AQM

I oppose and protest Russia's invasion of Ukraine.

FSS (NT2022年9月号 第18巻相当) 評論(ネタバレ注意)

ファイブスター物語、連続掲載継続中。

「第6話 時の詩女 アクト5-1 緋色の雫 Both3069」。

扉絵コミで13ページ。

  

他の号はこちらから。

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  • (余談)
  • (扉絵)
  • (本編)
  • (所感)
    • 今後のメタ予定
    • GTMバーガ・ハリ ダンダグラーダ
    • 「なに? え? まじ? ダレコレ?」
    • ガマッシャーン共和国 国会
    • ナオ
    • 戦況
    • ブーレイ
    • GTMブーレイ

以下、宣伝と余談のあとにネタバレ情報を含んで論評しますので閲覧ご注意。

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#ダンジョン飯 12巻 評論(ネタバレ注意)

迷宮の主"狂乱の魔術師"によって竜にされた妹・ファリンを追って、冒険者ライオス一行が途中で倒したモンスターを美味しく調理して食べながら下層を目指してダンジョンを進んでいく、RPG世界観の空想グルメ・ファンタジー。

変わり種ファンタジーの中興の祖?「モンスターを料理して食う」というインパクトが強く、またそれが話題になって1巻出オチみたいなブレイクの仕方をした作品ですけど、もともとこの作者の持ち味はストーリーテラーなとこだったよな、といつの間にかストーリーも佳境に。

『ダンジョン飯』12巻より(九井諒子/KADOKAWA)

こういう爺ちゃん達、『BASTARD!!』でおったな。「エウロペアの七賢者」でしたっけ?

激闘の果てに迷宮の主"狂乱の魔術師"を倒したライオスたち。しかしそれはカタストロフの始まりだった。

流れで新たな迷宮の主となってしまったマルシルの夢・野望・欲望は、"狂乱の魔術師"を遥かに凌ぐスケールだった。

「マルシルの夢」+「有翼の獅子の習性」が、エヴァを手に入れた碇ゲンドウもかくやという、ザ・セカイ系。

『ダンジョン飯』12巻より(九井諒子/KADOKAWA)

最近、PCゲーをたくさんやってるんですけど、「オフゲーなんで他人に迷惑かけないしいいか」といくつかのゲームでグリッチ(裏技)やMOD(改造)にも手を染めてみたんですが、便利で快適な反面、まあモチベーションは下がるというか、ゲームの賞味期限というか開発者が設計意図した「楽しむ寿命」は縮まりますわね。

グリッチやMODって「神の手」もしくは「悪魔の手」であって、四苦八苦して工夫して腕を磨いて不便を克服して自分なりのゴールに辿り着くところにゲームの面白さというのはあって、それは人生に通じるところがあるなあ、と「なんでも"人生"って言っとけば深い気がする病」が発症してしまいます。

『ダンジョン飯』12巻より(九井諒子/KADOKAWA)

マルシルの動機は、漫画的にはありきたりではあるんですけどそれだけに普遍性があるというか、昨今「寿命ギャップ」をテーマにした作品が再興していること、また本作中でも度々語られてきたこともあって、少なくとも碇ゲンドウの人類補完計画と比べるととてもスムーズに理解も共感もできるもので、自分が同じ立場でも誘惑に勝てないだろうと思わされるものでした。誰しも、できることなら幸福を永遠に留めておきたい。

普通に過ごしたら100年後には他のみんなは死んでて、マルシルもフリーレンみたいに独りになってますもんね。

こうしたザ・セカイ系の野望を語るラスボスは、大抵の物語で主人公に打倒されるか説得されるかの二択で、この作品もその例に漏れないんですけど、ちょっと面白かったのは今巻でマルシルがチラッと語る「そもそも現状が不自然なんじゃないか」という疑問。

『ダンジョン飯』12巻より(九井諒子/KADOKAWA)

メタに言えば、エルフもドワーフも実在しない(たぶん)ので『ダンジョン飯』及びそのルーツになったファンタジー作品群における「寿命ギャップの不自然さ」は、「創作故」と簡単に切って捨てることはできるんですけど、

「今のこの世界はいつかのザ・セカイ系ラスボスによって改変された後の世界かもしれない」

という疑問は、我々が目にする多くの物語の裏で「主人公がラスボスを止められなかった物語」が無数にあったのかもしれない、という考えを起こさせて、ちょっと面白いですね。

『ダンジョン飯』12巻より(九井諒子/KADOKAWA)

辻褄の合わないルールや理不尽、実際生きてて多いし、寿命の話でいえば長命をこそ望まなくても「一緒に生きて、死ぬ時はオートマティックに同時に死ぬ(片方が死ぬともう片方も死ぬ)」MODがあったら実装したい関係ってありますよね。

という、セカイ系禅問答は置いておいて、そんなザ・セカイ系展開に対してライオス達があくまで食事で喩えて考え、食事を作り食べ、食事を絡めて戦う、どこまで行っても『ダンジョン飯』なのがまた良いですね。

「セカイ系カタストロフにメシで対抗」って普通に考えたら創作における縛り以外のナニモノでもないんですけど、縛りがバネになっているのか、二郎系ラーメン作りが「作戦」「回想のきっかけ」「動機の解明」「みんなでご飯」に一石四鳥で繋がっちゃう流れのスムーズなことときたらw

『ダンジョン飯』12巻より(九井諒子/KADOKAWA)

「どんな時でもお腹が空いたら美味しいものを作ってみんなで食べよう」のシンプルで暴力的な説得力。

「どんな食物も食べればなくなってしまうように 人生の幸福の頂点は一瞬だ」

って、そしたらまた買うなり作るなりして、また食うんだよ。

コレ書いてるいま深夜なんですけど、あー、二郎系のラーメン食いてえ。

 

 

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#僕の心のヤバイやつ 7巻 評論(ネタバレ注意)

「みつどもえ」の作者の現作。

ラブコメ漫画は数あれど、WEB連載で既読にも関わらず新刊が一番楽しみな作品。

主人公は、雑誌の専属モデルもこなす陽キャ美少女・山田を殺す妄想をする、中二病で陰キャでぼっちな男子中学生・市川。

図書館で偶然見かけた彼女は、一人でおにぎりを頬張りながらゴリラのような鼻歌を歌う、意外と割と残念な感じだった…

コメディの皮をかぶせた、エロで独りよがりで優しい中学生の、初恋の繊細な機微の描写。

『僕の心のヤバイやつ』7巻より(桜井のりお/秋田書店)

「青春と恋とバスケットボール」のモチーフは『スラムダンク』以前の'80年代に、「流行った」ってわけでもないんですけど、自分が好きな作品に採用されることが多く、

まず岡村ちゃんね。

あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう

あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう

  • 岡村靖幸
  • J-Pop
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

この曲の主人公はバスケ部ですけど、バスケットボールのジャンプシュートの成功率ってNBAのトップスコアラーでも100%にはならず、そこからレベルが離れるごとに成功率も下がって、非バスケ部のジャンプシュートが一発で入る確率って「ちょっとした奇跡」レベル。

「好き、嫌い、好き、」の花占い的に、恋愛ごとの願掛けによく似合います。

『きまぐれ★オレンジロード』の恭介とまどかも、ほっといたら何も起こらないところをラブコメとして話が動かしたのはひかるちゃんなんですけど、ひかるちゃんが恭介に片想いするようになったきっかけはバスケットボールで、

『きまぐれ★オレンジロード』(愛蔵版)1巻より(まつもと泉/WAVE STUDIO)

体育の授業でダサかった腹いせに、無人の体育館で座ったまま超能力で超ロングシュートを決めるところをひかるちゃんが密かに見ていた、という。

定期的に忘れるんですけど、そういえば『オレンジロード』の主人公、超能力者だったわ。

そもそも、街中のバスケットコートの数が少ない日本(出典:『スラムダンク』)においては、学生生活を卒業すると定期的な体育館通いをしてない限り「バスケットボールとゴール(コート)」を見かける機会がなくて、バスケットボールのボールとゴールのある風景って、ある意味「青春時代としての学生時代の季語」みたいなもんなんですよね。

『キラキラ!』(愛蔵版)5巻より(安達哲/講談社)

最終回近く、いろいろあった高校生活の卒業を前に、バスケットゴールを前に青春・恋愛について自問自答する描写。

漫画のモチーフとしてマイナーだったバスケットボールの扱いも『スラムダンク』を機に漫画メジャー競技に変わったんですけど、「青春恋愛もの・ラブコメにおけるバスケットボール」は掘ったらちょっと面白いかもしれません。

今巻は、えー、相変わらず

『僕の心のヤバイやつ』7巻より(桜井のりお/秋田書店)

「えっ!?こんな状態からでもまだ付き合ってない(保険じゃなかった)ラブコメがあるんですか!?」という感じ。

恋人として「告白して付き合う」以外のあらゆる外堀が埋まっていくというか、「"未満恋愛"としてやれることは全部やっていこう!」というKIAIを感じます。

なんで本人より先に親父に告白してんだよwww

『僕の心のヤバイやつ』7巻より(桜井のりお/秋田書店)

山田ママの表情いいよね。

あと「それでも未満恋愛」って言えるイベントってなんだろね。この子たち、「告白して付き合う」前に子どもが成人式を迎えそうで怖い!

まあでも、作品として「(甘酸っぱい)未満恋愛であることに意義がある」ってメタな理由は置いといても、「あと何があったら告白して付き合うんですか」という問いを、思春期の自分に向けたらなんて返事するかって話で、「たぶん両想いだよなコレ」って思ってても、告白するのってそんな簡単な話じゃなかったですよね。

『僕の心のヤバイやつ』7巻より(桜井のりお/秋田書店)

いや、告ってないのコレ? 普通に告るより難易度高くない?www

イッチやっぱ自問自答が過ぎて勇気出すポイントちょっとバグってるよなwww

あと今巻も萌子が可愛かったです。

『僕の心のヤバイやつ』7巻より(桜井のりお/秋田書店)

絵的にも丸顔・垂れ目・下がり眉の「たぬき顔可愛い」の最高峰なのと、「そこがな」言われた萌子の心中を、敢えて言葉にしないでこの表情、ってのが良いですよね。

前述の山田ママもそうですけど、「表情の演技」の描き分けの繊細さすごいなこの漫画。

足立クソー、足立のくせにフラグ立てやがって足立のくせに女見る目もあっていい奴だなこのヤロー足立のくせに。

 

 

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#売国機関 7巻 評論(ネタバレ注意)

東西の大国に挟まれ緩衝国として強制的に戦火の舞台にされた小さな共和国に、両大国の都合で今度は強制的に平和が訪れて一年。

強制された屈辱的な平和、両大国と唯々諾々と安保条約を結ぶ政権を、不満を募らせる左右の過激派は「売国奴」と罵り、暴徒・テロリストと化す。

『売国機関』7巻より(カルロ・ゼン/品佳直/新潮社)

前線で血を流し友を亡くしながら平和を勝ち取った「塹壕貴族」たちは、平和をすべての脅威から死守するべく、特務機関・軍務省法務局公衆衛生課独立大隊「オペラ座」、蔑称「売国機関」を設立。「平和の敵」と化した市民たちへ銃を向けた。

「幼女戦記」原作者による情報・防諜・公安もの。

前巻、共和国-王国間の国境周辺が再び軍事的緊張状態に陥り「すわ再びの大戦か」という状況に。

『売国機関』7巻より(カルロ・ゼン/品佳直/新潮社)

結局は共和国の西の大国で同盟国である連邦の動きにより、東の王国は撤兵。

中道保守・現実ジリ貧路線の共和国の現政権のプレゼンスが「連邦の犬」と下がり、更に共和国の通貨が「連邦による安定に支えられている」と「わからせられた」ところで、政権を選ぶ選挙に突入。

自国通過の潜在的・爆弾的な弱点を連邦から独り「わからせられた」オペラ座は、現政権の求心力低下を自覚しつつも、選挙の結果を「親・連邦政権の樹立」に導くべく選挙に介入。

『売国機関』7巻より(カルロ・ゼン/品佳直/新潮社)

しかし、新政権を占う選挙はオペラ座・連邦・王国のほとんどの人間の予想だにしない展開を迎える。

というわけで、選挙巻。銃声が一発もありませんでした。

主人公たちオペラ座の飼い主たる政権も交代します。

ほとんどのセリフが状況説明をしてくれているので、大人が丁寧に読めばそこまで難しい話ではないですが、話の大動脈以外の中小の血管や毛細血管の情報量が多いこともあり、ぼけーっと読んでるとこの人たち何やってんだかよくわからなくなりそうなw

「ルールがわからなくても面白い」『ヒカルの碁』をなんか思い出してしまいますね。

『売国機関』7巻より(カルロ・ゼン/品佳直/新潮社)

めんどくさくなったら、全ての登場人物を「共和国独立派」「親・連邦派」「親・王国派」「浮動・自己利益派」の単純な4色に色を塗り分けちまった方が、細かいニュアンスは取りこぼしつつも、わかりやすくはなりそう。

公同党の党首の行動ががめちゃくちゃなようでいて、連邦・王国のいずれかの影響下にあるとは言い難く、本心・動機・行動が読めないこの人が実は一番「自主独立」に近いような気がします。陸軍を掌握して何がしたいのかってのと、「キャラの格」的には新首相が早晩に降板して新々首相が擁立されそうな。

あとは読んでてまあ、「よくこんな状況で首相になりたい奴がいるな」というのと、「この作品、最後どうなって終わるんだろう」という。

あーあと、面白新首相の陰に隠れちゃったテイの通貨は結局どうなるんだw

『売国機関』7巻より(カルロ・ゼン/品佳直/新潮社)

政局の群像劇の話なので仕方がないとは言え、前巻と違って少佐の主人公としてのプレゼンスがほぼゼロだったのが、流れなのか伏線なのか。

 

 

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#アオのハコ 6巻 評論(ネタバレ注意)

※本編に水着回はありません

週刊少年ジャンプ、本誌連載の青春恋愛漫画。

中高一貫校、バドミントン部の1年のホープ・大喜(♂)と、同じ体育館で練習する女子バスケ部の2年で学校のアイドルで大喜の憧れである千夏先輩(♀)。

部活違い・学年違いながら、早朝自主練で千夏先輩と言葉を交わすようになった大喜が、ある朝自宅で目覚めてリビングに降りると、そこには千夏先輩の姿が!

千夏先輩は親の海外転勤に際してもバスケの夢を諦められず、バスケ部OG同士の母親同士のツテで大喜の家に下宿することになった。

『アオのハコ』6巻より(三浦糀/集英社)

という同居設定の青春恋愛もの。コメディ要素ももちろんありますが、成分比的にラブコメ作品じゃないですね。青春恋愛もの。

千夏先輩のバスケにかける覚悟を知った大喜は、彼女にふさわしい男になるべく、自分もバドミントンでインターハイ出場を目指すことに。

『アオのハコ』6巻より(三浦糀/集英社)

新体操部の期待のホープで大喜の幼馴染で片想い中のサブヒロイン・雛を交えた片想い三角関係。

図にするとこうなる。

雛→(好き)→大喜→(好き)→千夏先輩

この図、要る?

それぞれのインターハイが終わった夏の終わり、雛が大喜に告白したり、大喜と千夏先輩が海に行ったり、定番の「帰れない二人」のお泊まりイベントが発生したり、千夏先輩の同居が一時的に解消されたり。

『アオのハコ』6巻より(三浦糀/集英社)

インターハイも一区切りついて、千夏先輩の気持ち、雛の気持ちと、いろいろと整理してリセットして再出発、という感じ。

特にモノローグでも比較的無口でわかりにくかった千夏先輩の心理が言葉で語られてちょっとスッキリしました。

件の「恋愛自粛令」的なやつ、千夏先輩の気持ちもわかるけどちょっと主人公に酷だなーと思ってたので。

『アオのハコ』6巻より(三浦糀/集英社)

作中で「ずるい女」との指摘に対してヒロインが懊悩するのって『めぞん一刻』以来かしらん。朱美さんが響子さんに「ずるい女」っつったんですよね確か。

一緒にTVドラマ観ながらの母親の意見で表面上の波風立てずに代弁させる、というのはちょっと新しいというか上手いやり方w

三角関係ものの定番展開ですが、響子さんにしろ千夏先輩にしろコユキさん(誰だよ)にしろ、ぬるま湯の人間関係でまったり楽しく普通に過ごしたいだけなのに、モテ故に周りがほっといてくれず「好きか嫌いか白黒はっきりしなさいよ」と迫られる、というのは、それはそれでちょっと可哀想な気もしますね。

自分が意思表示しなくてもお気に入りの異性が一方的にちやほやしてくれるって、正直最高じゃんね。

雛ちゃんが健気に積極的に動き回ってますが、

「サブヒロインが動いて主人公とメインヒロインが気持ちに白黒つけた結果そっちがくっついちゃう

 (そうすることがサブヒロインに対する"誠実さ"になる)」

というのは意外と現実でもよくある話で、じゃあサブヒロインは何もしない方がよかったのかというとそういうわけにもいかず、恋愛ごとは何事につけ独りでやることじゃないので中々ままならない。

『アオのハコ』6巻より(三浦糀/集英社)

本人そこまで意識してないんでしょうけど、恋愛漫画用語を身も蓋もなく翻訳すると

「(私に誠実であろうとするなら)、

 大喜を好きなら今その旨を私に正直に言ってください。

 同じ土俵で正々堂々ライバル関係になりましょう。

 大喜を好きでないなら彼に気を持たせるような態度はやめてください。」

と受け取れる、暗黙の「他人の恋愛を邪魔していいのは自分が当事者の時だけ」という同性同士の恋愛ルール協定に基づいたある種の牽制で、現実にはもっとひどい

「早い者勝ちで自分の縄張りなのであなたは手をひきなさい」

って場合もあるんですけど、いずれにせよ潜在ライバル同士がもともと大した関係性がなければ

「お前に関係ねーだろ(なんでお前に誠実じゃないといけないんだ 誰だお前)」

で切って終わってよい「はず」の話(現実では終わらずに「赤の他人の「恋愛脳裁判」にかけられることが少なくない)なんですけど、恋愛・ラブコメ漫画のメインヒロインは作中の人間関係やある種の「聖女属性」故に、これを言えないんですよね。

 

 

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#逃げ上手の若君 7巻 評論(ネタバレ注意)

「魔人探偵脳噛ネウロ」「暗殺教室」の松井優征の新作は、鎌倉時代末期〜南北朝時代〜室町時代初期を舞台にした歴史物。設定・登場人物は史実ベース。

鎌倉幕府のトップ・執権として世襲で地位を継いできた北条氏の嫡子の少年・北条時行。しかし、幕府と敵対する後醍醐天皇側に寝返った足利高氏(尊氏)により、鎌倉幕府は滅ぼされてしまう。

『逃げ上手の若君』7巻より(松井優征/集英社)

北条氏の滅亡により大切なものを全て奪われた時行は、信濃国の国守にして神官の諏訪家を頼りに落ち延び、足利への復讐を誓う。

という伝記もの。シリアスに史実を追いつつも、演出としてギャグコメディ色も強い作品。

主人公・時行の持ち味は強い生存本能に基づく逃げの天才。

1335年3月、信濃動乱を経て、時行が歴史にその名を轟かしWikipediaに載るレベルの「中先代の乱」の直前まで。

『逃げ上手の若君』7巻より(松井優征/集英社)

密かに京に上った時行は佐々木道誉の縁者や楠木正成などと邂逅しながら、後醍醐天皇・足利尊氏の同時暗殺計画に関与し、宿敵・尊氏と直接刃を交えて対峙する。

流れ的には大イベント「中先代の乱」の前座で、佐々木、楠、そして尊氏の顔を見ておこう、というイベント。史実の暗殺計画にフィクショナルに時行が関与していたことにする、という感じなんかな?

『逃げ上手の若君』7巻より(松井優征/集英社)

この時代の異色性、登場人物が普通に天皇を裏切ったり殺そうとするんですよね。平場に降りて実権を持つ武家・公家と権力闘争を繰り広げた後醍醐天皇の異色性と言ってもいいのかもしんない。

戦前の歴史教育ではこの辺全部「逆賊」扱いだったっぽく、子どもの頃に真田広之が主演(足利尊氏役)したNHK大河ドラマ『太平記』を観てたら婆ちゃんに「こんな逆賊のドラマ観るんじゃありません!」ってTV消されました。人生で口語で「逆賊」なんて言葉聞いたの、あれ一回きりです。

そんな中でも天皇への忠義を貫いた楠木正成は死後に神に叙せられた名将ですが、今巻で初登場。

『逃げ上手の若君』7巻より(松井優征/集英社)

NHK大河ドラマ『太平記』では武田鉄矢が演じた役どころ、どんな描かれ方をするのかなと楽しみにしてたんですが、おおうw

確かに時行とキャラ被ってるとこあんですよね。

他、京編としては尊氏との因縁強化と、あと佐々木道誉の娘の扱いが中途半端で今のところ出てきた意味がないんで、もっとずっと後々に効いてくる縁なんだろうな、と。あーあと新田がちょいっと登場。

次巻からの大イベント「中先代の乱」ですが、

『逃げ上手の若君』7巻より(松井優征/集英社)

たぶん「中先代の乱」が終わったところで「第一部 完」的に時制が数年飛ぶんじゃないかなと思います。

ここまで全部いわば次巻以降のための前座みたいなもんで、少年漫画的に盛り上げつつ前座に7巻かけるというのは相当じっくりやってますけど(途中で打ち切られなくて本当によかったわ)、「北条時行の伝記」の一番美味しいところの一つ、いよいよ本番。

「為に作品が始まったエピソード」、いったい何巻かかるやら。ああ楽しいw

 

 

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#ダンダダン 6巻 評論(ネタバレ注意)

雰囲気がスタンドっぽいというか、二人ともスタープラチナっぽいw

霊媒師の家系のギャルと、いじめられっ子気味で孤独なオカルトオタクの少年の同級生ガールミーツボーイから始まる、オカルトバトルなバディもの?

『ダンダダン』6巻より(龍幸伸/集英社)

未だにこの漫画がどうなりたいのかまだちょっとよくわかりません。

書き出していくと

・ボーイ・ミーツ・ガール

・オタクに優しいギャル

・ラブコメ群

・ちょいエロ

・呪術廻戦、チェンソーマンなどの最近のジャンプのオカルトバトル漫画群

・うしおととら

・東京入星管理局

・GANTZ

・メン・イン・ブラック

・漫☆画太郎

あたりを足して適当に割ったような感じ。

『ダンダダン』6巻より(龍幸伸/集英社)

いろんなジャンルのごった煮というか、カオスな闇鍋みたいな漫画。クリーチャーも宇宙人から妖怪から幽霊から割りとなんでもあり。

前巻の続き、呪いの家編の途中から一次会の締めまで。溜めてたストレスをスカッと解放するカタルシス巻。

『ダンダダン』6巻より(龍幸伸/集英社)

疾走感のあるアクション、謎解き(?)や援軍登場で状況が二転三転するド派手な見せ場の連続でピンチな状況は脱したが、二次会の重たい宿題を抱えて次巻に続く、という感じ。

よく動く絵、電子書籍で見開きのページの継ぎ目の消しが美しい。ブリーフいっちょなのにかっこいい不思議w

『ダンダダン』6巻より(龍幸伸/集英社)

俯瞰で見ると「バトれる仲間が増えていく王道展開」というか『ワンピース』でサンジやウソップが仲間になったエピソードをやってる感はあります。

ジャンプでは伝統的に「仲間になる前は強かったのに仲間になった後は主人公の引き立て役に…」というのが多かったですけど、最近は仲間キャラの魅せ方だいぶ変わってきましたね。

『らんま1/2』みたいな二次会の宿題を抱えつつ

『ダンダダン』6巻より(龍幸伸/集英社)

エピソード自体は「もうちょっとだけ続くんじゃよ」な感じで次巻に続く。

 

 

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#マリッジトキシン 1巻 評論(ネタバレ注意)

高名な暗殺稼業の名家の嫡男、下呂ヒカル。

一流の「毒使い」として活躍するものの生育・生活環境から非モテまっしぐらで人並みの幸福は諦めているものの、家からは後継者作り・結婚を急かされ、ついに妹の人生が「家の犠牲」にされかけたの機に婚活を決意。

『マリッジトキシン』1巻より(静脈/依田瑞稀/集英社)

暗殺ターゲットだった凄腕の結婚詐欺師の女に請うて「婚活アドバイザー」になってもらい、かくて彼女を相棒に暗殺者の婚活が始まった…

という、暗殺バトルラブコメ。でいいのかなジャンル。

 

暗殺者を題材にした漫画は非常にたくさんありますが、

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本作が第一話一コマ目で示すとおり「卑怯くさい」「アクションにしづらく画面映えしない」「過程が地味」「暗くて陰惨」「死体が汚くなる」など、まあ漫画に向かない理由はいっぱいあって、「毒殺」が主人公アサシンの武器になることは、特に少年漫画ではほとんどありません。大体やられ役やね。

『マリッジトキシン』1巻より(静脈/依田瑞稀/集英社)

各ジャンルのゲームやってるとDoT(ダメージ・オン・タイム/ダメージ・オーバー・タイム、時間経過ダメージ)の猛毒系最強だったりは珍しくないし、現実問題「職業暗殺者をやらなきゃいけないけど長生きしたい」場合は、自分も毒殺を選びそうな気がします。

本作は主人公の能力は「毒殺」ながら、少年漫画らしいバトルに持ち込みやすいしかけも。

『マリッジトキシン』1巻より(静脈/依田瑞稀/集英社)

まージャンプらしい。デバフを転じてキャラの能力を飛躍的に増幅する、ってのもゲームあるあるでニヤリとしてしまいますね。

あと主人公は暗殺者ながらいわゆる「悪人しか殺さない」少年漫画タイプ。


んで暗殺と二足のわらじ、というより一石二鳥狙いの婚活方面で相棒になるメインヒロインですけど、男の娘(もしくは女装男子)です。

『マリッジトキシン』1巻より(静脈/依田瑞稀/集英社)

もはや「ジャンプでヒロインが男の娘なんて!」っていうほど珍しい存在でもなく、伝統的に「可愛ければよかろうなのだ」というか、もともと『ストップ!! ひばりくん!』というオーパーツが存在する上に、本作は本誌じゃなくジャンプ+ですしぃ。

ということで、「毒使い暗殺者」「男の娘(もしくは女装男子)ヒロイン」と、パッと見は奇を衒ったというか一昔前は読者によってはアレルギーありそうな設定も実はたいした障害にはならず、「変わった味付け」としてむしろ歓迎される要素じゃねえかな。

自分は好きです。


この男の娘(もしくは女装男子)ヒロイン可愛くていいんですけど、

「(人外含めた)ワケあり応援ガールなヒロインが非モテ主人公の恋を応援してるうちに両想いに」

ってのもラブコメの定番で、今回は自分は『電影少女』を思い出しました。

『電影少女』1巻より(桂正和/集英社)

なんとなく女の子の絵柄も中期の桂正和に似てる気がせんでもないですね。

『電影少女』の先行読み切り版では

「ビデオガール現出の際にビデオテープが混じっておしとやかだったはずのビデオガールに男(ボーイッシュ)要素が混じっちゃう」

という、ボーイッシュで男心に理解のあるヒロイン設定があって、連載版の「あいちゃん」にもその要素が引き継がれたんですが、今作はもう一歩進んで「男の娘(もしくは女装男子)になっちゃった」という感じ。

 

ということで、一流暗殺者の俺TUEEEドヤ感をベースにバトル&ラブコメを通じて非モテマインドの主人公が啓かれて「モテるモテない」を超えて人間的に成長していく、な感じになんのかな。

どっかで見た要素の寄せ集めではあるんですけど、「毒使い暗殺者」「応援ガールラブコメ」「可愛い男の娘(もしくは女装男子)ヒロイン」と、要素のチョイスの王道の外し方が自分好みで良いですね。

『マリッジトキシン』1巻より(静脈/依田瑞稀/集英社)

時勢を反映した婚活をテーマに、キャラデザも高身長・黒髪・無愛想クール・デキるイケメン・ついでにメガネと、流川とか伏黒とかアキくんとかイケメンキャラの伝統の系譜だったりと、「ツボというか定番性癖おさえてんなー」という今時のジャンプ作品マーケティングの優等生、という感じ。

懸念は主人公の毒属性がバトルで癖があってやや扱いづらいのと、あんま非モテに説教臭くならないといいな、というぐらいで、かっこいい主人公、可愛いヒロイン、縦軸の建て付けとともにギャグコメ要素・ラブコメ要素も申し分なし。

普通に面白くて続きが楽しみ。

 

 

#◯◯なメイドさん 1巻 評論(ネタバレ注意)

資産家の御曹司で大学生の「ご主人」の一人暮らしマンションには、契約派遣メイドの「メイドさん」が住み込んでいて実質二人暮らしだった。

若く美しく仕事もできるメイドさんだったが、ローテンションでクール無愛想無表情でヘビースモーカーで、勤務時間を過ぎると一切仕事をしないビジネスライクでドライな性格だった。

が、ローテンションなご主人とは波長が合っていた。

という日常コメディ。

『◯◯なメイドさん』1巻より(鮭乃らるかん/芳文社)

住み込みメイドなので勤務時間の17時を過ぎたらくつろいだカッコでその辺うろうろしているという、「そんなメイドいる!?」的な若い男女の同居もの、「未満恋愛未満」ぐらいの匙加減。

『ウマ娘』のファンアイテムの公式コミカライズ・アンソロジーの『ウマ娘 プリティーダービー アンソロジーコミック STAR』という漫画があって、4コマ中心で4巻まで出てまして、4冊全部に皆勤賞でゴルシの扱い方が美味い「鮭乃らるかん」先生の作風が気に入ったので、

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「ウマ娘 プリティーダービー アンソロジーコミック STAR」3巻より(鮭乃らるかん/Cygames/星海社/講談社)

Amazonで他の著作を探してみたらオリジナルの単著がヒットしました。ゴルシとルドルフとトーセンジョーダンの3人を絡ませようって発想、なかなか見ないです。

Amazonレビューを見るに1ページTwitter漫画を経て同人誌→スカウトされて商業化、という流れなんかな。商品ページ見るに2年前の刊行。

『◯◯なメイドさん』1巻より(鮭乃らるかん/芳文社)

コンセプトや作り込みより、キャッチーさやその場のバズが優先されがちなTwitter漫画は、連載化・長期化・大作化すると粗が目について、「Twitter漫画は背骨が薄い」というのが私の持論ですが、日常コメディは例外というより対象外で、最もTwitter漫画向きのジャンルかなと思います。

あのー。

『◯◯なメイドさん』1巻より(鮭乃らるかん/芳文社)

「ビシッとメイド服でテキパキ仕事してた女がオフになると黒いパーカーで咥え煙草」とか、自分、大好物なんですよね。

『ぼく勉』の真冬先生も普段スーツで厳しめ女教師が休日にコンビニ前でジャージで肉まん立ち食いしてる姿に痺れたんですが、

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「ぼくたちは勉強ができない」2巻より(筒井大志/集英社)

この『◯◯なメイドさん』読んで2つ目の例で自覚したわ。

自分はオンオフの切り替えのギャップ、特にオンのプロフェッショナリズムとオフのだらしなさのギャップに弱いみたいです。

ということで、俺得しかない同居日常コメディ。

『◯◯なメイドさん』1巻より(鮭乃らるかん/芳文社)

爆笑ネタ連発、という感じではなくてクスッとくる系、間というか空気感がダルい系ローテンションで、二人が互いに気を遣っているようで気を遣っていないようでやっぱり気を遣ってる感じ、良いです。いつまででも読んでいたいわ。

1巻以来2年経ってますが、たぶんTwitterで描き溜まったら2巻が出るのかな?

来月には裏サン連載作品の1巻も出るようなので、そちらも楽しみ。

 

『◯◯なメイドさん』1巻より(鮭乃らるかん/芳文社)

とりあえず作者のTwitte遡って、未収録エピソードを読みたおしてきます。

 

 

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(選書参考)

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#メイドインアビス 11巻 評論(ネタバレ注意)

可愛らしいキャラ、メガネ少女のリコとメカ少年のレグが、作者の業を叩きつけたようなエグくてグロい目に遭いながら「アビス」と呼ばれる大地の大穴を潜る冒険もの。

前巻の「成れ果て村」編の完結を受けて、次のエピソードまでの繋ぎと伏線の巻。

『メイドインアビス』11巻より(つくしあきひと/竹書房)

リコ、レグ、ナナチにファプタを加えた4人の、この作品にしては比較的平穏な旅路と、挿入されるネクストエピソードのプロローグ。

癒しの巻というか、ファプタがみんなに懐いてて、特にナナチに絡むと可愛い×可愛いでKAWAIIが渋滞起こしててすごいですね。

とりあえず次巻に向けて、今回の伏線・フレーバー予告のメインは

■枢機の輪
■未知の白笛
■巫女とは?(クラヴァリとテパステの仲間?)
■クラヴァリが隠していたもの「置き土産」とハボルグの顛末
■地上で起こっていること

『メイドインアビス』11巻より(つくしあきひと/竹書房)

サブは

■ライザの鏡文字
■アビスの時間の流れ、「時間も固まりやすい」
■ファプタが見た「重なったもの」
■テパステの回想シーン以降、現在に至る経緯
■既知で未登場の最後の白笛ワクナ(巫女関連?)
■なぜ呪詛船団は「巫女」を敵視しているのか

あたりを憶えておこうと思います。多いなw

『メイドインアビス』11巻より(つくしあきひと/竹書房)

あと新登場のテパステすごい可愛い(キャラデザ的に頭がデカすぎて巨乳に見えない)んですけど、回想シーンからまったく歳をとっているように見えないですが、件の回想はどれくらい前の話なんだろうか。

『メイドインアビス』11巻より(つくしあきひと/竹書房)

割りと最近っぽく見えるけど、時間の流れが歪んでるっぽいんで思いのほか昔だったりするんだろうか。(未来…はさすがにないか)

 

 

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#ぷにるはかわいいスライム 1巻 評論(ネタバレ注意)

WEB連載がネットで話題なのは知ってたんですけど、「まあ単行本になってからでいいか」と思って。で、単行本が出たので。

Amazonの商品紹介文(出版社のコメントでしょう)によると、「コロコロ史上初のラブコメ、ここに誕生!!」とのことです。

『ぷにるはかわいいスライム』1巻より(まえだくん/小学館)

コタローが小学生時代に作ったスライムが生命を宿して7年、「ぷにる」と名付けられたスライムは中学生になったコタローと相変わらず暮らしていた…

という、美少女オバQもの。

主人公が中学生というのはコロコロコミック的にはやや年長気味ですが、本誌ではなくWEB連載、「女の子に興味が出たら卒業」のコロコロコミック本誌より、もう少し想定読者層を上に拡げた日常ラブコメ作品。

『ぷにるはかわいいスライム』1巻より(まえだくん/小学館)

『ドラえもん』『オバケのQ太郎』などの藤子不二雄フォーマットは小学館の外も含めて多くのフォロワーを生み、一部作品は闖入した居候を美少女化・作品をラブコメ化したいわゆる「美少女オバQ」になりまして、

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他誌で珍しくもなくなった「美少女オバQ」フォーマットを、コロコロコミックが逆輸入、という構図。

『ぷにるはかわいいスライム』1巻より(まえだくん/小学館)

経緯が経緯なので、連想して思い浮かぶ作品はたくさんあって、物質に美少女が顕現と言う意味では『かんなぎ』とか、無性別の人外との恋愛・性愛という意味では手塚治虫作品とか、ほのぼの牧歌的なジュブナイルのギャグコメディノリは『イカ娘』とかを彷彿とさせる作風。

火の鳥 8

火の鳥 8

Amazon

門外漢から見るとキャラデザは『プリキュア』っぽくも見えますね。

巻末あとがきで

『ぷにるはかわいいスライム』1巻より(まえだくん/小学館)

連載開始にいたる割りと身も蓋もない経緯も赤裸々に描かれてて興味深いw

いかにも低年齢向けの人畜無害系のほのぼのギャグっぽい体裁ですけど、やってること『ちょびっツ』っぽいというか

ジュブナイルながら「美少女オバQ」に対する男の願望はきっちり込められていたり、ギャグコメやキャラ付けにも『ドラえもん』にも共通する狂気が潜んでいたりと、大人が読んでもなかなか楽しい作品。

『ぷにるはかわいいスライム』1巻より(まえだくん/小学館)

本来、大人向けに描かれているものではないので、(大人の)読者を選ぶところはありオチもユルいですが、『イカ娘』お好きであれば楽しめると思います。

見てのとおり、ぷにる可愛いしね。

少年と人外の、「禁断の恋」のひとつの型ではあるので、

『ぷにるはかわいいスライム』1巻より(まえだくん/小学館)

こういう作品が意外と一生忘れられない印象的なエピソードやラストを迎えたりもするんですよね、

とちょっと『まじかる☆タルるートくん』なんかも懐かしく思い出しながら。(タルるートくんの姉ちゃん萌えだった)

 

 

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#けいおん!Shuffle 2巻 評論(ネタバレ注意)

姉が通う桜高の学園祭に遊びに行った高1の紫と、幼馴染と楓は、『けいおん』オリジナルメンバーのライブを目にしてバンドの魅力に取り憑かれる。同じクラスの真帆を巻き込んで軽音同好会に入会、楽器を揃えてバンド活動を始めていく…

『けいおん!Shuffle』2巻より(かきふらい/芳文社)

『けいおん』の焼き直しを時間を巻き戻して同じ世界観、同じ時間軸、別の高校、別のキャラたちで。

大ヒット作の焼き直しだけど、要するにこの作者は女子高生のバンドもの4コマが描きたい漫画家で、漫画は面白ければそれでいいので。あだち充も野球でずっと同じことをやってる。

『けいおん!Shuffle』2巻より(かきふらい/芳文社)

同じ「まんがタイムきらら」で同じジャンルの「ぼっち・ざ・ろっく!」とカブってんですけど両方面白ければそれでヨシ。

前作のヒットについて「京アニにアニメ原作として目をつけられる幸運に恵まれた」と見る向きもあるかと思いますし、ネタで勝負するストロングスタイルというよりはキャラ萌えで人気を稼ぐ作品との評価もあるかと思います。

『けいおん!Shuffle』2巻より(かきふらい/芳文社)

事実ではあるんですけど、未アニメ化かつリブートでキャラを一新したこの続編もちゃんと面白いですね。

キャラ中心で回しているのは相変わらずですが、ゼロからまたネタでキャラを育てる手腕、育てたキャラでネタを回す手腕も相変わらず、安定してます。

『けいおん!Shuffle』2巻より(かきふらい/芳文社)

キャラ萌え漫画と言われながらも、可愛いだけでなくちょいちょいネタがキレてんですよね。

2巻にして早くも表紙の2人、新入生の新キャラ登場ながら、ギャル新入生と無愛想デレ新入生のコンビ、2巻にして既にキャラたちに愛着が。

前作ヒロインズのカメオ出演(?)のおまけ要素も、一冊に1エピソードだけと控えめなのも良いですね。

今巻のカメオ出演は人気者、

『けいおん!Shuffle』2巻より(かきふらい/芳文社)

中学生時代のあずにゃんでした。

 

 

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#機動戦士ガンダム バトルオペレーション コード・フェアリー 1巻 評論(ネタバレ注意)

熱帯が舞台でもない限り軍服でミニスカ生足はやめとけよw

一年戦争後期、地球連邦軍のV計画が進行し、ジオン軍の幹部ガルマ・ザビが戦死する頃。

北米にキシリア配下の秘匿MS部隊、女性だけで構成される特務小隊、通称「ノイジー・フェアリー」が配置されていた…

という、ガンダム・宇宙世紀・一年戦争の世界観に、日常系の美少女動物園を放り込んだような作品。

『機動戦士ガンダム バトルオペレーション コード・フェアリー』1巻より(高木秀栄/KADOKAWA)

ハズレも多い『ガンダム』スピンオフコミカライズと「美少女軍服ミニスカ生足」の組み合わせ、一見イヤな予感しかしませんが、結論から言うと1巻は事前のイヤな予感ほどは悪くなかったです。


1点目の、『ガンダム』スピンオフコミカライズにハズレが多い点。

『ガンダム』のスピンオフ・コミカライズは玉石混合なところがあって、専門誌「ガンダムエース」の創刊以来、文字通りエースを張れる作品がある反面、映像作品と比べて制作がローコストなこともあって、「埋め草」というか紙面のラインナップを埋めるための(読者目線で)ダメモト企画作品群も多く、有体に言うと「異世界もの」並みに「ハズレ」が多い分野です。

企業プロダクト作品ながら、集団制作の映像作品と比べて作者個人の能力への依存度がとても大きいのも特徴。

『機動戦士ガンダム バトルオペレーション コード・フェアリー』1巻より(高木秀栄/KADOKAWA)

この作品に期待できる点は同名ゲームのコミカライズなので、キャラ・メカ・世界観設定の建て付け・基本設計に企業プロダクト・集団制作のコストが既にかけられている点。

ja.wikipedia.org

作者個人のいい加減な「ガンダム観」に振り回されることはなさそうです。

(困ったことに、「いい加減なガンダム観」に振り回されることによって面白さが生まれる作品もあります)


2点目の美少女動物園問題。

女性だけによる部隊、というと、総力戦を象徴するプロパガンダ(広報)の面もあったんだろうと想像される、ソ連赤軍の女子飛行連隊を連想します。

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今回、キシリア直下の「秘匿部隊」ということで、プロパガンダではなさそう。

広報面の要請もないのになぜ女性だけ? というのは疑問ですが、キシリア直下は実験的な変な部隊がもともと多いので…という。

『機動戦士ガンダム バトルオペレーション コード・フェアリー』1巻より(高木秀栄/KADOKAWA)

この作品、正直、学園コメディのような日常パート、部活の試合のように戦闘をこなす主人公たちのノリなど、「戦争もの」としての軽さが目立ちます。

この作品自体に責任がある話ではないんですけど、現在のウクライナ-ロシアの情勢下、また「戦争と女」というとどうしても『戦争は女の顔をしていない』という、富野由悠季が帯の推薦文まで書いた強烈な作品が比較対象になってしまい、それらに対してこの作品が描く「戦争と女」はいかにも軽い。

連日ウクライナ情勢の悲惨なニュースが飛び込んでくる中で読んでるこっちの気分に対して、だいぶ浮いてます。

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その軽さがフリなんじゃないか、と思わせる要素も2点。

視聴者の間口を広げる軽い導入からシリアス化する手法は、『ガンダムZZ』で実績がある点。

もう一点、ヒロインたちのライバルに当たる連邦のこちらも女パイロットが、ヒロインたちの日常パートと同じ漫画とは思えないぐらい重く、

『機動戦士ガンダム バトルオペレーション コード・フェアリー』1巻より(高木秀栄/KADOKAWA)

ゆくゆくシリアス化する布石なのかな、と思ったり。


他に美点としては、おそらくCG作画であろう止まってるMSの描写は『ガンダム』スピンオフコミカライズ群の中でもArkPerformanceに並んでトップクラスにカッコよく、MSを「動かす」ことにも意欲的なように感じられます。

また一年戦争の裏番組ということもあり、本編エピソードとの絡みの「おまけ要素」にも余念がありません。

『機動戦士ガンダム バトルオペレーション コード・フェアリー』1巻より(高木秀栄/KADOKAWA)

もはや『ガンダム』は日本において最も有名な架空戦記の一つで、特に「UC一年戦争もの」なんてもうおっさん世代しか読みません。

戦記系の『ガンダム』作品はほっといても終盤シリアス化するもんですが、今回は特に特異な設定にあえて踏み込んだ作品ということもあり、この作品にしか描けないことがあるんじゃないか、(原作ゲームを未プレイということもあり)戦争ものとしての大人の『ガンダム』の新境地が見られると良いなと期待しています。

個人的には『ガンダム』コミカライズの妙味は、企業プロダクトのタガを「俺がガンダムだ!」と作家性が踏み越えてしまうところなんじゃないかと最近思ってるので、「筆を滑らせろー!」と念じてます。

「描かされ仕事」なんかより「作者のガンダム」が読みたいし、それを許容する広さを『ガンダム』はもう持っていると思うんですが。

 

 

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#ウマ娘 プリティーダービー アンソロジーコミック STAR 4巻 評論(ネタバレ注意)

TVアニメにソシャゲにと大ヒットのウマ娘の商業アンソロジーコミック。

の4巻。

計12人の漫画家さんによる11編+表紙イラスト。

ということでお品書き。

『ウマ娘 プリティーダービー アンソロジーコミック STAR』4巻より(Cygames/星海社/講談社)

前巻のお品書きと見比べてみるとわかるんですけど、表紙含めた12人の作家中、10人が前巻からの続投で、だいぶ固定化・安定化してきた感じ。

公式とは言え二次創作で迂闊なネタでキャラ崩壊させると炎上しやすそうではあるので、わかってる作家さんたちによるわかってるネタで占められますが、反面マンネリになりがちなところ。

なんですが、公式が最初からキャラ崩壊してるゴルシの使い勝手がやっぱり良いようで、

『ウマ娘 プリティーダービー アンソロジーコミック STAR』4巻より(有都あらゆる/Cygames/星海社/講談社)

ゴルシは陰湿なイジメや犯罪行為以外であれば何をやらせても「まあゴルシだし…」で許されてしまう魔法のキャラなので、ゴルシを絡めたネタは勢いが良いですね。

あと同じく勢いキャラのカワカミプリンセス、ツッコミ役としてのスズカのキレが目立つのと、

『ウマ娘 プリティーダービー アンソロジーコミック STAR』4巻より(小野ミサオ/Cygames/星海社/講談社)

1989年産の同期で短距離マイル路線で活躍した同士のサクラバクシンオーとニシノフラワーの絡みが多かった気がします。

ネイチャの出番が1冊通じて5コマしかなかった点が不満っちゃ不満です。ネイチャ描けよネイチャ。

『ウマ娘 プリティーダービー アンソロジーコミック STAR』4巻より(ポン/Cygames/星海社/講談社)

4コマが中心ですが、画面の構成の仕方、コマの見せ方が作家によって千差万別で、アンソロジーってこれはこれで面白いですね。

レギュラー陣の中にもお気に入りの作家さんができたので、ウマ娘アンソロ以外の作品もちょっくら探してみよう。

 

 

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#幼女戦記 25巻 評論(ネタバレ注意)

サラリーマンがリストラ逆恨みで殺されて成仏の際に神に反抗した罰で、近代欧州っぽい異世界、WW1前のドイツそっくりな帝国の魔導師の素質持ちの女児に転生。

戦勝と栄達と安穏な後方勤務を夢見つつ、少佐の階級、エース・オブ・エース「白銀」「ラインの悪魔」の二つ名、第二〇三遊撃航空魔導大隊大隊長として、戦場の空を支配する主人公ターニャ・デグレチャフ11歳。あれ12歳になったっけ?

『幼女戦記』25巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

『ベルばら』のオスカルみてえだな。

ならねえフラグにしか見えねえw

前巻で「砂漠の狐」をモチーフにした南方(擬アフリカ)大陸編が決着。

帝都ベルン(擬ベルリン)に凱旋するターニャたちを待っていたのは恩給と休暇ではなく、部下の昇進と新たな作戦だった。

その作戦とは帝国(擬ドイツ)東方に国境を接するルーシー連邦(擬ソビエト連邦)に対する偵察侵入。ターニャたちがルーシー連邦へ侵入を果たしたまさにその時、ルーシー連邦は帝国に対する宣戦を布告した…

北のレガドニア、西のフランソワ、南の南方大陸ときて、お次は東のルーシー連邦。

ちょっと地図を見てみましょう。

参照用に、現実の現在の地図はこんな感じ。

googleマップより

 

作中、2巻冒頭時点の地図です。

『幼女戦記』2巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

第一次〜第二次の大戦時相当の地図ということもあり、ポーランド、チェコ、スロバキアに相当する地域が帝国領に。

ルーマニアに相当するダキア大公国も現在の作中では併呑済みなんでしたっけ?

こうして見るとゲームコントローラーの十字キーみたいに東西南北を他国に囲まれてんですね。

ということで帝国の十字キーの右、大国・ルーシー連邦。

『幼女戦記』25巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

言わずもがなにソビエト連邦をモデルにした国家で、ラノベ原作で当然図ったわけでもないのに、現実でウクライナとロシアの間で戦争が始まったタイミングで、コミカライズがこのエピソードに入っちゃうという。

作者のなのか、ターニャのなのか、共産主義嫌悪が炸裂している巻。

設定的にちょっと面白いのが、共産主義国で宗教を否定しているせいで魔導士も否定している国なので、作中世界で各国軍に配備されている航空魔導部隊が、ルーシー連邦には存在しないんですね。

『幼女戦記』25巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

開戦はっや。

幼女戦記の戦役のモチーフは第一次大戦と第二次大戦のミックスらしいので、この辺の経緯はWikipedia見てもあんまよくわからんスね。

作中で言及されているとおり、航空魔導部隊を持たない国家としては過去に対ダキア大公国戦役がありましたが、あの時は二〇三魔導大隊は単独・電撃的に首都まで侵攻しましたけど、

『幼女戦記』25巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

航空魔導部隊との互角の戦闘が発生しないルーシー連邦戦役でも、再び首都まで侵攻するんですかね。

どう見てもルーシー連邦相手に戦勝しても、帝国には占領し統治し防衛する国力が枯渇しているので、電撃戦でモスコー(擬モスクワ)を電撃・痛撃して「痛い目見せて追い返した」以上のことは出来なさそうではありますが。

 

国力ということで言えば、今巻はなかったですが度々入る未来回想シーンによって、帝国の敗北は予告されていて、今巻では政治・軍事の両面でブレーキが効かなくなって、「(ターニャのおかげで)戦争に勝ち続けながら疲弊し枯渇していく帝国」の様子が分厚く描写されます。

十字キー状に東西南北すべての国と戦争して勝ち続け領土が広がり続ければ、素人が単純に考えても、国境線はより拡がり十字キーはよりデカく育ち、「そりゃ単独の国力で維持するのは無理でしょうよ…」という気がしてしまいますね。

帝国主義ってどういう方法論だったんだろうか…飛び地の植民地支配では列強が一定期間、一定の成果を納めていたり、よくわからん。欧州以外に対しては、科学・軍事技術の格差が成功の背景だったんかしらん。

そう言えば、第一次大戦〜第二次大戦のミックスということもあり、帝国は「皇帝のいない帝国」なのかしらん、と思いかけてたんですけど、

『幼女戦記』25巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

皇帝陛下、コミカライズ初登場ですかね、確か。

 

 

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