#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#株式会社マジルミエ 3巻 評論(ネタバレ注意)

突如発生し人に害をなし損害を与える怪異を、退治するサービスが「魔法少女」と称され複数の企業が魔法少女サービスを提供する社会。

就職活動中の女子学生・桜木カナは面接に連戦連敗中の最中、大手金融企業の面接中に会議室で発生した怪異に巻き込まれる。

『株式会社マジルミエ』3巻より(岩田雪花/青木裕/集英社)

通報で現場に駆けつけた魔法少女・越谷仁美の怪異退治「業務」を手伝った縁で、カナは魔法少女ベンチャー企業「株式会社マジルミエ」にスカウトされ魔法少女として就職することになった…

という、ジャンプ+の魔法少女お仕事漫画。

魔法少女を企業サービスとして現代社会ナイズ、ファンタジー世界観を部分的にリアリティラインを押し上げてシミュレーションしてお仕事漫画のテイに。

『株式会社マジルミエ』3巻より(岩田雪花/青木裕/集英社)

「今日も一日がんばるぞい!」がバケモノ退治する漫画、でざっくり説明できちゃいそうな世界観。

大手を始め業界体質が汎用既成プロダクト(魔法)を用いた短時間・効率主義であるに対し、現場主義に基づく丁寧なリサーチとオーダーメイド新魔法の個別開発で対応するマジルミエ。

SI業界で、デファクトスタンダードなプロダクトでゴリ押しする大手と、小規模ながら高い技術力でオーダーメイドのスクラッチ開発する優良ベンチャー、みたいな対比。

前巻以来のエピソード、資生堂がモデルの化粧品メーカー・ミヤコ堂の「魔法少女部門」との協働編が今巻前半で完結。

『株式会社マジルミエ』3巻より(岩田雪花/青木裕/集英社)

新エピソード、魔法少女EXPO編を今巻いっぱい使って完結まで。

魔法少女業界の技術展示会、魔法少女EXPO。

その基調講演の壇上デモンストレーションにおいて、デモ用の怪異がこれまでにない変異を起こし暴走。EXPO会場は魔法少女業界関係者たちがパニックを起こして避難する阿鼻叫喚の事態に。

大手も手を出さない混乱に、現場即応を旨とする株式会社マジルミエ・チームは怪異の駆除を決断。

未知の変異を見せる怪異に対し、前衛魔法少女の越谷とカナを支える、マジルミエのエンジニア・二子山の超スピードのスクラッチ魔法開発が功を奏するかに見えたその時…

もーなんつーか完全にSI(システム開発)業界のお仕事「なろう展開」を魔法少女に換骨奪胎した展開ですが、スポットが当たった凄腕エンジニアながら人見知りコミュ症の二子山が、即興でチームを作って人を使って覚醒する胸熱展開。

『株式会社マジルミエ』3巻より(岩田雪花/青木裕/集英社)

魔法少女業界が抱える大きな課題、重本社長とライバル大手社長の過去の因縁、株式会社マジルミエの特異性と、作品全体の縦軸が仄見えてきた3巻。

狂言回しこそ主人公ヒロインのカナですが、今んとこストーリーを引っ張ってんのは社長と、彼が抱える謎。

「そもそも怪異とはなんなのか」についてもまだあんま説明されてなくって、「やっつけたー!よかったー!」で済ましていい存在なのかイマイチわかんないですよね。

中身人間だったりしてね、とは思わないけど、展示会の壇上デモンストレーションで駆除されるための囚われの怪異の扱いとか、割りと残酷というか非人道的なな気もしますね。

巻末書き下ろしでミヤコ堂のカリスマビューティ魔法少女・葵さんのプライベート編。

『株式会社マジルミエ』3巻より(岩田雪花/青木裕/集英社)

ただの日常夜ふかしあるある漫画やんけw

可愛い。眼福。

 

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#ガールズ&パンツァー 樅の木と鉄の羽の魔女 下 評論(ネタバレ注意)

強豪・サンダース高校と練習試合で対峙する、全国大会にもエントリーできない弱小校と思われている伯爵高校。3号車「Ⅲ号N型」の車長を任されるのは、卒業していった「魔女先輩」から直々に車長に任命された小檜山 野咲。野咲は練習試合を戦いながら魔女先輩との思い出を回想する。

『ガールズ&パンツァー 樅の木と鉄の羽の魔女』下巻より(むらかわ みちお/才谷屋 龍/KADOKAWA)

よく製作委員会が許したなという、『ガルパン』のスピンオフ。比喩では無く魔女が登場、戦術をタロット占いで決め、敵の所在を魔力で検知、呪詛の演舞を取り入れた波状攻撃。伯爵高校には普通科、農業科と並んで「魔女科」が存在する。

『リボンの武者』とはまた違った意味で異質極まりないスピンオフ。

 

絵の美しさ、少女の可愛らしさでは『ガルパン』スピンオフ随一ですが、激烈に「戦車道」批判が直接的に語られ、ある種の『ガルパン』批評になっている作品。

『リボンの武者』の主人公たちは『ガルパン』「戦車道」に対するアウトサイダーでしたが、この作品は更にメタなアウトサイダーで、主人公の伯爵高校は公式戦に「出場できない」ではなく、あえて「出場しない」道を選び、勝利を目指し頂点を目指す「戦車道」の価値を否定しています。

『ガールズ&パンツァー 樅の木と鉄の羽の魔女』下巻より(むらかわ みちお/才谷屋 龍/KADOKAWA)

『ガルパン』において主人公たちをドライブする動機でもあるものの、「戦車道」の欺瞞、「戦車道連盟」の場当たりと不実は、『ガルパン』本編を真面目にみた視聴者なら多かれ少なかれ感じるところで本編中ですらたまに批判されますが、この作品では更に身も蓋もなく。

アニメ本編は基本的に実質「勝つことですべての難題が解決する」シナリオなんですけど、裏を返すと「負ければ何も得られない」「勝利至上主義」の最たるもので、およそ本来の「道」の理念にも「学生スポーツ」の理念にもそぐわないんですよね。

『ガールズ&パンツァー 樅の木と鉄の羽の魔女』下巻より(むらかわ みちお/才谷屋 龍/KADOKAWA)

このため他の高校と異なり、伯爵高校では「戦車道」は単位科目ではなく、部活動として扱われています。

 

作品を成立させるための「『戦車道』という嘘」というネタにマジレスすると

「『優勝したら廃校なし』てどんな教育でどんな『道』やねん

 ただの『勝てばよかろうなのだ』やないかい」

という。

 

で、この作品の主人公たち伯爵高校はこの勝利至上主義に陥った戦車道を、「道」「学生スポーツ」原理主義的に激烈に否定するアウトサイダーでありながら、まるで「反戦のジレンマ」のように戦車を駆り練習試合でサンダース高校と砲火を交えます。

『ガールズ&パンツァー 樅の木と鉄の羽の魔女』下巻より(むらかわ みちお/才谷屋 龍/KADOKAWA)

そこに既存の「戦車道」とは異なる価値を見出して。

『リボンの武者』と比較するとエンタメとしてエキサイティングな演出・カタルシスに恵まれた作品ではなく、一見すると難解な禅問答のような作品ですが、描かれたことは結構シンプルです。

読み終わってみると、『ガルパン』スピンオフである制約、ルーマニアの魔女をモチーフにした伯爵高校、作者の画力と嗜好、アウトサイダーのモチーフとしての「魔女」、とパズルのピースがピタッとハマってこれしかないように思えてしまいます。

『ガールズ&パンツァー 樅の木と鉄の羽の魔女』下巻より(むらかわ みちお/才谷屋 龍/KADOKAWA)

まるで、誰かが敷いたレールを一番速く走ることよりも個として自分の人生に自分でレールを敷く、彼女たちが戦車で(もしかしたら視聴者が『ガルパン』で)学んだことが、その道標であって欲しい、と願っているかのような。

 

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#望郷太郎 7巻 評論(ネタバレ注意)

「デカスロン」「へうげもの」の作者の現作。

突如地球を襲った大寒波に際し、財閥系商社・舞鶴グループの創業家7代目、舞鶴通商のイラク支社長・舞鶴太郎は、駐在するバスラで極秘に開発させていた冷凍睡眠シェルターに妻と息子を伴って避難。1〜2ヶ月の冷凍睡眠で大災害をやり過ごす心算だった。

太郎か目を覚ますと、隣で眠っていた妻も息子もミイラ化し、装置が示す数値はあれから500年が経過していることを指し示し、シェルターの外には廃墟と化したバスラの街並みが広がっていた。

『望郷太郎』7巻より(山田芳裕/講談社)

人が絶えたように見える世界を前に太郎は、自らの死に場所を娘を残してきた故郷・日本に定め、長い旅路を歩き始める。

旅路で出会う、わずかに生き残った人類たちは、過去の文明の遺産を再利用しながら、狩猟と採集で食いつなぐ原始に還った生活を営んでいた。

で始まるポストアポカリプスなサバイバルなロードムービーもの。

としてスタートした作品ですけど、もう既にジャンルが少し変わったというか本質が表れていて、実態は原始環境における経済もの、「金と人間」をテーマにした作品に。

『望郷太郎』7巻より(山田芳裕/講談社)

前巻から、周辺の村々を経済と軍事で支配する大国、マリョウ王国へ。

いま太郎たちがいるはずのハイラルはググると中国のモンゴル自治区で、

ja.wikipedia.org

googleマップで地図検索するとピンが立ってる位置です。

googleマップより

ユーラシア大陸でやることなんで日本なんてまだまだ遠くかと思ってたけど、もうけっこう近いんだな。

周辺地域を支配するマリョウ王国の支配者は、崩御した先代国王の後継・幼いフィッツ王を産んだ国母・ギョン。

『望郷太郎』7巻より(山田芳裕/講談社)

その正体は、太郎の旅仲間・パルの妹、かつてヤープト村で太郎とも面識のあったプリだった。

マリョウ王国では、国王を頂点にした階級社会でありながら、国王から独立した中央銀行、そして国王から独立した議会と選挙、間接民主主義が既に始まっていた…

ということで、旧知ながら国母となったプリを頼って、ヤープト村をマリョウ王国の対等な外交相手に認めさせることが目的…だったはずが、クエスト形式に仕事が増えて膨らんで、気がつけばマリョウ王国の議員に立候補しつつ、紙による金銭(マー)・紙幣の発行に着手することに。

『望郷太郎』7巻より(山田芳裕/講談社)

経済、政治、軍事、ときて宗教も絡んでくることに。

中世〜近代の政治・軍事・経済・科学の発展に対する宗教の影響は良かれ悪しかれ抜きにして語れませんが、現代日本に住んでいるとあんまり宗教を意識することは、その頃(中世〜近代)と比べると少なくなりました。

はずでした。

『望郷太郎』7巻より(山田芳裕/講談社)

が、時節柄、某事件の影響もあって現実の日本社会では「政治と宗教」が非常にホットな話題に。

原始から社会が成熟していく過程を太郎の旅程の重ねて描く作品で、過去巻で「宗教」をテーマにすると予告されていたとおり、予定どおりのプロットで連載されたんじゃないかなと思うんですが、時期を置いて発行された単行本化がどストライクで事件のタイミングにハマってしまいました。

たぶん「カルト宗教の悪弊」を指摘したり風刺したりするために始まったエピソードではないはずで、「作者の慧眼」というよりはもうちょっと歴史上の一般論としての、「テーマの普遍性が歩けば棒に当たってしまった」感はあります。

『望郷太郎』7巻より(山田芳裕/講談社)

順当にいけば、国母・ギョン(プリ)の支持基盤である宗教と紙幣通貨の経済力を背景に劣勢の選挙で逆転勝利、「宗教を味方につけて選挙で勝利」となるんだと思いますが、作者の本来描きたいことが、現実世論の風向きで変な影響を受けないと良いんですが。

 

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#メダリスト 6巻 評論(ネタバレ注意)

現役時代を不完全燃焼で終えた新米コーチ・明浦路 司(あけうらじ つかさ)(26歳♂)が、高い身体能力を持ち競技への情熱を燃やす小学5年生の少女・結束(ゆいづか) いのりと出会う、フィギュアスケートもの。

基本シリアス進行ながらこまめにコメディで空気を抜いてくれて、エモくて泣けるのと同時に読んでて楽しく、読みやすい。

6年生になり6級に。ノービスへの挑戦権を得たいのりは、全日本への道・ノービスA予選中部ブロック大会に出場。

『メダリスト』6巻(つるまいかだ/講談社)

幼いながらも、彼女たちは将来のオリンピック出場を嘱望されるエリート揃い。

いのりと司の最大の挑戦が始まる!

というところ。

主人公ヒロインのいのりが、くじで大会出場者15人中、14番目の出走を引いたこともあり、前巻はライバルたちが出走。

『メダリスト』6巻(つるまいかだ/講談社)

年代エリートたちのレベルの高い技術・戦略・駆け引きと、それらを支える情熱が描かれ、こう言ってはなんですけどMOBとは思えないエモーショナルなちょっとした群像劇に。

今巻、満を辞していのりが出走。

果たしていのりは、ノービスに棲まうエリートたちを上回り全日本大会への切符を手に入れられるのか。

ネタバレですけど、いのりが優勝するんですけど。

『メダリスト』6巻(つるまいかだ/講談社)

「明鏡止水」というのか。

前巻、ノービスのライバルたちの格闘漫画もかくやという、転んでも立ち上がり顔面を打って鼻血を出しながらも屈しない泥臭いガッツと闘争本能が描かれたのに比べて、まるでラスボスのように完璧な滑りを見せるいのり。

いのりの情熱・ガッツ・努力という泥臭い部分はこれまでの巻で散々描かれてきたこともあり、今巻に描かれたのは泥中に咲いた蓮の花のような滑走。

『メダリスト』6巻(つるまいかだ/講談社)

ノービス上がり立てのセンセーショナルなデビュー、読んでるこっちまでドヤ感すげえ。

司コーチのエリートとは言えない異色の経歴が図ったようにハマった描写、解説役の名解説、大会後の勝者の風景・敗者たちの無常の風景。

フィギュアスケートは観客席だけでなく、ライバルの各クラブ・選手にセットでついてくるコーチたちが自然と解説役に回れる構造、盛り上げる上で強いですね。

新キャラの個性、既存キャラの深掘り、やー、みんなカッコよくて面白いね。

次巻は、今回シードで不在だった世代最強の狼嵜光との全日本での対決に向けた特訓ですかね。

『メダリスト』6巻(つるまいかだ/講談社)

やー、次巻も待ち遠しいわ。

 

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#ラジエーションハウス 13巻 評論(ネタバレ注意)

幼い頃にそれぞれお医者さんとレントゲンの人になって患者さんたちを助ける約束をした女の子と男の子。

男の子は約束を果たしさらに研鑽を積み天才的な技量を持つ放射線技師となり、果たして女医になっていた女の子が務める病院に遂に採用された。

『ラジエーションハウス』13巻より(モリタイシ/集英社)

が、女の子は約束どころか、男の子のことさえ憶えていなかった…男の子は平凡な技師を装いながら、女の子を陰ながら支えるのだった…

というボーイ・ミーツ・ガール・アゲインなラブコメ医療ドラマ。「今日のあすかショー」のモリタイシの現作、原作・監修は別の人。

放射線医と放射線技師の両方が監修に。

『ラジエーションハウス』13巻より(モリタイシ/集英社)

脇役というか、病院の同僚たちにスポットを当てる周期に入ってまして、今回はおっさん主任技師の現在と過去にスポットを当てる話。

あのー、いかにもありそうなイメージというか軽く白い巨塔展開なんですが、白い巨塔展開そのものとは別の切り口でグッとくるオチをつけて、

『ラジエーションハウス』13巻より(モリタイシ/集英社)

医療の矛盾と向き合いながら奮闘する現場の面々と、わずかな救い。

医療ドラマとして感情面での満足度が高いエピソード。

なんですが、医療の仕組みの矛盾というか、現役の医師・技師の監修がついてさえ(ついたからこそ?)、

『ラジエーションハウス』13巻より(モリタイシ/集英社)

こういう描かれ方をされ、読んでるこっちも「いかにもありそうな話」と感じるというのは割りとアレですね。根が深いよね。

医療業界の体質というよりは、

「各パーツ個別に最善・最適を目指した結果、全体や元来の目的に対して本末転倒な事態が起こる」

というのは人間の集まり・大きな組織で起こりがちなことで、自分も医療関係者に「清廉潔白な白衣の天使たれ」なんて偉そうに言える立場では全然ないです。

『ラジエーションハウス』13巻より(モリタイシ/集英社)

どの業界だってヤな奴も居れば、力関係による不当な圧力もあれば、保身からくる「事なかれ主義」もあるって話。

人間ってやーね。

今回は一旦、明らかにされるべきは明らかにされたけど、その理由は正義が行われたからでもなければ、人や仕組みが根本的に改善が為されたからでもなかった、という苦い無力感や諦観が、やけに生々しいな、と。

その代わり、今回はおっさん主任技師よりむしろ鏑木部長の好感度が少し上がりましたねw いや、これまでの好感度から言ったら爆上げと言っていいなw

人間っていーね。

 

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#デストロ016 2巻 評論(ドネタバレ注意)

なんかあらゆる表記が『デストロ』の「0162巻」みたいになってワロタ。1,000巻行く気満々です、みたいなw

女子高生・沙紀は、元・海上自衛隊高官・仙崎のオーダーで殺し屋を殺す殺し屋だった。

たくさん殺し屋がやってくるので今日も奴らをぶっ殺すゾ!

あらすじ終わり。

『ヨルムンガンド』の作者が、日本を舞台に「女子高生殺し屋たちのバトルロイヤル」を描いた『デストロ246』全7巻。女子高生なのに最強殺し屋! すごい頭悪そう! AQM頭悪そうな漫画大好き!!

の前日譚。

『デストロ016』2巻より(高橋慶太郎/小学館)

いや人生ハードモードすぎだろソレ。

『246』でヒロインたちより年長の大人、かつ最強の殺し屋として君臨した「沙紀」の女子高生時代のお話。

女子高生時代のお話なのに殺し屋です〜! 女子高生なのに最強殺し屋! すごい頭悪そう! AQM頭悪そうな漫画大好き!!

というハードボイルド・殺し屋アクション。

 

「スターシステム」と「クロスオーバー」と言う似て非なる概念の言葉があります。

自分は

スターシステム:
 漫画のキャラが役者のように複数の作品に「出演」していること
 外見・人格は共通しているが相互の作品間は基本的に無影響、無関係
 手塚治虫をルーツとして紹介されることが多い(ロック、ランプなど)
 例:ログナー(『FSS』『FFC』)
   安田秘書(新谷かおる作品)
   内海(『パトレイバー』)、柳(『ジェントル萬』)
  ※もっと軽い、一コマだけ登場の「カメオ出演」は多数

クロスオーバー:
 複数の作品の世界観が合流・共通化されて登場キャラ同士が協力・敵対などをすること
 キャラの外見・人格が共通する他、記憶・経歴なども世界観に付随して共通
 アメコミのオールスター作品をルーツとして紹介されることが多い(『アベンジャーズ』など)
 例:『ドラゴンボール』に『Dr.スランプ アラレちゃん』のアラレちゃんやペンギン村が登場
   『名探偵コナンvsルパン三世』他、『コナン』作品多数

ぐらいの理解です。

ググったら元々読者登録していたこちらのブログがヒットして、事例を細かく集めていて勉強になりました。

m-dojo.hatenadiary.com

最近は「クロスオーバー」に近い、ソシャゲの『コラボ』もよく目にしますね。

 

(ここからネタバレ)

『デストロ016』2巻より(高橋慶太郎/小学館)

この漫画『デストロ016』は、同じ作者の漫画『デストロ246』の前日譚として公式に喧伝されて始まったので、本来は「スターシステム」にも「クロスオーバー」にも当てはまらない作品かな、と思います。

同じ世界観の「10年ぐらい前」を舞台にしているので、(「前日譚」「後日談」含めて)「続編もの」が世界観やキャラが一部共通するのは当たり前だからです。

『デストロ016』2巻より(高橋慶太郎/小学館)

なので『デストロ246』に登場した紅雪や万両苺が幼い姿で登場することは、ニヤリとさせる読者サービスではあっても、まあ当たり前というか不思議なことではありません。

さて、ここからドネタバレなんですけど、この巻の面白さを語るのに、この話をしないわけにはいきません。

(ここからドネタバレ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて。

『デストロ246』に登場した紅雪や万両苺が幼い姿で登場することは、ニヤリとさせる読者サービスではあっても、まあ当たり前というか不思議なことではありません。

なんですけど、

『デストロ016』2巻より(高橋慶太郎/小学館)

今巻は『デストロ』と関係なかったはずの過去作『ヨルムンガンド』のキャスパーとチェキまでが出てきまして、「やりやがったなこの野郎www」と言う感じ。

出てきただけなら「スターシステム」か「クロスオーバー」かはまだ判然としません。「手頃な武器商人」として置いただけかもしんないし。

「スターシステム」にせよ「クロスオーバー」にせよ、読者サービスとしてはとても楽しい意外な登場なんですが、「別作品の人気キャラの再利用」はある意味「過去の貯金を切り崩して面白さをブーストしている」面もあって、あんま乱発するとかえって興醒めしてしまうとこもありますね。

あるいは「読者人気の貯金」まかせに作品の主役を乗っ取っちゃったりとかね。

なので使いどころと匙加減がなかなか難しいとこはあり、故に「スターシステム」未満の、「カメオ出演」ぐらいに留める作品が多いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ここからウルトラネタバレ)

なんですけど。

更に『ヨルムンガンド』はラストで世界観がガラッと変わってしまう特殊な終わり方をした作品だったので、「スターシステム」に留まらずガッツリ「クロスオーバー」だと割りと世界が大変なことになってしまうはずなんですけど、

『デストロ016』2巻より(高橋慶太郎/小学館)

「お気に入りの少年兵が〜」っつっちゃってるよオイwww あの最終回の直後とのクロスオーバーじゃねえかwww

ということで、もともと面白かった漫画が余計に目が離せなくなってまいりました。

前述のとおり、自分はこの手のクロスオーバーは「過去の貯金を切り崩して面白さをブーストしている」と思うタチですが、今のところ、この貯金の使い方と匙加減は大好物です。

これ落とし所は「ヨナは帰ったがココが世界をホニャララしなかった(できなかった)世界線」なんかな? この10年後ぐらいの『デストロ246』で飛行機飛んでんですよね。

 

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#ゴールデンカムイ 31巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

「最後の表紙、杉元一人なんだな」と思って過去巻の表紙を見たら、基本的に表紙はずっと1人だったんですね。

謎の唯一の例外が18巻。

あんま深い意味はなさそう。

 

明治40年前後の北海道が舞台。日露戦争の二〇三高地で超人的な活躍をして「不死身の杉元」と呼ばれたけど上官半殺しにしてクビになった元軍人とアイヌの少女・アシリパのコンビを主人公に、網走監獄の囚人たちの刺青に刻まれたアイヌの隠し大金塊の地図を巡る血生臭い冒険もの。

金塊を争う数多くのキャラクターによる数多くの勢力が徐々に淘汰・集約されていき、最終的に「アシリパ派vs鶴見中尉派」に二極化。

金塊、そして鍵となる「権利書」が隠された函館・五稜郭の戦いを経て、生き残ったすべての主要キャラを乗せて、史上「土方歳三 最期の地」とされる「一本木関門」跡へ爆走する暴走列車。

「『ゴールデンカムイ』と言えば俺を忘れちゃ困るぜ!」とばかりに、列車の中なのにヒグマも登場。

『ゴールデンカムイ』31巻より(野田サトル/集英社)

ファイナルファイトでも列車の中にヒグマいねえwww

 

8年間314話に渡ってヤンジャンの看板作品として連載、現時点で四期に渡ってTVアニメ化、アイヌの隠し財宝を巡って本当にたくさんのキャラが人生を背負って争い死んでいった冒険大活劇の最終巻。

前巻に続き、濃いキャラたちが生き死にの際で生命のバトンをリレーするような展開。

『ゴールデンカムイ』31巻より(野田サトル/集英社)

今巻のこの人、ハガー市長みたいでしたけど、白石の言うとおり最期までカッコ良かったな。

 

濃くて魅力的なキャラ揃いのこの作品の中で自分がどのキャラが一番好きと言うか、推しと言うか、アレだったんだろうと考えると、やっぱ土方歳三でしたわ。

史実の人物の中で最も出番が多かったこのキャラの厄介なのは、「『ゴールデンカムイ』ファン以外にも土方歳三ファンが多数いる」ところで、

「どれどれ、この作品では土方歳三をどう扱うやら、お手並拝見だのう」

という謎の親方たちがたくさん存在します。

「厄介ファンの多いフリー素材」みたいな人。精子探偵とかやらせちゃダメ。

幕末を生き延びて老人になった土方歳三が更に生き残るなんて最初から期待していませんでしたが、「カッコ良く死なせないと許さねえぞ」という圧が、実は主人公たちより強かったキャラなんじゃないかなと。

『ゴールデンカムイ』31巻より(野田サトル/集英社)

どうでしたかね。

鹿児島出身の自分は示現流にはそれなりに親近感ありますが、それでも、狭い列車内の通路における示現流の蜻蛉の構えからの斬撃と、新撰組の平刺突の対峙…(私主観の)キャラとしての格…と考えると色々アレなところがあったりするんですけど、それでも、満足でした。

最期の地を一本木に持ってったこじつけ力、兼定の扱い方にも唸るものがありました。

この作者の解釈と描写、「好きな土方歳三」像がまた一つ増えてしまった。

 

80年代以降、戦記ものフィクションで戦う男主人公の後ろで平和的・思想的な指導者になるヒロイン、という役割分担は大変増えた(『スパロボ』やってるとたくさん出てきます)んですが、

『ゴールデンカムイ』31巻より(野田サトル/集英社)

仁王像のような表情のアシリパが初めて手を汚した瞬間の、杉元のなんとも言えない表情、良かった。

「手を汚させてしまった」と同時に、最終巻にしてようやく本当の相棒を手に入れた安堵の表情、と自分は読みましたが、どうだったでしょうか。

 

さて、これだけキャラが死んだ挙句の最後を爆笑で全部持ってった連載ラストも凄かったですけど、単行本には修正のためだけでなく、お楽しみのエピローグの加筆がありました。

『ゴールデンカムイ』31巻より(野田サトル/集英社)

連載完結から単行本の最終巻まで頭が狂ったような過密スケジュールでしたけど、

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エピローグ、作者これ、早く読者に読ませたかったんだろうなーという、匂わせて想像させる粋な歴史フィクション。

早い者勝ちで感想言わせていただくと、

「まっさーかー!」と思いました。

連載お疲れ様でした、おかげでこの8年間楽しませてもらってQOLが少し上がりました。

次回作も楽しみに…

というより、マジでしばらく休んでくださいw

 

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#新選組といっしょ 1巻 評論(ネタバレ注意)

新撰組をテーマにしたギャグコメディ。

自堕落ながら自意識過剰で構ってちゃんの近藤勇を四代目の道場主として仰ぐ、

『新選組といっしょ』1巻より(大羽快/双葉社)

天然理心流剣術道場「試衛館」。

死んでも家賃を払いたくない無職たちが門下生・食客として居候していた。

幕府の剣術師範職を即日クビになりやる気を無くし「道場を畳むからお前ら家賃払え」と言い出した近藤に、

『新選組といっしょ』1巻より(大羽快/双葉社)

死んでも家賃を払いたくない一同は、やる気を出させるべく「そうだ、他人の金で京都に旅行に行こう!」と提案する…

という、新撰組ガチ勢から怒られそうな新撰組ギャグコメディの新作。

先月、次月の新刊チェックした際に、内容知らずにタイトルで「買って読もう」と決めていた作品。

『新選組といっしょ』1巻より(大羽快/双葉社)

土方歳三が出てた『ゴールデンカムイ』が終わってちょっと新撰組成分が不足したタイミングだったので。

ギャグコメだろうとは思ってたんですけど、思ってたのとだいぶ違うw

文献や伝承から類推される新撰組隊士を、だいぶダメな方に解釈した作品。

『新選組といっしょ』1巻より(大羽快/双葉社)

ネタによってムラがあって面白くないネタは本当に面白くないんですが、当たると濃くてくだらなすぎるネタを濃い絵で勢いで強引に押し切る謎のパンチ力を秘めていますという感じ。

いや豪鬼やんお前。もしくは『ベルセルク』に出てた人やん。

『新選組といっしょ』1巻より(大羽快/双葉社)

新撰組ガチ勢に薦めたらキレられそうだけど新撰組初心者が読むにはハードルが高すぎるという、いったい誰向けのつもりで描かれているのか謎な新撰組漫画。

 

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#カナカナ 4巻 評論(ネタバレ注意)

『SPY×FAMILY』の作者が今巻の紙書籍の帯の推薦文を書いただかだそうで、そういえば『テレパス少女の養父になる主人公』とモチーフがダダカブリですね。

5歳ぐらいの少女・カナカは他人の心が読めるテレパス持ちで幼少期以来、『家族八景』の七瀬のようにその能力に苦しんできた。

唯一の理解者だった祖母が亡くなり、親戚をたらい回しにされた挙句にその能力を金儲けに利用しようとする男に引き取られかけたカナカは裸足で逃げ出し、公園で元ヤンの経歴と恐ろしい外見に反して単純バカだが裏表のない綺麗な心を持った男・マサと遭遇する。

『カナカナ』4巻より(西森博之/小学館)

マサもまたカナカの遠縁で、またヤンキー体質で頼られたら捨て置けない性格だったこと、カナカ自身が強く望んだことから、カナカはマサに引き取られ、マサが営む居酒屋で暮らすことになった…

という、西森博之の現作は「テレパス少女もの」+「血の繋がらない父娘もの」。

コメディ進行の日常回を中心に、散文的というか行き当たりばったりに見える展開ですけど、作劇のプロセスがなかなか読めない作者で、過去作でも行き当たりばったりのようでいて後になって結構計算高く伏線を張っていたことがわかることが多いので、先々の予想がつきません。

『カナカナ』4巻より(西森博之/小学館)

近作では散文的な描写の積み重ねによって独特な情緒を込める作風が特徴で、いつどこでどんな終わり方をするのか全然予想がつかない、メタなスリルがある作家。

NHKでドラマ化、もうされたんでしたっけ?

最近は西森作品の映像化ラッシュでファンとしては(観てないけど)嬉しい限りですけど、どしたんだろね。「未映像化の鉱脈」として認知されたんかしら。

それにしても新作が3巻時点でNHKで実写ドラマ化ってそんなことある?

『カナカナ』4巻より(西森博之/小学館)

ツンデレはデレが観測されて初めてツンデレ足り得る。

ツンデレというのはデレが観測されなかったらただのツンツンした人なんですが、店の常連でマサに想いを寄せる高校時代の同級生の沙和がそういう人です。

テレパスのカナカだけが沙和のデレを観測しているという、割りとドン詰まりな片想いなんですけど、

『カナカナ』4巻より(西森博之/小学館)

可愛いなこの人w

ヤンキー・不良漫画でブレイクしたこともあって、高校生主人公のコメディ基調ながらも「敵」が登場してバイオレンスの果てに赦す優しさ、みたいな作品が続いたんですけど、近作になるにつれ抑制的に、特に今作は30年ぶりの成人の主人公ということもあってか、バイオレンス要素抑えめ。

カナカで金儲けしようとする悪い親戚とかもいたんですけど今巻は登場せず、純然たる日常ものに。

夏を守る会の続き、カナカ保育園に行くことを決意するの巻、カナカvs初めての台風、

『カナカナ』4巻より(西森博之/小学館)

カナカが心配なあまりメチャクチャなことを言い出す親戚のおばちゃん。ひでえw

 

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#よふかしのうた 12巻 評論(ネタバレ注意)

アニメ始まりましたね。

基本的に漫画の方が好きなこともあって、自分は普段からそんなにアニメ見ないし原作漫画読んじゃった作品もほとんど観ないんですけど、この作品は観よう。

少年・夜守コウ(14)はふとしたきっかけで「上手くやれていた中学生活」が嫌になり不登校に。ある夜、夜の散歩で街を放浪していると「夜と不眠」に一家言持つ謎の美少女・ナズナに声をかけられ、血を吸われる。彼女は吸血鬼だった。

夜に生きる眷属になりたいと願っても吸血鬼化しないコウ。彼女が照れながら語る「吸血鬼になれる条件」は「吸血鬼に恋して血を吸われること」だった。

『よふかしのうた』12巻より(コトヤマ/小学館)

「だがしかし」作者の吸血鬼ファンタジーな青春ラブコメ。作品全体を通じてアンニュイとそのアンニュイからの解放が夜を舞台に描かれる。

探偵さんを中心に回ったハロウィン編が一応決着し、話の軸がいよいよ吸血鬼・星見キクに…というところで、表紙の二人の新キャラ登場。表紙の構図はちょっとミスリード誘ってるところありますねw

『よふかしのうた』12巻より(コトヤマ/小学館)

キクとマヒルを深掘りするタイミングで新キャラ登場っていかにも話がとっ散らかりそうで、事実キクとマヒルは出番を奪われてほとんど出てこないんですが、二人の新キャラはすんなり話に合流して馴染み、キクとマヒルの深掘りも進みました。変なの。

キクを除く、ニコ、カブラ、ハツカ、ミドリ、セリとナズナの3巻以来の吸血鬼コミュニティはどこか呑気というか、種の存続に関わるシリアスな事態を「恋バナだったらセーフ」にしちゃう牧歌的なところがあって、それがこの作品の吸血鬼ものの「味」でした。

『よふかしのうた』12巻より(コトヤマ/小学館)

シリアスなテーマを纏って大暴れした「吸血鬼もの」らしいキャラの探偵さんがむしろ異質だったんですけど、キク、そして今巻登場の新キャラ二人を見るとむしろ異質だったのはやっぱり、ニコをリーダー(?)とするコミュニティの方だったんだなー、と。

あとがきによると「ラストは決めているけど途中の今の展開は決めてなかった」とのことで、作品で描きたい本筋ではないっぽいですけど。

種の存続を脅かす「問題児」を粛清しようというシリアスな展開は、ある意味「吸血鬼もの」のあるあるなんですけど、ナズナやニコの呑気なコミュニティとの対比が面白くなりそう。

新キャラ二人も、バトル展開をこなしつつも、楽しいいいキャラしてるしね。

『よふかしのうた』12巻より(コトヤマ/小学館)

予定外と言いつつ、中途半端な存在でありながら吸血鬼コミュニティのドミネーターの資質を見せはじめているコウとこの作品を、作者が最後どうしたいのか、ヒントが漏れ出しているようにも思えて、興味深い。

 

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#それでも歩は寄せてくる 12巻 評論(ネタバレ注意)

2人しかいない将棋部の、おさげデコ部長・八乙女うるし(高2♀)と、好き丸出しのくせに頑として認めない無表情部員・田中歩(高1♂)の、告白前の高校生男女が好き丸出しで部室で将棋指しながら甘酸っぱくイチャイチャしてる、可愛いは正義のショートラブコメ。

『それでも歩は寄せてくる』12巻より(山本崇一朗/講談社)

歩は一応、将棋でうるしに勝ったら告白しようと思ってるみたいです。

日常ラブコメですけど時間が流れる系で、うるしが3年生に、歩が2年生に。

仲間が増えた将棋部の夏、一冊丸々、海辺のコテージで大会に向けた夏合宿。の後半から。

夏だ!海だ!花火だ!

『それでも歩は寄せてくる』12巻より(山本崇一朗/講談社)

チューした!チューしたでオイ!

作者の出世作で今も連載継続中の『からかい上手の高木さん』は「サザエさん時空」というか、時制がループして時間が流れない(主人公たちが歳を取らない)んですけど、前述のとおりこの『それでも歩は寄せてくる』は時間が流れる系です。

『それでも歩は寄せてくる』12巻より(山本崇一朗/講談社)

「ショートショートの日常ものだな」と思って始まった作品も、気がつけば12巻に至ってヒロインのうるしも3年生の夏休み、受験生に。

そう遠くなく終わりそうな気配。

『それでも歩は寄せてくる』12巻より(山本崇一朗/講談社)

「終わらないラブコメ」も良いですけど、「いつか終わるラブコメ」はまた違う意味で良いです。

そういえば、同じ高校でヒロインの方が年上(先輩)のラブコメって少なくないと思いますが、ヒロインが高校卒業して女子大生と男子高校生の組み合わせになっても話が続いたラブコメってなんかあったっけ? と思い返すと、『お茶にごす。』ぐらいしか思い浮かばないですね。あれも「話が続いた」とは言い難いですけど。

『それでも歩は寄せてくる』12巻より(山本崇一朗/講談社)

凛ちゃんどうするんだろうってのに対して「どうもしないんじゃないか」という気もしていて、ラブコメとして奇をてらってるわけでもないのに、見たことのない最終回になりそうな予感もしますね。

 

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#海が走るエンドロール 3巻 評論(ネタバレ注意)

65歳にして連れ添った夫を亡くした、うみ子。

夫とデートで行った映画館の記憶に触発されて20年ぐらいぶりに映画館を訪れる。上映中に昔からの癖で客席を振り返って見回すと、先ほどロビーで肩が当たって挨拶した美しい若者と目が合ってしまう。その若者は名を「海(かい)」という実は男性で、話すうちにうみ子に「あなたは映画を作る側では?」と指摘する。

海の言葉で「映画を撮りたい」気持ちに火がついたうみ子は、海が学ぶ美大の映像科を受験して入学。かくして齢65のうみ子の、映画人生が始まった…

『海が走るエンドロール』3巻より(たらちねジョン/秋田書店)

という、老境のご婦人を主人公に置いた青春もの。

今巻で気づいたけど、うみ子はちょうど自分の両親と同じ団塊世代かう。うちの母が今から映画監督を目指すようなものか、と実感しました。

主人公に老境のご婦人を置いていて必ずしも読者層ターゲットが少女なのかどうかはわからないものの、ヒロインが「王子」と「自分の運命」とに同時に運命的・衝動的に出会う導入、多用されるヒロインのモノローグ、ガワは違っても骨格自体は純然たる少女漫画であるように、自分には見えます。

「『65歳で映画監督を志して美大入学』で起こりそうなこと」を奇を衒わずに丁寧に描写。

『海が走るエンドロール』3巻より(たらちねジョン/秋田書店)

 

高尚そうなテーマ、俗っぽいキャラ萌え、擬似恋愛的にも見える人間関係を織り交ぜつつ、地に足のついた丁寧な展開と描写で、いろんな切り口で楽しめそうな作品。

今巻は、うみ子の大学入学から半年。海に注目するインフルエンサーでカリスマYoutuberのsoraが入学。

商業エンタメの世界で成功することにこだわるsoraの価値観は、海を、そしてうみ子を揺さぶる。

教授の勧めで映画祭への出展を目指し、また教授の勧めで映像制作のバイトを始めるうみ子。

『海が走るエンドロール』3巻より(たらちねジョン/秋田書店)

そして海は、soraとの絡みなどから芸能業界から注目され芸能事務所に所属。俳優の立場から一足早く映画制作の現場に潜り込むこととなった…

映画撮るの、お金かかるって言うしねえ…制作の現場と人脈を知ってる強みもあって、俳優上がりで監督として映画を撮る人、珍しくないというか黄金ルートのような気もしますね。

うみ子ですが、なんだかんだ言って教授やsoraなど、審美眼と発言力のあるキーマンに才能が認められつつあり、また「65歳から映画監督を志す」という物語性のアドバンテージも浮上しつつある描写がされます。

『海が走るエンドロール』3巻より(たらちねジョン/秋田書店)

コンプレックスというか、ヒロインの内省的なモノローグが多いんですけど、現にこの漫画作品が話題になっているように「65歳から映画監督を志す」という物語には実際に話題性というか、それ自体にコンテンツ性がありますから、いざ映画制作の資金集めの段になったら、ルックスに優れる海くん以上に有利に働きそうな気もします。

soraは実際的で手段を選ばない叩き上げ筋で、芸術家肌で内向的な主人公たちの心をざわつかせる価値観ブレイカーではありますけど、

『海が走るエンドロール』3巻より(たらちねジョン/秋田書店)

ズバズバ言いつつデレる側面もあって、ツンデレならぬズバデレ系とでも言うか、あとあと我々読者も「コイツがいてよかった」と思うキーマンになっていきそうな良いキャラですね。

クリエイターものとしては作中作、主人公たちが制作するコンテンツがあまり誌面に露出しない漫画作品で、「エンタメ路線で楽しみや癒しを与える作品を創りたい」とするうみ子はまだしも、求道的でアート肌の海くんがこれだけ情熱を捧げて一体どんな作品を創りたいのか、というところにまだデッカい穴が空いたままの印象はあります。

うみ子を主人公にした、この漫画作品そのものみたいな映画を撮るんかな?

 

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#映像研には手を出すな! 7巻 評論(ネタバレ注意)

人見知りで空想癖な妄想屋で監督肌のタヌキ顔のチビ・朝倉。

銭ゲバ風なリアリストなネゴシエーターでプロデューサー肌のノッポ・金森。

と、

財閥令嬢で役者の両親の娘で有名読モでキャラデザ・動画肌の美人・水崎。

の、高校入学でのガール&ガール・ミーツ・ガールで立ち上げた映像研を舞台にしたクリエイター青春グラフィティ。

『映像研には手を出すな!』7巻より(大童澄瞳/小学館)

彼女たちが次回作に選んだのは、やり残しをたくさん残したあの作品の続きだった。

初の声優によるアフレコを導入、しかし意外なところから脚本へのダメ出しが入る…

オタクとクリエイターを分かつもの、あるいはアマチュアとプロを分かつもの。

朝倉の、手法というより手癖は、小説家志望が語るとおり一般論として創作の不正解なわけではないけど、

『映像研には手を出すな!』7巻より(大童澄瞳/小学館)

今の彼女たちの志向的には小説家志望が語るとおり不正解なんだろうと思います。

消費者の嗜好が多様化したり、「良き消費者としての自己実現のためのおもちゃ」になったり、という意味では、むしろ難解である方がメジャー受けが良いケースも少なくないですけど、それは「守破離」の「離」であろうと自分も思います。

『映像研には手を出すな!』7巻より(大童澄瞳/小学館)

「好きなものを好きなように創りたいだけ」のはずだった彼女たちが、「もっと多くの人に観てほしい」「同世代のすごい奴らに勝ちたい」と、自然とメジャー志向に。

壁にぶつかり傷つくことをわかりやすく恐れながらも、殻を破って壁をよじ登ってぶち壊していく過程の高揚感。

『映像研には手を出すな!』7巻より(大童澄瞳/小学館)

『スラムダンク』みたいw

「内輪の趣味の世界」から「外の世界」に出て勝負するのは怖いんですけど、出て勝負しないと見えない景色ってあるんですよね。

才能、努力、情熱、仲間、高揚、興奮、若さ。

彼女たちのことが我が事のように誇らしいのと同時に、妬ましくってしょうがない。

『映像研には手を出すな!』7巻より(大童澄瞳/小学館)

ギャフンと言わしたれ。

あと単発ながら今巻1話目、代打のモデルの仕事の現場を金森が乗っ取っちゃう話も、彼女の異能ぶりが垣間見えてすんげー面白い。

 

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FSS (NT2022年8月号 第18巻相当) 評論(ネタバレ注意)

ファイブスター物語、連続掲載継続中。

「第6話 時の詩女 アクト5-1 緋色の雫 Both3069」。

扉絵コミで13ページ。

  

他の号はこちらから。

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  • (余談)
  • (扉絵)
  • (本編)
  • (所感)
    • 事件
    • ペース
    • 「3年前」
    • マドラ
    • ジィッドとアーリィ
    • 国家の枠のない騎士団
    • バルバロッサ王とティルバー女王
    • オキストロの言い訳
    • GTMラミアス・Isi〜ステンノ
    • ナイアス
    • ノンナ・ストラウス
    •  クバルカン法国

以下、宣伝と余談のあとにネタバレ情報を含んで論評しますので閲覧ご注意。

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#超可動ガールズ 6巻 評論(ネタバレ注意)

部屋に飾ってるSFアニメのヒロインフィギュアたちが原作の人格と記憶を持って動き出す、コメディ4コマの名手OYSTERのちょっとだけエッチな非4コマ日常ギャグラブコメ「超可動ガール1/6」の続編。特に脈絡もなく可愛い女の子たちのおっぱいが見れる。

『超可動ガールズ』6巻より(OYSTER/双葉社)

長く「ケロロ軍曹」背景アシを務めてるだけあって空気感もよく似てる。

本領じゃない非4コマの一度終わった作品がリブートしつつアニメ化、OYSTER先生は前世でどんな徳を積んだんだという奇跡のような展開。

格ゲーキャラ、RPGのヒロイン、戦車擬人化キャラ、SFアニメのヒロイン(メインヒロイン)のそれぞれ1/6フィギュアが魂を持ち、可動し、オタクの部屋に住み着いている、という作品。

『超可動ガールズ』6巻より(OYSTER/双葉社)

各キャラ登場時はいろいろすったもんだはあれど、いまでは並んで正座してアニメを見て盛り上がったりして過ごしている日常もの要素も。

今巻表紙が珍しく1/6ガールズじゃなく人間で、

『超可動ガールズ』6巻より(OYSTER/双葉社)

内容も表紙左のほぼ新キャラの外国人女性・クリ子さんの出番が多かった。

コメディ回で楽しく可愛い小ネタをやりつつ、シリーズエピソードでは主人公たちが好きだった作中作(架空のアニメ作品)の世界に闖入してビターエンドに介入する、というお話が角度を変えて繰り返されます。

『超可動ガールズ』6巻より(OYSTER/双葉社)

愛したキャラたちにせめて二次創作的な世界でハッピーエンドを迎えてほしい、というオタク心理というか、ファン心理。

作中でも「自己満足」と言及されていますけど、その欲求やカタルシスが真に迫っていて、架空の作中作の存在が妙に生々しいのは、作者の感情が「生」なんだろうな、と思ったり。

『超可動ガールズ』6巻より(OYSTER/双葉社)

なんとかしてやりたかった作品、いっぱいあるもんな。

 

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