#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#僕の心のヤバイやつ 10巻 評論(ネタバレ注意)

『みつどもえ』の作者の現作。

ラブコメ漫画は数あれど、WEB連載で既読にも関わらず新刊が一番楽しみな作品。

TVアニメの2期放映が

bokuyaba-anime.com

ちょうど終わったタイミングでの新刊。

『フリーレン』もそうだし、『薬屋のひとりごと』もそうなんですけど、

frieren-anime.jp

kusuriyanohitorigoto.jp

近年は1クール(全12〜13話)のアニメ作品が多い中、2クールもやられると、単純に接触時間の長さで愛着が湧いてしまって、その分「ロス」も感じってしまって、そら

「さ・ん・き!(3クール目!) さ・ん・き!(3クール目!)」

ってなりますわな、という。

『僕ヤバ』の2期も絵も演出も演技も音楽も、良かったねえ。ジムでエアロバイク漕ぎながらもう一周観よ。

エピソード進行的に、アニメ2クールで原作8巻分まで消化してしまったので、10巻が出たばかりの現在からすると3クール目は当分おあずけかな。

ということで。

『僕の心のヤバイやつ』10巻より(桜井のりお/秋田書店)

主人公は、雑誌の専属モデルもこなす陽キャ美少女・山田、を殺す妄想をする中二病で陰キャでぼっちな男子中学生・市川。

図書館で偶然見かけた彼女は、一人でおにぎりを頬張りながらゴリラのような鼻歌を歌う、意外と割りと残念な感じだった…

コメディの皮をかぶせた、エロで独りよがりで優しい中学生の、初恋の繊細な機微の描写。

『僕の心のヤバイやつ』10巻より(桜井のりお/秋田書店)

8巻かかって前々巻でお付き合い開始、「未満恋愛ラブコメ」あらため「おつきあいラブコメ」に入って2冊目の10巻。

今巻は中3の夏休み、難関校の受験を決意したイッチと萌子の受験勉強合宿も兼ねて、山田のモデル先輩のニコちゃんの鎌倉の別荘での仲良し女子4人組+イッチの5人で海の別荘編。

『僕の心のヤバイやつ』10巻より(桜井のりお/秋田書店)

定番の「別荘貸してくれるお金持ちキャラ」提供の別荘を舞台に、美少女もの・ラブコメもの定番の「海回」「水着回」ながら、擬似ハーレム構成にコンドーム持ち込み疑惑、「輩(やから)」の乱入など、『僕ヤバ』らしい一波乱・二波乱・三波乱の楽しい巻ですが、ハイライトはやっぱり本作では割りと珍しい、山田と萌子の大喧嘩でしょう。

連載のとき「おっ」って思って書いた記事がプチバズったので、同じことを2回書くのもなんなので、よければ詳しくはそちらを。

aqm.hatenablog.jp

サブヒロインとして萌子が人気で、自分も萌子好きですが、以前から自分は

「彼女にするならにゃあ派」

なので、今巻はにゃあが影のMVPと言っていいぐらい、どこか不器用にアタフタと冷や汗かきながら、あちこちに細かい気遣いしている姿がとても可愛かったので、よかったです。

『僕の心のヤバイやつ』10巻より(桜井のりお/秋田書店)

4人組の中で口数は少ないけどバランサーで、

「小林が山田のフォローに行ったから、自分は萌子を」

みたいにバランスを取りつつ、その時その時で一番傷ついてる子・一番弱ってる子・一番独りになりそうな子に寄り添うんですよね、この子。

必要であれば直球で切り込んだり大声出したりもするし、必要であれば変化球で話逸らしたり誤魔化したり嘘ついたりもする、という。

にゃあみたいな子、いいなあ。

そして作品トータルとしてはまだまだ途中ながら、作者が作品に込めてるメインテーマが、よりによって酔っ払いの輩(やから)の口から語られてしまいましたね、というw

『僕の心のヤバイやつ』10巻より(桜井のりお/秋田書店)

今回、少々物議を醸しながら「心の痛み」の蓋をまた少し開けてしまいましたが、最終的にどこまでの「心の痛み」を描くつもりなのかなあ、とちょっと戦々恐々とはしてしまいます。

安達哲作品のレベルまで言っちゃったらどうしよう……

あと、ニコちゃんの別荘での輩(やから)どもの傍若無人な振る舞いについて、彼らを連れてきたおねえの株がちょっと(ネット世論的に)下がってたんですが、

『僕の心のヤバイやつ』10巻より(桜井のりお/秋田書店)

おまけ漫画でフォローが入りました。

さすがおねえ!というのと、ニコちゃんは売れっ子モデルで人気芸能人なのに

「困ってるところが可愛い」

「市川姉弟に懐いてて可愛い」

という、困ったキャラにw

良いラブコメは、魅力的な脇役それぞれ一人一人を主人公にした物語を読んでみたくなっちゃって、目移りしてしまいますね。

群像劇ってわけでもなく、あくまで主役2人のフォーカスしつつも、脇役の細かい動きやその背景の心情にもしっかり光を当てる、ってのがまた。

 

aqm.hatenablog.jp

aqm.hatenablog.jp

#マツケンクエスト~異世界召喚されたマツケン、サンバで魔王を成敗致す~ 1巻 評論(ネタバレ注意)

「ブームに乗ってとりあえず有名人?(や既存のキャラ)を異世界に転生(転移)させれば面白くなる」

というジャンルが在り(?)まして、

aqm.hatenablog.jp

aqm.hatenablog.jp

aqm.hatenablog.jp

なんでひろゆきが異世界いく漫画が2つもあんだよw

どっち読めばいんだよw

多くの「普通の異世界転生(転移)」がテンプレで読者理解の早い世界観設定でラクそうに見えるのに対して、有名人を異世界転移させると主人公キャラまで在りものなので、なおさら理解が早くてラクそうに見えます。

読者の側からは。

自分は「異世界転生(転移)」が別に嫌いなわけではなく、中には名作が在ることも知っていて現に読んでる作品も複数在りますが、ブームに乗った粗製濫造でハズレも多いジャンルでもあるので、警戒するというか、ちょっと距離を置きたくはなります。

『マツケンクエスト~異世界召喚されたマツケン、サンバで魔王を成敗致す~』1巻より(遠田マリモ/林たかあき/秋田書店)

でも「異世界に置いてみたい人物(や属性)」

というか、

「そんなん絶対面白いやつですやん」

という組合せもあるよねえ、っていう。

『マツケンクエスト~異世界召喚されたマツケン、サンバで魔王を成敗致す~』1巻より(遠田マリモ/林たかあき/秋田書店)

というわけで、「異世界マツケン」こと『マツケンクエスト』です。

「マツケンサンバ」の時点で既に時代劇の演技とのギャップで衝撃的に面白かったですけど、もはや

「松平健が『マツケンサンバ』を歌い踊るのが当たり前の時代」

なんですよね。

若い人にとっては「『暴れん坊将軍』の人」より「『マツケンサンバ』の人」なんだろうな。

『仮面ライダー』ともコラボ済みなんでしたっけか。

『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん Season1』より(服部昇大/集英社)

作家の持ち込みなのか、会議室で作られた企画なのか、自分は知りませんが、世の中には

『マツケンクエスト~異世界召喚されたマツケン、サンバで魔王を成敗致す~』1巻より(遠田マリモ/林たかあき/秋田書店)

「マツケンが異世界に転生して無双する漫画を創る仕事」

というのがあるんだなあ、っていう。

自分がそんな仕事振られたらどうなんですかね。描きやすいものなのか、描きにくいものなのか。

どういう気持ちで描いてるんだろう、と思ったら初っ端に原作・作画それぞれのコメントがありました。

『マツケンクエスト~異世界召喚されたマツケン、サンバで魔王を成敗致す~』1巻より(遠田マリモ/林たかあき/秋田書店)

なんか好感を覚えたw

自分は特にマツケンのファンというわけではなく、松平健という俳優・エンターテイナーへの理解は浅いので、

「作者たちのマツケンへの理解が深い」

とか言う資格はないんですが、主人公に据えた「マツケン」というキャラに対するリスペクトの他にも、作者たちが託しているものは確かに在って、それはとても好ましいものだな、と感じました。

『マツケンクエスト~異世界召喚されたマツケン、サンバで魔王を成敗致す~』1巻より(遠田マリモ/林たかあき/秋田書店)

松平健の役どころが言いそう、というより、言って欲しい、みたいな。

令和のダークヒーローたちの魂を削るような生々しい叫びと比べると、いかにも周回遅れの昭和な世界観の素朴なキレイゴトなんですけど、言う人(俳優で、演技です)が言うと重みというか説得力が違うというか。

平成・令和の「イケメン」という言葉では表現しきれない、松平健という俳優が昭和から保ち続けている「大人の男前」像というか。

出オチの一発ネタ感すごい作品ですけど、「マツケン」というキャラが持つ独特のスター性・ヒーロー性が、なんか奇跡を起こしてくれるんじゃないか的な期待感。

あんま意識したことなかったけど、

『マツケンクエスト~異世界召喚されたマツケン、サンバで魔王を成敗致す~』1巻より(遠田マリモ/林たかあき/秋田書店)

自分で思ってた以上に俺、松平健、好きなんだな。

 

 

#ふつうの軽音部 1巻 評論(ネタバレ注意)

割りと挑戦的な作品タイトルだな、というのが第一印象。

「普通じゃない軽音部」への、敵意とまではいかなくても、アンチテーゼとしての意図は感じます。

aqm.hatenablog.jp

aqm.hatenablog.jp

自分は常々、漫画というのは作品だけで完成するものではなく、読まれてこそ完成するものだと思っていて、当然、感動だとかエモだとか共感だとかいうものは、半分は受け手に依存するものだと思っています。

同じ作品でも、読み手の資質というより人生経験によって、作者の描きたかったことが大きく伝わったり、あまり伝わらなかったり、たまに間違って伝わったり。

同じ作品でも、特に読み手の人生経験によって没入度・感情移入度が大きく変わるのは、「人が死ぬ話」、「動物が死ぬ話」、「戦争の話」、「恋愛の話」、「育児の話」、「クリエイターの話」。

あとなんでしょうね。

少々ニッチですが、例えば「バンドの話」、「軽音部の話」なんかもそうです。

『ふつうの軽音部』1巻より(クワハリ/出内テツオ/集英社)

読者の側のバンド経験の有無で、主人公の情熱や憧れ、「あるある」の描写などへの共感度が大きく変わるジャンルのように見えます。

自分はバンド経験も軽音部の経験もないので、「多分そうなんだろう」という想像なんですが。

さて。

高校新入生の鳩野ちひろ(15・♀)は、高校に入ったら軽音部に入ろうと、ど素人の陰キャながら意を決して高価なフェンダー・テレキャスター(ギター)を購入。

軽音部に入部したものの、待っていたのは微妙ながら確実に存在する、「思ってたのとちょっと違う……」の連続だった……

という青春部活もの。

『ふつうの軽音部』1巻より(クワハリ/出内テツオ/集英社)

原作漫画(?)に、メジャー化にあたって作画担当を付けて、という感じらしいです。

表紙のとおり三白眼気味、『パプワくん』の柴田亜美を彷彿とさせる、作中でも「美少女」然としては描かれないヒロイン造形。

素人ながら陽キャの唯、凄腕ながら陰キャのぼっちちゃんに対し、「素人で陰キャ」という負の要素で固められたスタートの主人公ヒロイン。

『ふつうの軽音部』1巻より(クワハリ/出内テツオ/集英社)

「ぼっち具合」「陰キャ具合」というか、高校デビューの噛み合わなさ、思いどおりにいかなさ、それでいてどこか達観して己を知っててタフな「めげない陰キャ」感、ちょっと『スキップとローファー』も思い出しますね。

aqm.hatenablog.jp

「好きなもの同士で自由にバンドメンバーを組め」という陰キャには厳しすぎるバンド編成、下手くそな自分に相応しいイマイチなバンドメンバー、男女関係のもつれで続々と退部していく部員たち……という、嫌な意味でリアリティあふれる軽音部の描写。

こんだけ「普通の軽音部」の負の面を強調しつつも面白く読めるのは作者の人徳なのか、主人公ヒロインの人徳なのかw

前述のとおり自分は軽音部の経験はないんですけど、「あるある」を幻視してしまう説得力w

『ふつうの軽音部』1巻より(クワハリ/出内テツオ/集英社)

もどかしく、思い通りにならない「はとっち」のバンド人生の第一歩ですけど、それだけにちょっとした「上手くいったこと」がめちゃくちゃ嬉しく感じてしまいます。

入学2ヶ月で各バンドがそれぞれの理由で崩壊して残った(理想の)メンバーで再編成、とかなんか生々しいわあw 知らんけど。

楽しくバンドやれれば良い『けいおん!』、プロを目指す『ぼっち・ざ・ろっく!』に対して、今のところこの作品・この主人公の「目指すところ」は提示されていません。

『ふつうの軽音部』1巻より(クワハリ/出内テツオ/集英社)

多かれ少なかれ若者の「バンドやりたい」は「文化祭で演りたい」を通って「メジャーデビューしたい」「ビッグになりたい」のロックンロール・ドリームにスムーズに接続されますが、いろんなメジャーバンドのヒストリーを見聞きしても、メンバー脱退とかメンバー追放とか路線変更とか解散の危機とか解散とか、紆余曲折で世知辛い世界っぽい。

自分のセンスや技術、天性や努力はもちろん、メンバーにも、ルックスにも、出会いにも、運にもある程度は恵まれないと、という。

いかにも

「ファンタジーやご都合主義に背を向けていますよ」

と言わんばかりの作品タイトルですけど、バンド人生の第一歩からもどかしく思いどおりに行かない分、なおのことバンドのパフォーマンスにピュアな憧憬を抱く「はとっち」のサクセスストーリー、見てみたくなります。

『ふつうの軽音部』1巻より(クワハリ/出内テツオ/集英社)

主人公補正で最終回あたりの「そして数年後」でビッグになる夢を仮託されがちな「漫画の主人公」ではあるんですが、名誉や地位は置いといても、純粋に「はとっち」がかっこよく演ってる姿、見れたら気持ちいいだろうなー。

 

akibablog.blog.jp

#恋文と13歳の女優 4巻 評論(ネタバレ注意)

一色 文(いっしき ふみ)・27歳(♂)は中規模の芸能事務所で経理を担当していたが、人手不足により上司から営業への異動を命じられた。

営業の職務はタレントのマネージャー。

一色が担当するタレントは、子役でブレイクした後、中学受験期の休業を経て中学生になって芸能活動に復帰した、羽賀あやの・13歳(♀)だった。

自分のために働き細々と世話を焼いてくれる一色に、あやのはすぐ懐いた、というか、わかりやすく言うとグイグイくる清楚系小悪魔だった…

『恋文と13歳の女優』4巻より(じゃが/芳文社)

という、中学生女優とマネージャーの未満恋愛もの、今んとこまだ日常寄り。

作品タイトルにしろ表紙にしろ帯のコピーにしろ、ロリコンホイホイの妄想系。

故・ジャニー喜多川の未成年タレントに対する生前の性的悪行が墓から掘り起こされて話題になってることもあって、タイミング的には最悪。

主人公の一色はグイグイくる美少女にドキマギはしつつも、今のところ

「マネージャーとしてこの子に何をしてあげられるか」

という職業意識と、毒親ではないものの不在の父親・多忙な母親の家庭で父性にも母性にも飢えている子どもに同情的。

自制というよりはそもそも恋愛・性愛の対象としてあやのを見ていないながら、ビジネス&同情からくる優しさがティーンエイジャーを勘違いさせてしまう定番展開。

『恋文と13歳の女優』4巻より(じゃが/芳文社)

主人公2人、文とあやののインナースペースの描写の湿度が高く、どこかスキャンダラスで破滅的な結末を予感させはしつつも、出版社は芳文社で、レーベルはFUZで、あんまりそういう展開の作品が思い浮かびませんね。

イメージ的にはこれが講談社でマガポケあたりだと淫行一直線なんでしょうけど。

今巻は新キャラ、子役時代以来のあやのの幼馴染の同業者、モデルに転向して最近再び女優業にも再進出中の実乃梨(みのり)が登場。

表紙の右の子。

可愛い系のあやのに対してジト目の美人系、態度はツンツン系ながら、実乃梨は実は…というキャラ。

『恋文と13歳の女優』4巻より(じゃが/芳文社)

ライバル系・いじめっ子系かと思いきやという正体(?)で、さっそくあやのにとっても文にとっても無害化されてしまいましたが、引っかき回し役としてはちゃんと機能してて、あやのの気持ち・文の気持ちを移す鏡というか、良い「壁打ち」役になってくれてます。いい子やね。

ラブコメで引っかき回し役はお邪魔虫かと思いきや、主人公やヒロインの気持ちを自覚させるきっかけを与える推進剤だった、というのはよくある話ですね。

『恋文と13歳の女優』4巻より(じゃが/芳文社)

併せて、出口のイメージがよくわからなかったこの作品の縦軸、

「文はあやのをどうしたいのか」

が、少し見えたような見えないような気もします。

「歳の差未満恋愛ラブコメ」要素に目が行ってましたが、実は「女優のサクセスストーリー」、『ガラスの仮面』をなぞれる漫画なのか?

『恋文と13歳の女優』4巻より(じゃが/芳文社)

『ガラスの仮面』の北島マヤも確か1巻登場時は13歳の中学生で、かつ「紫のバラの人」との歳の差未満恋愛を抱えたヒロインなんですよね。

20年前ならともかく、「そして●年後…」以外でくっつけるわけには、なかなかいかないテーマだし。

「ヒロインが14歳になったら、このタイトルの漫画どうするんだろう」

とは思いつつも、「あやのが可愛い」だけで割りと保っちゃう漫画だし、このままサザエさん時空の日常ものになんねえかな。って前も書きましたっけ。

『恋文と13歳の女優』4巻より(じゃが/芳文社)

巻末のおまけ4コマ、ほのぼの可愛く面白くて、良いんですよね。

ところで、今巻で実乃梨が授けた策・テクニックを以前既にあやのが文に実施済みだった、というのは、

「あやのが天然で(あるいは意識的に)小悪魔である」

という理解でいいのかな。

時系列をひっくり返してる、ある種の倒置的なトリックなのかな?と一瞬ちょっと混乱しましたw

 

aqm.hatenablog.jp

akibablog.blog.jp

#薬屋のひとりごと 13巻 評論(ネタバレ注意)

なろう小説のコミカライズ。

古代中国の華やかな後宮を舞台に、美女ありイケメンありミステリーあり。

アニメよかったねえ、でも終わっちゃって寂しいねえ、というところで、

natalie.mu

2期も放送決定とのことです。わーい嬉しい。

『フリーレン』の2期も、とっとと決定して発表して欲しいですねえ。

www.google.com

さて。

『薬屋のひとりごと』13巻より(日向夏/ねこクラゲ/七緒一綺/しのとうこ/スクウェア・エニックス)

人攫いに後宮の下女として売り飛ばされた薬師で毒マニアの少女・猫猫(マオマオ)が、謎のイケメン高官・壬氏(じんし)の引き合いもあって上級寵妃のお付きの下女として、華やかな後宮内で起こる難事件を薬と毒の知識と花街出身の度胸で解決する時代ものの探偵もの。ちょっとラブコメも有り。

ちょっと話それますけど、この作品の後宮の、「人攫いに売られる」「親に売られる」という非人道的・犯罪的なスタートからの、階級社会の中での意外とのほほん牧歌的な生活、意外とめげずにたくましい本人(下女)たち、という「売られちゃったけどそこで割りと楽しく暮らしてます」的な非対称なアンバランスさは見ててちょっと面白いですね。

「昔」のおおらかさ、たくましさ、アバウトさの表現として、意外とリアルだったりするんかしらん。「人権」の概念知らんから諦めがいいのかな。よくわからん。

さて。

ガンガンとサンデーGXでそれぞれ同時にコミカライズされていて、サンデー版も出来物だと聞きますが、間違って読んでない方の続巻を買ってしまわないように気をつけましょう。

『薬屋のひとりごと』13巻より(日向夏/ねこクラゲ/七緒一綺/しのとうこ/スクウェア・エニックス)

勧善懲悪というよりはヒロインが謎を解いて自分の利害(主に好奇心)を満たしたらそこで終わり(逮捕・検挙が目的ではない)という感じで、「犯人(たち)がその後どうなったのか」は描かれないことが多く、人によってはモヤモヤが残るというか、「大人な幕引き」のエピソードが多めですけど、自分はこれ系のモヤモヤは結構好きです。

毒マニアの薬師が主人公って一見変化球のようでいて、「事件」の舞台は後宮ということもあり、「被害者」「犯人」もその多くが女性で、かつ犯行が(地位を損なわないよう)秘密裏に行われるケースが多いことを考えると、殺人の手段が「毒殺」に偏って主人公が薬師なのは、よく考えたら必然だったんだな、とか思いました。

『薬屋のひとりごと』13巻より(日向夏/ねこクラゲ/七緒一綺/しのとうこ/スクウェア・エニックス)

作品を貫くモチーフとして、ヒロイン・猫猫と未満恋愛ラブコメを展開する謎のイケメン宦官「壬氏(じんし)は何者なのか」がありますが、前々巻の皇帝家の閨閥の闇(?)に関わるエピソードで、次いで前巻の避暑地のアバンチュールと「壬氏暗殺計画」で猫猫と壬氏が行動を共にしたことで、だいぶ進展。

猫猫はそもそも恋愛不感症気味なのと、壬氏を宦官だと思っていることのダブルパンチで恋愛感情が成立していません。

壬氏も側も宦官を偽装していることで、猫猫を「恋愛対象外」として、「気持ちを封印していた」というよりは「猫猫への自分の気持ちに無自覚だった」という感じでした。

『薬屋のひとりごと』13巻より(日向夏/ねこクラゲ/七緒一綺/しのとうこ/スクウェア・エニックス)

が、前巻で実は壬氏が宦官ではないことが猫猫に明かされてしまったんですが、相変わらず恋愛不感症な猫猫ではなく、色んな意味で「高嶺の花」の側であるはずの壬氏の方が、恋愛感情のタガが外れてしまったっぽいですねw

「面白れー生意気庶民小娘への片想いを自覚しちゃった悩めるクール系王子様」

という風情で、「いったいこの作品のヒロインは誰なんだ」と思うぐらい可愛らしく艶っぽいw

こういう「高嶺の花ポジの逆転現象」は近年いろんな作品で見られますね。それとも自分が最近意識するようになっただけで、昔から定番なんかな。

恋愛・ラブコメ要素以外では、お話自体は後宮に舞台が帰ってきましたが、「お風呂回」というよりお風呂がらみのエピソードが続いて「お風呂巻」というか、美女たちの入浴シーンが続く眼福な巻。

『薬屋のひとりごと』13巻より(日向夏/ねこクラゲ/七緒一綺/しのとうこ/スクウェア・エニックス)

なんか今巻、雰囲気が「後宮もの」というより「全寮制お嬢様学校もの」みたいw

aqm.hatenablog.jp

もう一つの軸の陰謀ミステリー要素としては、

・壬氏とその正体をめぐる陰謀劇、正体を隠す理由

・西方の国家の暗躍

に、あと

・後宮内にもう一人いるはずの毒使い

がいたんでしたっけ?に、

・いったん宙に浮いた形の羅漢の再登場

が絡んでくる、という感じでしょうか? あとなんかあったっけ。

後宮内外で起こる事件も、序盤の「人間関係の愛憎や悲喜交々」から徐々に「皇帝家がらみ」「国家間がらみ」の陰謀にシフトしてきている気配がします。

淡々と事件が解決されていた作品序盤と比べて、主要キャラの情緒の描写も徐々にドラマチックに。猫猫以外。

末は壬氏の即位と猫猫の輿入れ(皇后)か、あるいは二人手に手をとっての駆け落ちか、と作品全体のラストをベタな落としどころで予想し始めてしまう頃合いですね。

『薬屋のひとりごと』13巻より(日向夏/ねこクラゲ/七緒一綺/しのとうこ/スクウェア・エニックス)

壬氏の片想いが成就すると良いですけど、醒めてスレたキャラが売りの猫猫が、恋に落ちる姿が今のところちょっと想像がつきませんねw それだけに、見てみたいけど。

 

aqm.hatenablog.jp

aqm.hatenablog.jp

#異世界おじさん 11巻 評論(ネタバレ注意)

17歳の時以来、昏睡状態だった叔父が17年ぶり目覚め「異世界に行ってた」と自称。

半信半疑の甥(主人公)の目の前で魔法を使って見せた。

回想シーン(魔法映像再生)の中の叔父さんは、オークと勘違いされ迫害されながらも異世界で度々世界を救う活躍をし、そして美少女たちと恋愛フラグを立てまくるも、ツンデレをただの嫌がらせだと思ってフラグをベッキベキにへし折りまくりだった。

『異世界おじさん』11巻より(殆ど死んでいる/KADOKAWA)

アニメのせいで「イキュラス エルラン」が脳内で子安で再生されてウケる。

異世界もののお約束をひっくり返してすれちがいギャグに、ハイコンテクストな「逆・転生もの」とでも呼ぶべきギャグコメディ。

相変わらずおじさんの過去回想の中で、英雄的な冒険譚と、トンチンカンなハーレムラブコメは続く、という展開。

作中、34歳のおじさんの、まだ20歳頃の回想やってるぐらいの進捗。

『異世界おじさん』11巻より(殆ど死んでいる/KADOKAWA)

一緒に暮らす叔父さんと甥のコンビで、叔父さんの魔法を活用して動画配信者として食いぶちを稼いだりSEGAを語ったりの日常パートと、叔父さんの異世界時代を甥やその彼女未満に映像魔法で見せながらの回想パート、をバランスよく(?)一冊に収める、という構成が定着しつつありますね。

前巻までの「骨のダンジョン」編?で封じた古代の悪霊・マガツコトノヌシを除霊するために、王都にいる勇者アリシアを訪ねるおじさん、というエピソード。

『異世界おじさん』11巻より(殆ど死んでいる/KADOKAWA)

作者の解説によるとアリシアの本編登場は8巻以来2年ぶりとのこと。

この作品の魅力・特徴というと

「可愛い異世界ヒロインたち」

「拍子抜けでギャグになるぐらいの無双展開」

「SEGAの話」

の3つかと思いますが、今巻はSEGAの話は2ページぐらいと控えめ、無双展開も控えて剣技と魔法のマジ展開、という感じ。

『異世界おじさん』11巻より(殆ど死んでいる/KADOKAWA)

近刊、無双ギャグ展開減りましたね。

シリアスなバトル描写に欲が出てきたのか、この後の展開の前振りなのか。

「視聴者」のメガネと藤宮のツッコミも控えめ。

その代わり、と言ってはなんですけど、今巻はグラビア特集かってぐらいのアリシア推し巻。

展開に押されてしばらく出番がなかったせいか、読者サービスなのか作者が久しぶりにアリシアいっぱい描きたかっただけなのかw

『異世界おじさん』11巻より(殆ど死んでいる/KADOKAWA)

エルフ、メイベル、アリシアの異世界三大ヒロインの、誰推しかで評価が分かれる巻かなと思います。

久しぶりのアリシアかわよ。

こうしてみるとツンデレヒロインのエルフやダメ人間ヒロインのメイベルと比べて、「勇者」だけあってオーソドックスな王道ヒロイン感ありますね。

あとはアレよね、初期と比べると一つのエピソードが長大化して巻またぎが普通になってきて、読み応えと取るか、テンポが落ちたと取るか。

『異世界おじさん』11巻より(殆ど死んでいる/KADOKAWA)

という感じでバトル真っ最中で次巻に続く。

 

aqm.hatenablog.jp

akibablog.blog.jp

#対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~ 7巻 評論(ネタバレ注意)

全寮制のお嬢様学園の高等部に入学してしまった、お嬢様の皮を被った2人の格闘ゲームオタクが出会ってしまったガール・ミーツ・ガール。

前作『柚子森さん』でおねロリ百合を描いていたいたりして、少女をフェティッシュに百合チックに描写するのが特色。

『対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』7巻より(江島絵理/KADOKAWA)

同じ時期に「お嬢様×格ゲー」という同じテーマを描いた『ゲーミングお嬢様』との類似、パクりじゃないのか、パクられじゃないのか、などと言われつつも作者同士は仲良く対談なんかしたりしていましたが、

aqm.hatenablog.jp

その「盟友」「戦友」とも言えた『ゲーミングお嬢様』が先に完結したことで、「お嬢様×格ゲー」ジャンルの現役作品代表に。

全寮制のお嬢様学校で人目を偲んで日夜腕を磨く4人の女子高生ゲーマーが、福岡で開催されるオープン大会に参加。

『対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』7巻より(江島絵理/KADOKAWA)

大会編が前巻で終わり、再び舞台はお嬢様学校と、その寮での生活へ。

前巻は一冊丸々かけて大会中の一試合、火を噴くような対決と運命的とも言える「強敵(とも)」との出会いが描かれて、ゲップが出るぐらい「格ゲー漫画」でしたが、今巻は打って変わって、「練習風景」的なわずかなシーンを除くと、格ゲーやってません。

福岡大会の余波、白百合様の顔出し動画がバズって学内で格ゲー趣味バレ、ついで深夜の練習会バレで寮生会議で退学の危機に。

『対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』7巻より(江島絵理/KADOKAWA)

並行して、てゃ先輩と綾のそれぞれの心に残った、大会の傷跡。

そして白百合様の母親にもバレて強制拉致&強制転校の危機。

という、格ゲーの画面外で多事多難な巻。

スポーツもの漫画定番の

「見せ場は試合巻で、ストーリーが動くのは幕間巻で」

の幕間巻、「引退(退学・転校・出場停止など)の危機編」。

前巻までの大会の描写で「格ゲー女子高生」が好奇の目で見られるシーン、ネットフェミニズム的な誇張表現というよりは「実際そうなるだろうな」と思わされる

「女子プレイヤーの生きづらさ」

みたいなものがチラッと描かれましたが、今巻は

「お嬢様格ゲープレイヤーの生きづらさ」

というか、環境が格ゲーをやることをなかなか許してくれない、的な。

『対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』7巻より(江島絵理/KADOKAWA)

思えば、『ゲーミングお嬢様』は男性キャラが執事のセバスチャン(とMOB)だけの「お嬢様だけの世界」で、かつ「格ゲーお嬢様」が崇拝されるファンタジーな価値観の世界だったな、としみじみと。

前述のとおり今巻、画面外の様々な障害に阻まれて、彼女たち全然格ゲーできてないんですよね。

と言いつつ、退学の危機よりも、転校の危機よりも、前巻で綾が負った傷?の方が読んでて心配だったりしてたんですが、

『対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』7巻より(江島絵理/KADOKAWA)

「格ゲー以外」で煩わされたことがかえって功を奏したというのか。

言ってることもやってることもメチャクチャなんですけど、好きな格ゲーのためだけに言ってることもやってることもメチャクチャなのが、この漫画というか彼女たちの精神的な健康のバロメーターで、かつ彼女たちの本領、魅力なんですよね。

『対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』7巻より(江島絵理/KADOKAWA)

クッソワロタ。その理屈はおかしいwww

真似できない、真似してはいけない狂気と直情馬鹿ですけど、その狂気と直情馬鹿っぷりが眩しいわ。

「自分の意志で行きたい方へ人生を曲げる小気味良さ」とでもいうか。

 

aqm.hatenablog.jp

#FX戦士くるみちゃん 6巻 評論(ネタバレ注意)

萌え漫画みたいな表紙ですけど、『ハンター×ハンター』の「予言の四行詩」を思い出します。

「『眠り』や『降りる』は死を暗示する」

ってやつ。

『FX戦士くるみちゃん』6巻より(炭酸だいすき/でむにゃん/KADOKAWA)

2008年、中学3年の少女・くるみの母親は、単身赴任の夫に内緒で家計をFXの豪ドル円につっこみ、リーマンショックによる金融危機で2000万円の損失を出して自殺した。

2014年、20歳の大学生となったくるみは、母が失った2000万円を取り戻すべく、バイトで貯めた30万円を元手に母を殺したFXに挑む。

絶望の地獄と、父のタンス預金を盗んでまでロスカットを回避した上での天国との、その両方を経験したくるみは、沼のようなFXの魔性に囚われていく…

『FX戦士くるみちゃん』6巻より(炭酸だいすき/でむにゃん/KADOKAWA)

という、美少女FX漫画。

癒し系の萌え漫画と勘違いして買わないように気をつけましょう。恋愛要素も百合要素も、自分の目から見るとほぼ在りません。

例えこの漫画が大ヒットしても、影響されてFX始めて破産して「作者を●して俺も◯ぬ」なんて奴が万が一にも現れないよう、

FXにのめり込む初心者の心に生じる闇が念入りに描かれた作品。

人間の自制心が溶けていく、ほとんどサスペンスホラー。

『FX戦士くるみちゃん』6巻より(炭酸だいすき/でむにゃん/KADOKAWA)

ここ数巻、「意識だけ高い系」のイキリ小娘・芽吹が、FXの沼から借金の沼へ沈んでいく様子がじっくり描かれました。

主人公のくるみを傍観者の立場に差し置いて、ぶっちぎりの愚かしさと心の弱さの「見世物」として作品を引っ張ってきた芽吹でしたが、今巻で「芽吹編 完全終了」でよろしいかと思います。

最後はこう、静かでしたね。意外とそういうもんかもしんないな。

『FX戦士くるみちゃん』6巻より(炭酸だいすき/でむにゃん/KADOKAWA)

ということで、ここ数巻、芽吹によって脇役の傍観者ポジションに追いやられていた主人公ヒロインのくるみに、再びスポットが。

「スポットが」というか、サブヒロインたち含めた「4人娘」も成仏したり漫画家目指したり利確したりで、気がつけばFXやってんの、くるみだけに。

ここから最終シリーズになっていくんですかね。

作中の伏線や現実の2014年前後の「史実」が制約にもなっていますし。

「思ったより人気が出たので引き伸ばします」

というやり方には、あんまり向いてない作品ですし。

『FX戦士くるみちゃん』6巻より(炭酸だいすき/でむにゃん/KADOKAWA)

この作品がハッピーエンドでもバッドエンドでも中途半端エンドでも、ここまで「萌え美少女のFX残酷物語」という「見世物」として十分面白かったので、読んでるこっちはどんな終わり方でも満足度高そうな気はしますが、この作者がどんな結末、メッセージ?、教訓?、現実?、人間?を描くのか、ちょっと見ものですね。

同じ作者の次回作も追うかどうか、けっこう「終わり方」できまっちゃうとこありますしね。

ここから一発逆転、「FXはいいぞ!」みたいな〆だと、それはそれで「夜中にピンポンされたのかしら」という謎の面白さが発生しますが。

『FX戦士くるみちゃん』6巻より(炭酸だいすき/でむにゃん/KADOKAWA)

ここで第6回!チキチキ!AQMが持ってるはてな株の最新株価のコーナー!

ここ数年、はてな株を保有してたんですが、実は昨年の途中で損切りして全部売ってクルマの頭金にしました。約160万円の損失でした。

まあその、ご多分に漏れず投資先ははてな株だけではなかったので、

最近の各方面の市場の好況もあって、トータルではぼちぼちです、という感じ。

株式会社はてな様の今後ますますの発展を、利害を共有しない赤の他人事としてお祈りいたします。ありがとうございました。

これもう漫画の感想関係ねえな……

 

aqm.hatenablog.jp

#リコリス・リコイル 4巻 評論(ネタバレ注意)

近未来(?)の日本、孤児を集めて女子高生エージェント「リコリス」に仕立て上げ、凶悪犯を捕まえたり殺したりする公的機密機関「DA」。

DA本部のリコリス"たきな"は、現場で命令無視して凶悪犯に人質の味方ごとライトマシンガンをぶっ放し、味方こそ無事だったものの逮捕・取り調べ予定だった犯人たちを全員射殺し、左遷。

新たな配属先はDAの潜伏サイト、喫茶店「リコリコ」だった。

『リコリス・リコイル』4巻より(備前やすのり/KADOKAWA)

「リコリコ」先任の千束は「東京一のリコリス」と高名だったが、千束とバディを組むことになった たきな を待っていたのは、「町のなんでもお助け屋さん」の日々だった…

という美少女ガンアクション・ハードボイルド?

『ガンスリ』や『デストロ』に『攻殻』と『シティーハンター』を混ぜて4で割って、最後に『ごちうさ』で仕上げた感じです。

自分は1巻を読んだ時点ではTVアニメを未視聴だったんですが、1巻読んで続きが気になったのでサブスクで全話観ました。面白かった。

可愛い女の子がカッコよくて可愛くて眼福だったので、その後ゲームしながらとかのBGM代わりに5周ぐらいかな?観ました。

『リコリス・リコイル』4巻より(備前やすのり/KADOKAWA)

前巻で地下鉄銃撃テロが発生、今巻はその余波と、爺さんの東京観光ガイド兼ボディガードのエピソード(アニメ視聴済的な説明

大変「出来物」のコミカライズで、ストーリーや原作アニメに忠実に、たまに補完的な追加描写あり、リコリスたちの描写も原作に忠実に可愛くアクションはかっこよく、描写や演出は漫画らしくアレンジ。

反面、純・日常ものスピンオフのコミカライズも並行して別作品が展開されている関係で、

aqm.hatenablog.jp

アドリブ・深掘りは「そっち」に譲っているのか、日常シーンについては却ってオリジナル要素をちょっと入れにくくなっちゃいましたかね、という感じ。

『リコリス・リコイル』4巻より(備前やすのり/KADOKAWA)

そういえば、その日常ものスピンオフの『リコリス・リコイル リコレクト』の2巻が、当初はこの本編4巻と同日発売とアナウンスされていたのが、

土壇場になって5月に延期されたように見えました。なんだろう? まあいいけど。

この作品をこの作品たらしめている基幹の設定、「DA」と「アラン機関」の2つの組織についてアニメの方は割りと投げっぱなしジャーマンというか、全てを説明しないまま原作アニメは終わったしまいました。

キャラの魅力とアクションで押し切った感がありましたけど、こうしてコミカライズで落ち着いて読んでみると、この2つの組織についてはやっぱ結構「穴」があるなあ、と思います。

『リコリス・リコイル』4巻より(備前やすのり/KADOKAWA)

「穴」といっても「ツッコミどころ」「欠点」というよりは、説明不足を考察や空想で補ってミッシングリンクを埋めたくなる感じというか。

江戸幕府?、明治〜大日本帝国政府、戦後の日本国政府と、政体の二度の激変があったにも関わらずそれらを跨いでDAが存続している理由。

明治政府樹立前の「彼岸花」創始者周りの物語。設立時期からして、おそらく「幕末」ですよね、とか。

リコリスが未成年女子ばかりで構成されている理由。

「才能」があれば表も裏も、犯罪者でさえ育成し支援するアラン機関の設立経緯、理念、目的。組織構成、資金源。

現実の現在の日本在住の一般人の目から見ると、作品たらしめている作中の二大組織のコアのところが、けっこう謎だらけの設定。

『リコリス・リコイル』4巻より(備前やすのり/KADOKAWA)

「ドラマの舞台装置」と言ってしまえばそれまでですし、創ってる側も「あえて割り切って」そうしたように見えますが、こう、辻褄の合う人物やエピソードで空白を埋めたくなって、二次創作的な空想が捗る「穴」だなあ、と。

あとは今巻は殺し屋・ジンとの対決シーンがメインディッシュでしたが、よく動いてたアニメとは表現の仕方は違えどエッセンスを引き継いだ、かっこいいガンアクション。「ガンカタ・アクション」というべきなのかな。

アニメじゃないのによく動いて見えるわ。

『リコリス・リコイル』4巻より(備前やすのり/KADOKAWA)

キャラもかわゆすなあ、キマシてますなあ。

 

aqm.hatenablog.jp

#平和の国の島崎へ 5巻 評論(ネタバレ注意)

いい表紙。

30年前、国際テロ組織「LEL(経済解放同盟)」により羽田発パリ行きの航空機がハイジャックされ、機はテロリストによって中東の空港に降ろされた。

乗客は全員、殺害されるか、洗脳され戦闘員としての訓練を施されLELの構成員、テロリストに育て上げられた。

『平和の国の島崎へ』5巻より(濱田轟天/瀬下猛/講談社)

30年後、当時児童だった島崎真吾はLELの拠点を脱出して日本に帰国、同様に脱出した同じ境遇の「日本人」たちと、日本国内で公安警察の監視を受けながら生活。

喫茶店の店員や漫画家のアシスタントのバイトをしながら、日本語の漢字や現代の日本の文化に少しずつ馴染もうと努力していた。

しかし、LELは脱出者への厳しい報復を身上としており、島崎たちの身辺にもテロリストの追手が少しづつ忍び寄っていた…

『平和の国の島崎へ』5巻より(濱田轟天/瀬下猛/講談社)

というハードボイルドもの。

「足を洗った殺し屋が一般人として生活」という雑に括る限りにおいて、建て付け『ザ・ファブル』によく似ていますが、「カタギになったアウトロー」は能力がある漫画家が真面目に描けば面白くなるに決まっている建て付けで、昔から『静かなるドン』やら最近だと『島さん』やら、その他ハードボイルド小説などでも定番の設定。

組織が「幻の殺し屋組織」から実在のモチーフを想像させる「国際テロ組織」に置き換わったことで、より血生臭く生々しい作品になりました。

『平和の国の島崎へ』5巻より(濱田轟天/瀬下猛/講談社)

島崎は1年以内に戦場に復帰してしまうことが『100ワニ』方式のカウントダウンで作中で予告されています。ある意味、日本を去って戦争に復帰してしまう『シティーハンター』。

連載現役の「殺し屋漫画」はたくさんあるんですが、その中で最も「救いのない」作品のように見えます。

「普通の人」になりたい主人公、でも追っ手をかける古巣の組織と、自身の信念のようなものがそれを許さず、一度囚われた憎しみの連鎖・暴力の連鎖から逃れられない。

『平和の国の島崎へ』5巻より(濱田轟天/瀬下猛/講談社)

平たくいうと、ギャグ漫画であるかのように始まった『幼稚園WARS』の最近の描写が、

aqm.hatenablog.jp

徐々にこの方向にシリアスで重ためで「殺し屋が救われなさそう」な『平和の国の島崎へ』に寄ってきているなあ、とか思いながらこっちの新刊を読んだんですが、こっちはこっちで

「子どもたちを守る」

「自分が送れなかった幸福な人生を子どもたちに託す」

という面で、『幼稚園WARS』に寄っていってんな、と思う今巻でした。

『幼稚園WARS』8巻より(千葉侑生/集英社)

「殺し屋と子ども」って「相性が良い」というと不謹慎ですけど、名作多いんですよね。

「自分たちの代で殺し合いを終わらせて、平和で幸福で有意義な人生を子どもたちに託す(主人公の殺し屋は死ぬ)」

みたいな。

名作映画『レオン』もそうですよね。

『平和の国の島崎へ』5巻より(濱田轟天/瀬下猛/講談社)

パクりどうこうってのじゃなくて、「自分の作品」「自分の作品の主人公」として自分が生み出した殺し屋キャラの人生、動機、人を殺した罪、生き様や死に様を真剣に考えていくと、そう在るように収束していく、「殺し屋もの」のある種の王道なんでしょうか。

という、「殺し屋漫画の宿業」みたいな面以外でも、今巻はアサシン・アクション・エンタメをこなしつつ、4巻まで続けてきた「定番展開」をハズす意外性のあるイレギュラーな展開や描写が多くて、面白かったです。

『平和の国の島崎へ』5巻より(濱田轟天/瀬下猛/講談社)

しかし当たり前なんですけど、新刊が出て巻を読み進めていくごとに、カウントダウンが進んでいっちゃうな……

 

aqm.hatenablog.jp

aqm.hatenablog.jp

aqm.hatenablog.jp

#ウマ娘 シンデレラグレイ 14巻 評論(ネタバレ注意)

実在の競走馬を美少女擬人化した育成ソシャゲ『ウマ娘』の派生コミカライズ。

日本の競馬史に残る名馬・オグリキャップの現役時代をモチーフにしたスピンオフ。

1〜2巻で地方レース(カサマツ)編が終わり、3巻から中央に移籍。

ウマ娘世界観でいう「中央トレセン学園」に編入し、並み居る名バ達と本格的にシノギを削る展開に。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』14巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

モチーフとなった史実が日本競馬史上最大級のシンデレラストーリーにして、トウカイテイオーと並ぶ日本競馬史上最大級の復活劇というドラマで、かつ現役時代を通じて魅力的なライバルにも恵まれていた馬のお話なので、更にifを加えた作話の骨組みの時点で優勝です。ありがとうございました。

タマモクロスが去ったターフで新たなライバルたちとの激闘が開幕、題して「第三章 永世三強」編。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』14巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

ja.wikipedia.org

dic.pixiv.net

オグリキャップの古バ1年目、永世三強を筆頭に多士済々のGⅠ戦国時代、伝説の秋シーズン。

その1戦目、天皇賞・秋はスーパークリークの2着に敗れ、現実の日本競馬のオグリキャップ古馬1年目でも物議を醸した、「マイルチャンピオンシップ(1,600m)→ジャパンカップ(2,400m)」の、わずか中1週間の連闘。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』14巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

今巻は伝説のジャパンカップをスタートからゴールまで。

飛び出した2頭に引っ張られるように、区間タイムで日本記録を爆砕しながらの火を噴くようなハイスピード展開。

Wikipediaによると、このレースの最下位15着のタイムは同年の「日本ダービー」「オークス」の勝ち時計よりも速く、ブービー14着のタイムは前年までのジャパンカップのレコードタイムに並んだんだそうです。

ja.wikipedia.org

どういうことなの、というハイペース。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』14巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

ネタバレですがオグリキャップは2着に敗れはするものの、1着のフォークイン(ホーリックス)と同タイム、しかも2,400mの世界レコード。

オグリキャップの「勝ったレース」のベストバウトはラストランを筆頭に諸説あるかと思いますが、「負けたレース」のベストバウトはほとんどの人がこのレースを挙げるでしょう。

「負けてなお強し」というか、間違いなくオグリの「馬生」のハイライトの一つ。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』14巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

この作品が始まった頃からしたら隔世の感があるような、「ここまでたどり着いたな」という。

「もう」14巻なのか、「まだ」14巻なのか。

「ラストラン」を含めて、作中時間残り1年と少し、残り6戦。

そろそろ、その、アの感じの話も水面下で動いてたりするんでしょうか、動いてるといいなあ。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』14巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

しかしまあ本当に次から次へと、よくよく強いライバルに恵まれて名勝負を繰り広げるウマ娘だね。漫画かよ。

 

aqm.hatenablog.jp

akibablog.blog.jp

#クプルムの花嫁 5巻 評論(ネタバレ注意)

「クプルム」ってなんだろう?と思って調べたらラテン語でcuprum 、英語のcopperで「銅」だそうです。

直訳で「銅の花嫁」というよりは、「妖怪・銅叩きの花嫁」という感じ。

新潟県 燕三条(三条市と燕市)。

『クプルムの花嫁』5巻より(namo/KADOKAWA)

モノづくりの職人の町で暮らすギャルで大学生・しいな(18♀)は、幼い頃から入り浸っている近所の銅器職人の工房の跡取り、幼馴染の修(20♂)にプロポーズされ、しいなの大学卒業を待って結婚するべく、婚約することに。

こわーい職人気質の修のジジババ、夏は暑く冬は寒い銅器職人の工房で、しいなは上手くやっていけるのか。

仏頂面で職人気質の男子と、無邪気で感情の起伏が豊かなギャルの、可愛らしい日常ラブコメ。

コロナ禍でご苦労されながらも取材に熱心な作者さんで、グルメも含めてご当地ネタも豊富。

『クプルムの花嫁』5巻より(namo/KADOKAWA)

昔気質の「職人の家」に嫁ぎつつも、近年の漫画でギャルに求められる「旧弊や人間関係の閉塞感を円満に打破する」役割をきっちりこなす、頼もしいヒロイン。

古風な家柄に風穴を開ける元気ヒロインという、ちょっとNHKの朝の連続テレビ小説風というか。

1巻以来、感想記事に「修(20♂)」って書いてきたんですけど、今巻で「25」と言ってて、

「あれ?5年経った?」

って感じでもないので、そもそもなんで自分は「修(20♂)」って思ったんだろうと1巻をいま読み返したんですが、よくわからなかった…

『クプルムの花嫁』5巻より(namo/KADOKAWA)

すまん、修は20歳じゃなくてたぶん25歳です。

婚約カップルのお仕事日常もの、という建て付けで、特に女の子の絵が可愛いゆるふわイチャラブ系っぽい作品なんですけど、今巻あたりから世界が「二人の部屋」や「工房」から外に出だしている感じがします。前からだっけ?

『クプルムの花嫁』5巻より(namo/KADOKAWA)

地方のご多分・伝統工芸のご多分に漏れず、燕三条の銅器職人の世界を舞台にしたこの作品も「人口減少」「過疎」「後継者難」「産業としての生き残り」という背景を抱えているんですが、目線が「地域と産業の振興・再興」に向き始めました。

いかにもお堅いテーマなようで居て、修としいなの親しみやすい当事者目線を守りつつも、キャラと一緒に自然と視座が高くなっていく感覚というか。

『クプルムの花嫁』5巻より(namo/KADOKAWA)

単純に「ライバル」という言葉では表現できない、修としいなに刺激を与える新キャラの存在も良いですね。

同じ漫画の最近の作品でいうと『であいもん』とかかなあ、誠実と真摯に少しのご都合主義を混ぜたウェルメイドな「ご当地漫画」「お仕事漫画」なんですけど、相変わらず日常(とイチャラブ)の描写も良いよねえ、っていう。

『クプルムの花嫁』5巻より(namo/KADOKAWA)

いや、けっこう足りてるぞw

「美少女は七難隠す」と言ってしまうと「七難」あるみたいで語弊がありますけど、女の子可愛いんだよね、この漫画。

 

aqm.hatenablog.jp

akibablog.blog.jp

#部長は少女漫画家 2巻 評論(ネタバレ注意)

竹井エレクトロニクス(株)第二営業部 第一課の課長・白崎翔は、史上最年少で課長に抜擢されるなど将来を嘱望されていた。

社長の方針で副業に非常に厳しい社風の中、しかし白崎は密かに少女漫画家を目指してペンネーム「羽月メリー」として日夜原稿に向かい商業少女漫画誌への投稿に励み、ついに念願叶って少女漫画誌の連載を勝ち取った。

それは、上司であった部長が副業バレで左遷、その後任として新たに部長に抜擢されたのと同じ日だった…

『部長は少女漫画家』2巻より(古都かねる/西村マリコ/講談社)

という、隠れ少女漫画家の若き部長のドタバタコメディ。バブル風に言うとヤンエグ少女漫画家。「ヤンエグ」知らない人はググりなさい。

原作担当は現役の会社員、作画担当も会社員時代に副業で漫画を描いていたという、「経験は肥やし」を地でいくコンビによる作品。

少女漫画家・羽月メリーの熱狂的ファンを自認し公言する新入社員、隠れ少女漫画家であることを隠してコソコソする白崎の不正を疑うライバル課長、社員の副業を許さない社長。

『部長は少女漫画家』2巻より(古都かねる/西村マリコ/講談社)

そんな環境で白崎は管理職として学び、漫画家として学び、そして初連載の1巻発売にまでこぎつけるのだった…

出オチっぽいようでいて、「管理職と少女漫画家の両立」の日常のディティールの回転にこそ、本領があるような気もします。

『部長は少女漫画家』2巻より(古都かねる/西村マリコ/講談社)

そこまで深掘りして描かれているというわけではないですが、よくある「会社員経験のない漫画家の書いた会社員生活」の嘘っぽさも、今のところあまり感じません。

多かれ少なかれ「仕事」というのは業種が違えど共通するところはあるもので、管理職としての学びが少女漫画に活かされ、少女漫画家としての学びが管理職に活かされ、という相乗効果がわかりやすく描かれます。

『部長は少女漫画家』2巻より(古都かねる/西村マリコ/講談社)

「漫画家あるある」ってこと漫画ジャンルにおいては商業作品からSNSのエッセイ漫画までレッドオーシャンで、競合たくさんネタ被りたくさんなんですが、「サラリーマンあるある」「上司あるある」との複合でネタも割りと目新しい。

今巻も引き続き、王道の「隠し事コメディ」「すれ違いコメディ」が中心ですが、白崎の「エリートサラリーマン」としての顔にガチ恋勢の新キャラ女子も登場して更に賑やかに。

『部長は少女漫画家』2巻より(古都かねる/西村マリコ/講談社)

「ネタ続くんかな」とちょっと思ってましたが、コメディ漫画は適度に新キャラが増えるとキャラ同士の関係性の「線」が増えて、ネタに幅が出ますね。

新キャラ大事。

あと、白崎のキャラ造形(人格)や言動がどこか「実際に居そうな良い上司」感があって、良いですよね。

『部長は少女漫画家』2巻より(古都かねる/西村マリコ/講談社)

「良い上司であろうとする」人の共感を呼ぶというか。

 

aqm.hatenablog.jp

akibablog.blog.jp

#幼稚園WARS 8巻 評論(ネタバレ注意)

国によって極秘で運営され、収監された凄腕の元・犯罪者たちを釈放・減刑と引き換えにボディガード兼「幼稚園の先生」として有期雇用し、誘拐や暗殺の対象にされる良家の子女を預かって護衛する、「世界一安全な幼稚園」。

元・伝説の殺し屋、囚人番号999・リタも、幼稚園教諭として子どもたちを日々護衛しながら、1年間の年季が明けて自由の身になることを、そしてイケメンの彼氏を作ることを夢見ていた…

『幼稚園WARS』8巻より(千葉侑生/集英社)

という、「殺し屋×幼稚園の先生」なハードボイルド・アクション。名物編集「林士平」印。

昔、シュワルツェネッガー主演で凄腕刑事が潜入捜査で幼稚園の先生になる『キンダガートン・コップ』という映画がありましたが、あれに倣えば「キンダガートン・アサシン」という感じ。

同じ「林士平」印の『SPY×FAMILY』は言うに及ばず『子連れ狼』の昔から、「ハードボイルドと幼児」は意外と相性が良いですね。

この作品に限りませんが、

『幼稚園WARS』8巻より(千葉侑生/集英社)

「弱者(子ども)を守る」

というエクスキューズで人殺しの倫理的な罪悪感を中和しているというか。

林編集作品らしく勢い・スピード・テンポ・ギャップ優先、無敵ヒロインでバトルというかガンアクションシーンもどこかコミカルに。

戦闘の優劣の描写は、割りとストーリー展開に応じた作者の匙加減次第、という感じ。

前巻から幼稚園の大イベント、VIPだらけの保護者を招待しての「お遊戯会」編。

展開的にはタワーディフェンスバトルよろしく次から次へと殺し屋がやってくるのを返り討ちするだけのストーリーで、あまり語ることがないんですが、そのバトルの過程で殺し屋それぞれの生き様がクローズアップされます。

『幼稚園WARS』8巻より(千葉侑生/集英社)

徐々に、殺し屋の死生観・人生観、「それでも人を殺し続ける理由」。

多くの「(元)殺し屋もの」漫画作品で

「殺し屋も人の子であり、人の心が在り、日常生活が在る」

というギャップをコメディモチーフにしていますが、この作品はそのギャップの一番重いところと一番軽いところを同時に踏み抜きに行ってるように見えます。

ギャップがキレに繋がって成功しているようにも、二要素が相殺されてただ中途半端になっているようにも、ややもすれば、「殺し屋ギャグ」としては重過ぎて「殺し屋の死生観」を語るには軽すぎる、支離滅裂になる寸前のバランスのようにも。

『幼稚園WARS』8巻より(千葉侑生/集英社)

作品のシリアス要素が重くなってきているというか、クローズアップされる「殺し屋の死生観・人生観」にバランスの天秤が傾いてきて、頻度が下がったギャグで中和しきれなくなってきてる感じもします。

数多くある現役の殺し屋漫画の中でも、だいぶ「重苦しい方の漫画」になってきました。1巻の頃の印象とだいぶ変わった気がしますね。

殺し屋漫画が非常にたくさんあって、その影響で作風が変わって行ってるのか、「描きたいテーマや展開が他の作品で先に描かれてしまう」と展開を急いでいるのか。

『幼稚園WARS』8巻より(千葉侑生/集英社)

もしかしたらこの漫画自体は実はブレていなくて、変わってしまっているのは読んでいる自分の方かもしれないですね。

他の殺し屋漫画のテーマやキャラの生き様・死に様に引っ張られて

「殺し屋漫画は"こう"あらねばならない」

みたいな固定観念が形成されつつあるのかもしれない、みたいな。

いずれにせよ、もうこの漫画を「殺し屋コント」としてただただ笑って楽しむのはもう無理だなあ。

あとは作品全体のキーとなるキャラ・園児のライラの謎なんですけど、

『幼稚園WARS』8巻より(千葉侑生/集英社)

引っ張るなぁ、とw

前述のとおり「子どもを守る」という目的が主人公たちの正当性を担保している作品なので、

「果たしてそうだろうか?」

という問いかけに繋がるのかな。

 

aqm.hatenablog.jp

akibablog.blog.jp

#ゆるキャン△ 16巻 評論(ネタバレ注意)

高校の野外活動サークルの女の子たちが、タイトルどおりゆるーくキャンプを楽しむ趣味×女子高生もの。アニメも実写ドラマも好評でした。

『ゆるキャン△』16巻より(あfろ/芳文社)

4月からTVアニメ3期とのことです。

av.watch.impress.co.jp

「ゆるい日常漫画だな」と思ってたんですが、作者の別作『mono』が輪をかけてゆるい作品で、

aqm.hatenablog.jp

「『ゆるキャン△』、こう見えて真面目に描いてたんだな…」と思いました。

相変わらず「ゆるキャン 12巻 絵が変わった」で検索してうちのブログにアクセスしてくる人がめっちゃいます。

www.google.com

自分はもう慣れましたというか、ちょっと画風の揺り戻しもあったのかな?よくわからん。

『ゆるキャン△』16巻より(あfろ/芳文社)

今巻は、なでしこ・恵那(黒髪ショートカット)・絵真(新入生)の見たことのない組み合わせ3人組による、ゴールデンウィーク、群馬方面への遠征キャンプ。

ちょうど今巻の表紙の3人ですね(犬以外)。

2〜3巻前に新キャラとして新一年生が入ってきたのでその顔見せと、主要メンバーの組み合わせシャッフル展開中、という感じ。

『ゆるキャン△』16巻より(あfろ/芳文社)

群馬遠征キャンプは今巻は前半戦とのことで、キャンプグルメは後半戦の次巻に持ち越し。

 

この3人の組み合わせだと、天然系の2人の先輩を絵真が面倒見る感じになるんですねw

あとはもう一人のメインヒロイン・しまりんの髪型チェンジ、トレードマークだったお団子ロングの断髪式。

『ゆるキャン△』16巻より(あfろ/芳文社)

バイクも女性の長髪事情も詳しくないですけど、バイカーでしょっちゅうヘルメット被るんだったら短い方が良さそうよね、というのと、キャラが増えたので髪型・髪色で見分けがつきやすいように整理してんのかな、という気もします。

でも番外編の「メット被ってたのでNOTお団子ロングヘアー」のしまりんの髪型、可愛いな。

『ゆるキャン△』16巻より(あfろ/芳文社)

けっこう繊細にキャラの髪の長さを時系列も含めて描き分ける作品?なので、キャラが髪型変えた後に伸びた髪の長さで時間経過が類推できるのも良いですね。

こう、中途半端に伸びた髪型が可愛いんですよね、この漫画。

現実時間も徐々に春めいてきて、読んでるこっちもキャンプとまでは言わなくても、どっか行きたくなりますね。

 

aqm.hatenablog.jp

akibablog.blog.jp