#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#バトルグラウンドワーカーズ 7巻 評論(ネタバレ注意)

近未来、地球には「亞害体」と呼ばれるクリーチャーが襲来。国際組織「人類連合」が結成され、量産人型兵器を運用して亞害体を無人の辺境に封じ込めていた。無職の青年・平 仁一郎のもとに一通の通知が届く。それは人類連合のパイロットの採用審査通知だった。

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「バトルグラウンドワーカーズ」7巻より(竹良実/小学館)

という、エヴァとMATRIXとAVATARとパトレイバーとフロントミッションを足して割ったような人型兵器に、無職を集めて遠隔操縦させるSFもの。ロボはレイバーサイズ。

遠隔操縦だけど神経接続されるので、痛みがフィードバックされ破壊されると死。ヤバくなったら神経接続のプラグを抜けば緊急脱出、ただし生涯で5回これやると脳のダメージで死ぬ。

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「バトルグラウンドワーカーズ」7巻より(竹良実/小学館)

 

戦場は南シナ海のジャングルの島だけど、遠隔操縦なのでパイロット達は自宅から平和な日本の職場に通勤という、日常と非日常のコントラスト。

で、始まった漫画。もう今は二転三転四転五転して、全然違う話になってます。

亞害体の被害担当地域としてその封じ込めに世界から利用されてきたサファン諸島。

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「バトルグラウンドワーカーズ」7巻より(竹良実/小学館)

亞害体との戦争はいつのまにか人類vsサファンの人類の同士撃ちにすり替わり、そんな最中、数年ぶりに世界中に「本当の敵」が出現。

世界がついてきた更なる「嘘」とは。

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「バトルグラウンドワーカーズ」7巻より(竹良実/小学館)

ということで前巻の続きの新宿攻防戦から、最終決戦に向けた舞台を整える7巻。31小隊、最後の出撃へ。

世界に撒かれた大きな嘘によって敵と味方が大きく入れ替わるダイナミックな展開の中、「英雄への道」を拒んで実直に真実によって世界を変えようとする31小隊の動きが、世界とサファンを同時に救うキーに。

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「バトルグラウンドワーカーズ」7巻より(竹良実/小学館)

あの1巻の頃のダメチームがなあ…

多くの謎が解かれ、役者が出揃い、舞台が整う、まあ言ったらクライマックスへの繋ぎの巻です。よくぞ7冊で読者をここまで連れてきたねえ。

さて、残るは最終決戦。次巻で完結とのことです。

 

 

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#ひとりぼっちの○○生活 8巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

アニメ化された「三ツ星カラーズ」で著名な作者の別作の4コマ。この作品もアニメ化済み。

引っ込み思案でぼっち体質の女の子「一里(ひとり)ぼっち」が中学入学を機に一念発起して友達作りをがんばるコメディ4コマ漫画。

最終巻。

ぼっちの一念発起は、小学校時代の親友・かいちゃんの断腸の思いの約束がきっかけなんですが、

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「ひとりぼっちの○○生活」1巻より(カツヲ/KADOKAWA)

残り少ない中学生活、ぼっちはクラスメイト全員と友達になって、かいちゃんと仲直りできるのか。

仲良し組は全員、受験をパスして同じ高校に進学できるのか。

そして卒業の日…

各キャラのお約束の定番ネタを多用して繰り返す、可愛らしく楽しいながらギャグコメディとしてはややもすればワンパターンで単調にも見える作品でしたけど、こうして卒業式を迎えてみると、あの同じような日々の繰り返しの単調さこそが何より幸福で貴重だったんだな、と自分が卒業した日に感じたことを懐かしく思い出します。

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「ひとりぼっちの○○生活」8巻より(カツヲ/KADOKAWA)

「(友達ではない唯一の人)」って紹介すごいなw

この手の作品あるあるで、1巻で一人目の友達ができて2巻で既に「看板に偽り有り」になりがちなんですけど、ご多分に漏れずこの作品もそうでした。

「本当の孤独ってこんな微笑ましいもんじゃないだろ」ってぐらいユルくて可愛らしい作品でしたけど、ぼっちは新しい友達を作ろうとする度に自分の弱さと向き合って克服しようと努力して、エピソードの単調さも相まって、ここまで徹底して自分の弱さと向き合い続けた主人公も珍しいんじゃないかなと思います。

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「ひとりぼっちの○○生活」8巻より(カツヲ/KADOKAWA)

アカン泣きそう。

ちょうど100話での完結。作品のテーマに対して本懐を遂げて、明るく強い子になったぼっち、丁寧に丁寧に描かれた卒業エピソード。

ダメなのよ俺、一生懸命がんばる子どもの話と、丁寧に描かれた卒業式エピソードに弱くて。

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「ひとりぼっちの○○生活」8巻より(カツヲ/KADOKAWA)

おめでとうぼっち、よかったねえ、よかったねえ。

さて、作者は「三ツ星カラーズ」2年連続で主要連載作品を完結させて寂しい限りなんですが、次回作はまだかいな。

 

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#めんつゆひとり飯 4巻 評論(ネタバレ注意)

黒髪おさげで八重歯で面倒くさがりで何でも麺つゆで食う女・面堂 露(めんどう つゆ・26歳独身)、略して"めんつゆ"がヒロインのお料理・グルメ4コマ。八重歯アピールのためかほぼ口半開きでアホの子みたいで可愛い。

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「めんつゆひとり飯」4巻より(瀬戸口みづき/竹書房)

その他、社長秘書で味噌も自家製の料理上手の人妻の十越さん、カツサンドをおかずに白飯を食う主任の元イケメンのデブ、元イケメンのデブに片想いのヘルシー派の後輩OL、なぜか単語でしか喋れず秘書の通訳なしでは社員と会話が成り立たない女社長など。

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「めんつゆひとり飯」4巻より(瀬戸口みづき/竹書房)

可愛い、見やすい、わかりやすい、美味しそう、参考になる、とても楽しい、とお料理4コマ漫画の要件を完璧満たしてる作品。

基本はズボラ飯系の露と正統派家庭料理の十越さんの料理に向き合うスタンスの対立・もしくはボケツッコミ。

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「めんつゆひとり飯」4巻より(瀬戸口みづき/竹書房)

ぶっちゃけ4巻ともなればマンネリっちゃマンネリですけど、可愛い絵の割りに萌え絵のキャラ人気で稼ぐタイプじゃない、ネタのストロングスタイル系というか本質的にオーソドックスな4コマ漫画職人界の住人の作者なので、飽きさせずに回すの上手いです。新刊読むのがかったるくない、面白さが安定しててウキウキしながら読む感じ。

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「めんつゆひとり飯」4巻より(瀬戸口みづき/竹書房)

料理やグルメに興味なくても面白く読めると思います。食い物に興味ない人あんまいないと思いますけど。

なんにしろ尺が4コマ〜8コマぐらいしかないのでレシピがシンプルでわかりやすく、かつ作中だけじゃなく、幕間ページにちゃんとレシピを載せてくれてるのでありがたい。

今巻でいうと「きゅうりの冷汁」と「大根もち」が簡単で美味しそうなので作って食ってみよう。

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「めんつゆひとり飯」4巻より(瀬戸口みづき/竹書房)

電書版はセンターカラーなんですけど、せっかくのカラーを唐突な水着回の水着に全振りして、肝心の料理が茶色と白のイカめしで見た目地味すぎワロタ。

 

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#幼女戦記 22巻 評論(ネタバレ注意)

サラリーマンがリストラ逆恨みで殺されて成仏の際に神に反抗した罰で、近代欧州っぽい異世界、WW1前のドイツそっくりな帝国の魔導師の素質持ちの女児に転生。

戦勝と栄達と安穏な後方勤務を夢見つつ、少佐の階級、エース・オブ・エース「白銀」「ラインの悪魔」の二つ名、第二〇三遊撃航空魔導大隊大隊長として、戦場の空を支配する主人公ターニャ・デグレチャフ11歳。あれ12歳になったっけ?

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「幼女戦記」21巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

ヨーロッパ戦線で帝国に大敗を喫した共和国軍は、残存勢力が南方大陸に脱出。終戦ギリギリの最中、ターニャの必死の上申も虚しくトドメを刺し損ねた帝国軍は、これを追って南方大陸に遠征。

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「幼女戦記」22巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

機甲師団を中心とした遠征軍を率いるのは少壮の将軍・ロメール少将。イケイケドンドンのロメールのペースに引っ張られるように、魔導大隊を率いるターニャもイケイケドンドンに…

前巻で既に南方大陸戦線は開始されていますが、今巻はそれに先立つ派兵前の回想シーンを挟みつつ、という進行。

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「幼女戦記」22巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

ロメール少将、「砂漠の狐」の異名で知られる名将エルヴィン・ロンメルをモチーフにしたキャラですが、このおっさんが面白すぎて全部持っていってしまって「幼女戦記」が「砂漠の狐戦記」に…

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「幼女戦記」22巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

というぐらいロメールが面白いだけの巻。

キャラの面白さで言ったら主人公ターニャの面白さで引っ張ってきた作品ですけど、転生もしてない幼女でもないおっさんの面白さで転生幼女が霞んでしまって、すんごく面白いんですけど

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「幼女戦記」22巻より(東條チカ/カルロ・ゼン/KADOKAWA)

「このおっさんが出なくなったら物足りなくなっちゃうんじゃないか」と作品の行く末が不安になりますw

 

 

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#紛争でしたら八田まで 6巻 評論(ネタバレ注意)

表紙のメガネ美女、「地政学リスクコンサルタント」の八田百合がクライアントの依頼を受けて世界を股にかけて紛争を渡り歩き、地政学の知識と思考と調査能力と護身術で解決していく、美女!メガネ!インテリ!ハードボイルド!ワールドワイド!なかっけーお仕事もの。

ぼっちでメガネで日系で手ぶらのココ・へクマティアル、という感じ。

下品な方の出羽守っぽいというか、ちょっと「ブラック・ラグーン」みたいな洋画吹き替えワールドな感じ。

 

前巻以来の「アメリカ編」の続き。

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「紛争でしたら八田まで」6巻より(田素弘/講談社)

中華系企業? 大統領選がらみ? の伏線が引かれていたのでまだまだエピソードが長引く感じかと思ってましたけど、そうでもなくエピソード完結。

かといって「拍子抜け」という感じでもなく、「なるほどね」という着地点。

ポジティブなこととネガティブなことが同時にやってくるエンディングで、

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「紛争でしたら八田まで」6巻より(田素弘/講談社)

なんというか「世の中を変えられたわけじゃなかった でも良いこともあった」というほんのり甘くて少しビターな落とし所が、妙な生々しさを伴って印象に残る畳み方。

 

舞台はイングランドに戻って、「箸休め的」と言ったら彼らに失礼かな、弱小少年サッカーチームの監督を引き受ける話。

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「紛争でしたら八田まで」6巻より(田素弘/講談社)

良きコンサルタントは良きサッカー監督の夢を見るか?

短いエピソードですけど、こういうスペシャリストの「余技」を見せるエピソードはジャンルを問わず楽しいですね。

このエピソードも、ロジックの面白さと、「でもロジックどうりに子どもがサッカーで勝てたら苦労はねんだよ」というツッコミに対するアンサーを両方内包したオチで、でも「将来に向けて、前を、上を、向いていける」っていう希望に満ちたエンディングで、良いです。

 

続いてナウル編。

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「紛争でしたら八田まで」6巻より(田素弘/講談社)

この国のこと、自分は単純に全然知らなかったんですけど、題材として面白いねこの国。

温暖で豊かな自然環境に加えて産油国に並ぶような希少資源にも恵まれ、かつてベーシックインカムを実現した太平洋の小さな島国の、その後。

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「紛争でしたら八田まで」6巻より(田素弘/講談社)

知らなかったことを知る楽しみ、面白いなこの漫画!

懸念があるとしたら、自分の知らない世界を描いてくれて有難い反面、嘘を描かれた場合にコロッと信じてしまうであろう、ものを知らない私自身です。

読み終わった後、関連ワードを軽くググって、この作品で読んで知ったことの裏を取るぐらいはしようかな、と。「コンサル」相手は気をつけないとな。

完全な中立を求めるなど不可能なことですが、願わくば、思想の党派性などに偏ることなく、エンタメと両立しながらいろんなことを自分に教えてくれる作品で在り続けて欲しいなと思います。

 

 

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#1日2回 2巻 評論(ネタバレ注意)

園田れみ(39♀)は夫と死別して実家の一軒家で母と中学生の娘と3人暮らし。

仲の良いお隣の、同い年の幼馴染・松宮季(とき)(39♂)が離婚で婿養子先から出戻ってくる。

不本意な離婚で傷心の季。そんな彼を、再開したご近所づきあいと昔からの腐れ縁で見守るれみ。回想される幼少期から青春期の思い出。

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「1日2回」2巻より(いくえみ綾/集英社)

表紙のルックスはマーガレットコミックスですが連載は「ココハナ」とのことで、アラフォーな主人公二人の少女漫画とも恋愛漫画ともつかぬ作品。

近作をあんまり読んでいませんが、別マに連載していた頃に愛読していた経験から言うと、ほとんどの作品で思春期の恋愛を描き、ほとんどの作品で猫を描き、ほとんどの作品で思春期の主人公の家庭を描き、ほとんどの作品で思春期の主人公の家庭は片親だったような印象が強いです。

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「1日2回」2巻より(いくえみ綾/集英社)

恋と家族と猫を執拗に描く少女漫画家、というイメージ。

数年ぶりに著作を読んだら、思春期に代わって中年の、思春期の子を持つ親を主人公に描くようになっていました。

自分が学生時代に人生で初めてつきあった彼女が、別冊マーガレットで連載中だったいくえみ綾の漫画にハマっていて、貸してもらったり一緒に別マの新号を読んだりしたのが、いくえみ綾を読むようになったきっかけでした。

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「1日2回」2巻より(いくえみ綾/集英社)

その彼女には最終的に「他に好きな人ができた」と言われてお別れしたんですが、それまでの間、彼女と彼女の母親と姉の3人暮らしのマンションの部屋に入り浸って、「アンタ早くこんなのと別れた方がいいわよ」とか言われながら、みんなでご飯を食べたりゲームをしたりして何年か過ごしました。

ちょうど今巻で回想シーンの青春時代にれみの家に季とチューやんが入り浸って?いる雰囲気が似ているので思い出しました。

猫はいませんでした。

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「1日2回」2巻より(いくえみ綾/集英社)

その彼女と別れた後も、いくえみ綾の新刊の単行本を買う自分の習慣は続き、次の彼女やその次の彼女とも一緒に読んでました。

さすがに彼女たちに「いくえみ綾を読むと初めての彼女のことを思い出すんだ」と言う度胸はなかったし、かと言って男友達と少女漫画の話はしないですし、いくえみ綾について語り合えるような女友達もいなかったので、こんな話を他人にするのは初めてになります。

ブログっていいですね。

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「1日2回」2巻より(いくえみ綾/集英社)

はて、何の話をしてたんでしたっけか。

あんま漫画の中身と関係ない話なんですけど、そういう話をしたくなる漫画です。

 

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#異世界おじさん 6巻 評論(ネタバレ注意)

17歳の時以来、昏睡状態だった叔父が17年ぶり目覚め「異世界に行ってた」と自称、半信半疑の甥(主人公)の目の前で魔法を使って見せた。

回想シーン(魔法映像再生)の中の叔父さんは、オークと勘違いされ迫害されながらも異世界で度々世界を救う活躍をし、そして美少女たちと恋愛フラグを立てまくるも、ツンデレをただの嫌がらせだと思ってフラグをベッキベキにへし折りまくりだった。

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「異世界おじさん」6巻より(殆ど死んでいる/KADOKAWA)

異世界もののお約束をひっくり返してすれちがいギャグに、ハイコンテクストな「逆・転生もの」とでも呼ぶべきギャグコメディ。

相変わらずおじさんの過去回想の中で、英雄的な冒険譚と、トンチンカンなハーレムラブコメは続く、という展開。

ファンタジー冒険とハーレムラブコメに正面切って取り組むでもなくギャグコメ化して茶化しを入れつつ、でも美味しいところはいただく、みたいな。

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「異世界おじさん」6巻より(殆ど死んでいる/KADOKAWA)

最近の特に面白い漫画は、こういう硬軟のスピーディな緩急というか、シリアスとギャグが高速で入れ替わりつつ話が進む作品が多いですね。

シリアスなエピソードにこそギャグを、コミカルなエピソードにこそシリアスな伏線を、的な。

これだけ読んでくるとおじさん以外のファンタジー世界の住人、特にヒロインたちにもそれなりに読者の愛着が湧いてしまいますけど、最後どうなるんでしょうねコレ。

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「異世界おじさん」6巻より(殆ど死んでいる/KADOKAWA)

ギャグで茶化して描いてるけどラブコメヒロインとして3人ともすげーエロ可愛いんだが。

おじさんが34歳で現実世界に帰還することは確定してますけど、果たしてそれは彼女たちにとってハッピーエンドだったのかバッドエンドだったのか。

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「異世界おじさん」6巻より(殆ど死んでいる/KADOKAWA)

って作中、34歳のおじさんの、まだ20歳頃の回想やってるので、心配するのはまだだいぶ早いかもしれない。

 

 

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#BADON 4巻 評論(ネタバレ注意)

オノ・ナツメの現作、煙草が超高級品な「ACCA」世界観、首都・バードンが作品タイトルで舞台。

リコ、ラズ、ハート、エルモの4人の男は、それぞれ犯した罪でヤッカラの刑務所に収容されていたが、国王代替わりの恩赦・減刑で刑期が明け、4人で煙草店を営むべく揃ってバードンへ。前科持ちのハンデを抱えつつ煙草店を開業。

「二度と悪事にもサツにも関わらない人生」を夢見る男たちの商売繁盛記にはならず、良かれ悪しかれ罪を犯した過去がつきまとうハードボイルド風味。

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「BADON」4巻より(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)

今巻から冒頭に人物紹介が載るようになりました。ありがてえありがてえ。

今巻はハートと、ヒロイン?のリリーが中心の話。

身寄りがなく4人のアパートで住み込みの家政婦をしている、同じくヤッカラ出身の少女・リリーに、不動産屋のケントからバードン大学のオープンキャンパス「子供大学」のお誘い。

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「BADON」4巻より(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)

本人の希望もあって快く送り出した4人だったが、良家の子女が集まる催しだったことが災いし、リリーは新しくできた友達もろとも誘拐されてしまう。

リリーの身を案じたハートは、縁を切りたくて仕方がないはずの、人身売買組織とも繋がりを持つヤッカラ系マフィアに再び連絡を取ることとなる。

そして語られる、彼らが暮らす「ツタ・アパート」の成り立ち。その頃、リリーは…

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「BADON」4巻より(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)

という4巻。今巻も単巻でエピソード完結。

これまでの巻と比べて今巻はリリーの身の安全がかかっている分、切迫してスリリングなお話。

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「BADON」4巻より(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)

一筋縄ではいかない街、勘違いが生んだややこしい誘拐事件、機転と老獪さによる救出劇。

大人たちの大きな声で言えない過去とその縁が力になって犯人を追い詰めていく過程と、理想に燃える少女が見た社会の現実、大人たちの背中。

対比が良いですよね。

それらすべてが新しい縁を生み、子どもたちの希望や成長に繋がってる終わり方も良いです。

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「BADON」4巻より(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)

ハートがイヤでしょうがないはずのことに再び手を出すの、割りと一大決心だったはずなんですけど、なりふり構わず手を出した理由も、それを誇るでもなくモノローグですら黙っている理由も、他人のため子どもたちのため、ってアンタ最高にダンディでかっこいいだぜ。

 

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#メダリスト 3巻 評論(ネタバレ注意)

明浦路 司(あけうらじ つかさ)(26歳♂)は中学生でフィギュアスケートを始め、20歳を超えて初めてコーチに師事した遅咲きの選手だったものの、ソロから転向したアイスダンスで狭き門の日本選手権までたどり着いた。しかしその後はアイスショーのオーディションに落ちまくり実質フリーターの日々を過ごしていた。

選手を引退しコーチ業を営む元パートナーの高峰瞳(♀)から呼ばれアシスタントコーチとしての誘いを受けた日、高峰と司の元をある親子連れが訪れる。母親に連れてこられたのは、先日遭遇して縁があった、高い身体能力を持つ小学5年生の少女・結束(ゆいづか) いのりだった。

で始まるフィギュアスケートもの。

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「メダリスト」3巻(つるまいかだ/講談社)

2巻で初試合を初優勝、3巻では級を上げて西日本大会へ。

将来、全日本選手権や五輪代表を争うことにになるであろうライバルたちが次々登場。

小さなアクシデントと大きなアクシデントの後、時制が飛んで1年後へ。

1巻で発火して2巻で爆発、いのりも母親も司も雨降って地固まって、腹を括ってオリンピック目指して一直線。スポーツものとしてノリノリで燃え盛る3巻。

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「メダリスト」3巻(つるまいかだ/講談社)

子どもの低級位の大会で、命がかかってるわけでもオリンピックがかかってるわけでもまだないんですけど、「だから負けていい」なんて奴はスポーツ漫画の主人公にならんわね。特にいのりはフィギュアスケートにアイデンティティ全賭けしてるし。

フィギュアスケートを題材にした漫画は他にもありますけど、「5歳が競技開始の適齢期」「20代前半には引退」など早熟で「人生(前半生)賭けてる」の度合いが非常に重く、家族の負担も大きく、いのりに限らずこの作品に限らず「プロになる or ナッシング」になりがちで、本当に人生かかってて総じて重いんですよね。

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「メダリスト」3巻(つるまいかだ/講談社)

今巻で将来のライバルになりそうな女の子たちが複数登場しましたけど、この中でオリンピックに行けるのは、いのりと光を除くと、多くてあと1人ぐらい?

五輪に出場する年代(10代後半)までに何人、選手として生き残っているのか…

という重たい題材ですけど、重さをエモさで支えつつも、ギャグコメ要素で楽しく読めるようにしてくれてるの、読んでてありがたいなと思います。

正直、1巻で劣等感に苛まれて泣いていた女の子が、小学生にしてこんなに堂々と力強く自分の人生と戦っていて、極端な話もう続きを読まなくても満足なぐらい感無量なんですけど。

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「メダリスト」3巻(つるまいかだ/講談社)

いや読むけどね。

 

 

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#ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 別章 アンボックス 評論(ネタバレ注意)

架空の自治体、岡島県・町山市が舞台、岡島県警 町山警察署 町山交番に配属された新人女性警察官・川合麻依と、彼女を取り巻く町山警察署の先輩・上司の警察官たちが織りなす、警察官お仕事漫画。

元警察官が描き、「パトレイバー」「踊る大捜査線」の香りのするギャグコメディに溢れた日常要素と、生々しくダークネスな事件や人間の側面が同居する奇妙な作品。

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「ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 別章 アンボックス」より(泰三子/講談社)

今巻は作者自らの

『アンボックス』の題材は殺人事件で、楽しい事は何も出てこないので、目にしたくない方が飛ばしやすいようにタイトルを変えました。フィクションですので、10話後には必ず日常である『ハコヅメ』に戻ります。その時にはまたよろしくお願いします。

泰三子

との意向で、ナンバリングを外された別章・番外編として17巻と同時に発売されました。「裏17巻」とも「実質18巻」とも言えるエピソードで、表紙も17巻と対になっています。

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「ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 別章 アンボックス」より(泰三子/講談社)

まあ「ハコヅメ」ファンでこの作者の気遣いに「じゃあ読むのやめときますわ〜」って人たぶんいないと思いますが。

作者にとって「『ハコヅメ』読者の目に強制的に触れさせたくない」エピソードでありながら、描かずには発表せずにはいられなかったエピソード。

 

余談ですけど、こないだのウマ娘のイベントで負けて下がったテンションを回復するためにゆうきまさみの「じゃじゃ馬グルーミンアップ」全26巻を再読して、ゆうきまさみワールドにあらためてどっぷりハマってそのまま「鉄腕バーディー」のリメイクシリーズ全33巻かな?を再読しました。

「鉄腕バーディー」の話は別の機会にゆっくりしたいんですが、「ハコヅメ」のモーニングと読者層がカブるスピリッツでの連載で、宇宙SF変身ヒーローものとはいえ描き手はゆうきまさみなので社会派の、そして奇しくも「ハコヅメ」と同じく女性警察官(正確には宇宙連邦?銀河連邦?の「連邦捜査官」)を主人公にした漫画でした。

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「鉄腕バーディー EVOLUTION」13巻より(ゆうきまさみ/小学館)

すばらしい作品だったんですが、10年で全33巻を出した作品でありながら、「重厚、複雑、長大、そしてSF」なせいか、終盤はあきらかに巻きが入った駆け足で未消化の伏線を多く残し、平たくいうと打ち切りで終わりました。

 

師匠筋の新谷かおる譲りなのか、打ち切りに際してベストを尽くして畳む手腕もお見事でしたがそれは一旦置いておいて、「星雲賞」にも値する序盤〜終盤でありながら、最終盤での打ち切りで評価を下げたのか、特に作品完結後に完成度を重視して選定される「星雲賞」などを授賞もすることもなく。

作品の問題、作者の問題というより、出版社、漫画の編集部、引いては読者の側の経済的・時間的・精神的な余裕が徐々に失われ、ゆうきまさみが描きたい「重厚、複雑、長大、そしてSF」な作品を置いておくスペースがどんどん狭くなってきていることをあらためて感じて、同じ特徴を持つ現役作品の行く末を考えて暗澹たる思いがしました。

漫画作品を支える「雑誌連載」の環境が貧して鈍してんだなと。

 

転じてこの「ハコヅメ」なんですけど、18冊に及ぶ刊行がありながら単話・単冊で即効性のある面白さを重ね、重厚さはあるものの「複雑、長大、SF」とは一見正反対の性質を持つ作品で、優劣ではなく今の時代に即した漫画の作りだなあ、と。

貧して鈍した今の環境に、窮して変じて通じた作品とでもいうか。

前の話を忘れてても面白く、忘れるほどの複雑な設定もなく、いつ読んでもどこから読んでも単話で読んでも面白い、それでいて積み重ねて作品の縦軸全体を俯瞰することで潜ませていた要素が「複雑さ、長大さ」を生み出す、というのは、新規読者の敷居を下げ、既存読者を逃しにくく、復帰する読者にもフレンドリーで、この先ヒットする漫画のある種の類型・雛形なんだろうなと思います。

ゾッとするような伏線・暗喩がちょいちょい仕込まれる作品。

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「ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 別章 アンボックス」より(泰三子/講談社)

あんまりネタバレされて嬉しい話ではないので「ハコヅメ」今巻の内容の話はあんまりしないですが、「鉄腕」とは正反対の小柄な女性警察官が挫折を経験するお話。

いつもの「ハコヅメ」メンバーが大切なものをいくつも失い、代償として得られるものは読者から見たらただ脇役の心の平穏という、あまりにも些細な救いでしかなく、

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「ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 別章 アンボックス」より(泰三子/講談社)

その些細な救いのために彼女たちが奮闘し消耗するお話です。

後藤隊長の言葉を思い出します。

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「機動警察パトレイバー」18巻より(ゆうきまさみ/小学館)

テーマ?社会の矛盾?メッセージ?を込めながら、たった一冊でこのエピソードを物語として構想する作者の非凡さを感じます。

今の時代、「一冊だけで(も)面白い」は強い。

 

「ハコヅメ」の引き立て役のように「鉄腕バーディー」の名前を出してしまったのでフォローしておくと、打ち切りで終わってなお「鉄腕バーディー」シリーズは宇宙SF警察ものの傑作です。

「鉄腕バーディー」が打ち切られずに作者の構想の本懐を遂げられていればおそらくとっくの昔に星雲賞を授賞していたと思います。

 

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#ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 17巻 評論(ネタバレ注意)

架空の自治体、岡島県・町山市が舞台、岡島県警 町山警察署 町山交番に配属された新人女性警察官・川合麻依と、彼女を取り巻く町山警察署の先輩・上司の警察官たちが織りなす、警察官お仕事漫画。

元警察官が描き、「パトレイバー」「踊る大捜査線」の香りのするギャグコメディに溢れた日常要素と、生々しくダークネスな事件や人間の側面が同居する奇妙な作品。

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「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」17巻より(泰三子/講談社)

今一番面白い漫画の一つじゃないかなと思います。自分は好きすぎて連載の有料のWEB掲載を毎話、毎週木曜日0時に即読みしてます。

7月からTVドラマやるんでしたっけか。

「現役漫画家で天才を3人挙げろ」と言われたら、自分は1人はこの人を挙げます。

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「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」17巻より(泰三子/講談社)

なんだこのコマ。

今巻は、相変わらずいろいろと続巻に向けた前振り・伏線・風呂敷広げが忍ばされて、後から読み返すと「楽しい」以外の感慨が湧いてくる罠が仕込まれてはいるものの、抱腹絶倒の伝説回「雲上人の掲示」をはじめとした基本的にはコメディエピソード中心の楽しい巻。

自分は連載で全部すでに読んだ話なんですけど、今巻も、あー面白かった。

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「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」17巻より(泰三子/講談社)

前巻に暗示された町山署内の「裏切り者」のエピソード、連載では今巻ラストからシームレスに繋がっていた実質続巻エピソード群の「アンボックス」編は、今巻と同時発売ながらナンバリングを外され、別章・番外扱いとなりました。

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「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」17巻より(泰三子/講談社)

『アンボックス』の題材は殺人事件で、楽しい事は何も出てこないので、目にしたくない方が飛ばしやすいようにタイトルを変えました。フィクションですので、10話後には必ず日常である『ハコヅメ』に戻ります。その時にはまたよろしくお願いします。

泰三子

なにそれ怖い。

 

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#貧民、聖櫃、大富豪 7巻 評論(ネタバレ注意)

憑依した歴史上の人物を「御使い」としてFateのように使役する7組のタッグが大バトル!ダメージ受けたら課金!一太刀ごとに課金!必殺技にも重課金!!喰らえ!10億円アタック!!バトルの資金稼ぎに起業してお金稼ぐよ!あと巨乳!!

な「ヨルムン」「デストロ」の作者による「札束で殴りあう」を地でいくマネー能力バトル漫画。強さのインフレが金額で表示されていっそ清々しい。あと巨乳。

ソシャゲ、特に作者が一部キャラデザインを務めたらしいFGOをモチーフというかヒントにして着想した世界観・設定・キャラだと思いますけど、DISじゃなく褒め言葉の意味で「バカが考えた能力バトル」みたいに豪快?な漫画に。あと巨乳。

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「貧民、聖櫃、大富豪」7巻より(高橋慶太郎/小学館)

バトルもので戦闘能力がエスカレートしていくのは古来から続く様式美ですが、この作品は戦うにあたって攻撃に際しても被ダメージに際しても金がかかるので、これが様式美と悪魔合体するとどうなっていくかというと、金額がエスカレートしていきます。

バトルに際して莫大な資金が必要。7巻時点でだいたい通常技1回につき1億円、大技で10億円かかります。

というわけで、デュエリストたちは資金を得るべく、表の世界で金策します。会社経営、投資、不動産売買。

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「貧民、聖櫃、大富豪」7巻より(高橋慶太郎/小学館)

お前らのような女子高生がいてたまるか。

7組のタッグのうち1組が敗退したせいか、今巻から?新タッグが登場してるんですけど、なんか日本の国民健康保険を乗っ取るとか言ってて、スケールでかすぎてもう何が何だかよくわかりません。

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「貧民、聖櫃、大富豪」7巻より(高橋慶太郎/小学館)

やめて!俺の給料から天引きされた保険料で傷つけあわないで!

当初はソシャゲの重課金同士の札束の殴り合いがモチーフかな、ぐらいに思ってたんですけど、金額規模がここまで大きくなってくるともう金銭、マネーだと実感できなくなってきますね。

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「貧民、聖櫃、大富豪」7巻より(高橋慶太郎/小学館)

5000億円はマネーではなく、なんかもうパワーを示す概念。

何を言っているのかも何をやっているのかもよくわからないワケのわからなさを、作画の勢いとキャラクターの胆力で強引に納得させようとしてくるのは相変わらず。

かっけー! すげー! 意味は全然わからん! あと巨乳!

この漫画どうなったら主人公の勝ちでどうなったら終わるの? とか全然わかんないんですけど、作者はわかってて描いてんだろうか?

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「貧民、聖櫃、大富豪」7巻より(高橋慶太郎/小学館)

すべての漫画がこの作品のように在ったらたぶん漫画文化が滅びると思いますけど、幸いこんな漫画は1本ぐらいしかなさそうなので、じゃあいっか、と思います。

とても伝わりにくいかもしれませんが褒めてるつもりなので、作者やファンがうっかりこの記事を読んでも怒らないでくれるといいな、と思います。

すいません、褒めるの下手で。

 

 

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#め組の大吾 救国のオレンジ 2巻 評論(ネタバレ注意)

1995〜1999年に週刊少年サンデーで連載され小学館漫画賞・文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞するなどして大好評を博した往年の名作「め組の大吾」の同作者による続編。

今作は掲載誌というか出版社まで移って、週刊少年サンデー(小学館)から月刊少年マガジン(講談社)に。

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「め組の大吾 救国のオレンジ」2巻より(曽田正人/講談社)

旧作の主人公は「朝比奈大吾」でしたが、今作の主人公は「大吾」違い。

ただ世界観は繋がっていて、旧作の登場人物も1巻で既に登場済み。

リアルに合わせて作中20年ぐらい経ってんのかな?

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「め組の大吾 救国のオレンジ」2巻より(曽田正人/講談社)

救助活動に使命感を燃やす若者たちに焦点を当てた進行は前作と一緒ですが、もう2軸ありまして、

②前作主人公の「朝比奈大吾」(本作未登場)はその後どうなったのか

③本作主人公の「もう一人の大吾」は一体何者なのか

の計3つの軸で話が進みます。

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「め組の大吾 救国のオレンジ」2巻より(曽田正人/講談社)

②と③は焦らすというか小出しに勿体つけていて、勿体つけすぎると読んでてイライラするもんですが、さすが漫画がお上手、①→②→③の循環のそれぞれが面白いので、焦れつつも「クソ、②も③も気になるのに①も面白れーな!」って感じになります。

前作の消防隊・レスキュー隊は文字通り「男の世界」でしたが、今作はヒロインも消防士。

狂気を秘めた「曽田ヒロイン」で、雑に喩えると「め組の大吾」世界観に「昴」が放り込まれたようで、先々が楽しみです。

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「め組の大吾 救国のオレンジ」2巻より(曽田正人/講談社)

そう喩えるとめちゃくちゃだなこの漫画。大丈夫なのか。

 

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#ゴールデンカムイ 26巻 評論(ネタバレ注意)

明治40年前後の北海道が舞台。日露戦争の二〇三高地で超人的な活躍をして「不死身の杉元」と呼ばれたけど上官半殺しにしてクビになった元軍人とアイヌの少女・アシリパのコンビを主人公に、網走監獄の囚人たちの刺青に刻まれたアイヌの隠し大金塊の地図を巡る血生臭い冒険もの。

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「ゴールデンカムイ」26巻より(野田サトル/集英社)

金塊を争う勢力は

①土方歳三一派
②鶴見中尉一派
③杉元・アシリパ一派
④海賊房太郎一派
⑤ソフィア一派

ですが、同盟などで段々と二極化に近づいていて、最終決戦・完結も遠くなさそうな塩梅です。これ的なこと毎回言ってんな。

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「ゴールデンカムイ」26巻より(野田サトル/集英社)

札幌で活動する2人の無差別殺人者(うち一人は刺青持ち)を巡って全ての勢力が札幌に集結。

札幌で活動する2人の無差別殺人者(うち一人は刺青持ち)を巡って全ての勢力が札幌に集結、切り裂きジャックの次の犯行現場・サッポロビール工場を舞台に、切り裂きジャックの身柄、アシリパの身柄、刺青人皮を巡ってあっちこっちで局地戦。

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「ゴールデンカムイ」26巻より(野田サトル/集英社)

長くなってきたんで、そろそろまとめて読み返し頃かなと思います。

状況の複雑さを作者も自覚しているのか、前巻までのおさらいが巻頭に付くようになりました。前からだっけ?

登場人物が多い漫画で、今巻でも話を引っ張ってきた重要な登場人物が数人死ぬんですけど、ディティールが書き込まれた人物ではあるんですけど、杉元・アシリパ・鶴見中尉・土方に比べると脇役のおっさんばっかりなんで、だんだんごっちゃになってきて「いま死んだコイツはどう言う奴だったっけ?」「誰と誰が味方で敵だったっけ?」ってなってきます。

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「ゴールデンカムイ」26巻より(野田サトル/集英社)

せっかくキャラ一人一人の造形が作り込まれてるのに、ちょっと読んでてもったいないな、と。

 

 

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#カノジョも彼女 6巻 評論(ネタバレ注意)

幼馴染の咲に小学生以来ずっと片想いで何回フラれても告白し続けた直也。

高校入学を機についに咲にOKしてもらい付き合いだした矢先、直也はクラスメイトの超美少女・渚に告白される。彼女の可愛さと健気さに胸を打たれた直也は…

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「カノジョも彼女」1巻より(ヒロユキ/講談社)

というガチもんのハーレムラブコメ。バカコメよりです。作者は「アホガール」の人。

終盤が荒れたりイマイチ納得いかない展開を繰り返すハーレムラブコメというジャンルに飽きてしまった自分の最後の希望。

この第1話のコマすごいっすよね。これだけでどういう漫画が全部説明できてしまう。

コロンブスの卵というよりは「バカすぎてメジャー誌では誰もやらなかっただけ」という気もします。ギャグ漫画だったらあった気もするな。

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「カノジョも彼女」6巻より(ヒロユキ/講談社)

ラブコメや恋愛もの(もっと言うとリアルの恋愛においても)のヒロインの萌え要素として「好きになっちゃいけないのに好きになっちゃった秘密の恋心」的なことがあると思っていて、(いい歳して「好きになっちゃいけないのに好きになっちゃった秘密の恋心」という言葉を書くのはなかなかキツいですね)

成年-未成年とか教師-生徒とか友達の恋を応援してるとか兄妹だとか理由はいろいろで、近作のハーレムラブコメだとこの辺とかそうなんですけど、

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「ぼくたちは勉強ができない」16巻より (筒井大志/集英社)

本作に関しては第1話で二股解禁しちゃったので、ハーレムラブコメにして基本的にどのヒロインにも恋愛を妨げる要素がなく、それ故にこのラブコメ定番の萌え要素が使えないかと思ってたんですけど、

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「カノジョも彼女」6巻より(ヒロユキ/講談社)

この人もちょいちょい言ってること頭おかしいとはいえ、第4ヒロイン(ひどい言葉だ)の紫乃さんが前巻・今巻とそこの美味しいとこを持ってっちゃった感じはしますね。

ラッキースケベで警察に自首するハーレムラブコメ主人公www

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「カノジョも彼女」6巻より(ヒロユキ/講談社)

ラブコメの情緒よりバカコメ路線を採る作品ですけど、紫乃さんの秘めたガチ恋は人気出ちゃうんだろうなー、というのと、それによってこの漫画がどう変わるか、あるいはどう壊れるか、大変興味深い。

人間、秘めてないガチ恋よりは秘めたガチ恋を応援しちゃうもんですよね。

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「カノジョも彼女」6巻より(ヒロユキ/講談社)

次巻は蚊帳の外気味の第3ヒロインにスポットが当たるようです。

第3ヒロイン。ひどい言葉だw

 

 

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