3巻。

計12人の漫画家さんによる11編+表紙イラスト。

ということでお品書き。

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「ウマ娘 プリティーダービー アンソロジーコミック STAR」3巻より(Cygames/星海社/講談社)

表紙のtoi8先生はなんかペンネームに見覚えあるな、と思ったら、作品を買って読んで記事にまでしてました。

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「惑星さんぽ」、中々オススメな本でした。

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「ウマ娘 プリティーダービー アンソロジーコミック STAR」3巻より(夜ふかし気味/Cygames/星海社/講談社)

アンソロも3冊目ともなると、作家の先生方もだいぶこなれてきた感じしますね。

それに合わせて内容もギャグコメ系が大半を占めるようになった気もします。

ウマ娘がメジャーになって実装キャラが増えてそのキャラクターが把握されてきたことによって「ネタ元」が当初より豊富になったのと、

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「ウマ娘 プリティーダービー アンソロジーコミック STAR」3巻より(小野ミサオ/Cygames/星海社/講談社)

「お約束」「定番」のネタも固まってきて作家がそれを逆手に取ったり応用したりしてネタを創り出す、みたいなフェーズに入ったような、言い過ぎなような。

個人的には前巻までだと小野ミサオ先生のページが特に好きでしたけど、

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「ウマ娘 プリティーダービー アンソロジーコミック STAR」3巻より(ポン/Cygames/星海社/講談社)

今巻はポン先生も楽しいエピソード多かったです。

あとは鮭乃らるかん先生の「ゴルシ×ルドルフ」「ジョーダン×ルドルフ」の珍しい組み合わせが新鮮だった。

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「ウマ娘 プリティーダービー アンソロジーコミック STAR」3巻より(鮭乃らるかん/Cygames/星海社/講談社)

なんだこりゃ。

ダーク先生の「パーマー&ヘリオス×マルゼン」の新旧ギャル3人組もそうですけど、本編であまり絡みのないキャラ同士の組み合わせの化学反応は二次創作の醍醐味ですね。

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「ウマ娘 プリティーダービー アンソロジーコミック STAR」3巻より(だーく/Cygames/星海社/講談社)

パーマーとヘリオスの喋りもすぐに風化して死語になっていくんだぞ…あっという間なんだぞ…

あとは強いて難を言えば、新しいキャラにスポットが当たった分、初期キャラのネイチャ成分が全体的に薄かったように思います。

次巻ではもっとネイチャ描いて。

なんだったらネイチャオンリーアンソロ出して。

 

 

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#紛争でしたら八田まで 8巻 評論(ネタバレ注意)

表紙のメガネ美女、「地政学リスクコンサルタント」の八田百合がクライアントの依頼を受けて世界を股にかけて紛争を渡り歩き、地政学の知識と思考と調査能力と護身術で解決していく、美女!メガネ!インテリ!ハードボイルド!ワールドワイド!なかっけーお仕事もの。

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「紛争でしたら八田まで」8巻より(田素弘/講談社)

ぼっちでメガネで日系で手ぶらのココ・へクマティアル、という感じ。

下品な方の出羽守っぽいというか、ちょっと「ブラック・ラグーン」みたいな洋画吹き替えワールドな感じ。

前巻後半以来の八田の日本の地元を舞台にしたレディースチーム抗争の軍師編の続きから決着まで、

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「紛争でしたら八田まで」8巻より(田素弘/講談社)

興行で日本を訪れたプロレスラーたちの宗教事情を背景にした名探偵コナン編を完結まで、韓国を舞台に映画「パラサイト」人気にちょっと乗っかった珍しく企業へのコンサル編を完結まで。

「解決編は次巻で!」というヒキが多いイメージの作品ですけど、珍しくキリのいいところで8巻を締めました。

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「紛争でしたら八田まで」8巻より(田素弘/講談社)

ヒロイン・八田自身の過去や未来に深く関わることのない、通常お仕事回、という感じの巻。

ワールドワイドにエピソードが飛ぶ作品ですけど、今回は日本・日本・韓国と珍しく極東に集中してましたね。

全然作品の本質と関わりない話なんですけど、韓国の「兵役経験者同士の喧嘩」のシーン、オチも含めてちょっとカッコいいね。

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「紛争でしたら八田まで」8巻より(田素弘/講談社)

作品の本質という意味では、ヒロインの八田、生来の才能なのか育ちで培われたものなのか、どこの国に行っても現地の名物の食べ物を美味しそうに食べる描写が必ず差し込まれるの、象徴的ですよね。

学んで知って思考する前段階として、ある意味「チセイ」より大切な何かを象徴しているように思います。この前提が狂ってると学があってもアレ、な話が最近多い気がしますね。

「無学なんで作中で描かれる地政学の知識や思考に嘘書かれてもわからんわ」的なことを毎回感想に書いてたんですけど、今巻はご丁寧に巻末に地政学に関わるオススメ書籍をキュレーションしてくれてます。

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「紛争でしたら八田まで」8巻より(田素弘/講談社)

漫画ばっかり読んでるので、いい機会なんでまずは一冊、読んでみるかな。

ホントに読むかな俺?

 

 

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#少女ファイト 18巻 評論(ネタバレ注意)

高校女子バレーボール界の札付き扱いされた少女たちが集められた古豪・黒曜谷高校女子バレー部が、各々過去のトラウマや家庭の事情を乗り越えて春高バレーの頂点を目指す青春スポーツもの。

ハードな環境に置かれてトラウマやメンタルの弱点を抱えたキャラが異様に多く、それらを超克していく過程に重点が置かれる。

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「少女ファイト」18巻より(日本橋ヨヲコ/講談社)

主人公の大石練は、将来を嘱望される名選手だった理想で最愛の姉を喪い、その反動でバレーの鬼ガキとなって暴走し仲間に見捨てられた過去からコミュ障化。

スネに傷持つ仲間たちと支え合ってたどり着いた春高バレー、準決勝。対戦相手の青磁高校は、練を見捨てハブにした小学生時代のチームメートたち。

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「少女ファイト」18巻より(日本橋ヨヲコ/講談社)

女子バレー界に渦巻く大人たちの権謀術数、呪いのように絡み合う人間関係、サイコパスのような相手の中心選手によるチームの洗脳支配と盤外戦術。

前巻の感想で

もうお願いだから普通にバレーやってくれよ!と言いたくなる対戦。

と書きましたが、よく考えたらこの作品は1巻から通して「普通にバレーボールをやる」があったことほとんどないんですよね。

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「少女ファイト」18巻より(日本橋ヨヲコ/講談社)

今巻で準決勝の決着がつきますが、もう「スーパーヤンデレ大戦」という感じ。

闇を抱えた少女たちが、ヒロイン・煉の「白い闇」に触れて感化・浄化されていく姿が描かれます。もう試合展開が頭に入ってこねえ…

スポーツもの・バレーボールものというより、ブッダやキリストに触れた人々が救済されていく姿を描いた聖典のような、どこか宗教じみた作品に。

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「少女ファイト」18巻より(日本橋ヨヲコ/講談社)

春高バレー、残るは決勝戦のみですが、作者はあくまで彼女たちが「普通にバレーボールをやる」ことを許す気はなさそうです。

途中、感動して泣けたエピソードもたくさんありましたけど、作品トータルで見た時にこの漫画は一体なんなのか、主人公たちへの度重なる理不尽を通じて作者が何を描きたいのか、何がどうなったらこの作品のハッピーエンドで、どうなったらバッドエンドなのかすら、自分は未だによくわかりません。

作者がこの作品にどうオチをつける気なのか。もうすぐその時です。

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「少女ファイト」18巻より(日本橋ヨヲコ/講談社)

いや、ホントだよ。

 

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#波よ聞いてくれ 9巻 評論(ネタバレ注意)

北海道、主に札幌を舞台に、カレー屋の店員のフリーターべらんめえ女がしゃべりの面白さを買われて地元局の兼業ラジオDJをやる話。会話芸・セリフ芸の面白さメイン、深夜枠のラジオ番組を舞台に破天荒ヒロイン・ミナレの沙村節トンデモトークが炸裂。

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「波よ聞いてくれ」9巻より(沙村広明/講談社)

「時代の流れに抗ってラジオの現場に情熱を持ち続ける人々」的なテーマに対し、パワーと素質に溢れるヒロインのミナレがトコトン他人事な感じが初期の桜木花道みたいねw

新興宗教エピソード、震災エピソードと塊になってるデカいエピソードが落ち着きまして、繋ぎというか日常回な巻。しかし既に次の事件が…

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「波よ聞いてくれ」9巻より(沙村広明/講談社)

事件やイベントがない分ダイナミズムはないですけど、「窮地に陥って人間の本質が仄見える」的なアレに対してヒロインのミナレがなぜか日常生活で本質垂れ流して暮らしてるキャラで会話芸で金が取れる漫画なので、日常回がハンデになってないというか、こっちの方が情報量は多いんですよね…多いか?

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「波よ聞いてくれ」9巻より(沙村広明/講談社)

作中で「バレンタイン・ラジオ」なるイベントが控えていることがだいぶ初期から度々伏線というか予告されてるんですけど、いつまで経ってもバレンタイン・ラジオにたどり着かねーなこの漫画、というw

1巻から作中どのくらい次巻が経ってるんですかね。最終的には「ラジオの未来」的な話で畳みたい漫画なんだとは思うんですけど。

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「波よ聞いてくれ」9巻より(沙村広明/講談社)

作品の良心にして実質ヒロインのミズホのピンチなんだかなんだかよくわからない状況で次巻に続く。

 

 

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#地球から来たエイリアン 2巻 評論(ネタバレ注意)

西暦2220年。

人類は超高速(宇宙)航法技術を手に入れ、各国は大航海時代の欧州列強のように宇宙に進出し入植可能な惑星を探査・開発していて、日本もその例外ではなかった。

惑星開発省 生物管理局の新人職員・朝野みどりは、日本が管理する惑星「瑞穂」に配属され、未知の生き物との出会いに目を輝かせていた。

しかし、彼女が最初に携わった仕事は、

ぬいぐるみのようにキュートな見た目を持ちながら人類に害を為す性質を持つ原生生物・プクルを、防疫上の観点から絶滅させることだった…

という、未来で宇宙なSFもの。

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「地球から来たエイリアン」2巻より(有馬慎太郎/講談社)

作品タイトル「地球から来たエイリアン」は地球人類の日本人を指します。

借りものではなく、作者が世界観設定を創るタイプの作品で、「ヘテロゲニア リンギスティコ」が「文化人類学・言語学・民俗学ファンタジー」だとしたら、この作品は「生物学・疫学・環境倫理学SF」と呼ぶのに相応しい作品。

欠員の補充のために支部に配属されたみどりだったが、そのみどりの活躍により欠員した職員が復帰。みどりの支部内での配属は宙に浮いてしまう。

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「地球から来たエイリアン」2巻より(有馬慎太郎/講談社)

深谷支部長はみどりを当面、各部課に転々と短期配属し以てOJT研修とすることを発案する。かくして研修配属の順番を巡って、全課長が招集された…

ということで、生物管理局 第4支部(惑星「瑞穂」を担当)の各部署で1〜2エピソードずつOJT研修する展開に。

・調査2課 惑星「瑞穂」の生物を研究所内で観察・分析 今回は生きながら腐っていく生物の生態分析

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「地球から来たエイリアン」2巻より(有馬慎太郎/講談社)

・広報課 惑星「瑞穂」の生態研究の成果を人類社会にアピール 新種生物の尿を飲めと強要される

・畜産2課 人類に益する希少生物の探査 原発爆発事故の放射能汚染現場で新種探索

・畜産1課 人類に益する生物の飼育・収穫 人類と共存共栄するためのエコシステムのために生物を殺せるか

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「地球から来たエイリアン」2巻より(有馬慎太郎/講談社)

1巻で広げた風呂敷を少しキュッと軽く畳んで整えた感じで、生物管理局のお仕事の日常がより具体的に描写されます。

相変わらずコミカルな進行ではありますけど、生物「トキジク」の悲しく美しい生態の謎明かしなど、ちょっとしたミステリ要素も。

課長が一同に会するシーンが「幻影旅団集合」みたいなっててちょっとウケるw

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「地球から来たエイリアン」2巻より(有馬慎太郎/講談社)

前巻で「レベルE」の名前を出しましたけど、今巻はちょっと「もやしもん」っぽくもありますね。好奇心が満たされつつ、ヒロインが先車から渡された鍵の形も徐々に明らかに。

SF生物学お仕事もの、という感じで楽しい作品。

 

 

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#地球から来たエイリアン 1巻 評論(ネタバレ注意)

お仕事ものジャンルのフィクションで、

・主人公は若い女 天然だがタフで情熱的でバイタリティ有 天才というほどの才能はないが状況を打破する鍵を作者から渡されている

・上司・師匠は経験豊かなおっさん 挫折 or 引退を経験したエリート(元 含む)

・「医者なのに生命を見殺しにする」レベルの、新人に業界のシビアさを思い知らせる、罪悪感・非倫理感すら伴うエピソード

という設定で、夢と希望と情熱に燃える新人が効率と打算と経済性でシビアに回ってる現場にショック(イニシエーション)を受けつつ成長していく作品。


既視感というか割りと定番だよな、と、この作品を読んで思ったんですが、定番だと思う割りには具体的な作品が思い浮かばない。

「らーめん才遊記」や「波よ聞いてくれ」はヒロインがやや天才すぎ、また業界のシビアさが持つ罪悪感もやや薄い気がします。確かにラーメンハゲはアレですけど。

「おいしい関係」も罪悪感とかないですよね。


アレ…別に定番じゃないのかな…

と思って増田で訊いてみました。

anond.hatelabo.jp

トラバやブコメでレスくださったみなさん、ありがとうございました。

参考になりましたし、未読の面白そうな作品をいくつか知ることができました。

自分の未読作品だと「アンサングシンデレラ」と「フラジャイル」が面白そう。読も読も。

既読の作品も「確かにそういう側面あるなあ」と、解釈や切り口の幅を広げる参考になります。

 

別に正解があるクイズじゃなくて幅広く作品を知りたい趣旨なのでいただいたレスに優劣はありませんが、お一人、私が質問したキッカケそのものズバリのこの作品をご回答された方がいて

こんな漫画を探してます

これは間違いなく「地球から来たエイリアン」ですね。主人公の性質、上司や同僚の様子、地球外惑星とその生物を題材にすることでの人間性や倫理観への問題提起など、3つの条件に完全一致と言って良いレベルかと

2022/01/19 17:27

b.hatena.ne.jp

ちょっとニヤリとしてしまいました。

 

みなさんのレスをざっと眺めて、こうした設定や展開を定番と見做すか、そうでもないと見做すかは、まあ人によるかなと思います。

「ツインテールがツンデレ」ほどの定番ではない気がしてきた。

いずれにしても定番であることが良作であることや凡作であることを保証するものではありません。

私は単に自分の既視感のモヤモヤをどうにかしたかっただけです。すいません。

さて。


西暦2220年。

人類は超高速(宇宙)航法技術を手に入れ、各国は大航海時代の欧州列強のように宇宙に進出し入植可能な惑星を探査・開発していて、日本もその例外ではなかった。

惑星開発省 生物管理局の新人職員・朝野みどりは、日本が管理する惑星「瑞穂」に配属され、未知の生き物との出会いに目を輝かせていた。

しかし、彼女が最初に携わった仕事は、

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「地球から来たエイリアン」1巻より(有馬慎太郎/講談社)

ぬいぐるみのようにキュートな見た目を持ちながら人類に害を為す性質を持つ原生生物・プクルを、防疫上の観点から絶滅させることだった…

 

という、未来で宇宙なSFもの。

作品タイトル「地球から来たエイリアン」は地球人類の日本人を指します。

借りものではなく、作者が世界観設定を創るタイプの作品。

「ヘテロゲニア リンギスティコ」が「文化人類学・言語学・民俗学ファンタジー」だとしたら、この作品は「生物学・疫学・環境倫理学SF」と呼ぶのに相応しい作品。

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「地球から来たエイリアン」1巻より(有馬慎太郎/講談社)

昨年中にアキバBlogで取り上げられていて「いつか読むリスト」に入れていたんですが、先日 id:Monomane さんもブログ記事で紹介されていてその紹介文がまた良かったので、「いつか」を前倒しにして読んでみることにしました。

blog.livedoor.jp

proxia.hateblo.jp

1巻を読み終わった現時点では、冒頭で述べたような「新人女とベテラン上司のお仕事もの」展開、上司・深谷の「〜なんだ」というセリフがキーになる展開が続きます。

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「地球から来たエイリアン」1巻より(有馬慎太郎/講談社)

雑に言うと、それを「レベルE」の世界でやっている、と思ってください。

 

面白いのは、今のところ「人類が宇宙進出し植民星を開拓する必然性」がまったく描かれていないことです。

彼女たちは「宇宙戦艦ヤマト」のように切実に人類の存亡の危機を回避する為ではなく、人類、もっと言うと日本の利益・国益の為、他国に遅れを取らない為に、「そこにフロンティアがあるから」「仕事だから仕方がない」というノリで、惑星「瑞穂」の生態系を破壊し種を絶滅させることも辞さない仕事に携わっているように見える点です。

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「地球から来たエイリアン」1巻より(有馬慎太郎/講談社)

未来宇宙SFですが、人類の過去の歴史をもモチーフにした、多くのテーマを含有し得る作品です。

例えば「害虫」「益虫」という言葉はあくまで人間の主観で分類するための言葉ですが、プクルがぬいぐるみのようなルックスの代わりに、例えばヒアリのような見た目をしていたら、果たして彼女はこんなに葛藤したでしょうか。

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「地球から来たエイリアン」1巻より(有馬慎太郎/講談社)

シリアスな縦軸をコミカルに進めていく作風ですが、自分は初めて読む作家さんなので、1巻にして既に「この作品にどうオチをつけるんだろう」と、少し楽しみです。

自然に対する「人類の存在」という違和感に端を発した(この辺は前述の「ヘテロゲニア リンギスティコ」の近刊にも共通します)、テーマだけで言えば大袈裟に言えば「ナウシカ」のようになっても不思議ではないテーマ。

作品のスケールを作者がどの辺りに規定するのかも含めて続きが楽しみ。

ということで発売済の2巻読みまーす。

 

 

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(選書参考)

blog.livedoor.jp

proxia.hateblo.jp

 

#メイドの岸さん 6巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

早瀬貴一郎(25)は若くして日本有数の企業グループを束ねる財閥の次期当主として辣腕を振るい、政財界でも一目置かれるリーダーだったが、生活面では病的にドジで生活能力のないポンコツ人間だった。

そんな彼を支えるのは専属メイドの岸さん。

岸さんはとても有能だったが「っス」口調でクールで無表情で無口で無愛想だった。

岸さん無しでは生きていけない貴一郎はあの手この手で岸さんの歓心を買おうとするが、岸さんはあくまでビジネスライクでクールなのだった…

という坊ちゃん&メイドさんの日常ラブコメ。

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「メイドの岸さん」6巻より(柏木香乃/講談社)

両片想いというか両想いラブコメで、にも関わらず貴一郎と結ばれることを避け続ける、クール無愛想ミステリアスな岸さんの胸中がようやく明らかに。それは深く傷ついた経験を繰り返したくない、岸さんの生い立ちに深く根ざすある種の防衛本能のようなものだった。

貴一郎はそんな岸さんの心を解きほぐすことができるのか…

最終巻。

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「メイドの岸さん」6巻より(柏木香乃/講談社)

まあ解きほぐしますよ。エンタメでラブコメですし。

これでバッドエンドだったらこっちが人間不信になるわ。

ポンコツお坊っちゃまと無愛想クールなメイドさんヒロインのラブコメで、仄見えるデレを愛でる作品。

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「メイドの岸さん」6巻より(柏木香乃/講談社)

ヒットした割りに引き伸ばしもせず、描くべきことを描いてスパッと完結。

せっかくのヒットを手放したくない事情はわかるものの、読者のサンクコストを当て込んで「描きたいこと」を冗長にウダウダ薄めて引き伸ばすことで、読んでて飽きて嫌いになって最終的に虚無になってしまうラブコメ作品は多いです。

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「メイドの岸さん」6巻より(柏木香乃/講談社)

この作品とこの二人を好きなうちにハッピーエンドで綺麗にコンパクトに畳まれました。

エピローグもこの二人らしい不器用で珍妙でチャーミングなやりとり。

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「メイドの岸さん」6巻より(柏木香乃/講談社)

柏木香乃先生。名前憶えた。

次回作も楽しみにしてます!

 

 

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#カノジョも彼女 9巻 評論(ネタバレ注意)

幼馴染の咲に小学生以来ずっと片想いで何回フラれても告白し続けた直也。

高校入学を機についに咲にOKしてもらい付き合いだした矢先、直也はクラスメイトの超美少女・渚に告白される。彼女の可愛さと健気さに胸を打たれた直也は…

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「カノジョも彼女」1巻より(ヒロユキ/講談社)

というガチもんのハーレムラブコメ。

いや、ハーレムラブコメのガワを被ったメタ・ラブコメネタのバカギャグコメです。真面目なラブコメと間違って買わないように気を付けてください。

作者は「アホガール」の人。

「借金が雪だるま式に増えていく」とは聞きますが、「彼女が雪だるま式に増えていく」とは聞いたことがない。正々堂々と二股かけて更に彼女候補が2人いて現在ヒロイン4人体制。

もうなんでか忘れた、夏だから? 5人は沖縄へ。

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「カノジョも彼女」9巻より(ヒロユキ/講談社)

沖縄に迷惑だから地元でやれ。

青い海を舞台にラブコメ定番イベントの海回、水着回!

4thヒロイン・紫乃ちゃんの実家の別荘を貸し切って2泊3日、男1人に美少女4人の男女5人夏物語なアバンチュール編。

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「カノジョも彼女」9巻より(ヒロユキ/講談社)

いい笑顔。

はい、また拉致と拘束でーす。

ホント、意識不明・拉致・監禁・拘束が多いラブコメやな。

東京にいる時とやってること全く一緒で、沖縄である必要全然なくないwww

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「カノジョも彼女」9巻より(ヒロユキ/講談社)

※入れてないです

強いて言えばプライベートビーチに面した別荘で過ごしているので一同水着で、エロいというより「作画が楽そう」という感じ。

一応、直也はメインヒロインの咲とキスすらまだ、ということで、咲の目標・今回の旅行の焦点が「直也と咲がキスできるかどうか」「いや、誰がキスできるのか」になってるんですけど、

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「カノジョも彼女」9巻より(ヒロユキ/講談社)

※この人がメインヒロインです

もうラブコメでもなんでもねえなこのセリフ。

「死をー!!!」言うてる人がここから2泊3日の間にキスまで持っていくのもう無理じゃねっすかね…

最終的に、雑・オブ・雑な展開で直也と紫乃の2人が無人島に漂流。

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「カノジョも彼女」9巻より(ヒロユキ/講談社)

紫乃さんは、良識と、咲との友情とを優先して直也への想いを心に秘めている、唯一真面目にラブコメやってるヒロインなんですけど、よりによって一番シリアスなヒロイン(4番手だけど…)が…! どうなっちゃうの…?

いや、よく考えたらどうでもいいな。

はー今巻も笑った笑った。

 

 

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#それでも歩は寄せてくる 10巻 評論(ネタバレ注意)

2人しかいない将棋部の、おさげデコ部長・八乙女うるし(高2♀)と、好き丸出しのくせに頑として認めない無表情部員・田中歩(高1♂)の、告白前の高校生男女が好き丸出しで部室で将棋指しながら甘酸っぱくイチャイチャしてる、可愛いは正義のショートラブコメ。

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「それでも歩は寄せてくる」10巻より(山本崇一朗/講談社)

歩は一応、将棋でうるしに勝ったら告白しようと思ってるみたいです。

日常ラブコメですけど時間が流れる系で、うるしが3年生に、歩が2年生に。

こないだ始まったばっかりだと思ってたのに、気がつけば10巻、早いですね。

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「それでも歩は寄せてくる」10巻より(山本崇一朗/講談社)

修学旅行で会えなかった時間で、歩を好きなことを自覚してしまったうるし。

「恋に落ちた将棋指し」という風情で可愛らしいでんな。

うるしが自覚した時点でくっついて完結秒読みかと思ったら、あららのら。そっち方面に行く感じでしたっけ。

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「それでも歩は寄せてくる」10巻より(山本崇一朗/講談社)

可愛い女の子とラブコメシチュのバリエーションが描きたいだけの未満恋愛イチャラブ作品で終わるんかな、と思ってたんですけど、さすがというかなんというか、山本崇一朗が描く、報われない片想いをする「負けヒロイン」の魅力。

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「それでも歩は寄せてくる」10巻より(山本崇一朗/講談社)

今巻、だいぶ凛ちゃんに感情移入してしまいますけれども。ハーレムじゃなくても、一人でいんだよね。

魅力的なサブヒロインは、ラブコメにおいてしばしば想定以上に人気出ちゃってしばしば作品を壊してしまう諸刃の剣でもあるんですけど、歩のパーソナリティに自信あり、なんかしらん。このSNSの時代にラブコメの上手が作品を壊さずにコントロールできるのか、俄然先々が楽しみに。

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「それでも歩は寄せてくる」10巻より(山本崇一朗/講談社)

さいですか。

次巻は夏合宿編で海回とのことでーす。

 

 

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#生徒会役員共 22巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

高校の生徒会を舞台にしたほのぼの下ネタ&親父ギャグ4コマ。主人公・タカトシ以外の登場人物は全員女子。かといって別にハーレム感もない。

新聞の長寿4コマみたい。言うほど下ネタ比率もそんなに高くなくて、ただのほのぼのネタ、下手したらダラダラと特にネタもオチもなかったり。

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「生徒会役員共」22巻より(氏家ト全/ 講談社)

週マガの箸休め的な存在なんだと思いますけど、1巻からずーっとくだらないです。

連載開始が2007年で15年目、2期にわたるTVアニメ化済み、単行本の累計発行部数は475万部超。

作者の過去作「妹は思春期」が終わったのがついこないだだと思うんですけど、年月が経つのは早いですねえ。

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「生徒会役員共」22巻より(氏家ト全/ 講談社)

この漫画が15年間ずっとくだらないせいで、そんなに時間が経った気がしない。

最終巻です。

最終巻らしい特別なことと言ったら最終回が非4コマ形式だったなーぐらいの、らしい最終回。

シノやスズの、タカトシへの淡い気持ちに何か動きがあるとかそういうこともなく、最後までこの作品らしく、キッチリくだらなかったです。

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「生徒会役員共」22巻より(氏家ト全/ 講談社)

有っても無くてもいいようなくだらない漫画が終わってしまいましたけど、いざ終わられるとやっぱり寂しいもんですね。

作者の次回作に早くお会いできればと思います。

「妹は思春期」以来20年近く読んでると、くだらない漫画読まないでいると体の調子がおかしくなりそう。

ベッタベタの下ネタ親父ギャグ、くだらなくてやっぱり好きなんですよね。

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「生徒会役員共」22巻より(氏家ト全/ 講談社)

お疲れ様でした。また是非、近いうちに。

 

 

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#破談から宜しくお願い致します 1巻 評論(ネタバレ注意)

資産家の子息ながら独立してトレーニングジムを開業したマッチョの朝緋智也(28♂)は、親の騙し討ちで財閥令嬢の女子高生・月ノ院瑠璃(16♀)と見合いをさせられ、これを断って破談とした。

が、瑠璃はまったくめげることなく、ぐいぐいアピールしてくるのだった。

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「破談から宜しくお願い致します」1巻より(水島ライカ/スクウェア・エニックス)

瑠璃は10年前の財界のクリスマスパーティで迷子の自分を助けてくれた智也に一目惚れし、以来ずっと智也のことを想いながら、可憐に、そしてストーカー気味に育ってきたのだった…

瑠璃を可愛らしく思いながらも、実業家として未成年とのスキャンダルはノーサンキューで、また何度もヨリを戻してきた腐れ縁の別れた彼女がいたりして、結婚を前提にした交際に首を縦に降らない智也に対し、それでも瑠璃はめげずに「まずはお友達から」と食い下がる。

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「破談から宜しくお願い致します」1巻より(水島ライカ/スクウェア・エニックス)

という、タイトルのとおりお見合いの破談から始まる恋愛もの、あるいはラブコメ。

マッチョでイケメンな主人公、可憐なヒロイン、と眼福な作品。

主人公に一目惚れ・片想いした箱入り娘で世間知らずのヒロインがグイグイくる展開ですけど、男の妄想というよりは少女漫画に近いテイスト。

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「破談から宜しくお願い致します」1巻より(水島ライカ/スクウェア・エニックス)

ヒロインの動機がベタで単純ですけど、「まあ、わかる」という匙加減。

ヒロインの箱入り世間知らず故のズレっぷりが、高橋留美子作品出てくるお嬢様っぽい。

というか、この作品自体が響子さんがいない「めぞん一刻」の三鷹さんと明日菜のラブコメ、というと近いかもしれません。

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「めぞん一刻」新装版12巻より(高橋留美子/小学館)

BS漫画夜話で「『尼になります』って現代劇のセリフじゃないw」と爆笑されてたセリフ。

28歳と16歳の年の差12歳の二人ですけど、良家のお見合いってそんなもんじゃね? 高校卒業を待って交際するなら別に良くない? という感じもします。

偏見かな。三鷹さんと明日菜も年の差そんぐらいよね確か。

「お見合いから始まる」って作品、なんだか久しぶりに見た気がしますね。

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「破談から宜しくお願い致します」1巻より(水島ライカ/スクウェア・エニックス)

幼少期の出会い以来、主人公の情報を10年間、興信所を通じて収集し続け、指名のお見合いで片想いを成就させようとするヒロインって、よく考えると割りと怖いですけど、誌面上ではピンボケぶりも含めてとても可愛らしく目に映ります。

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「破談から宜しくお願い致します」1巻より(水島ライカ/スクウェア・エニックス)

いろいろワケありそうな筋肉マニアで健康オタクな主人公を、がんばって口説き落としていただきたい。

 

 

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(選書参考)

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#ハクメイとミコチ 10巻 評論(ネタバレ注意)

動物たちと三頭身の小人(こびと)たちが互いに言葉を通じ合って、社会を形成して暮らす童話のような世界観で、一緒に暮らす2人の女の子を主人公にした日常もの。アニメ化済み。

童話やお伽話に喩えるには生活感がありすぎるけど、その生活感の醸し出す詩情、特に手慣れた料理と食事風景の描写は特筆もの。

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「ハクメイとミコチ」10巻より(樫木祐人/ KADOKAWA)

前巻からきっちり1年後の10巻。

音痴を気にして人前では絶対歌わないハクメイが雨宿りの軒下で油断して鼻歌を歌っているところに遭遇したのは、よりによってマキナタが誇る歌姫だった。「雨宿りと鼻歌」。

フリーながら石貫會の「ほぼ専属」状態のハクメイに腕を見込まれて降って沸いた引き抜き話。「師弟と風車」。

以前に行きそびれた温泉宿で慰労女子会、湯けむり温泉回だ! 前後編「労いの宿」、「湯煙の夜長」。

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「ハクメイとミコチ」10巻より(樫木祐人/ KADOKAWA)

人見知りの美容師が気風と威勢の良さで知られる港町を訪ねる。「初めての港町」。

旅に出る者に贈られる、ハクメイたちが被っている「あの帽子」の由来。「空色の種帽子」。

ハクメイの旅、エピソードゼロ。「昔の話」。

 

今巻も良エピソードに素敵描写満載のウェルメイドなファンタジー日常もの。アメイジンッ!

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「ハクメイとミコチ」10巻より(樫木祐人/ KADOKAWA)

温泉回が

温泉でも行こうなんていつも話してる 落ち着いたら仲間で行こうなんてでも

「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント〜」より(作詞:小室哲哉)

って完全に「WOW WAR TONIGHT」なんですけど。

変わらないようでいて、少しづつ変わっていく日常、でもその中で変わらないもの。

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「ハクメイとミコチ」10巻より(樫木祐人/ KADOKAWA)

日常ものの物語の不在を補って余り在る、一コマ一コマがまるで絵葉書のように美しく、想像力を掻き立てられる背景。

いいえ、「物語の不在」なんてとんでもない。

見落として忘れてしまうそうな小さな物語の連なりや積み重ねが、彼女たちの日常を形作っている。

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「ハクメイとミコチ」10巻より(樫木祐人/ KADOKAWA)

たぶん私たちの日常も。

 

 

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#君は放課後インソムニア 8巻 評論(ネタバレ注意)

進学高の1年生、不眠症に悩む少年と不眠症に悩む少女が、昼寝場所にしようとした学校の天文台で出会うボーイミーツガール。

夏休み!ということで二大イベントの二、能登半島、古民家を拠点に二人天文部の撮影旅行の巻き、両片想いの高校1年生の男女が夏休み、2人きりの星空撮影旅行でピュアにプラトニックに気持ちを確かめ合うという、サザンのバラードをBGMにしたくなる夢のような蜜月。

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「君は放課後インソムニア」8巻より(オジロマコト/小学館)

が終わり、その最後にヒロインを連れ帰った両親からの強い怒られが発生。特にヒロインが大病を患っている点がクローズアップされ、日常的な学校生活を送りつつも素行と療養の両面から2人の行動が制約されることに。

ヒロインの親からの信頼と、行動の自由を少し失った前巻の曇らせ巻に続く今巻。

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「君は放課後インソムニア」8巻より(オジロマコト/小学館)

ぶっちゃけると「世界の中心で愛を叫ぶ」をなぞるようなお話になっていくんであれば、読む意味があるんだろうか、とか、ここ2冊ぐらい思っていました。

この作者らしからぬ、というのもそうですし、「病気=悲恋」もそればっかりなのは…という気持ちも少しあって。

良し悪しではなく自分の好みとして、シニカルなリアリティより、ご都合主義でもこの二人について漫画で読みたい話があって、それを見せてくれる作家であるはずだ、みたいな勝手な期待、先入観が。

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「君は放課後インソムニア」8巻より(オジロマコト/小学館)

今巻はちょっとこの作者らしいハッピーエンドのビジョンの可能性が見えた気がしますね。

失ったものを取り返すために、病気であることと正面から向き合うこと、今後の人生で病気にまつわる諸々のハンデと付き合っていく覚悟を決めること。

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「君は放課後インソムニア」8巻より(オジロマコト/小学館)

倉敷先生、かわいいよね。

作者がこの後どう持っていくかは作者のみぞ知るところですが、読んでいる身としては主人公の眼鏡の男の子が「そう」なって「そう」できている未来やラストを、願わずにはいられない。

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「君は放課後インソムニア」8巻より(オジロマコト/小学館)

 

不純異性交遊しとるやないかーい!

がんばってくれー。

 

 

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#からかい上手の高木さん 17巻 評論(ネタバレ注意)

中学校の同級生同士の恋愛未満を描いた隣の席ラブコメ。単純な西片くんをいつもからかってくる高木さん。

「××さんがなんとかかんとか」系の、元祖ではないが中興の祖ではあって、同級生純愛ラブコメのジャンルが息を吹き返し、スピンオフも複数抱えてちょっとした産業に。

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「からかい上手の高木さん」17巻より(山本崇一朗/小学館)

2021年に小学館漫画賞受賞、アニメがちょうどいま3期やってんのね。ペース的には来年に20巻に達して連載開始10周年、というところ。

読者が求めていることにキッチリと、ド安定、いつもの、可愛い、ピュア、胸キュン、です。もう毎巻、感想になに書くか困る。

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「からかい上手の高木さん」17巻より(山本崇一朗/小学館)

もう言っちゃえよ。何巻だと思ってんだよお前。

なんか今巻は一休さんの歌みたいに好き好き言ってんな。

前述の通り2023年に10周年、年2〜3冊ペースでたぶん20巻を迎えるメタな節目を迎える作品。

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「からかい上手の高木さん」17巻より(山本崇一朗/小学館)

教師が積極的にラブコメ展開に加担していくスタイル。

他作品への意欲も強く実際に成功もしてる作家なので、その辺が畳み頃っちゃ畳み頃だとは思いますけど、感想屋が感想に困る以外は特に畳まなきゃいけない理由もないので、そこを超えたらもう50巻100巻いく「ラブコメサザエさん」な作品になるんかな。

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「からかい上手の高木さん」17巻より(山本崇一朗/小学館)

それか特に最終回作らないで、描きたい時に描く不定期連載化するとかもアリなんかな。

終わっちゃったら終わっちゃったで、読者も作者もやっぱちょっと寂しいよねえ。

 

 

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