#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#ルパン三世 異世界の姫君 3巻 評論(ネタバレ注意)

至宝「存在しない国の金貨」を盗みに入ったルパン三世一味は、盗みは首尾よく成功したものの、ICPO銭形警部の追跡を振り切るためにバラけたところで、それぞれが潜った扉を通じて中世ファンタジー異世界へ。

アイソプミア王国。

『ルパン三世 異世界の姫君』3巻より(モンキー・パンチ/エム・ピー・ワークス/内々けやき/佐伯庸介/秋田書店)

人間とエルフとドワーフの3つの種族による協定で成り立つ連合王国。しかし王宮は怪しげな魔女に壟断され、王国中を陰謀の影が覆っていた。

次元はドワーフの里で、五右衛門はエルフの森で、それぞれモンスターを退治するなどしつつ現地に馴染みつつ仲間との合流を目指し、亡命同然に家出し連れ戻される途中の王女を行きがかり上の都合で誘拐したルパンは、彼女の依頼で国盗りを目指すこととなった。

『ルパン三世 異世界の姫君』3巻より(モンキー・パンチ/エム・ピー・ワークス/内々けやき/佐伯庸介/秋田書店)

という、ルパン三世のお馴染みの一味が銭形ごと異世界ファンタジー世界に転移してしまうコミカライズ。

ラノベ・なろうっぽいですけど、登場するキーワード的に「ドリフターズ」の方が読み味近い感じです。

バラバラに転移したルパン・次元・五右衛門がそれぞれ旅の伴侶となったヒロイン(王女・エルフ美少女・ドワーフ美少女)を伴って合流、銭形警部もやってきて騎士団と共にルパンを追い、

『ルパン三世 異世界の姫君』3巻より(モンキー・パンチ/エム・ピー・ワークス/内々けやき/佐伯庸介/秋田書店)

不二子は悪い魔法使いが牛耳る王宮に潜入して虎視眈々と漁夫の利を狙う、といつもの体制に。

物語のキーになりヒロインでもある王女が体制側である魔女に攫われ、ルパン一味が王女の奪還に王都に乗り込むぞ、という手前から。

『ルパン三世 異世界の姫君』3巻より(モンキー・パンチ/エム・ピー・ワークス/内々けやき/佐伯庸介/秋田書店)

ルパン&次元のダンジョン探索、タバコ&日本食の製作、銭形警部の魔物退治など、本筋というより幕間+情報回ですが、(ファンタジー含めた)世界観設定・(異世界と転移者の)歴史説明・勢力図分析と、「意外と」と言ったら失礼ですけど、「その細かい設定、伏線として今後の話に活かせるの?」と心配になるぐらい、緻密に情報を積み重ねていくスタイル。

『ルパン三世』の頭脳戦要素とアクション要素の両方をちゃんと再現してんな、という感じ。

『ルパン三世 異世界の姫君』3巻より(モンキー・パンチ/エム・ピー・ワークス/内々けやき/佐伯庸介/秋田書店)

今巻はぶっちゃけ情報収集と敵味方の顔見せで終わりますけど、内容濃くて読み応えありました。

次巻読む際は事前に読み返しとかないと、間が空いたら細かい情報要素、忘れてそうだなコレw

 

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#転スラ日記 転生したらスライムだった件 6巻 評論(ネタバレ注意)

ラノベ・なろう系で隆盛する異世界転生ものでも最近最もヒットしている作品のひとつ「転スラ」の出来物の日常4コマスピンオフ。

『転スラ日記 転生したらスライムだった件』6巻より(伏瀬/柴/講談社)

自分は転スラは嗜む程度でどハマりしてるほどではなく、このスピンオフ4コマ「転スラ日記」に至っては完全に作者の柴先生目当て。

「家康に過ぎたるもの二つあり、唐の頭(兜の飾り物)に本多平八(忠勝)」

という言葉に倣うなら

「転スラに過ぎたるもの三つあり、アニメ人気にコミカライズのヒットに柴先生の転スラ日記」

という感じ。

『転スラ日記 転生したらスライムだった件』6巻より(伏瀬/柴/講談社)

ただの読者なんで軋轢を恐れずに言うと、本編コミカライズより絵も上手い。

6巻ということで、話もだいぶ進んで、主人公がテンペストを留守にしてイングラシアの教師編、の終盤から。

本編の最新刊とは時系列でだいぶ水を開けられてはいますが、奇しくも(でもないか)ヒナタにフィーチャーしたエピソードが増えるところ。

『転スラ日記 転生したらスライムだった件』6巻より(伏瀬/柴/講談社)

内容的にも主人公がイングラシアを離れるのと同期して、テンペストに悲劇が訪れるタイミングなので、日常コメディ4コマではありますがシリアス成分が高め。

ギャグコメ成分も、一般論的に通じそうなネタの比率が下がって、本編ファン向けに特化してきてる感はあります。

自分も「転スラ」読者であるもののライトユーザ気味な方なので、理解できないネタがだいぶ増えてきました。

『転スラ日記 転生したらスライムだった件』6巻より(伏瀬/柴/講談社)

その代わり、ある程度のスピード感でエピソードをこなしていかなきゃいけない本編に対して、特に情緒面で補完するようなシリアスなエピソードも同時に増えていて、イングラシアの孤児たちとか本筋的には一旦置いていかれがちなところをページを割いて丁寧にフォローしてるな、という感じです。

『転スラ日記 転生したらスライムだった件』6巻より(伏瀬/柴/講談社)

テンペストの悲劇がこの後に本格化するところで次巻、ということで、本編の展開に合わせて次巻もシリアスなエピソードが多めになると思いますが、このスピンオフらしい優しい視点からのフォローに期待してしまいますね。

 

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#転生したらスライムだった件 21巻 評論(ネタバレ注意)

サラリーマン(37)が刺されて死んで異世界に転生したらスライムだったけど、付与された特殊能力で強力な魔物スキルをガンガン吸収してスライムにして最強、人型にも顕現可能に。

『転生したらスライムだった件』21巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

リムルを名乗り、多くの魔物を配下にジュラの森の盟主となり「魔国連邦」を建国。襲来した人類国家ファムルス王国軍2万の兵をリムル自ら直接殺害して魔王に覚醒。暗躍する魔王クレイマンとも、10人の魔王による会議・ワルプルギスで決着をつけ、並行して魔王領各地で勃発したリムル陣営vsクレイマン陣営の闘争はリムル陣営が完勝。

次いで、魔物を駆逐するべしとの教義、配下にリムルと同じ転生者の聖人(魔王級)や聖騎士団を擁する西方教会。

『転生したらスライムだった件』21巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

影の支配者に壟断され、操られるように魔国連邦と戦闘に突入する聖人ヒナタと聖騎士団。

ということで、鬱々とした陰謀によって始まった戦闘を、リムルら魔国連邦が手加減しつつも戦闘能力で真正面からぶっ壊す、スカッとテンペストな「なろう」らしいカタルシスの巻。俺TUEEEEしてんのが主人公だけじゃなく、配下全員が流して完勝する典型的な厨二病展開の醍醐味。

『転生したらスライムだった件』21巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

典型的ですけど、展開・描写あわせて表現としてこのジャンルの最高峰というか、「日本一の俺TUEEEE」な感じはあります。

「俺TUEEEE」の作品は大変増えましたけど、斜に構えて展開で手を抜いていたり描写が雑だったりと「俺TUEEEEE」の魅力をちゃんと描いてくれる作品って意外と数が限られるんですけど、この作品は前段の準備から余念なく外連味たっぷりに「かっこよく魅せる」ことに取り組んでいて、さすが「気合い入ってんな」という感じ。

『転生したらスライムだった件』21巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

今巻は、ヒナタは現場の駒としては最強級だけど、「勝つ」以外に戦争を回避する・終わらせるプロデュースの能力にまったく欠けてんね、という。

日本からの転生者で「魔王級」の聖人と、主人公格の設定を与えられていながら、老害に状況を操られるままに戦闘に入って誤解を解く(というより誤解に気づく)こともできないただの戦闘バカに見えちゃって、現時点ではこれまでの出番の積み重ねもあってリムルの手下の紅丸の方がモノ考えてるように見えてしまうという。今回「やられ役」の損な役回りだったハンデもあったので今後に期待。

あとディアブロみたいな厨二病設定で水戸黄門設定でひたすら強いだけ、って反則キャラはやっぱいいよねぇ〜、という。

『転生したらスライムだった件』21巻より(川上泰樹/伏瀬/講談社)

主人公リムルも反則ですけど、まあそれは最初っからですし、という。

あと巻数重ねて、コミカライズの作画自体がどことなく荒削りだった1巻の頃と比べて、シンプルな線で安定というか風格というか、整って見えますね。

 

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#ねこ、はじめました 10巻 評論(ネタバレ注意)

車に撥ねられた男子高校生が気がついたら猫になってて女子高生・チカちゃんに拾われて飼われる日常もの。そんな非日常な日常ものがあるか。

『ねこ、はじめました』10巻より(環方このみ/小学館)

なんだこのコマ。

ラノベみたいな設定だけどエロ要素ゼロなのと人類の目がデカいのは自分からちゃおコミックス読みに行っといて文句言ってはいけない。

『ねこ、はじめました』10巻より(環方このみ/小学館)

「猫になって一人暮らしの可愛い女子高生に飼われてもふられる」と言えば「教室に乱入してきたテロリストをやっつける」と並んで男子7大妄想と言われていますが、正体が人間のアドバンテージをまったく活かせてない猫の、自分や飼い主にモノローグでツッコミまくる間抜けで癒し系な日常もの。チカちゃんポンコツ可愛い。

『ねこ、はじめました』10巻より(環方このみ/小学館)

前巻で100話を超え、今巻で10巻、二桁巻到達。めでてえ。

1巻が2016年なので6年で10巻到達。

今巻も日常コメディながら子ども向けとは思えないシュールで投げっぱなしジャーマンでフフッてなる脱力系エピソードが相変わらず続きます。

『ねこ、はじめました』10巻より(環方このみ/小学館)

縦軸として「いつか人間に戻る」課題解決型の作品に普通なるはずで、主人公自身も人間に戻るつもりは過去巻を見るに一応あったはずなんですが、今巻なんか戻るための努力を一切放棄して猫としての日常を満喫してるのが良いですね。

『ねこ、はじめました』10巻より(環方このみ/小学館)

今巻はチカちゃんの出番が多かったので嬉しい。

 

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#ゾンビヒロインと悪人面のハゲ 2巻 評論(ネタバレ注意)

チート能力持ちで異世界に転生した(もうこの前提が説明不要になってるのある意味すげーな)悪人ヅラでハゲの矢張慎太郎は、死者の王に不死者にされ300年の孤独を過ごしたゾンビ少女・エリザを救済するため、死者の都の死者の王を倒した。

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ゾンビヒロインと悪人面のハゲ 1巻より(なむる。/竹書房)

死者の王の消滅にともなって成仏・消滅すると思われたエリザは、その後も特に消滅することもなく、特にやることもなく慎太郎に懐いた。

から始まるロードムービーっぽい日常ラブコメ。

『ゾンビヒロインと悪人面のハゲ』2巻より(なむる。/竹書房)

チート無敵な悪人ヅラのハゲと不老不死のゾンビ美少女が恋人未満な感じでひたすらイチャイチャしながら旅する癒し系。一応、「エリザを人間に戻す」という旅の目的が設定されている。

主人公2人以外の画力や戦闘描写は量産型異世界コミカライズ風だし、今のところ転生した設定とか完全にいらねーだろと思うんですけど、

『ゾンビヒロインと悪人面のハゲ』2巻より(なむる。/竹書房)

とにかく主人公2人のラブイチャを萌え萌えに描こうという一点突破で、割りとまんまと胸キュンな感じです。昔の少女漫画みてーだな。

1巻からちょっと間が空きました。

『ゾンビヒロインと悪人面のハゲ』2巻より(なむる。/竹書房)

0が1になった1巻と比べると、2巻で1が2になったかというと「異世界ファンタジー」「なろう」としてはワンイシューというか引き出し少ないな、とは思います。

バトル描写が描かれるでもなく、異世界転移の設定が作劇に活かされているわけでもなく、1巻で提示された特殊な属性持ちの二人のイチャラブ会話芸を引き続き、という感じ。

『ゾンビヒロインと悪人面のハゲ』2巻より(なむる。/竹書房)

イチャイチャしてるだけだとコメディにすらならないんですけど、今巻はツッコミ役として神殿(相当の神域の祭壇)に常駐する天使が顕現してイチャラブにツッコミを入れるエピソードが異様に面白かったです。

第3者のノリの良いツッコミ役が居ると居ないとで面白さが全然変わる作品、という発見が描いてる方にも読んでる方にも上積みだった2巻でしたけど、

『ゾンビヒロインと悪人面のハゲ』2巻より(なむる。/竹書房)

レギュラー化し難いポジションなので、今後はイキの良いゲストキャラが生命線になってくる予感がしますね。

 

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#空挺ドラゴンズ 13巻 評論(ネタバレ注意)

空飛ぶ龍を捕龍船(飛空艇)で狩る「龍捕り(おろちとり)」にまつわるファンタジー。狩った龍は解体して売ったり食ったりする。若干、風の谷の天空のなにか風味。

『空挺ドラゴンズ』13巻より(桑原太矩/講談社)

「船喰い」と恐れられる伝説の龍「震天王」テュポーンとの対峙でダメージを負った、主人公たちの捕龍船「クィン・ザザ」号。

その大規模改修の長い期間、船のメンバーの故国にまつわるサブエピソードなどもありつつ、カメラが再びクィン・ザザ号へ。

『空挺ドラゴンズ』13巻より(桑原太矩/講談社)

実は2代目だったクィン・ザザ号を飛ばす最後のパーツは、船のエンジンともいうべき震臓バラスト。高価な震臓バラストの購入費用を贖えない一行は、同じく伝説の龍と対峙して墜落したはずの先代、「初代クィン・ザザ号」の捜索と、その震臓バラストの2代目への移植を目指すことに。

訪れた初代の墜落したはずの地点では、「空の幽霊船」の話で持ちきりだった…

『空挺ドラゴンズ』13巻より(桑原太矩/講談社)

ということで、今巻は久しぶりにカメラが戻ってフルメンバー、クィン・ザザ号の復活編。

初代が幽霊船と成り果てた経緯、その墜落の際に一体何が起きたのか。

船長が沈む船と運命を共にする、というのはフィクションで度々見かけるシーンです。素人目には不合理極まりない判断に思えますけど、人生を共にした船、特に船長・艦長ともなれば、ロマンチシズムやセンチメンタリズムという言葉で表せない、合理性を超えた何かがあるんだろうな、と想像するしかありません。

まあ漫画読んでの話ですけど。

『空挺ドラゴンズ』13巻より(桑原太矩/講談社)

宮崎駿が度々描いてきた空中アクションのロマン、大ヒットし愛された割りに、意外とフォロワーが現れないな、と思います。

なんやかんや言いいながらも、数少ないチャレンジャー、後継者として引き続きがんばっていただきたいな、と思います。

『空挺ドラゴンズ』13巻より(桑原太矩/講談社)

さて、次巻からは、いよいよリベンジですね。

 

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#キメツ学園! 2巻 評論(ネタバレ注意)

本編のおまけ漫画で作者自らによって度々描かれた二次創作「キメツ学園」が、他の漫画家によって連載化されたキャラもの公式スピンオフ。

『キメツ学園!』2巻より(帆上夏希/吾峠呼世晴/集英社)

小中高の一貫教育校キメツ学園の日常ギャグコメディ。キャラはみんな二頭身のSD化。

柱の面々は主に教師役に、その他の鬼殺隊の面々や鬼が生徒役に。

当然、正統続編ではなく、本編とはパラレルな世界観の作品。

まあ鬼滅ファン向けの楽しいファンアイテムです。

『キメツ学園!』2巻より(帆上夏希/吾峠呼世晴/集英社)

炭治郎が割りと品行方正で単品でギャグコメのキーになるトラブルを起こしにくく、脇を伊之助と善逸で固めて三人で狂言回し、という感じ。

スピンオフの定番と言えば「学園もの」、「グルメもの」、あとなんでしょね。

『キメツ学園!』2巻より(帆上夏希/吾峠呼世晴/集英社)

「学園もの」は「この人間関係を平和な世界観で見てみたい」という需要は自分も理解するとことですが、「グルメもの」はなんかよくわかんないですねw

たまに「なんでグルメスピンオフ始めちゃったの?」って作品もあって、それはそれで趣がありますけれども。

『キメツ学園!』2巻より(帆上夏希/吾峠呼世晴/集英社)

キャラ萌えとしての「鬼滅」の魅力は個性的なキャラの人数が多いことが武器であることを活かして、まんべんなくエピソードごとにスポットを当てるキャラを変えながら、という正攻法が功を奏して、1巻より楽しく読めました。

今巻は特に、伊黒と甘露寺の不器用な恋愛を拾ってくれたのが嬉しかったです。

『キメツ学園!』2巻より(帆上夏希/吾峠呼世晴/集英社)

この二人好きなんですよね。

 

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#2.5次元の誘惑 14巻 評論(ネタバレ注意)

先輩たちが卒業し、高校の一人漫画研究部として日々部室で二次オタ活動に勤しむ奥村(高2♂)。

学校が新入生を迎えたある日、漫画研究部のドアを叩く一人の新入生がいた。奥村と同じく古の名作「アシュフォード戦記」「リリエル外伝」とそのヒロイン「リリエル」をこよなく愛する彼女・天乃リリサは、キャラ愛が高じて高校生になったらコスプレイヤーになることを夢見ていた。

というボーイミーツガールから始まるコスプレ青春もの。それぞれの葛藤を乗り越え界隈を騒がすコスプレチームとなり、四天王と呼ばれる頂点のコスプレイヤーたちにも認知されるように。

ということで、冬コミ編が終わって季節は冬から春へ。

『2.5次元の誘惑』14巻より(橋本悠/集英社)

バレンタインデー、卒業、新学年、の巻。

コスプレに関する熱血青春よりですが、今巻は恋愛祭りというか、ハーレムラブコメ要素もあり、気が付いたら主人公男子・奥村に想いを寄せる女子が「チラホラ」というレベルを超えました。

割りとみんなさん恋愛感情をオープンに共有している中、「実は片想いしてたら萌えるランキング」的にはこの人が一番なんですけど、

『2.5次元の誘惑』14巻より(橋本悠/集英社)

そこまで手を拡げるともはやなんの漫画だかわからないので、読者の妄想や二次創作を誘うところまで、と感じ。

ハーレムラブコメものは誰かとくっつくと終わってしまうし主人公が二股三股はもっての他なので、自然、主人公男子は鈍感・難聴・その他の要因で、女子の好意や自分の恋愛感情に気づかない恋愛不感症男子であることが求められるんですが、本作主人公・奥村においてそれは二次元への逃避、さらにその原因は幼少期のトラウマからくる人間不信(自分不信)です。

『2.5次元の誘惑』14巻より(橋本悠/集英社)

今回、バレンタインデーや卒業式などのイベントを通じて割りと真正面からこの問題に、禅問答スレスレに向き合う形になりました。

結論を言うと今巻で奥村は葛藤を乗り越えめでたく「普通に恋愛できる人」になったんですけど、「普通に恋愛できる人」を中心にして今後ハーレムラブコメ的に保つのかというのと、コスプレにかける熱血とコメディパートにおけるマシンガンのようなオタクネタが魅力のこの作品において、果たしてハーレムラブコメ要素・恋愛要素はそもそも必要なのか、という、奥村が「普通に恋愛できる人」になったことが吉と出るのか凶と出るのか。

『2.5次元の誘惑』14巻より(橋本悠/集英社)

ということで今巻はミカリンが可愛かったです。

ミカリンが一途で誠実で一生懸命で、高倉健のように不器用で、なんというかメインヒロイン補正がカケラもない子で、また「幼馴染は負けフラグ」との格言もあったりしますけど、この子は報われてほしいなあ、と。

ヒロインレースにおける「推し」の概念で、これ完全にハーレムラブコメの読み方ですね。

『2.5次元の誘惑』14巻より(橋本悠/集英社)

それはそれとして、新学期、新入生の季節ということで、次巻は新キャラ登場ですね。

 

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#怪獣8号 7巻 評論(ネタバレ注意)

現代、ただし頻繁に怪獣に襲来され「怪獣大国」となった日本。「防衛隊」が組織され、襲来の都度、怪獣を討伐することで社会が保たれていた。

かつての防衛隊志望に挫折した怪獣死体処理清掃業者・日比野カフカ(33♂)は、防衛隊志望の後輩に触発され再び入隊試験受験を決意するものの、いろいろあって人間サイズの怪獣に変身する体質となってしまう。

目撃情報から防衛隊に「怪獣8号」として指名手配されたまま、怪獣変身体質を隠したカフカの防衛隊入隊受験が始まった。

という、「SF」でいんだよねこれ。「バトル」もつけていいんかしら。という王道変身ヒーローもの。

作品コンセプトとして他とは毛色の違う「ディザスター(災害)もの」として期待した向きには、結局「普通のジャンプバトルもの」に落ち着いちゃったな、ってのはあります。

そこ掘ってみましょうか。

『怪獣8号』7巻より(松本直也/集英社)

怪獣ものの転換点の一つとして近年の『シンゴジラ』があって、現実社会に怪獣という「嘘」を放り込まれた時のリアリティの快感、超人ならざる群体としての人間がいかに現実的な手段で怪獣に対抗・奮闘するか、という展開・描写がなされました。

警察もの(刑事もの)において、それまでの『太陽に吼えろ』などのヒロイック刑事の活躍を描かれる路線から、「普通の人」の延長の警察官像が示された『踊る大捜査線』が転換点になったのと少し似ています。

『怪獣8号』7巻より(松本直也/集英社)

怪獣は巨大で黙して語らない、まさに「ディザスター(災害)もの」としての期待がこの作品にも1巻当初はあったんですが、ご存知の通りその後怪獣は人間サイズの人型になり日本語を喋り出し、ということで気が付いたらジャンプによくあるバトル漫画になってしまい、当初の読者の期待からドンドン外れていきました。

「怪獣もの」に対する解釈違いとでもいうか。

『怪獣8号』7巻より(松本直也/集英社)

特に怪獣9号は何回も引き分け前後で撤退し再登場するしつこさで、延々と同じ展開を繰り返しているように見えなくもありません。

防衛隊も少数の精鋭が怪獣の力を取り込んで超人化し怪獣に対抗していくのも、「悪魔の力 身につけた」という『デビルマン』の焼き直し、先祖返りと言ってよく、『シンゴジラ』で上がったハードルの、「上下」ではなく「以前」に見えるものになりました。

『怪獣8号』7巻より(松本直也/集英社)

というのが、この漫画の作者と読者のボタンの掛け違いのあらまし。これが尾を引いて、またネットで無料で読めちゃうこともあって、この作品はある時点からずっと評価の面で損というか、不遇とも言える状況に。

で。

ただ、『デビルマン』の延長線上の。またジャンプ伝統の「超人バトルもの」として見た時に、ジャンプ本誌に載ってても遜色ないぐらいには結構面白いんだけどな、という。

序盤に登場した敵役が主人公の成長に同期するように前に立ち塞がり続けラスボスの地位に駆け上がっていく、というのもある種のジャンプバトル漫画の定番展開で、特にこの作品に限った欠点というわけでもありません。

『怪獣8号』7巻より(松本直也/集英社)

それだけ、当初の「いつものジャンプバトル漫画とは一風違った『シンゴジラ』のような漫画が始まった」という期待が大きかったということかもしれません。

この漫画に必要なのは「ディザスターもの、"大人の漫画"として期待するのはもうやめてくれ、群像劇的な超人(変身ヒーロー)バトル少年漫画として楽しんでくれ」という、読者に対する決定的な宣言・メッセージなのかもしれないな、と思ったりもします。

「大人な読者」にはもう飽きられて食傷気味のジャンルかもしれませんが、少子化とはいえ「少年」はいつの時代も居るもんですし、彼らのために過去のテーマを再生した作品があってもいいと思うんですが。

『シンゴジラ』と同じスタジオカラーの新作が『シンウルトラマン』でそれこそ60年代〜70年代ヒーロー、少数の超人が怪獣やっつけてくれるヒロイックな展開への回帰と再生産で、ちょっと風向きが変わったりするのかしら、しないのかしら。

正直、自分はこの作品の続き、結構ワクワク楽しみにしてます。

 

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#さよなら絵梨 【完】 評論(ネタバレ注意)

藤本タツキの単行本一冊分の中編読み切り。

2022年4月にWEB上、ジャンプ+で1ヶ月間の無料公開。

 

単行本になって所有できて落ち着いて再読すると、記憶してたよりもやっぱ面白いなと思った。

再読して再発見もいくつかあったけど、あんまわざわざ書くことでもないというか、「再発見」というより読むたびに心境やコンディションの変化による読んでるこっちの「気の持ちよう」の問題の気も。

加筆修正の類は、細部の記憶が薄れてたのと、そもそも比較対象のWEB連載がもう見れなくなってるので、よくわからんわ。

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当時割りと長文の感想を書いたせいであんま書きたいこともうないわ。

あ、冒頭の「12さい」は「12さい」のままでした。

 

『さよなら絵梨』より(藤本タツキ/集英社)

あとはまあ絵梨の描写が、連載作「チェンソーマン」のマキマやパワーちゃんと比べても、時間をかける余裕があったせいかコストかかっててとても美しいなと。

ダメだな俺、この人の描く女の子めっちゃ好きだわ。

『さよなら絵梨』より(藤本タツキ/集英社)

どんな話描かれてもタツキ絵女子が描かれてさえいればベタ褒めする気がするし、江口寿史や上條淳士みたいにこの人が広告イラストの仕事始めたり、そのせいで漫画描かなくなっても、支持しちゃいそうな気がするわ。

 

そんな言いつつ、もう来週からは

チェンソーマン第二部の連載開始とのことで、すんげー楽しみ。まずは、どんな第一話で開幕なんでしょうね、と。

連載ペースゆっくりでいいから、クオリティ重視で作画に時間かけて欲しい(そしてまた美しい女の子を描いてほしい)なー、と。

 

 

#スパロウズホテル 12巻 評論(ネタバレ注意)

繁華街のど真ん中に位置し、塩川(♀)がフロントの主任を務めるビジネスホテル、「スパロウズホテル」。

場所柄、たびたび酔漢などの「おイタ」に頭を悩ませたホテルは、1人の女性を採用した。

『スパロウズホテル』12巻より(山東ユカ/竹書房)

フロント係に配属されたその女性は、一見ただのにこやかな20代前半の可愛い系巨乳美女だったが、その実はタイトスカートのスリットの奥に暗器を隠し持ち、屈強な暴漢を首筋へのあまりにも速くて見逃されちゃう手刀一発で気絶させる、どう考えてもキルア並みの元・殺し屋の用心棒だった…

という主任と元殺し屋?の2人のフロント係を主人公にした、ビジネスホテルのお仕事日常もの。

『スパロウズホテル』12巻より(山東ユカ/竹書房)

なんだこの人物紹介。

同じ作者のこちらの作品をひょんな縁で読みまして、

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面白かったので別作を探したらヒットして11巻も出ててイッキ読みしたら面白かったので。の新刊。

Wikipediaによると、読み切りを経て2008年から「まんがライフ」で連載開始、

ja.wikipedia.org

 

2013年にアニメ化も経験済みなんだそうです。知らんかった。

『スパロウズホテル』12巻より(山東ユカ/竹書房)

「1巻からレビューすべきかなあ」「でも11冊分レビューすんの大変だなあ」「あんま完璧主義・網羅主義に陥らない方が長続きするよなあ」ということで、日常4コマギャグコメディということもあって突然12巻から。

ぶっちゃけ、上記の設定を理解していれば12巻からでもあまり支障なく読み始められます。ハマったら遡って買って読みましょう。

『スパロウズホテル』12巻より(山東ユカ/竹書房)

ちなみにストーリーものであろう『ブルーピリオド』を似たような理由でこちらはまだ読み始められていません。我ながら本末転倒なくだらない理由だな。

12巻ですが、今巻も安定して面白かったです。ヒロイン・佐藤の元軍人?ネタも安定しつつ、12巻にもなればキャラが立った脇役が豊富でネタにバリエーションあって楽しい。

塩川主任とその兄が因果の中心になって、みんな元気ながらどこか社会人として壊れててやけくそ気味ながらも頑張って働いてるところが、

『スパロウズホテル』12巻より(山東ユカ/竹書房)

読んでて元気が出ますよねw

 

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#BLUE GIANT EXPLORER 6巻 評論(ネタバレ注意)

若き日本人ジャズ・サックス・プレイヤー宮本大のサクセス・ストーリー。

日本を舞台にした「BLUE GIANT」、ヨーロッパを舞台にした「BLUE GIANT SUPREME」に続いて第三部に相当。今度の舞台はジャズの本場、アメリカ。

『BLUE GIANT EXPLORER』6巻(石塚真一/小学館)

ゼロからスタート、偏屈で強力なメンバーを集めて一世を風靡するバンドに…という展開もヨーロッパ編でやりきったので、アメリカ編は趣向を変えてダイが中古のホンダでアメリカ中の都市をソロで巡りバンドメンバーは現地調達する、というロードムービー風。

西海岸を離れメキシコの国境の街でメキシコ人ピアノプレイヤー・アントニオを2人目の固定メンバーに迎え、中古のホンダでアリゾナ砂漠を横断してニューメキシコのアルバカーキ、を経て、今巻ではテキサス州ダラスからヒューストンへ。

『BLUE GIANT EXPLORER』6巻(石塚真一/小学館)

ダラスでメンバー探しにジャズバーに繰り出すもすげない対応をされた二人は、大都市ヒューストンで飛び入り参加ウェルカムなジャズバーで「道場破り」に乗り出すのだった…

ということで、今巻ではまだ仲間になってませんが(これで仲間になんなかったら『ワンピース』の海上レストラン編でサンジが仲間にならないぐらい面白いですが)、日本編(仙台〜東京)では日本人バンド、欧州編では主人公以外はポーランド・ドイツ・フランスと多国籍ながらいずれも白人のメンバーで、このシリーズ初の、ジャズの歴史とは切っても切れない黒人プレイヤーのレギュラーキャラ候補が初登場。

『BLUE GIANT EXPLORER』6巻(石塚真一/小学館)

作品の裏テーマとしてわざわざ言葉にはされないけど「ジャズは言語・人種・国境を超える」というものがあり、主人公がバンド組むメンバーの属性は意識的にまんべんなく設定されていて、逆に予想しやすさはあります。

今回のバンドも日本人(テナーサックス)、ヒスパニック系メキシコ人(ピアノ)、アフリカ系アメリカ人(ドラム)と多様で、ということは残るベースは…。

道場破り、迫力はあるものの「こういうの客が置いてけぼりになりがちよね」と思いながら読んでたんですけど、作者もキャラも自覚的な上にきっちり回収する描写まで挿れて、「しょーもないツッコミ入れながら読んですみませんでしたw」という感じ。

『BLUE GIANT EXPLORER』6巻(石塚真一/小学館)

アルバカーキの初心者向けサックス教室の締めもよかったですね。ありきたりな感想ですけど、やっぱおばさんの演奏にグッときた。

初心者相手の先生をやったことがダイのプレイングにどう影響するか、ってむしろそっち行っちゃうの!? ってオチもいいw

「ジャズはメインカルチャーかサブカルチャーか」という問題は置いといて(サブカルでいいのかしら?)、というよりメインカルチャー・サブカルチャーを問わず、一流のプレイヤーであっても経済的に必ずしも食えていけるとは限らない、というのは創作・芸術・音楽・芸能の分野を共通するテーマで、「ビッグになること」もテーマである以上、どこかで興行・ビジネス面での運に恵まれる必要があります。

『BLUE GIANT EXPLORER』6巻(石塚真一/小学館)

さて、3人目の凄腕黒人ドラマーの勧誘を賭けて、なぜかギャンブル漫画に。

なんの漫画なんだよ、とまた心の中でしょーもないツッコミを入れつつ、「俺と組んだらビッグになれる、その"運"を俺は持っている!」という話をするのにギャンブルは意外と良さげなテーマな気もします。

とか書いたら「ポーカーの強い弱いは運だけじゃないです」って怒られちゃうな。

映画『007/カジノロワイヤル』が好きで何十回も観てんですけど、相変わらずポーカーのルール、「レイズ」「チェック」「オールイン」あたりのルール上の整合性が、わかるようでよくわからんわ。

 

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#らーめん再遊記 5巻 評論(ネタバレ注意)

「ラーメン発見伝」の続編の「らーめん才遊記」の更に続編の現作。

シリーズ未読の方にものすごく雑に説明すると「ラーメン版『美味しんぼ』」みたいな作品群。

脱サラして開業したラーメン店が苦節を乗り越えて成功し事業を拡張、ラーメン店向けに始めたコンサル業も順調、メディアにも露出しラーメン産業を盛り上げてきた立役者の一人と認められ、職人・経営者としてラーメン業界を代表する第一人者となった芹沢。

『らーめん再遊記』5巻より(久部緑郎/河合単/石神秀幸/小学館)

ラーメン業界の世代交代と新たな時代の到来を前に、なぜか芹沢はやる気が出なかった…

雑に説明すると、自らの原点に立ち返った王が、自ら育てた天才児にその玉座を禅譲し、自らは放浪の旅に出る、的なそういう話です。そういう話をラーメン業界で。

『らーめん再遊記』5巻より(久部緑郎/河合単/石神秀幸/小学館)

職人・経営者のトップとしてラーメン業界の頂点に立ちそこから降りた主人公が、身分(?)を隠して大手チェーンのラーメン屋にバイトとして潜り込んで店舗内の若手のいざこざに首を突っ込んでみたり、山の頂上から見下ろしていたラーメン業界の裾野を歩いて回る話。

前巻以来の「背脂チャッチャ」系をテーマに、芹沢とかつての因縁の商売敵ならぬ「因縁の敵」とのクズすぎる過去と、新進のラーメン評論ユーチューバーを絡めて。

『らーめん再遊記』5巻より(久部緑郎/河合単/石神秀幸/小学館)

ひょんなことから、過去の因縁の敵の、今は閑古鳥が鳴いているラーメン屋を陰ながらコンサルするハメになったハゲ。ハゲの起死回生の一手とは。とエピソード完結まで。

いつも単刀直入に「正解」を打ち出してきたハゲの思考が試行錯誤する様を、うんちくを含めて面白くよませます。「枠(こだわり)に囚われない発想の転換」がキーになる解決案ですが、それはそれとして、俺食ったことあるわコレ。美味しかった。

ラーメン評論におけるユーチューバーの台頭、というテーマを取り込んでみせたのは、世情を見ると決して早くはないんですけど、

『らーめん再遊記』5巻より(久部緑郎/河合単/石神秀幸/小学館)

無視し続けることなくちゃんと取り込んで、ブロガーの時代よりも更に大きく一桁二桁大きい利害が絡む世界であることを警告することも含めて。

最近は大人になったというか、達観して枯淡の境地であるかのように描かれますけど、ハゲ基本的にクズだしラーメン業界のみならずフリークも批判してきた人だし、作者もそれを「忘れてないよ!」とばかりにちょいちょいクズエピソードを挿れてくるのが良いですよねw

次に始まったエピソード続きが気になるんですけど、連載読んでないけどコレ、「気のせい」「雰囲気」「思い込み」「もともとそうだった」的なオチなんじゃねえかなコレ…

それにしても、

『らーめん再遊記』5巻より(久部緑郎/河合単/石神秀幸/小学館)

BL妄想癖のあるホテルのフロントの女性を通して描かれる、突然の珍妙な美少年趣味は一体なんなのか…

 

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#ワンナイト・モーニング 7巻 評論(ネタバレ注意)

「一緒に一夜を過ごした男女が」「一緒に朝ごはんを食べる」「短編」を描きなさい。

というお題に則って描かれたようなオムニバス恋愛短編連作の第7集。

『ワンナイト・モーニング』7巻より(奥山ケニチ/少年画報社)

俺の彼女の胸をやらしい目線で見るんじゃねえー!から生じる悲しいすれ違い、「あんまん(後編)」。

幼少期からお隣さんの高校生と中学生の幼馴染の未満恋愛、「甘酒」。

年末年始の繁忙でお疲れ気味な様子の彼氏とのデートは予定変更してお家デートに、「七草粥」。

長い同棲生活でマンネリな割りにプロポーズもされない関係にやけになった彼女は、浮気に走る、「おでん(前後編)」。

高校時代の「恋愛未満」だったあの子に数年ぶりにLINEしたら二人で飲みに行くことに、「チェリーパイ」。

『ワンナイト・モーニング』7巻より(奥山ケニチ/少年画報社)

トラブルで可愛い女性アシスタントと二人きりで修羅場の夜と過ごすことになった漫画家、「きつねうどん」。

出産を機に子煩悩になってしまった夫とセックスレスになったことにモヤモヤするママさん一年生、「卵焼き」。

大学生・社会人のエピソードが多く、「高校生以下」は回想シーンなことが多い作品ですけど、今巻珍しく久しぶりにティーンエイジャーの未満恋愛も一編。

『ワンナイト・モーニング』7巻より(奥山ケニチ/少年画報社)

エピソードごとに主人公が代わりますが、「"前に見た二人"の続き」のエピソードも結構な頻度であって、自然と相互に「前日譚」「後日談」の関係になりますが、エピソード自体は「前のエピソード」を知らなかったり覚えてなかったりしても単品で楽しめるような作りになってます。

多くのラブコメ漫画がキャラ人気で保っているのに対して、この作品はキャラがクルクル入れ替わっていく分、「恋愛未満が恋愛になる瞬間」の魅力で保っている、的なことを前にどこかで書いたんですが、よくよく読み込んでみると顔(キャラ)が代わっても男女それぞれの性格はあんま変わらないような気もしますね。みんな似たような性格というか。

『ワンナイト・モーニング』7巻より(奥山ケニチ/少年画報社)

そこから更に読み込んでいくと差分が見えてくるんですが。

告る勇気がない人が勇気を出す話、悪気はないのにすれ違った関係を修復する話、をハッピーエンドに持っていけるパーソナリティというとどうしても似てきてしまう、というのもあるでしょうし、なにより同じ作者が描き続けてるわけですしね。

「作者から見てヤな奴」を主人公にはできないですしw

似てて悪いかというとそういうわけでもなく、あだち充が野球漫画を何回も描くようなものというか、そういえばあだち充の主人公たちは性格どころか顔もみんな(以下略

そういう意味では「主人公たちが毎回変わる」というよりは「作者の恋愛観を体現した男女が毎回異なるシチュエーションにゼロから放り込まれる作品」と言えるかもしれない。

『ワンナイト・モーニング』7巻より(奥山ケニチ/少年画報社)

このあとめっちゃセックスしてた。

まあでも、突然の流れ弾でDISられた格好のあだち充作品においても、ちゃんとまじめに読み込むと達也と比呂の性格、けっこう違うんですけどね。

「何事においても、似てれば似てるほど、近ければ近いほど違いは際立つし、

 そこにこそ個性や本質が宿るものだ。」

と、どっかのラーメンハゲも『らーめん再遊記』5巻(久部緑郎/河合単/石神秀幸/小学館)で言っておられる。

 

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#めんつゆひとり飯 5巻 評論(ネタバレ注意)

黒髪おさげで八重歯で面倒くさがりで何でも麺つゆで食う女・面堂 露(めんどう つゆ・26歳独身)、略して"めんつゆ"がヒロインのお料理・グルメ4コマ。八重歯アピールのためかほぼ口半開きでアホの子みたいで可愛い。

『めんつゆひとり飯』5巻より(瀬戸口みづき/竹書房)

その他、社長秘書で味噌も自家製の料理上手の人妻の十越さん、カツサンドをおかずに白飯を食う主任の元イケメンのデブ、元イケメンのデブに片想いのヘルシー派の後輩OL、なぜか単語でしか喋れず秘書の通訳なしでは社員と会話が成り立たない女社長など。

可愛い、見やすい、わかりやすい、美味しそう、参考になる、とても楽しい、とお料理4コマ漫画の要件を完璧に満たしてる作品。

『めんつゆひとり飯』5巻より(瀬戸口みづき/竹書房)

基本はズボラ飯系の露と正統派家庭料理の十越さんの料理に向き合うスタンスの対立・もしくはボケツッコミ。

キャリアも長く毎回テーマを持った4コマ作品を描く、職人肌系の4コマ漫画家の、現在その頂点あたりにいる面白さの漫画家さんかなと思います。

『めんつゆひとり飯』5巻より(瀬戸口みづき/竹書房)

この人の別作『ローカル女子の遠吠え』と合わせて最近何度も読み返してます。

王道ネタも面白いのと、最近めっきり女子高生に占拠された4コマ界において、チャーミングな社会人女性たちを描き続ける漫画家さん。

王道4コマとして楽しみつつ、(いわゆる「きらら系」ではないんですが)キャラ萌えも楽しめるという、一粒で二度美味しいタイプの作風です。

『めんつゆひとり飯』5巻より(瀬戸口みづき/竹書房)

自分は『ローカル女子』の海馬さんと『めんつゆ』の露のお姉ちゃんがすんげー好きです。可愛い。

この作品は料理漫画でもあるので一粒で三度美味しい、ですね。

この人の作品は楽しい気分で入眠するべくベッドで寝入りまでタブレットで読むヘビロテレギュラー一軍なので、1冊でも増えてくれるのすげーありがたいです。

『めんつゆひとり飯』5巻より(瀬戸口みづき/竹書房)

『ローカル女子』の9巻も楽しみだー。

 

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