#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#魔都精兵のスレイブ 8巻 評論(ネタバレ注意)

各地に突如出現した門の先に広がる魔都。人を襲う鬼が巣食い脅威となっていた。政府は能力者の女性で構成される「魔防隊」を組織し鬼に対抗する。

男子高校生・優希は帰宅中に魔都に迷い込んだところを魔防隊七番組組長・京香に救われる。彼女の能力は生命体の潜在願望を叶える義務と引き換えに奴隷として使役・強化し戦わせる能力だった。

平たく言うとバトルでこき使われる代わりに勝ったらエッチなご褒美な感じだった。

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「魔都精兵のスレイブ」8巻より(タカヒロ/竹村洋平/集英社)

和月のバトル絵、GS美神の設定とキャラ、ハーレムギャルゲー要素、ジャンプのバトル漫画の定番展開、という感じ。あと乳首!

魔防隊のトップが集う組長会議に合わせるような敵の襲撃。影でそれを操るテロリストの前に降臨した最強の能力者、総組長・山城恋の能力が明らかに。

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「魔都精兵のスレイブ」8巻より(タカヒロ/竹村洋平/集英社)

前巻がドエロいじゃなかったドエラいとこで終わってしまった、その続き。

かと思ったら割りとあっさりと。

かと思ったら巻末に描き下ろしでねっとりと。

乳首券乱舞!

なんでもないです。

今巻はなんか急に名門・東家の次期当主選定戦、バトルロイヤルに。

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「魔都精兵のスレイブ」8巻より(タカヒロ/竹村洋平/集英社)

絵もバトルの演出もハイクオリティでかっこいいのに、王道能力バトル漫画の本命感が薄いというかまったくないのはなんででしょうね。

エロの比率の高さ故にメジャーな位置に置けるわけがない、というのもありますが、ハイクオリティななにかの「延長線上」を淡々とこなしてる感じも。

作者・編集陣は十分に作品をコントロール下に置いていてそれ故のクオリティという感じで、この作品を読み続けてる読者の要求を満たし続けてはいるものの、メリハリはあるのにどこか単調で、無いものねだりとわかっていつつも、タガが外れて筆が滑って情念が迸ってメチャクチャになるようなところこそ見てみたいなあ、などと無責任なことを。

かと思えば、ただただ好きな描きたいものを描きたいように好きに描いてるだけのようにも見える瞬間も多々あって、なんつーか読んでる自分でもこの漫画にどうなって欲しいのかよくわかんねえんですよねえ。

次巻から本筋で新展開っぽいのでちょっと期待。

 

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#悪役令嬢転生おじさん 2巻 評論(ネタバレ注意)

2巻を必ず読むつもりではいたんですが、発売リストに並ぶ作品名リスト上で、あまりにも平凡なタイトルの作品なので見落としてましたw

例によって毎度お馴染みアキバblogで気がつきました。

blog.livedoor.jp

異世界転生ものや悪役令嬢ものは何しろ数が多く全部読んでたらキリがないので、よっぽどのことがない限り読んでないんですが、1巻がなんかよっっっっぽど話題になってたので手に取った作品。

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「悪役令嬢転生おじさん」2巻より(上山道郎/少年画報社)

乙女ゲーやってる娘ともリビングでオタク談義を交わす程度にオタク文化に造詣が深いバーコードハゲの公務員のおっさん(52)はトラック的なやつに轢かれた的なことで乙女ゲーの中の悪役令嬢に転生してしまった!

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「悪役令嬢転生おじさん」2巻より(上山道郎/少年画報社)

王侯貴族の子女が集う学園で、平民出のヒロインを虐める役どころの悪役令嬢だったが、おっさんはついつい地の人の良さと「娘の親」目線が出てしまい、乙女ゲー内の貴族学園はおかしな方向に展開していく…

という、異世界転生+悪役令嬢+生徒会+異世界おじさんな欲張りセットな新作。基本、コメディ進行です。

1巻が面白かった反面、グッドアイデアで生まれた作品は出オチの一発ネタになってしまうことが多いので、2巻は大丈夫かなと思ってたんですけど、また新しい仕掛けが。

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「悪役令嬢転生おじさん」2巻より(上山道郎/少年画報社)

ゲームの世界にお父さんが転生したことを妻と娘が認知し、ゲーム画面を通じて主人公のおっさんを観察する展開に。

「異世界おじさん」で過去回想を再生した映像魔法を甥たちが観てるのに近いですけど、こっちは妻や娘が制限つきながらリアルタイムで介入が可能な建て付け。

52歳のお父さんがゲーム内で令嬢(15)として振る舞うのを見守る妻や娘の心中やいかに。

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「悪役令嬢転生おじさん」2巻より(上山道郎/少年画報社)

フッ、面白れー漫画。

異世界転生もの・悪役令嬢ものは過当競争のレッドオーシャンになってしまって、もはや主人公がチート無双するだけでは凡百に埋もれるだけの量産型漫画になってしまう反面、量産型から一歩抜きん出ようと生き残りをかけていろんなアイデアが出てくる分野だなあ、と。

植物が環境に応じて枝や根を人間が思いもしない方向に伸ばすような、まるで生き物のようというか。

数ある作品群の中からそうして抜きん出た(自分の好みに合った)作品が、タイトルや見た目でなかなか見分けつかないのが難点やなw

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「悪役令嬢転生おじさん」2巻より(上山道郎/少年画報社)

悪役令嬢(15)として平民出の父親(45)を尊敬するおっさん(52)。もうコレわかんねえなw

あとがきがね、この作者らしくてまた実直でいいんですよね。どうしても主人公のおっさんと作者がオーバーラップしてしまうw
 

 

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#逃げ上手の若君 1巻 評論(ネタバレ注意)

そのうち読もうと思っていたら、2巻がもう出てしまうらしいので。

「魔人探偵脳噛ネウロ」「暗殺教室」の松井優征の新作は、鎌倉時代末期〜南北朝時代〜室町時代初期を舞台にした歴史物。設定・登場人物は史実ベース。

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「逃げ上手の若君」1巻より(松井優征/集英社)

鎌倉幕府のトップ・執権として世襲で地位を継いできた北条氏の嫡子の少年・北条時行。しかし、幕府と敵対する後醍醐天皇の起こした乱の鎮圧に出兵した足利高氏(尊氏)の寝返りにより、鎌倉幕府は滅ぼされてしまう。

北条氏の滅亡により大切なものを全て奪われた時行は、信濃国の国守にして神官の諏訪家を頼りに落ち延び、足利への復讐を誓う。

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「逃げ上手の若君」1巻より(松井優征/集英社)

という伝記もの。

主人公の持ち味は強い生存本能に基づく逃げの天才。

どネタバレですけど実在の人物で、なかなかものすごいキャリアの人物。

ja.wikipedia.org

お好きな方には有名な話ですが、歴史を舞台にした作品に、鎌倉時代末期〜南北朝時代〜室町時代初期は、少なくとも数においては恵まれていません。

数に恵まれていない故に、歴史好きたちのこの時期の歴史上の人物たちに対する馴染みも浅く、故に描かれないという悪循環。

ja.wikipedia.org

同じ動乱の時代でありながら戦国時代や幕末に比べると、より昔の話で文献が残っていないことを差し引いても、あんまりスポットが当たってきませんでした。

この時期を描いた作品として最もメジャーな作品は、今なお「太平記」であり、もっとも有名な作品はNHK大河ドラマの太平記だろうと思います。

ja.wikipedia.org

 

自分が子どもだった頃、足利尊氏を主人公にしたこのNHK大河ドラマは放映されまして、自分は「里見八犬伝」以来、俳優の真田広之が好きだったので少し背伸びをして毎週見ていたんですが、ある日曜日、家族で訪れた父方の実家で祖母とともに夕食を囲んだ後、いつものように「太平記」を観ようとTVのチャンネルをNHKに合わせたところ、

「そんな逆賊の話っ!」

つってブチ切れた祖母にTVを消されてしまいました。

祖母は戦前の学校教育を受けた世代でした。土地柄もあるかもしれませんが。

自分は人生で、TVなどのメディアではない生の人間が「逆賊」という言葉を発するのを聞いたのは今のところアレが最初で最後で、大変びっくりしました。逆賊て。

一瞬「あれ…うちのばあちゃん、鎌倉時代生まれとかだったっけ…?」ってなるわ。

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娯楽作品として南北朝時代を描くのは戦後も長い間難しく、それ故に南北朝時代を扱った作品は増えてきませんでした。


それを、少年ジャンプでやるっていうねw

足利尊氏が悪役側とはいえ、楽しみですよ、それは。

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「逃げ上手の若君」1巻より(松井優征/集英社)

自分だったら後醍醐天皇は登場人物として描きませんが、この作品ではどう扱われるでしょうか。

ちなみに、ハードボイルド作家から歴史作家に転身?した北方謙三が一時期、精力的に南北朝時代を題材にした歴史小説を描いていまして、お好きな方にはオススメです。

お好きな方は大体読んじゃってる気もしますが。

ja.wikipedia.org

自分はやはり、北畠顕家を主人公にした「破軍の星」が特に好きです。

若き名将、というか若き猛将として描かれた公家の北畠顕家は、おそらくこの「逃げ上手の若君」にも重要人物、おそらく頼もしい味方、もっと言うと主人公の相棒ポジションで登場するんじゃないかと、今から楽しみにしています。

ということで数日後には2巻を読もうと思います。

 

全然話は変わるんですけど、相変わらず可愛い男の子を描く漫画家やねw

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「逃げ上手の若君」1巻より(松井優征/集英社)

無理にヒロインを登場させる必要のないこの作者の業は、おっさんだらけになりがちな歴史物の分野にぴったりだな、とw

まあそんなん言いつつ、少年漫画っぽいヒロイン置いてはいますけども。

 

 

(選書参考)

blog.livedoor.jp

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#メイドインアビス 10巻 評論(ネタバレ注意)

「真の闇の中に
 誰にも見つけられなかった光は
 確かにあった」

あのセリフを彷彿とさせますよね。

可愛らしいキャラ、メガネ少女のリコとメカ少年のレグが、作者の業を叩きつけたようなエグくてグロい目に遭いながら「アビス」と呼ばれる大地の大穴を潜る冒険もの。

冒険の果てにたどり着いた「成れ果て村」編、その成り立ちに関わる前々巻一冊をかけた回想から視点が現在時間に戻ってきて、再び話の中心がリコ、レグ、ナナチの主人公たちに。

成れ果て村のカタストロフを前に語られる、ナナチの決意、レグとファプタの消えてしまった思い出、デビルマン原作の終盤みたいになっちゃったファプタ、立ち上がって鉄腕アトムなレグ。

「成れ果て村」編が今巻で完結。

凄惨な描写を除けば、あらすじ自体はむしろ「ワンピース」に近いことをやっています。訪れた先で起こった悲劇とこれに起因して起こる復讐劇、巻き込まれる主人公たちと、その顛末、新たな仲間、新たな旅立ち。

シナリオこそ、ある意味約束されたラストとでもいうか予想の域をでない展開ではありましたが、それでもこれだけ読ませるのは、エグい描写に目が行きがちなこの漫画家の本質が絵であり言葉であり、その組み合わせであるせいなんだろうなと思います。

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「メイドインアビス」10巻より(つくしあきひと/竹書房)

デビルマンになったナウシカが血を吐くように絞り出す言葉、描写。すんごいね。


多くの漫画作品において、主人公たちに少年少女が据えられ、しばしば世界を救う重たい役目を背負わせる理由。

理由の一つは、商業的に見栄えのするヒロインにティーンエイジャーを配する上でその相手となる男役も少年である必要があるためですが、この巻を読んでるとなんかこう…もう一つの理由について根拠のない神託が降りてきたような気にさせられます。

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「メイドインアビス」10巻より(つくしあきひと/竹書房)

大人は世界がこうあるように維持することができても、世界がこうある原因を作った罪にがんじがらめで、世界を変えていく力を持ち得ないこと。

だからこそ漫画家たちは繰り返し繰り返し、子どもに救世を託すのではないかと、そんなことを考えさせられます。

地獄のような過去と現在、甘美な復讐の罠から立ち上がり前を見据えるファプタの強さ、それを支える子供たち。

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「メイドインアビス」10巻より(つくしあきひと/竹書房)

「愛こそが呪い」「行く末には闇しかない」の説得力と、それでも「知っている"のに"」で繋がっていく力強い説得力が、もうね…

 

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#ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 11巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

徴兵・動員されたと思しき若者・田丸は昭和19年夏、南太平洋パラオ諸島のサンゴ礁に囲まれたわずか13平方kmの小さな島・ペリリュー島で一等兵として軍役についていた。

飛行場を備えたこの小さな島は戦略的要衝として、日本軍守備隊1万と米軍上陸隊4万が相争う地獄と化していく。

漫画を描くことが趣味な田丸は小隊長から「功績係」として、戦死した戦友たちの記録と、遺族への手紙のゴーストライターを任される。

圧倒的なアメリカ軍の物量。島をすっ飛ばしてフィリピンが攻略されたことにより、もはやなんの戦略的価値もなくなったペリリュー島。

海上封鎖され補給すら絶たれた彼らが正規の指揮系統を通じて受領したのは、11回の御嘉賞と「持久に徹せよ」を最期に途絶した作戦指示だった。

司令部も既に壊滅したわずかな生き残りの日本軍は兵士たちは、反攻に転じた皇軍の艦隊と敵を挟撃する日を信じて決死の抵抗を続ける。

そうする間にも沖縄戦、本土空襲、広島と長崎への原爆投下を経て、昭和20年8月15日、戦争が終わったことすら知らず…

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「ペリリュー ─楽園のゲルニカ─」11巻より(武田一義/平塚柾緒/白泉社)

今巻で完結。

前巻で戦時のペリリュー島でのエピソードが終わり、今巻はエピローグ的に、狂言回しの田丸が過ごした「戦後」が、その語りを聞き、取材を進める孫の視点で語られます。

描くにあたって生なかな覚悟で描き始めたわけではないことが見て取れ、また娯楽である漫画誌にこの辛気臭い漫画を完結まで載せ続けたヤングアニマルも相当な覚悟が必要だっただろうなと思います。

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「ペリリュー ─楽園のゲルニカ─」11巻より(武田一義/平塚柾緒/白泉社)

「火垂るの墓」を少年ジャンプに乗せ続けるようなもので、この最終巻のAmazonのレビューにも「暗い漫画で、早く終わって欲しかった」的なレビューも一部見られます。

10巻にわたる「ペリリュー島」編では、戦時下の政府、司令部などの「戦争をさせた側」に対する批判も、アメリカに対する批判も、それに類するメッセージも描かれず、主人公たちが置かれた状況と必死に生き延びようとする姿が描かれたのみでした。

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「ペリリュー ─楽園のゲルニカ─」11巻より(武田一義/平塚柾緒/白泉社)

総括にあたるこのエピローグで、主人公たちがいかにあの戦争を総括するのか。

それまでの10冊と同じく、決して教条的で押し付けがましいメッセージではなく、また戦争を避けるための示唆に満ちたものでもありませんでしたが、戦争を経験したあくまで一個人のストレートな体感とその後の心のあり様を、作者自らのメッセージで歪めて伝えてしまわぬよう細心の注意を払って最後までカメラとマイクに徹して描写した、その取材の労力と取材相手に対する敬意や真摯さには頭が下がります。

この作品には、戦争ドキュメンタリーにありがちな、インタビュー相手である戦争体験者の証言をダシにして作者自身のメッセージや話題性を補強しようとする、ある種の「欲」のあの匂いが、自分には感じられません。

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「ペリリュー ─楽園のゲルニカ─」11巻より(武田一義/平塚柾緒/白泉社)

決して気楽には読めないこのテーマでありながら、しかし「続きが気になる」という漫画らしい興味の引き方で娯楽作品として両立させ、直接的なメッセージはほとんど何も語らないにも関わらず読者にいろんなことを雄弁に感じさせ、そして語弊を恐れずに言えばとても面白い漫画でした。

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「ペリリュー ─楽園のゲルニカ─」11巻より(武田一義/平塚柾緒/白泉社)

よく描こうと思ったし、よく描かせたし、よく話してくれたし、よく描き上げたもんだわ。

 

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#島さん 2巻 評論(ネタバレ注意)

一見、コンビニのオーナー店長然とした初老のバイト店員・島さん。

特別有能なわけではないが温和で誠実で、頼まれごとを断れず複数のコンビニを又に掛けて働くお人好しの性格、不良や強盗にも臆さず接する度胸。

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「島さん」2巻より(川野ようぶんどう/双葉社)

のコンビニバイト日常もの。基本、しみじみした人情話の1話完結のエピソードを連続するスタイル。今のところ。

平たく言うと島さんは背中に龍の刺青が入った、おそらく引退し更生した元ヤクザです。あんま元ヤクザの設定を活かしたエピソードはなく、ヤンキーにも怯まないぐらい。

性善説のしみじみいい話が多いんですけど、お花畑な世界観かというとそうでもなくて、

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「島さん」2巻より(川野ようぶんどう/双葉社)

世知辛さを十分わかった上で、「でもね」っていうお話が多いです。

1巻で提示されたテーマは「過ちを犯してもやり直せる」というもので、ギスギスしそうな出来事や人間関係で、時代劇のように「ヤッチマイナー」となりそうなところ、相手をやっつけるのではなくて、赦しで終わるお話が中心。

ウマ娘を始めてブログ記事にもするようになって以来、ウマ娘の記事がうちのブログのPV上位を占めることが多いんですけど、自分の知らない文化圏があるのか、

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島さんの記事はウマ娘記事に混じって安定して上位にいて、なにか自分の知らない文化圏で評価されている作品なんだなー、と思ってます。

良い作品がちゃんと評価されるのは良いことだと思う反面、こうした作品をしみじみよく思う、漫画に対してこうしたお話を求めてしまうのは、

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「島さん」2巻より(川野ようぶんどう/双葉社)

自分も世の中も少しお疲れ気味なのかもしれないなと思ったりもします。

ギスギスした話、最近多いですもんね。

 

 

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#だもんで豊橋が好きって言っとるじゃん! 3巻 評論(ネタバレ注意)

両親の離婚で母と一緒に、高校入学を機に豊橋に越してきた国元ほのか。馴染めずにいたところボランティア部の吉田ちぎりに勧誘され入部。安曇潤との3人部活に、名古屋出身のクラスメイト矢越奈々を加えて、ディープな豊橋カルチャーに染まっていく。

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「だもんで豊橋が好きって言っとるじゃん!」3巻より(佐野妙/竹書房)

というザ・ご当地なほのぼの4コマ。作者は豊橋生まれの豊橋育ちの豊橋在住だそうです。グルメと歴史と地域間の意地の張り合いが楽しい、ザ・ご当地漫画。

「ご当地+美少女」というのも、もはやある種の様式というかジャンル化された感はありますけど、作品ごとに比重の軽重はあって、なにかというとネタを「ご当地中心」でいくか、「キャラ中心」でいくか、という。ネタの6割ぐらいはご当地関係ない「ご当地+美少女漫画」もあったりします。要は「ごちうさ」のご当地版とでもいうか。

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「だもんで豊橋が好きって言っとるじゃん!」3巻より(佐野妙/竹書房)

顧みてこの作品は、業界ナンバーワンを名乗ってもいいんじゃないかというぐらい、執拗に全ての回、全てのネタに豊橋ネタをブッ込もうとしてきます。体育祭回ぐらい豊橋ネタなくてもバチ当たんねえのにw

どっちが良い悪い、どっちが上か下か、ではなくて、結果その作品が面白ければどっちもアリだと自分は思います。

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「だもんで豊橋が好きって言っとるじゃん!」3巻より(佐野妙/竹書房)

社会の授業か?

あるあるネタから地理・歴史・名産と、ちょっと学研あたりが出しそうな社会科の郷土史漫画か観光PR漫画めいてきてるというか、これ豊橋市から助成金もらってもいんじゃねえか感はありますけどw

豊橋、残念ながら自分の人生で行ったことは一度もないんですけど、この漫画を読んで蓄えた行ったこともない土地の雑学を、どうしたものか。

明日会社で同僚に突然、

「知ってる? "べっぴん"って言葉は豊橋のウナギ屋が語源なんだよ!」

つったらたぶんびっくりされるだろうなあ…

一度機会を作って豊橋行ってみるか、と思いつつ、ご当地漫画の聖地巡礼って本末転倒がもう半周回って正しいムーブだな、と。

それにしても、東海地方のご当地漫画って、

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「だもんで豊橋が好きって言っとるじゃん!」3巻より(佐野妙/竹書房)

常に家康公の所有権をめぐって係争してんなw

 

 

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#みなみけ 22巻 評論(ネタバレ注意)

相変わらず全身描くと等身狂ってて草。作者も寝ながら描いてそうw

高校生のハルカ、中学生のカナ、小学生のチアキの3人で暮らす南家の姉妹を中心とした老舗の日常コメディ。連載開始は2004年、17年も続く美少女サザエさん。

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「みなみけ」22巻より(桜場コハル/講談社)

日常コメディなんで単行本ごとの感想が書きにくいってのもあるし、そもそも冒頭に「過剰な期待はしないでください」なんて書かれてる漫画ですけど、新刊が出るたびに感想に「やる気がない」「ダラダラやってる」と書いてきた、読んでも読まなくてもいいような漫画なんですけど、なんでか読むをのやめられない何か毒のようなものがある。

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「みなみけ」22巻より(桜場コハル/講談社)

今どきWEBでタダで読める漫画でももっとキビキビと面白い漫画なんていくらでもあるのに、なんで金出してこの漫画を買い続けてるのか自分でもちょっと不思議です。

最近「古畑任三郎」の全話入りBDボックスを買いまして順次観ていってるんですけど、三谷幸喜の脚本は冒頭で提示したキーワードを伏線としてオチで回収するというか回帰するような話が多くて、「落語みたいだな」とたまに思うんですけど、最近の「みなみけ」も落語的というか小噺みたいだなと思います。落語に全然詳しいわけでもないので、詳しい方から怒られちゃうかもしれんですけど、当初の趣旨があべこべになったり、登場人物達が当初の目的を見失って迷走したりの話が多くて、三谷幸喜っぽくて落語っぽい。

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「みなみけ」22巻より(桜場コハル/講談社)

「落語」もよく考えるとよくわからない言葉ですけど、「オチがある語り」と思えばまあそういうもんかというか、「みなみけ」もそんな感じです。

各話のタイトルの付け方が、まあ安易というか手抜きは手抜きなんですけど、ワードのチョイスが核心をついているというか、話を聞き終わってタイトルに再度目をやると「ああ、なるほど」ってなるのも、その辺も落語っぽいなと。

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「みなみけ」22巻より(桜場コハル/講談社)

前は「楽して描きやがって」と思ってたんですけど、最近は「これ結構大変じゃないのか」と思ったりもします。たぶん錯覚です。

話の接続や転換が結構強引で自然な流れとは言い難い話も多いんですけど、「こういうキャラなので」で力づくで成り立たせてる感あって、これが新人だったら編集に許してもらえなさそうw

コントの脚本とか書いたら面白そうというか、小咄の登場人物がたまたま「みなみけ」のキャラたちだっただけ、とでもいうか、実はもう「みなみけ」である必要もないんだけど、やめる理由もないので「みなみけ」でやります、というか。

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「みなみけ」22巻より(桜場コハル/講談社)

面白いんですけど、他人にオススメしにくい面白さ。感想ブロガー泣かせだね。

 

 

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#ヴィンランド・サガ 25巻 評論(ネタバレ注意)

面白い漫画読みたきゃこれ読んどけば鉄板、11世紀前半の北海・ノルウェー海を舞台にした時代漫画。まだ人権とかない時代の話なので戦争・海賊・虐殺・略奪・奴隷などが苦手な人は回れ右。

狂戦士だった若い頃から解脱して不戦・無剣・非暴力って「バガボンド」と似てんだけど、畑耕してるうちに作者が帰ってこなくなったあっちと違って続きが出るって素晴らしい。

故郷の村でグズリと所帯を持ち、子をもうけたトルフィン。毎晩、戦士時代に殺した亡霊たちの悪夢にうなされながらも、現実では仲間を募っていよいよヴィンランド開拓計画を具体化させていた。入植にあたり参加希望者にトルフィンがつけた条件は一つだけ。それは…

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「ヴィンランド・サガ」24巻より(幸村誠/講談社)

ということで、いよいよヴィンランドに向けて出港の巻。

開拓団のゆるい分裂などありつつも航海自体は割りと順調で、ネタバレですけど今巻中にヴィンランドに到達して開拓が始まります。原住民との近所付き合いなど。

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「ヴィンランド・サガ」25巻より(幸村誠/講談社)

大雑把に分けると戦争編、奴隷編、を経て開拓編ですが、今巻はまあまあ順調だったこともあって、権謀渦巻くアクション活劇だった戦争編の頃と比べると、ややもすれば退屈と言っても良いかもしれません。

というのと、新刊発刊ごとに間隔を開けて読んでいると細かいことを忘れてしまって、かつて狂戦士だったトルフィンの心境の変化から読者としてちょっと置いてけぼりをくってる感じもあって、そろそろちょっとイッキに再通読した方が良いかもしんないなコレ。

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「ヴィンランド・サガ」25巻より(幸村誠/講談社)

開拓編、順調ですけど、Wikipediaによるとソルフィンの冒険は史実ではどうもバッドエンドっぽいので、描写が順調なのがかえって油断できないというか、そもそも作者はこの話をどう畳むつもりなのかがそろそろ気になってきますね。

なんとなく、頭の中で想像するバッドエンドは収まりが悪く感じてしまうんですが。

 

 

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#カナカナ 2巻 評論(ネタバレ注意)

5歳ぐらいの少女・カナカは他人の心が読めるテレパス持ちで幼少期以来、「家族八景」の七瀬のようにその能力に苦しんできた。

唯一の理解者だった祖母が亡くなり、親戚をたらい回しにされた挙句にその能力を金儲けに利用しようとする男に引き取られかけたカナカは裸足で逃げ出し、公園で元ヤンの経歴と恐ろしい外見に反して単純バカだが裏表のない綺麗な心を持った男・マサと遭遇する。

マサもまたカナカの遠縁で、またヤンキー体質で頼られたら捨て置けない性格だったこと、カナカ自身が強く望んだことから、カナカはマサに引き取られ、マサが営む居酒屋で暮らすことになった…

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「カナカナ」2巻より(西森博之/小学館)

という、西森博之の新作は「テレパス少女もの」+「血の繋がらない父娘もの」。

日常回を中心に、散文的というか行き当たりばったりに見える展開ですけど、作劇のプロセスがなかなか読めない作者で、過去作でも行き当たりばったりのようでいて後になって結構計算高く伏線を張っていたことがわかることが多いので、先々の予想がつきません。

いつどこでどんな終わり方をするのか全然予想がつかない、メタなスリルがある作家。

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「カナカナ」2巻より(西森博之/小学館)

基本的に「カナカ可愛い」で成り立ってる漫画ですけど、セカンドヒロインにマサの同級生?で腐れ縁でベタ惚れの脳が腐ったツンデレさん登場。

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「カナカナ」2巻より(西森博之/小学館)

ツンデレキャラ自体はこの作者が描くのは初めてでは決してないですけど、世に言われる「ツンデレ」がテレパス少女の視点から極端に戯画化されてて面白いんですけど、大丈夫なのこの人www

割りと日常回気味の巻ですけど後半には1巻登場の悪役が再び登場。

ドラマを作るのが悪役起点の作品が多い作家ですけど、今作は視点がテレパス少女におかれてることもあって、良い人風の悪い人、悪い人風の良い人という、人間の二面性というか見た目とのギャップがポイントになってる感じがしますね。

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「カナカナ」2巻より(西森博之/小学館)

また作品の特異点は一見ヒロインのテレパス少女のようでいて、一番の特異点というか「高嶺の花」ポジにマサが置かれている妙な漫画。

「攻殻機動隊」の「エスパーより貴重な才能」という言葉を思い出すわ。

 

 

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#天国大魔境 6巻 評論(ネタバレ注意)

石黒正数のストーリーもの、ポストアポカリプス、AKIRAっぽくもあり、寄生獣っぽくもあり。シリアスでハードでミステリーでグロテスク。

2本立てでストーリーが進展してて、


①学園パート
「学園」と呼ばれる高度に科学化され閉鎖された環境で、職員達に観察されながら「外」の知識を欠落しながら平穏に暮らす少年少女達の生活

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「天国大魔境」6巻より(石黒正数/講談社)


②サバイバルパート
大崩壊の15年後の世界で正体不明の「天国」を探して旅する少年マルとボディーガードの少女キルコのロードムービー

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「天国大魔境」6巻より(石黒正数/講談社)


が今のところ交わらずに並行して進行。

便宜上、「ミステリー・サスペンス」というカテゴリタグをこの作品にも付けているんですが、その筋の人と話をしたところ、厳密にはミステリーと呼べる漫画作品は数えるほどしかなく、多くの漫画はミステリーにはあたらないとのことで、この作品がどうなのかわかりませんが、便宜上ここでは「ミステリー風」としましょうか。

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「天国大魔境」6巻より(石黒正数/講談社)

今巻は、小さな謎が解けるでもない「途中の巻」で、特に読んでてご褒美もカタルシスもない見どころのない「我慢の巻」。

ヒントがあって全体像の予想がついていればパズルのピースが埋まっていく考察の快感みたいなものがあるのかもしれませんが、あいにくそうでもないので、何やってんだか何言ってんだかよくわからん。

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「天国大魔境」6巻より(石黒正数/講談社)

作品として面白くないわけじゃないんだけど、後で効いてきそうな伏線描写が描かれてるだけで単巻単位では進展も見せ場もなく、楽しいとは言えないパート展開だったこともあって縦軸の謎のヒントや解決以外の楽しみ(アクションとかギャグとか)も特になく、やっぱ単巻で評価するもんじゃねえなあこの漫画、という。

次巻もこういう感じだったら以降はもう毎巻新刊を追いかけるのはやめて、完結してからまとめて読もうと思います。

 

 

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#とんがり帽子のアトリエ 9巻 評論(ネタバレ注意)

一部の魔法を「禁止魔法」として制約した世界の、魔法使い見習い少女たちの修行と冒険、ダークな雰囲気ただよう超正統派ファンタジー。

イレギュラーに魔法使い見習いになったヒロインのココ、その素質を狙って暗躍する禁止魔法使いたち、ココの巻き添えでトラブルに巻き込まれつつ彼女を守って戦う師匠と姉弟子たちの修行と成長の日々。

魔法使いの祭典「銀夜祭」編とのことで、雰囲気的にはお祭りムード。

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「とんがり帽子のアトリエ」9巻より(白浜鴎/講談社)

この作者の画力で大画面の見開きでお祭りの様子がどれだけ描写されるか、楽しみにしていたんですけど、まだ前夜祭にあたる「金夜祭」で祭りの描写よりも重要キャラ続々登場、あんな事件こんな事件が勃発と、まだ何も起こってはいないながら不穏な予兆が膨らむ前フリ巻。

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「とんがり帽子のアトリエ」9巻より(白浜鴎/講談社)

三賢者、五王、そして統一王の登場と、世界観の厚みというか設定の枠が固まって今後の展開に期待が膨らむものの、当面これ「銀夜祭」編エピソードが終わるまでどれだけかけるつもりなのか、ちょっと見当がつかない感じに。

作者の筆による壮麗なお祭り描写は事件解決後のお楽しみになる感じですかねコレ。

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「とんがり帽子のアトリエ」9巻より(白浜鴎/講談社)

クスタスの問いに対して、幼い彼らはまだ答えを有していませんが、大人の魔法使いたちならなんと答えるのか、訊いてみたくはあります。

あるいは成長したココとタータが答えることになるのかもしれないですけど、正解のないこの問いに作品としてどう答えるのか、伏線として覚えておきたいと思います。

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「とんがり帽子のアトリエ」9巻より(白浜鴎/講談社)

そこがたぶんこのエピソードのクライマックスになるんだと思うんですが。

 

 

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#刷ったもんだ! 4巻 評論(ネタバレ注意)

元ヤンキーな青春を送り、SNSで漫画クラスタに入り浸る漫画好きの真白悠(♀)は中小企業の虹原印刷(株)に就職。

企画デザイン課に配属され、印刷物のデザイン、データ作成・出力、校正を担当。担当する仕事は選挙のチラシからエロ同人誌までなんでもあり。

という印刷会社のお仕事日常漫画。

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「刷ったもんだ!」4巻より(染谷みのる/講談社)

取材もしてんでしょうけど、1巻巻末の「Special Thanks」に「元勤め先の皆さま」とあり、作者が経験者なんですね。「NEW GAME!」と同じパターン。

読者に視点を合わせるべく主人公の新人目線・初心者目線で業者されるのは、業界ものに限らずスポーツものでも定番のノウハウですけど、新人の視線が届かないところで起こっていることに目線がいかないせいで単調になりがちです。

スポーツだったらフィールドなりコートで起こってることには目が届くんですけど、俯瞰した目線は…ということで、近年は監督やバックヤードスタッフの目線を取り入れたスポーツ漫画が多くなりました。

会社お仕事ものは組織で分業でサービスを届ける主役や花形を作りにくいお仕事で、一人の人間の視線が端々に届きにくく、漫画にするには結構工夫が必要なんじゃないかと思いますし、この作品も3巻までは割りと主人公視点に寄った描写がほとんどだったように思うんですが、今巻は印刷会社の中でいろんな役割をして動いてる人たちが深掘りされて、会社お仕事ものらしい幅が出てきたように思います。

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「刷ったもんだ!」4巻より(染谷みのる/講談社)

いろんな部署でいろんな人がそれぞれに頑張っている姿をちゃんと描くというのは、こうした漫画の醍醐味でもあるんですけど、いっちょ噛みではなかなか描けないし、一人の人間の経験だけでもなかなか描けないんじゃないかと思います。元印刷会社社員の知識だけに甘んじることなく、ちゃんと取材して描いてんだなあ、と。

なんというか、「『描きたいエピソード、描きたい仕事があるから』という理由があって逆算でキャラが配置されてる」感があって、キャラの置き方や造形のプロセスが少し他のストーリーものと違ってて面白いです。

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「刷ったもんだ!」4巻より(染谷みのる/講談社)

仕事に対する誇りや愛着が感じられて、地味なテーマな漫画ですけど、いいなあって。毎日働いてると、ついつい忘れちゃうんですけど。

いろいろ苦労もあったけど、間に合って、やり遂げて、

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「刷ったもんだ!」4巻より(染谷みのる/講談社)

いい仕事した人間の、いい顔描くよなあ、この人。

 

 

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#バトゥーキ 11巻 評論(ネタバレ注意)

女子中学生・三條一里はブラジル・マフィアの現ボスの落とし胤だったが、本人はそのことを知らず、組織の末端構成員の夫婦に日本で育てられた。

組織構成員B・Jは組織の跡目争いに一里を参加させるべく、育ての両親を誘拐。

同じ頃、カポエイラ(カポエラ)と出会い夢中になった一里は、両親を人質にとったB・Jの脅迫と指示により、高校生となって以降もカポエイラの腕を磨き、B・Jが充てがう強者たちを相手に実戦を重ねていく。

カポエイラの夜の練習場のアスレチックを6巻以来の敵、半グレ組織「悪軍連合」に襲撃され、一里組vs悪軍連合の全面対決。さらに悪軍連合内の下克上も重なり、三つ巴のバトル合戦。

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「バトゥーキ」11巻より(迫稔雄/集英社)

一里と悪軍鉄馬のバトルの決着がつき、悪軍連合編が今巻で完結。

悪軍連合編がこれだけ長大化した理由として、悪軍連合内の王部の叛逆が挙げられますが、実はこれは悪軍の物語であって、本作の主人公である一里にはまったく関係のないものでした。一里にとって王部は「倒さなければいけなかったかもしらない敵幹部」に過ぎず、個体として視界に入っていません。

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「バトゥーキ」11巻より(迫稔雄/集英社)

悪軍連合編の序盤は「一里(と仲間たち)は一体、悪軍連合の強者を何人倒さなければならないのか」と思ったものですが、王部の起こした内ゲバによってヒゲ番長を筆頭にするそれらの強者との対戦はキャンセルされて、長大化したにも関わらずむしろ当初の予想よりスムーズにラスボス・悪軍鉄馬との対戦につながりました。

内ゲバが描かれた物語上の意味がなんだったかというと、純粋に一個の暴力の塊であったはずの悪軍鉄馬の、一大勢力の構築とそれに伴う地位・利権の頂点と成り果ててしまったことへの鬱屈と、そんな現在の自分を破壊したい破滅願望に他ならなかっただろうと思います。

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「バトゥーキ」11巻より(迫稔雄/集英社)

肉体的にはベストコンディションであっても、マインド的にはどこか「負けたがり」であって、それをするに足る一里に「今の自分を壊して欲しい」願望を込みでの対戦であったように思います。

悪軍の物語としては厚みを増す展開ですが、一里の物語にとってはあんまり意味がない展開で、途中で一里の負けフラグが立ったものの

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「バトゥーキ」11巻より(迫稔雄/集英社)

それはただのフェイントで、結局作品としては順当な一里の勝利でした。

格闘漫画のオーソドックス展開として、一里がすべての幹部と対戦していくことも、悪軍鉄馬に一度敗北することも、「そうすることもできた」と可能性が示唆されただけで、実際はキャンセルされました。

悪軍鉄馬の鬱屈やヒゲ番長の葛藤、王部の野心はことごとく一里にとって今回なんの意味もなく、ただ作者がキャラクターにまつわるドラマとして描きたかっただけなのか、先々の展開の伏線となるのか、どっちなんでしょうね。

巻の後半は悪軍鉄馬との決着が吹き飛ぶような、3巻以来の流れが変わる作品の物語の大転換を迎えます。

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「バトゥーキ」11巻より(迫稔雄/集英社)

最後のページ、なぜ「彼」が「それ」を手にしたのか、この先一里がどうなっていくのかとても気になりますし、もしかしたら作者は思いついたこの展開を早く描きたいがために、悪軍鉄馬を肩透かしのように短縮して終わらせたんじゃないかと思ったりもします。

あいつ、マジで死んだのかね?マジで?

 

 

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#それでも歩は寄せてくる 8巻 評論(ネタバレ注意)

2人しかいない将棋部の、おさげデコ部長・八乙女うるし(高2♀)と、好き丸出しのくせに頑として認めない無表情部員・田中歩(高1♂)の、告白前の高校生男女が好き丸出しで部室で将棋指しながら甘酸っぱくイチャイチャしてる、可愛いは正義のショートラブコメ。

歩は一応、将棋でうるしに勝ったら告白しようと思ってるみたいです。

日常ラブコメですけど時間が流れる系で、うるしが3年生に、歩が2年生に。

ずーっと主役2人の未満恋愛イチャラブで回してきた作品ですけど、今巻は一冊丸々うるしの京都・奈良への修学旅行編ということで、2人が一緒にいるシーンがまったくありません。

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「それでも歩は寄せてくる」8巻より(山本崇一朗/講談社)

ラブコメ漫画において修学旅行は定番のイベントながら、学年違いで必ずしも一緒に修学旅行に行くとも限らない、「離れた時間が愛を育てる」とでも申しますか、そういう感じの巻。

よく見聞きする言い回しですが、いざ自分で「離れた時間が愛を育てる」とタイピングするのはとても気恥ずかしいものですね。

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「それでも歩は寄せてくる」8巻より(山本崇一朗/講談社)

7冊に渡ってあれだけ一緒に居てイチャコラしても何も進展しなかった2人が、一冊会えなかったぐらいでなんかすげー進展してんなw

本来もともと、8冊もやるようなサイズの作品ではないってのもあるんですけど、

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「それでも歩は寄せてくる」8巻より(山本崇一朗/講談社)

うるしに大きな転機が訪れて、人間こうなったらもうブレーキ効かないもので、結構あと1〜2冊で完結してしまうんじゃないかという気がする反面、何もなかったようにまた未満恋愛イチャコラの日常に戻りそうな気もします。

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「それでも歩は寄せてくる」8巻より(山本崇一朗/講談社)

まあ可愛い女の子を描くのが上手な作者が可愛い女の子を描きたいだけの漫画なので、描きたいように描けばいいというか、読んでるこっちもうるしが可愛ければあとは割りとなんでもいい、みたいなとこもありますし。

なんだかんだ言って今巻もうるしは可愛かったので、それでいいというか、評論もクソもねんだよ。

好きな2人なので幸福にくっついて欲しいなと思いますし、そうならないとも微塵も思わないし。

 

 

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