#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#ブラック・ラグーン 12巻 評論(ネタバレ注意)

タイの架空の犯罪都市・ロアナプラを舞台に、洋上で海賊の人質に囚われ会社に捨てられそのまま運び屋兼海賊に再就職した日本の商社マン・通称"ロック"の活躍を描くアウトロー活劇。マフィアや殺し屋がいっぱい出てきてかっこよくドンパチ、セリフもアメリカ映画の翻訳調だぜ、クソッタレ。

翻訳調のカッコつけたクサい台詞回しが苦手な人は苦手のようで、人は選ぶみたいです。

まあ別に苦手ならこの漫画読まねえとテメーが死ぬわけでもねえ、他の誰かが困ったことになるわけでもねえ、わかったら人のお楽しみの邪魔なんかしねえですっこんでろ、OK?

今巻から新章。

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「ブラック・ラグーン」12巻より(広江礼威/小学館)

非合法都市ロアナプラを仕切るチャイニーズ、イタリアン、ロシアンのマフィアに所属する大柄な黒人男性が次々に殺される騒ぎが発生。

マフィア同士の連絡会で付き合わせた情報によると、騒ぎの中心は黒服に身を包んだ美少女暗殺者の5人組。

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「ブラック・ラグーン」12巻より(広江礼威/小学館)

各勢力が拮抗して支配する街を泳ぐ中小で非合法な運び屋・ラグーン商会のロックは、動揺を顔に出さないように努める黒人男性リーダー・ダッチの動揺を見逃さず、チャイニーズマフィアのボス・張(チャン)の旦那のところに赴き、自ら殺し屋5人組を探す猟犬となることを志願。

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「ブラック・ラグーン」12巻より(広江礼威/小学館)

相棒の女ガンマンのレヴィはブツブツ文句を言いながら彼に同行、ブツブツ言ってた割りには銃撃戦になるとノリノリだった…

という感じ。

張の旦那やバラライカが相変わらずカッコつけててカッコよくて眼福です。

新キャラの美少女殺し屋5人組も、そこだけ「デストロ246」みたいで作品世界で「やや浮き」かしらん、と思ったけど読んでるうちに次第に馴染んでハマってきます。

我らがヒロイン・レヴィもすっかりロックの相棒の位置が安定して相変わらず。

わっるい顔したヒロインだなあwww

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「ブラック・ラグーン」12巻より(広江礼威/小学館)

どっちが主役でどっちが悪役だかわかりゃしねえwww

ブラック・ラグーンの新刊が読める嬉しさと、期待に応えて内容の相変わらずの面白さで勢い☆5を付けたくなるところですが、まだエピソードの途中であることと、寡作・遅筆な作家がたまに出す新刊を過剰に持ち上げるのは、読者を待たせない作家に申し訳がたたない、という理性も働いて☆4です。

流れ的に次巻か次々巻で今エピソード完結かな?

と、「次巻は☆5付けざるを得ないんだろうなー」と、とても楽しみです。エピ完結の前にダッチの過去話にどんだけ尺をとるか次第かな。

 

 

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#かぐや様を語りたい 5巻 評論(ネタバレ注意)

「お似合いですわ〜」って言う役のMOBからネームドに出世したマスメディア部のエリカ(尊かぐや派)とかれん(白銀×かぐや主義)の二人を主人公にした「かぐや様」スピンオフ4コマ。

本編と同じ世界観で裏話的に進行。本編で起こったあれやこれやのエピソードを柱の陰から目撃して妄想を膨らましたり、

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「かぐや様を語りたい」5巻(赤坂アカ/G3井田/集英社)

エリカとかれんの妄想会議に早坂や石上や藤原がゲスト的に招かれて巻き込まれたり、本編に影響しない範囲で裏設定が勝手に増えていく…と思ったら本編のキャラ解釈に逆輸入されるネタも多数。

原作タイトルにも含まれる「かぐや"様"」なんですけど、そう呼んでんの実はかれんとエリカの二人だけなんで、MOB上がりながら意外と重要キャラな気が…いや気のせいだわ。

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「かぐや様を語りたい」5巻(赤坂アカ/G3井田/集英社)

今巻は、本編で白銀とかぐやの仲が一大転機を迎えた文化祭「奉心祭」、クリスマス、冬休みなどを重点的に大量に。白銀×かぐやの他、かぐや×石上の買い物、マスコットキャラ化したかぐや、藤原を押し倒してキスしようとした早坂など、こいつらが目撃したら絶対にややこしいことになりそうな本編のエピソード群をしっかり目撃してしっかりややこしいことに。

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「かぐや様を語りたい」5巻(赤坂アカ/G3井田/集英社)

本編を読んでないとなんの価値もない4コマですけど、読んでさえいればベタながら安定してキッチリ面白いスピンオフで、毎巻毎巻いい仕事してるわぁ。

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「かぐや様を語りたい」5巻(赤坂アカ/G3井田/集英社)

いい加減、頭の病院に連れて行けよw

 

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#【推しの子】 5巻 評論(ネタバレ注意)

地方の病院に務めるアイドルオタな産婦人科医師・ゴローのもとに双子を妊娠したお腹を抱えて訪れた少女は、彼が熱狂するアイドル・アイ(16)だった。驚きショックを受けたゴローだったが、身近に接するアイの人柄に魅了され、彼女の出産を全力でサポートしようと決意する。

だが出産予定日の当日、ゴローはアイのストーカーに殺害される。驚くべきことに、ゴローはアイが出産した男女の双子のうち一人として転生する…

「かぐや様」の赤坂アカの作話を「クズの本懐」等の横槍メンゴが作画、という期待作。

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「【推しの子】」5巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

要約すると二周目人生は伝説のアイドルの双子の子どもだった転生チートな芸能界サクセスストーリー、ミステリー付き。

情報量が多い割りにはコンパクトに進行し、情報密度が濃さの割りに詰め込みには見えず、スムーズなのにこなし仕事に見えず、楽しく面白く読める作劇はさすが。

縦軸はありつつも、横軸は主人公の2人が芸能界の様々な仕事を渡り歩いて、作者が見知った芸能仕事の機微を描写していく建て付けに。アイドル編、リアリティショー編ときて、今巻から新章「2.5次元舞台編」。

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「【推しの子】」5巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

「かぐや様」のアニメ化や映画化で自分が見知った経験を肥やしにして作品に活かす、創作者の鑑やねw

超人気少年漫画を原作に若手の人気の役者を集めて2.5次元化する舞台に出演することになったアクア。しかし、舞台の稽古は気難しい原作者(漫画家)を前に多事多難だった…

かつて一度、仕事で降ろされた経験のある社会人だったら、ちょっと泣けてくるようなお話。

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「【推しの子】」5巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

この漫画の横軸は、基本的に仕事のトラブルがあって、それを設定上の転生者で、かつ作劇上の調停者であるアクアの一手によって、問題が解決される、というファンタジーです。

ファンタジーである所以は、「リアリティショー編」でもそうであったように、現実と対比して「そんな上手くいったら苦労しねんだよ」っていうぐらい優しい着地を迎えることです。

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「【推しの子】」5巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

現実も自分の作品も、メタに斜に構えた視点で見下ろす体質の作家で、エピソード中盤のつらい描写も実にシビアな描き方がされますが、アクアの使い方という「嘘」、結末の「嘘」のつき方は、「(漫画の中でぐらい)誠実に一生懸命頑張ってる人にハッピーエンドが訪れてほしい」という、基本的に嘘の使い方が甘くて優しい人だな、と思います。

今巻でアクアの調停の結果、全体の問題自体は解決するものの、その結果の皺寄せがアクア自身に返ってくるちょっと面白い展開。

今のところまだ影が薄い、この人

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「【推しの子】」5巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

が活躍するフェーズでしょうか。

 

 

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#トニカクカワイイ 17巻 評論(ネタバレ注意)

基本は理系天才フリーター・ナサくんと、謎多きクール美少女・司(つかさ)さんの、なんか可愛い男の子と女の子の新婚生活ラブコメ。

SFファンタジーな「かぐや姫」伝承にまつわり不老不死であることを匂わせつつ隠してきた日常ラブコメの、隠してきたその謎の真相が「第一部 完」として15巻で明らかに。

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「トニカクカワイイ」17巻より(畑健二郎/小学館)

第二部に入るのかと思いきや、その助走とでもいうべきか、前巻・今巻と15巻の後日談のように、でも時系列は過去回想エピソードを叙情的に。

今巻はナサくんの前代として司を支えた時子のエピソード。

要するに、1巻の時点で読者が予想した「作品終盤でナサくんが果たすであろう役割」を、時子が既に果たしていた、というお話。人生をかけて。

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「トニカクカワイイ」17巻より(畑健二郎/小学館)

あの冗長な日常ラブコメはなんだったんだというくらいここ数巻はアクセル全開で、構成やここぞというときのタイトル付けを見るに、ポップなラブコメ描写や猥雑なオタクネタの奥底で、この作者が万感に迫るとても叙情的な物語の語り手であることが示されます。

ラブコメ漫画としてポップな上手い絵を安定して描く人で、一番大事な「女の子を可愛く描く」も十分に備えた漫画家さんですけど、むしろ、なお画力が追いついてないというか、描きたいことに対して描ける絵がポップでライトすぎてミスマッチなのではないかと、そんなことを感じさせる、この作家の本質ともいうべき重く深い物語の叙情性、感情の行間。

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「トニカクカワイイ」17巻より(畑健二郎/小学館)

なにかこう、命、生きるということ、うまく言葉にできないですけど。

この一冊で時子編が完結する構成も良いし、タイトル「青空」、泣けます。

 

 

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#かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ 23巻 評論(ネタバレ注意)

名門の子女が集う名門学園の生徒会長・白銀御行と副会長・四宮かぐや。プライド高いエリート同士、美男美女同士の「告白した方が負け」。稀代のラブコメメーカーによる恋愛マウント駆け引きバトル、現役最強ラブコメ。

「信者」と言っていいぐらい自分はこの作品が好きなので、新刊の度に何を書こうか悩ましいです。褒め言葉のバリエーションがあんまり多くないので。

白銀とかぐやが3年生になり、新キャラも登場し、飛び級でスタンフォード大進学を決めた白銀に残された高校生活は残り4ヶ月。

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「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」23巻より(赤坂アカ/集英社)

今巻は、作品としてのメインディッシュになるであろう「白銀の戦い編」は一旦置いておいて、白銀×かぐやのおつきあいを生徒会メンバー(特にまったく気づいてない藤原)に告白編、つばめが去った後の石上の新たな恋愛模様編、などなど。

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「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」23巻より(赤坂アカ/集英社)

藤原はちょいちょい「切れ者」描写が入る割りに、本当に白金とかぐやの仲に気づいてなかったり、よくわかんねえなw 作者が「藤原は切れる」と「藤原がキレる」の「面白くなる方」を都合の良いように使い分けてコメディリリーフとして大成功してる感。

こんなこと書くとピアノやってる人に「なめんな」って怒られるかもしれないですけど、最終回周りでピアニストとして復帰しそうな予感もしますね。

ストイックな生活から離れてかぐやたちと過ごした時間が、表現者としての彼女をこそ豊かにしている気がしますが。

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「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」23巻より(赤坂アカ/集英社)

担任の教師や不知火ころもなど、前巻から登場の新キャラの方向性も明らかに。

担任はいい感じに拗れた大人で良いですね。おっさんに人気出そう。

ころもは深掘りはこれからなのか、そもそも深掘りされるのかわかりませんけど、「僕ヤバ」じゃないけど芸能関係の女の子と一般男子の恋はロマンがあっていいもんですけど、どうなんでしょ。キャラ人気の様子を見て枝を伸ばす感じですか。

容貌がフェティッシュで好きだわこの子。

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「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」23巻より(赤坂アカ/集英社)

なにか暗示的やね。

作品としてある程度余裕が出て以来、既存キャラや新キャラのいろんな組合せの種を蒔いて人気が出た芽を伸ばす、を繰り返してきた作品で、白金×藤原の特訓シリーズや、恋愛模様の台風の目になった石上なんかはその最たるものですけど、未だに新たな種を蒔き続けて、なにかリスク分散のポートフォリオのようでもあり、生き物を育てるというか、どの枝を育てるか判断して剪定していく盆栽のようでもありますね。

石上×ころも、白銀パパ×ミコなど、担任×かぐや新しい人間関係の組合せもどれも美味しそう。

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「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」23巻より(赤坂アカ/集英社)

大仏の拗らせは禅問答展開の入り口で、エンタメとして成立させるバランスが難しそうで賛否両論あると思いますけど、自分は恋愛もので拗らせを深掘りしていくの嫌いじゃないです。

まあ、信者ですし。

 

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#ウマ娘 シンデレラグレイ 4巻 評論(ネタバレ注意)

実在の競走馬を美少女擬人化した育成ソシャゲ「ウマ娘」の派生コミカライズ。

日本の競馬史に残る名馬・オグリキャップの現役時代をモチーフにしたスピンオフ。

1〜2巻で地方レース(カサマツ)編が終わり、前巻から中央に移籍。

ウマ娘世界観でいう「中央トレセン学園」に編入し、並み居る名バ達と本格的にシノギを削る展開に。

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「ウマ娘 シンデレラグレイ」4巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

モチーフとなった史実が日本競馬史上最大級のシンデレラストーリーにして、トウカイテイオーと並ぶ日本競馬史上最大級の復活劇というドラマで、かつ魅力的なライバルにも恵まれていた馬のお話なので、更にifを加えた作話の骨組みの時点で優勝です。ありがとうございました。

漫画の感想で「大河的」という形容を、自分はよくするな、と思います。「ナンニデモ大河ッテ言エバイイト思ッテル病」。

「NHK大河ドラマ」の「大河」です。「歴史フィクション的」とでもいいますか。

「新撰組」が歴史フィクション化されるとき、近藤勇や土方歳三や沖田総司に何が起こったのか我々の大半は作品開始前から既に知っているんですが、年表に記された史実と史実をつなぐどんなドラマがあったのか、どう解釈され物語化されるのか。

その楽しみが、主に司馬遼太郎以降、「新撰組」を何度となくコンテンツ化させています。

この楽しみ方の歴史は古く、同じ史実を作者や演者を変えて何度もフィクション化して新しい解釈や表現を楽しむ文化の、日本における源流の一つは歌舞伎であろうと思います。

それは置いといて。

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「ウマ娘 シンデレラグレイ」4巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

漫画においても歴史フィクションによる再構築は横山光輝の「三国志」をはじめ、最近では「新九郎、奔る!」や「逃げ上手の若君」など、珍しいことではなく、「ファイブスター物語」なんかも架空の歴史をもとにした「大河もの」です。

先日は「化物語」コミカライズの最新刊を読んで「大河」を感じました。

「何が起こるか、読者が最初から知っている」は優れたフィクション作品においてハンデにならず、むしろ作者がどう解釈しどう表現するのかを読者に考察させワクワクさせる余地を生ませる、武器にすらなりうるんですよね。

この漫画も「大河的」な作品の系譜に名を連ねようとしているなあ、と今巻を読んで感じました。

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「ウマ娘 シンデレラグレイ」4巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

オグリキャップがいつ勝っていつ負けたかなんてWikipeiaを見れば全部書いてあって、10秒もあれば我々はいつでもその情報にアクセスできるにも関わらず、この作品はこんなにも面白い。

爆発的なスタートダッシュから半年、ソシャゲの「ウマ娘」のブームがひとまず落ち着きつつある今日この頃、10年後、20年後に「ウマ娘」というコンテンツを振り返ったときに、その看板を代表するのはもしかしたらソシャゲではなく、アニメとこのコミカライズになるのかもしれないな、と思ったりします。

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「ウマ娘 シンデレラグレイ」4巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

かわいいw

ある程度「if」が許されているコンテンツでもあるようなので、いつ、史実を逸脱するカードを切ってくるかも楽しみ。あえてカードを切らないのも、またヨシですけど。

 

 

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#カノジョも彼女 7巻 評論(ネタバレ注意)

幼馴染の咲に小学生以来ずっと片想いで何回フラれても告白し続けた直也。

高校入学を機についに咲にOKしてもらい付き合いだした矢先、直也はクラスメイトの超美少女・渚に告白される。彼女の可愛さと健気さに胸を打たれた直也は…

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「カノジョも彼女」1巻より(ヒロユキ/講談社)

というガチもんのハーレムラブコメ。バカコメよりです。作者は「アホガール」の人。

終盤が荒れたりイマイチ納得いかない展開を繰り返すハーレムラブコメというジャンルに飽きてしまった自分の最後の希望。

この第1話のコマすごいっすよね。これだけでどういう漫画か全部説明できてしまう。

コロンブスの卵というよりは「バカすぎてメジャー誌では誰もやらなかっただけ」という気もします。ギャグ漫画だったらあった気もするな。

これは今巻の冒頭に掲示されてるキャラ紹介&相関図。

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「カノジョも彼女」7巻より(ヒロユキ/講談社)

ここんとこ毎巻、「警察に通報」というキーワードが出てくるラブコメ。

主人公と恋人関係で同棲関係の左上の1stヒロインと右上の2ndヒロイン、その関係を監視するために同居している左下の4thヒロイン。

今巻のお話は、主人公から伸びた矢印に「諦めてほしい」と添えられている、表紙の彼女、3rdヒロイン。

二股彼女と同棲中の主人公に幾度となく迫り続け、その都度拒否され続け時に警察に通報までされて、傷ついても傷ついてもめげずにグイグイ迫り続ける、諦めない心と行動力の権化の、一世一代の勝負駆け。

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「カノジョも彼女」7巻より(ヒロユキ/講談社)

もともとストーカー気味だった彼女の「グイグイ迫る」は今巻においては睡眠薬と手錠を使用させるに及び、犯罪スレスレというか普通に犯罪であるにも関わらず、なんだろうね、まるでウマ娘のトウカイテイオーやキングヘイローのように挫けても傷ついても何度でも立ち上がるその不屈は、狂気じみた美しさすら感じます。

それを象徴するかのように、違法行為をいくつも犯しながら愛を語り恋を語る今巻の彼女の言葉の、なんと名言のオンパレードであることか。

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「カノジョも彼女」7巻より(ヒロユキ/講談社)

イイ顔で美談風のキメゴマだけど、ただの生涯ストーカー宣言じゃねえかw

ギャグコメディ色の強いハーレムラブコメ作品ですけど、彼女の狂気はハーレムラブコメがごまかしながら隠し持ってきた狂気の体現であり、恋愛が本来持つ狂気を体現したものではないかと思います。

「ハコヅメ」の最新刊「アンボックス」で描かれたように、恋をすると人は少しおかしくなるし、商業的な要請から生まれたであろうハーレムラブコメというジャンルは自分に言わせれば少なくとも一夫一婦制の文化圏における倫理観においてはもともと頭がおかしいんです。

彼らは全員、等しく悪く、頭がおかしい。

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「カノジョも彼女」7巻より(ヒロユキ/講談社)

そのことから逃げず目を逸らさずに、ハーレムラブコメにおいてありがちなキャラの好感度維持のための「誰も悪くない」に逃げず、各々のキャラが自らの欲望と自分なりの節から逃げず、なおかつカジュアルに本音をぶつけ合いながらハイテンションなギャグコメディに昇華しているのは、なんというかすごいなあ、と。

「普通」のハーレムラブコメとまったく異なるアプローチの果てに、見たことのない奇妙で美しい花が咲きかけているとでもいうか。

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「カノジョも彼女」7巻より(ヒロユキ/講談社)

※この人がたぶんメインヒロインです

これ収拾がつくのか、というのはまた別の話ではあるんですが。

まあせめて、あんま警察に手間かけさせんなよ、と。

 

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#化物語 14巻 評論(ネタバレ注意)

西尾維新の原作を大暮維人がコミカライズして週刊少年マガジンに掲載の鉄板漫画。キャラデザVOFAN準拠。こんなに美麗な絵でコミカライズされると原作冥利に尽きるでしょうね。ちなみに自分は原作とアニメを消化済み。

順番を入れ替えて、羽川の猫のエピソードの前に「こよみヴァンプ」・傷物語。

化物語シリーズの原作小説は、近刊はちょっと追えてないんですけど、20冊ぐらいは所蔵してて読破済みなんですが、なにしろ冊数が多いのでなかなか再読していないです。最後に読んだのは何年前だろうか。特にアニメで同じ話が観れちゃうってのもあるんですけど。

このコミカライズの今巻の原作「傷物語」も読んだのはだいぶ昔で、あんまりもう憶えてなくて、劇場版三部作も第一作は観に行ったんですけど、バタバタしてた時期でそれっきりになってました。

要するに、あらすじはぼんやり憶えてるけど、細部は忘れてる状態でした。

8巻から始まった「傷物語」編も終盤になって気がつけば7冊目。現時点の全14冊のうち、半分を「傷物語」が占め、次巻(おそらく「傷」完結?)にも続いて過半を超える入魂のエピソード。

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「化物語」14巻より(西尾維新/大暮維人/講談社)

このコミカライズに関しては、

「長大な原作小説に対してどこまでをコミカライズするんだろう」

「『化』『傷』で終わりだろうか」

とずっと思いながら読んできたんですが、今巻は唸るものがありました。

そうきたか!ここであのエピソードを吸収するのか!

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「化物語」14巻より(西尾維新/大暮維人/講談社)

聞き役に羽川まで加えて!実質「傷鬼」やんけコレ!

このやり方だったら全部をなぞるようにコミカライズする必要もなくなるな!

継ぎ足し継ぎ足しで描かれていった原作の、あらかじめユクスエを知っているが故の、伏線・予告の張り方も秀逸。

原作を知っているファンが再体験するための、基本的にファンアイテムとしてのコミカライズだと思っていたんですけど、歴史に対する大河歴史もののような、「知っている出来事が物語としてどう再構築され脚色されるのか」の面白さが生まれていて素晴らしいです。正にコミカライズの醍醐味。

前巻は大暮維人の美しい筆致を実にくだらないエピソードに費やした、その対照と無駄な贅沢さが最高でしたけど、今巻はその大暮維人の美しい筆致が、このシリーズらしく美しく哀しいエピソードに遺憾無くふさわしく発揮された巻でした。

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「化物語」14巻より(西尾維新/大暮維人/講談社)

ラノベのコミカライズは長期連載になりがちなので、章ごとに作画家(漫画家)がリレー形式で交代していくのも珍しくないんですけど、この作品はこの巻のせいで後任の引き受け手がいなくなったかもしれないなと思いました。

このシリーズの美少女ラブコメ要素やギャグコメディ要素の奥底で通底し続ける「永遠を生きるものの悲哀」「人と怪異の哀しく美しい交わり」を絵で表現するにあたって、大暮維人以上にふさわしい作画がちょっと思い浮かばない。

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「化物語」14巻より(西尾維新/大暮維人/講談社)

あー、この筆であのエピソードもそのエピソードも読みたい。

 

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#姫乃ちゃんに恋はまだ早い 7巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

風紀委員的な真面目女子として男子に恐れられる姫乃ちゃんは小学5年生。隣の席のオージくんを好きになるも、彼はまだまだ子どもで恋愛のれの字も女心のおの字も読めなかった。

ツンデレながら健気に高木さんの10倍積極的にオージくんにあれこれアピールするも、オージくんが西片の100倍鈍感な子どもなので全然伝わらない、「○○さんは××」系の甘酸っぱい隣の席すれ違いラブコメ。少年漫画らしい可愛らしい絵で。

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「姫乃ちゃんに恋はまだ早い」7巻より(ゆずチリ/新潮社)

今巻で完結。

日常色の強いラブコメだったってのもありますし、小学生なので「最後2人は結ばれましたエンド」ってわけにもいかないし、姫乃ちゃんが中学生や高校生になったらタイトルに偽りありになってしまうので、終わる時はこういう終わり方かな、という、そういう終わり方でした。

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「姫乃ちゃんに恋はまだ早い」7巻より(ゆずチリ/新潮社)

その分、作品通じて恋愛ものとしてインパクトが弱くならざるを得ない漫画ではあったんですけど、小学生の恋愛ものというと自分はTVドラマ「うちの子にかぎって」を思い出してなんかちょっと懐かしかったです。

星屑のステージ

星屑のステージ

  • チェッカーズ
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

別に小学生の恋愛ドラマだったわけじゃなくて、田村正和が主演の小学校の教師もので、主題歌がチェッカーズの「星屑のステージ」で、所ジョージも出てて、主にませた小学生たちが様々な問題を起こして田村正和演じる教師が振り回される的なそういうドラマだったんですけど。

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「姫乃ちゃんに恋はまだ早い」7巻より(ゆずチリ/新潮社)

もう話もあんま憶えてないんですけど、土砂降りの夜の学校で男の子と女の子が一夜を過ごすシーンがあって、一緒に観てた親が「子どもがこんなw」っつってたんですけど、当時自分も子どもで好きな子がいたので、「この大人はなんで『子どもは恋をしない』と思いこんでいるんだろうか」と不思議に思ったことを、久しぶりに思い出した漫画でした。

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「姫乃ちゃんに恋はまだ早い」7巻より(ゆずチリ/新潮社)

長く続く作品とも思ってなかったですけど、終わるとやっぱ寂しいね。同日に同作者の新作の1巻も出てるので、その話は近日に。

 

 

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#月刊少女野崎くん 13巻 評論(ネタバレ注意)

アニメ化済みのラブコメ4コマ。高校生にして連載持ち少女漫画家の野崎くんに片想いする千代ちゃんの話。

少女漫画出身らしい華やかな絵柄で、可愛い女の子たちと可愛い男の子たちがたくさん出てくる眼福な作品。

自分は瀬尾と千代ちゃんがお気に入りです。

この作品ずっと電子書籍は紙書籍版の発売日から1ヶ月待ちで、感想を書くたびに「電書派としては商売の仕方がとても気に食わねえ」と書いてきたんですが、そのせいってわけでもないんですが、今巻から同日?3日遅れ?ぐらいのほぼ同じタイミングで電子書籍が発売されることになりました。

ありがてえありがてえ。

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「月刊少女野崎くん」13巻より(椿いづみ/スクウェア・エニックス)

自分はストーリー漫画に関しては「巻数が少ないほど良い」論者で、日常ものや4コマ漫画なんかにもたまにうっかり援用してしまうことがあります。

ご存知の通りヒットしたストーリー漫画は商業的な成功を拡大するために(端的にいうと安定収入維持のために)編集部と漫画家の利害が一致してしまって、「引き伸ばし」が起こることがままあって、冗長であまり好きではないです。

一方、日常ものや4コマ漫画なんてのは基本的に延々続いたって別にいいと思うんですけど、たまにイライラしちゃうのはなんででしょうね。

作品によっては「永遠に続いてほしい」と思ったり、作品によっては「マンネリなんでもうやめたら」と思ったり、我ながら読者はわがままなもんですけど、まあ日常ものや4コマから面白さより「冗長」「マンネリ」を先に感じてる時点で面白く読めてないってことなので、こっちの方こそ「読むのやめたら」って話なんですが。

というわけで、日常ものなんかも最近は「冗長」「マンネリ」を感じたら積極的に続きを読むのをやめるようにしてます。

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「月刊少女野崎くん」13巻より(椿いづみ/スクウェア・エニックス)

で、この漫画は「永遠に続いてほしい」と思ってる部類の漫画で、マンネリではあるんですけど、新刊の度に「今回も面白いなあ」と思います。

寝床でタブレットで漫画を読みながら就寝するのが日課なんですけど、あんまり刺激的すぎる漫画は寝付けなくなるので、何度も何度も読んだ4コマ漫画が入眠にちょうどいいんですけど、さすがに巻数が少ないと飽きてしまうので、こういう漫画の巻数が増えてくれるのはローテーションが充実していくので大歓迎です。

漫画家にとって最高の褒め言葉ってなんだろう?って考える時に、毎回「やっぱコレには勝てねえ」って思うのが、「動物のお医者さん」に寄せられたこの感想なんですけど、

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「動物のお医者さん」12巻より(佐々木倫子/白泉社)

「月刊少女野崎くん」も自分にとって「死ぬまで続いてほしい」漫画の一つ。

ちょっとネタバレになるんですけど、この作品のコメディ要素を生み出す定番の人間関係に「若松がローレライの正体を知らない(信じてない)」「野崎のアシのお花担当と背景担当が互いの正体を知らない」というものがあったのが、両方とも今巻で解消してしまって「アレ、畳む気かしらん」とちょっと思ったりするんですが。

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「月刊少女野崎くん」13巻より(椿いづみ/スクウェア・エニックス)

一方で新キャラが登場したり千代ちゃんの表情の描写のバリエーションが増えていたり正体を知った上での新たな人間関係の描写が楽しみだったり、とまだまだ安泰だろうと思う一方で、この作者の別の作品も読んでみたかったり、読者というのはわがままだなあ、と。

 

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#瑠璃の宝石 2巻 評論(ネタバレ注意)

アクセサリーショップで水晶のアクセサリーに身惚れた女子高生・瑠璃は、母親に小遣いの前借りをせびるものの断られる。

母親が断る口実に言った「水晶なんて爺ちゃんが山菜採りのついでに山で拾ってた」を真に受けた瑠璃は、バスの終点の山奥に一人分け入るものの、どうすればいいかわからない。石を抱えてうずくまる瑠璃に声をかけてくれた女に、瑠璃は意を決して尋ねる。

彼女、鉱物研の大学院生の凪は、こともなげに水晶が取れる場所を告げ、瑠璃の頼みを聞いて案内をしてくれる。そこには巨大な水晶鉱床が広がっていた。

から始まる、ガール・ミーツ・ガールで鉱物採集をテーマにした、ハルタらしいニッチな趣味・学問もの。ややコメディ寄りの専門ジャンル漫画。特に百合ではない。

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「瑠璃の宝石」2巻より(渋谷圭一郎/KADOKAWA)

凪と水晶との出会いから、銭ゲバ気味に金目の鉱物を狙っていた瑠璃が、徐々に鉱物そのものの魅力と知的好奇心に目覚めていく。

最近、「古畑任三郎」の全話入りBD-BOXを買って順次観ていってるところなんですけど、

アレは誰が犯人かを、視聴者が推理しないんですよね。

視聴者が観ている冒頭で犯人とその犯行が提示されて、もっと言うと視聴者は最終的に古畑が犯人を逮捕する結果も知った上で、毎回楽しんで観てた作品です。

要するにアレは、結果・結末ではなく、古畑が犯人を推定し確証を得ていく「プロセスの面白さ」を端的に示している作品の一つなんですけど、今巻のこの漫画もなんか似た面白さを感じます。

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「瑠璃の宝石」2巻より(渋谷圭一郎/KADOKAWA)

川底の砂からサファイアの粒を発見した瑠璃が、その一粒のサファイアからその産地を突き止める話が地味に丁寧に展開されるお話。

たぶん登場人物たちが可愛い女の子たちでなければ商品として成り立たない、地味で地道なことをずっとやってる漫画で、もっというと我々読者は主人公の女子高生がサファイアの産地を突き止めようができなかろうが本来どっちでもいいはずなんですけど、とても面白く読めました。

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「瑠璃の宝石」2巻より(渋谷圭一郎/KADOKAWA)

知識欲や好奇心と隣接しながらもちょっと違う、消去法で残った可能性を絞り込んで少しずつ真実に近づいていく過程と、その結論としての事象(そこにサファイアがあった)に対する経緯や構造が目の前で解き明かされる面白さ、というのかな。スリリングですらあります。

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「瑠璃の宝石」2巻より(渋谷圭一郎/KADOKAWA)

神社のエピソードと絡めたオチもオシャレで、地味で地道ながら事実と科学に対して誠実な描写も良いです。地味で細かい作業が追うものが、物理的にも時間的にもスケールがとてもデカい、その対比も良いよね。

1巻の時に思っていたよりもこの2巻はもっと面白かったんですけど、ハルタが悪いわけではもちろんないですし週刊少年ジャンプに載せて保たないのもわかるんですけど、ほぼ大人だけが読むメディアに載ってるのはちょっと、いやだいぶもったいない漫画だなー、と。

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「瑠璃の宝石」2巻より(渋谷圭一郎/KADOKAWA)

漫画に対して「読むべき」「読まれるべき」という形容は自分は嫌いなんですけど、それでもこういう地道な調査や研究が持つ面白さを現した作品が、もっと子どもや若い人が読むメディアに掲載できる懐の広さがもっと日本にあったらいいのになあ、と思ってしまいます。そもそもこの地味で興味深い作品を載せてる時点で、ハルタの懐が深すぎるって話なんですけど。

こんなもんさっさとNHKあたりで子どもが観れる時間帯でTVアニメ化しなさいよ、って話でね。

 

 

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#山を渡る -三多摩大岳部録- 4巻 評論(ネタバレ注意)

伝統の三多摩大学山岳部は人数不足で廃部の危機に瀕していた。部員は3年2人、2年1人のわずか3人。

新入生で見学に来たのは、秋田生まれの運動嫌い、長野生まれの虚弱体質、北海道生まれの読書好きの3人の少女だった。先輩部員たちはなんとしても逃がすものかと、正式入部に向けてあの手この手で勧誘する。

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「山を渡る -三多摩大岳部録-」4巻より(空木哲生/KADOKAWA)

全然ユルくない登山をHARTAコミックスらしく文学的にハイテンションに。「登山漫画」というより「登山部漫画」。

今巻は南アルプスは鳳凰三山で、1年生初の2泊山行。

ハルタっぽいというかモーニング・アフタヌーン系っぽいですよね。そもそもハルタとモーニング・アフタヌーン系のイメージが自分の中で近いってのもあるんですけど。

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「山を渡る -三多摩大岳部録-」4巻より(空木哲生/KADOKAWA)

自分は登山は全然しない人間で、小中学校時代の山登り遠足的なやつと、あと小学生の時に家族で富士山に登ったぐらいなんですけど、危険なイメージもありますけど一番はしんどいのあんま好きでないので。

ただ富士山に登った時の記憶は結構強く残ってて、標高が高くなるにつれてだんだん酸素が薄くなってしんどくなってきて、そっから水飲んだり一晩寝たりしたら笑えるぐらい回復する気持ちよさとか、登頂したときの達成感とかはよく憶えてます。

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「山を渡る -三多摩大岳部録-」4巻より(空木哲生/KADOKAWA)

あのしんどさからの解放が病みつきになったらハマる基本的にマゾのスポーツかなとw

高山病に限らず体調が悪い時って感覚が鋭敏になるのか、空気の匂いや温度や湿度とか食べたり飲んだりしたものの味とか、鮮烈に憶えてるのを忘れてたんですけど、そういう漫画に映らない嗅覚・味覚・触覚の記憶を呼び覚ますのが不思議と上手い漫画だなと思います。

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「山を渡る -三多摩大岳部録-」4巻より(空木哲生/KADOKAWA)

話としては大学生が山登ってるだけの話なんですけど、身体的な記憶というのか、デジャヴではなくて確かにあった記憶を久しぶりに呼び起こされて、「あーそんな頭で考えるほど登山苦手じゃないというか、結構好きだったのかもしれないな」と思いました。

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「山を渡る -三多摩大岳部録-」4巻より(空木哲生/KADOKAWA)

だからってじゃあまた登るか、ってなる歳でもないんですけどw

はあ、若いっていいよな。甲府駅で寝てた50歳のおっさんの含めて、こいつらが羨ましいだぜ。

 

 

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#ダンダダン 1巻 評論(ネタバレ注意)

えーと、これはジャンプラですかね。人気で話題らしいので。

 

===ここから この作品ではなく、無料WEB漫画一般に思うこと===

無料WEB連載はタダで読めちゃうので、ネットで人気で話題の作品でも、実は金出して読むほどの作品だとは思われてなくて、実はSNSのネタの消費材として話題なだけ(「自分はこんな作品にこんな感想を持つ人間ですよアピール」の具)だった、で終わってしまう作品も少なくないので、ちょっと怖いですね。

ジャンプ本誌は有料な中での打ち切りダービーが作品の質を担保してる面がありますけど、ジャンプラの「枠をめぐる競争」ってどの程度シビアなんだろうか、とか、こないだの藤本タツキの読み切りの反響とか見ても、近い将来に「広く読まれる」という意味では逆転しちゃうんだろうなとか、いろいろ考えちゃいます。

極端な話、「多くの人にとって金を出す価値がなくても持て囃されてしまう」「形に残らずそのうち読めなくなって忘れられていく」というのはテレビ文化的だな、とか。

でも、作品が商品であることからの解放に近づいていくのは、本当は良いことなんじゃないかとか。

===この作品ではなく、無料WEB漫画一般に思うこと ここまで===

 

霊媒師の家系のギャルと、いじめられっ子気味で孤独なオカルトオタクの少年の同級生ガールミーツボーイから始まる、オカルトバトルなバディもの?

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「ダンダダン」1巻より(龍幸伸/集英社)

1巻読み終わってもこの漫画がどうなりたいのかまだちょっとよくわかりません。

未知と遭遇したとき、我々は過去の経験から似たものを思い浮かべてそれがなんなのか同定しようとするわけなんですが、書き出していくと

・ボーイ・ミーツ・ガール

・オタクに優しいギャル

・ラブコメ群

・ちょいエロ

・呪術廻戦、チェンソーマンなどの最近のジャンプのオカルトバトル漫画群

・うしおととら

・東京入星管理局

・GANTZ

・メン・イン・ブラック

・漫☆画太郎

あたりを足して適当に割ったような感じ。

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「ダンダダン」1巻より(龍幸伸/集英社)

いろんなジャンルのごった煮というか、カオスな闇鍋みたいな漫画。

幽霊・妖怪でも宇宙人でもオカルトだったらなんでもありの、バディものかつラブコメな、格闘バトルなのか知恵バトルなのかよくわからん。

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「ダンダダン」1巻より(龍幸伸/集英社)

エロ可愛いけど、かっこいいかというと今のところかっこいいわけでもない。

面白いか面白くないかというと、まあ面白いんですけどどうなりたい漫画なのか今のところよくわからん。

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「ダンダダン」1巻より(龍幸伸/集英社)

ジャンプらしいような、ジャンプラらしいジャンプらしくなさのような。

インパクトは強いけど、1巻はまだ点で、2巻で線になって方向性がわかるんだろうか?という感じです。それが知りたいからまあ続き読むわ、という感じ。

shonenjumpplus.com

幸いなことにWEB連載で、1巻の続きが今なら全話読めるので、読んできます。

なんだろねコレ。作品のテーマに即して、未知との遭遇感はすごいですけども。

何がしたいとか、どうなりたいとかいう意味では、「面白そうだったらなんでもいいですし、なんでもします」みたいな、良くも悪くも無節操さを感じます。

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「ダンダダン」1巻より(龍幸伸/集英社)

普通、幽霊や妖怪と宇宙人を混ぜちゃダメだろって思っちゃうところを平気で踏み越えて、成立してんだかしてないんだか読んでてよくわからんけど、とりあえず今のところ面白いからいいか、みたいな。

傑作の第一歩を見てるような、竜頭蛇尾で終わる世紀の凡作を掴まされてるような、なんなんこの漫画w

なんというか、昨今のWEB漫画らしいカオスですねw

 

blog.livedoor.jp

FSS (NT2021年9月号 第17巻相当) 評論(ネタバレ注意)

ファイブスター物語、連続掲載継続中。

今月は漫画の連載ではなく、設定資料集、いわゆる「デザインズ回」。

扉絵コミで13ページ。

  

他の号はこちらから。

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  • (余談)
  • (扉絵)
  • (本編)
  • (所感)
    • ゴリさん
    • センちゃん
    • タイカ(泰華)おさらい
    • シルやん
    • ルシやん
    • アンカー・モノノフおさらい
    • ゴウやん
    • ジキやん
    • スッパマン
    • マタやん
    • タワやん
    • バフォやん
    • スペちゃん
    • カバやん
    • ノイやん
    • 班長
    • 泥棒
    • 元・彗王丸
    • ちりめんジャコ
    • さんじょー
    • 翼をください
    • 弁天町
    • 大門
    • ソルやん
    • 元・暁姫
    • 最後の人物

以下、宣伝と余談のあとにネタバレ情報を含んで論評しますので閲覧ご注意。

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#ぐらんぶる 17巻 評論(ネタバレ注意)

大学入学を機に下宿先の美女に釣られてダイビングサークルに入部したら美女4人以外は大量の邪悪な顔したハイテンションなマッチョが全裸フリチンでイッキ飲みする宴会サークルだったウェイ系げんしけん。たまにスキューバもやる。

可愛いヒロインを複数登場させながらマッチョの添え物のような扱いで早や17巻。リュック・ベッソンにはいつ訴えられるんでしょうか。

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「ぐらんぶる」17巻より(井上堅二/吉岡公威/講談社)

宝くじを当てた金で伊織と千紗の2人の沖縄旅行編のはずが、尾行してきた愛菜と耕平と合流して4人旅に、さらに宝くじの当選金目当てで追ってきた桜子も合流して男女5人旅に。

桜子は「Bバージン」のアリサポジションというか、山田玲司の言うところのラブコメにおける典型的な「残念ショーガール」なんですけど、作者からも読者からも期待値ゼロからのスタートで言動の自由度が高く、得てして軽度のデレツンデレさんでもあるので、可動範囲がワンパターンに狭くてつまらないことになりがちなメインヒロインより感情表現が豊かで、結果的に魅力的なキャラになって人気が出ちゃうケースがあるんですけど、そんな感じです。

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「ぐらんぶる」17巻より(井上堅二/吉岡公威/講談社)

いやー、メインヒロインの方はせっかくの沖縄二人旅だったはずが、相変わらず表面上は得るものも進展もなんにもなかったですね。

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「ぐらんぶる」17巻より(井上堅二/吉岡公威/講談社)

桜子がキャラの魅力を存分に振り撒いた以外は相変わらずのハイテンションな空騒ぎのしょーもない漫画でしたけど、夏らしい話で良いですね。夏に合わせたというよりは、年がら年中「夏」ばっかやってる漫画に、夏の方が勝手にやってきたって感じですけど。

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「ぐらんぶる」17巻より(井上堅二/吉岡公威/講談社)

メインヒロインの千紗があまりにも動かなすぎて居ても居なくてもいいようなこの漫画、どうすんでしょうねコレ20年も30年もこの調子でやってく気なのかな。

 

 

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