#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#Papa told me Cocohana ver.10 ~となりの妖精~ 評論(ネタバレ注意)

日比谷の高層マンションに、作家でイケメンなお父さんと二人暮らしの小学生・知世ちゃんのちょっと詩的でたまにメルヘンな単話の日常もの。1987年連載開始なので「ガラスの仮面」とまではいかなくても結構な長寿シリーズ。

『Papa told me Cocohana ver.10 ~となりの妖精~ Papa told me Cocohana version』より(榛野なな恵/集英社)

若くに亡くした奥さんを今なお愛しながら、忘れ形見の知世を大切に育てるお父さんがとてもイケメン。こういう大人になりたかった。

当初は父子家庭、独身、離婚、働く女性、子どもの居ない夫婦などのテーマで、 理不尽な世間に知世ちゃんが喧嘩を買う、という怒りを原動力にした、はてなのホッテントリみたいなちょっと尖った話が多かったけど、前のシリーズの終盤あたりでメンタル系のインナースペースの話が多くなった後、 特に雑誌移籍後は話も知世ちゃんの性格も顔も丸くなったなあ、という印象。

今回はそこ少し掘ってみましょう。

「社会の在り方」と「個人の生きづらさ」の軋轢、みたいなところに課題意識を持ったテーマの話が当初から多くて、実はそれは今でも変わらないんですけど、昔はその葛藤を登場人物が知恵や勇気や思いやりで解決するところまで描かれることが多かったものが、最近では特に解決のカタルシスに至るでもなく、そのまま詩的に締めて流れていくエピソードが多いです。

前述で「丸くなった」と表現しましたが、思うに「そもそもそれが"課題"かどうかは本人が決めることだ」という作者の意識の変革がどこかであったんじゃないかと思います。

『Papa told me Cocohana ver.10 ~となりの妖精~ Papa told me Cocohana version』より(榛野なな恵/集英社)

悪意がなくても、攻撃しているつもりはなくても、何かが欠如すると他人を傷つけるラインを超えてしまう。

知世ちゃんは昔はこんなこと言われて流す子じゃなかったし、流す作品じゃありませんでした。

怒るか、凹むか、悩むか、マインドセットについてパパとディスカッションするか。

『Papa told me Cocohana ver.10 ~となりの妖精~ Papa told me Cocohana version』より(榛野なな恵/集英社)

美しい思い出の延長で恋も結婚もない人生を歩むこと。知世ちゃんがまだサンタクロースを信じていること。同性の友達から告白されたかもしれないこと。知世ちゃんのお母さんが亡くなっていること。そんな知世ちゃんに「お母さんがいてよかった」と言い放つ同級生。結婚観の合わないカップル。押しかけてきて話の長いお隣さん。オーディションに急ぐ女優の卵。イントネーションを同級生に揶揄われた地方出身の女子大生。恋愛未満の仲に落ち着きそうな若い男女。

 

みんな「何か」を抱えてはいて、他人から「解決するべき課題・問題」と見做されることは多々ありますが、それは本当に解決されるべき問題であり課題であり、作者が神の視点で作中で解決させなければならないことなのか。

『Papa told me Cocohana ver.10 ~となりの妖精~ Papa told me Cocohana version』より(榛野なな恵/集英社)

自分は中年独身オタクですが、たとえ相手が神様であっても「あなたは欠けたところのある孤独で不幸な人間だ」「可哀想だからなんとかしてあげなければ」なんて言われたら、「私の幸も不幸も私が決めます、大きなお世話」とグーパンしてやりたくなります。

この作品も昔のように「生きてるといろいろある」を描きはしても、昔のように「いろいろ」をなんとかしようとせず、「それでもそれを抱えて生きていく」という、まるでキャラが作者に「ほっといてくれ」と言っているかのような、個人主義的な緩いオチがとても増えたんですが、

『Papa told me Cocohana ver.10 ~となりの妖精~ Papa told me Cocohana version』より(榛野なな恵/集英社)

自分はそれをとても心地よく感じています。

「在るべき考え方・在るべき体験というものがあって、同じ考え方を他人もするべきだし、同じ体験を他人も経験しておくべきだ」と、人間どうしてもなりがちなんですけど、別にサンタクロースを信じたまま老境で死ぬ奴がいたって、わざわざ「サンタなんかいない」と告げなくても、それはそれでいいと思うんですよね。

そもそもお前に関係ねーだろっていう。

『Papa told me Cocohana ver.10 ~となりの妖精~ Papa told me Cocohana version』より(榛野なな恵/集英社)

デリカシーと想像力。相変わらず端的で的確な表現。

とまあ、小難しいことをいろいろ思ったりしたんですけど、この作品の基調は詩的な日常エンタメであって、今巻も良エピソードが多く大変たのしみました。

前は前で好きでしたけど、今の少し緩いエピソード運びもとても好きな作品です。

ということで、ではまた次巻。

 

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#1日2回 3巻 評論(ネタバレ注意)

「1 2 3」と数字が並んで「プレイステーションの日」みたい。

園田れみ(39♀)は夫と死別して実家の一軒家で母と中学生の娘と3人暮らし。

仲の良いお隣の、同い年の幼馴染・松宮季(とき)(39♂)が離婚で婿養子先から出戻ってくる。

不本意な離婚で傷心の季。そんな彼を、再開したご近所づきあいと昔からの腐れ縁で見守るれみ。回想される幼少期から青春期の思い出。

『1日2回』3巻より(いくえみ綾/集英社)

ちゃんとしてる。

表紙のルックスはマーガレットコミックスですが連載は「ココハナ」とのことで、アラフォーな主人公二人の少女漫画とも恋愛漫画ともつかぬ作品。

近作をあんまり読んでいませんが、別マに連載していた頃に愛読していた経験から言うと、ほとんどの作品で思春期の恋愛を描き、ほとんどの作品で猫を描き、ほとんどの作品で思春期の主人公の家庭を描き、ほとんどの作品で思春期の主人公の家庭は片親だったような印象が強いです。

『1日2回』3巻より(いくえみ綾/集英社)

恋と家族と猫を執拗に描く少女漫画家、というイメージ。

数年ぶりに著作を読んだら、思春期に代わって中年の、思春期の子を持つ親を主人公に描くようになっていました。

今巻で起こったことと言ったら、季の海外赴任してた兄夫婦が子どもができたのを機に実家に戻って、気を遣った季が実家を出て一人暮らしを始めたことぐらい。

あとは日常の延長線上の会話劇でしかないんですが、この人が描く漫画はそんな中にキャラクターの内心を吐露させたり逆にマスクしたり、思考と感情の動きを丁寧に描いていて、面白く読まされますね。

『1日2回』3巻より(いくえみ綾/集英社)

「終わるのまだまだ先だー」と油断しているうちにキャラの内心の葛藤が昇華された描写を読み逃していて、予想外に唐突に完結したように感じて「!?」ってなることもある作家でもあります。

あとるりちゃんが妙に季に懐きつつあるのが微笑ましいのと、あと「黒髪七三眼鏡男子萌え」というジャンルをあまり理解できていなかったんですが(『2.5次元』のトラジとか)、

『1日2回』3巻より(いくえみ綾/集英社)

この作品で初めて理解できた気がします。

「当て馬枠」ではあるんですけど、こういう人を魅力的に描くの昔から上手いよね。

脇役の口から作品の核心が語られた気がしていて、

『1日2回』3巻より(いくえみ綾/集英社)

ここが解消されたら結構あっさり終わりそうな気もします。

今回は読み逃さないように、こっちも丁寧に読んでれみと季の心情の機微を追いかけたい。

 

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#薬屋のひとりごと 10巻 評論(ネタバレ注意)

なろう小説のコミカライズ。古代中国の華やかな後宮を舞台に、美女ありイケメンありミステリーあり。

人攫いに後宮の下女として売り飛ばされた薬師で毒マニアの少女・猫猫(マオマオ)が、謎のイケメン高官・壬氏(じんし)の引き合いもあって上級寵妃のお付きの下女として、華やかな後宮内で起こる難事件を薬と毒の知識と花街出身の度胸で解決する時代ものの探偵もの。ちょっとラブコメも有り。

『薬屋のひとりごと』10巻より(日向夏/ねこクラゲ/七緒一綺/しのとうこ/スクウェア・エニックス)

ガンガンとサンデーGXでそれぞれ同時にコミカライズされていて、サンデー版も出来物だと聞きますが、間違って読んでない方の続巻を買ってしまわないように気をつけましょう。

勧善懲悪というよりはヒロインが謎を解いて自分の利害を満たしたらそこで終わり(逮捕・検挙が目的ではない)という感じで、「犯人(たち)がその後どうなったのか」は描かれないことが多く、人によってはモヤモヤが残るというか、「大人な幕引き」のエピソードが多めですけど、自分はこれ系のモヤモヤは結構好きです。

『薬屋のひとりごと』10巻より(日向夏/ねこクラゲ/七緒一綺/しのとうこ/スクウェア・エニックス)

毒マニアの薬師が主人公って一見変化球のようでいて、「事件」の舞台は後宮ということもあり、「被害者」「犯人」もその多くが女性で、かつ犯行が(地位を損なわないよう)秘密裏に行われるケースが多いことを考えると、殺人の手段が「毒殺」に偏って主人公が薬師なのは、よく考えたら必然だったんだな、とか思いました。

今巻は単話〜前中後編までのエピソード群が中心。サイズがコンパクトな分、ダレずにクオリティ高くキビキビした展開。

『薬屋のひとりごと』10巻より(日向夏/ねこクラゲ/七緒一綺/しのとうこ/スクウェア・エニックス)

相変わらずアクションシーンなど派手な場面があるわけでもないですが、2時間サスペンスドラマのようなスリリングさ。

猫猫の活動も殺人犯を捜索するばかりでなく、数十年前の幻の歓待の宴の再現、後宮内の診療所の見学、后妃と高級女官をめぐる陰謀の暴露、皇帝家の血統と儀式の謎の解明など、多岐にわたって飽きさせません。

『薬屋のひとりごと』10巻より(日向夏/ねこクラゲ/七緒一綺/しのとうこ/スクウェア・エニックス)

舞台が権謀術数渦巻く後宮の割りにというか、後宮だからこそというべきなのか、政治勢力の暗躍よりも高い位にいる人物の個人的な動機に基づく犯罪?が多め。

その分、「選択の廟」のように皇帝家の謎に迫るようなエピソードが挟まると変化がついてよいですね。

『薬屋のひとりごと』10巻より(日向夏/ねこクラゲ/七緒一綺/しのとうこ/スクウェア・エニックス)

てか「選択の廟」、前編で今巻が終わって後編がすごい気になるんですけど、早よ次巻くれ次巻。

 

 

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#ハイスコアガール DASH 3巻 評論(ネタバレ注意)

ゲームセンター、特に格闘ゲームに小〜高の青春を捧げた少年少女のボーイミーツガールを描いた「ハイスコアガール」の、

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内容以外に作品のメタにもトラブルに見舞われ紆余曲折ありつつ大団円にたどり着いた名作の、まったく予想もしてなかった続編。

『ハイスコアガール DASH』3巻より(押切蓮介/スクウェア・エニックス)

まったく予想もしてなかったということは、期待もしていなかったということで、ちょっとびっくりしましたね。

ヒロインは前作の「アテ馬ヒロイン」だった日高小春。サブヒロインながら健気に一生懸命、報われない恋をしてて、人気ありましたね。自分も好きでした。

『ハイスコアガール DASH』3巻より(押切蓮介/スクウェア・エニックス)

舞台はあれから10年以上の後、日高小春は28歳。母校である中学校の教師を務め、一般的に学校生活で抑圧される傾向のあるゲーム(「ゲーミングお嬢様」除く)を、抑圧し取り締まる側になっていた…

思い通りに行かない教師生活に鬱々とする小春の教師生活、心が通わない生徒たち、不気味な保護者、強権的でシステマティックな上司の校長、他人の顔色を伺うように教師生活を送る小春。

『ハイスコアガール DASH』3巻より(押切蓮介/スクウェア・エニックス)

何を描きたいんだろうか。

と1〜2巻の間、ずっと疑問に思っていたんですけど、今巻で得心がいったような気持ちです。

日高小春を描きたかったんですね。って、当たり前だろっていう。

前作が紆余曲折ありながら大団円で完結した際、小春は脇役、「負けヒロイン」として彼らを見送る立場だったんですけど、おそらく初めて青春ラブコメを描いたんであろう作者にとって、小春をどう遇するかというのは相当な苦渋の決断だったんじゃないかと今更にして思います。

『ハイスコアガール DASH』3巻より(押切蓮介/スクウェア・エニックス)

読者もそうだったもんね。みんな小春好きだったもんな。

「負けヒロイン」をどう遇するか、というのはラブコメ作品の永遠の課題ですが、続編ものの「美味しいところ」を存分に活用しつつ、こういうやり方があるのかと。

「負けヒロイン」なんかでは、なかったんじゃないかと。

「あの最終回」の後、小春に、そしてハルオに何があったのか。次巻で本格的に語られるんでしょうか。

『ハイスコアガール DASH』3巻より(押切蓮介/スクウェア・エニックス)

刮目して待ちますよ、ええ。

 

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#ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 21巻 評論(ネタバレ注意)

架空の自治体、岡島県・町山市が舞台、岡島県警 町山警察署 町山交番に配属された新人女性警察官・川合麻依と、彼女を取り巻く町山警察署の先輩・上司の警察官たちが織りなす、警察官お仕事漫画。

元警察官が描き、「パトレイバー」「踊る大捜査線」の香りのするギャグコメディに溢れた日常要素と、生々しくダークネスな事件や人間の側面が同居する奇妙な作品。

『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』21巻より(泰三子/講談社)

今一番面白い漫画の一つじゃないかなと思います。自分は好きすぎて連載の有料のWEB掲載を毎話、毎週木曜日0時に即読みしてます。してました。「現役漫画家で天才を3人挙げろ」と言われたら、自分は1人はこの人を挙げます。

メディア上で「第一部 完結」が宣言され、この21巻が発売されている時点で連載は既に終了しています。

comic-days.com

次回作は同じくモーニング誌上で時代劇とのこと。たぶん幕末ものですよねコレ。

ということで、『ハコヅメ』は一旦、次巻か次々巻で一旦終了になります。

『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』21巻より(泰三子/講談社)

今巻は、連続エピソード「伊賀崎警部補の胸襟」①〜⑩のエピローグ兼、日常回と言う感じ。

緩急の「緩」、関連キャラに精神的な後遺症が残っているところから、日常に回復していく回、とでも言うか。

『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』21巻より(泰三子/講談社)

魅力の切り口が複数ある漫画ですけど、やっぱりコメディ要素と人間関係の「萌え」がこの作品の最強の武器だな、というのを再認識します。

単行本でも「第一部完」は間近ですけど、自分はたぶんこの作品というよりはこの作家のファンなので、あまり寂しくないと言うか、そう遠くなさそうな次回作の連載開始が楽しみです。

『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』21巻より(泰三子/講談社)

『ハコヅメ』も「これで終わり」でもなさそうですしね。

 

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#ぶんぶくティーポット+ 6巻 評論(ネタバレ注意)

わーい、かわうそ先生が表紙だー! かわうそ先生大好き!

4~6コマの変則ページ、フルカラーで絵本みたい。人間に化けて暮らすのたぬき一家、主人公はたぬき妹"ふみ"になろうかと思います。ふみの友達のキツネ女子、ネコ女子、コウモリ女子との学園生活など。

「ぶんぶくティーポット+」6巻より (森長あやみ/まんだらけ)

まんだらけ刊という変わり種。

紙書籍や出版元の電子書籍から1週間遅れでkindle解禁で、こういう時は自分は「ケッ」っつってご機嫌斜めになりがちなんですが、「まんだらけ刊」と言われると、「じゃあしょうがねえ…」っていうw

「ぶんぶくティーポット+」6巻より (森長あやみ/まんだらけ)

お世辞にも大手とは呼べないレーベルながら、シリーズ前作から通算11冊に渡ってこの作品を育んで刊行し続けてくれている感謝と存続の願いも込めて、「出版社:まんだらけ」が頑張って大きくなって安定して欲しいし、報われて欲しい。

作画担当とネーム担当のコンビによるペンネームだそうなんですけど、絵がおしゃれで可愛くて、でもネタが絵の可愛さに甘えずにゆるくてシュール、たまに哲学、大喜利っぽいネタも。打率も高いけど長打も多い。

「ぶんぶくティーポット+」6巻より (森長あやみ/まんだらけ)

一見ファンシーっぽい絵ヅラですけど「毒ファンシー」というか、巻末の売り文句みたら「キュート&ブラック」って書いてて「上手いこと言うなあ」と言う感じ。

日常コメディ漫画ですがネタのジャンルは幅広く、家庭・家族あるあるネタから学園あるあるネタ、ネットやSNSを舞台にした時事風刺ネタ、果ては宇宙人が登場したりタイムスリップしたり並行世界が出てきたりするSF要素から絵の中の世界に閉じ込められてしまうファンタジーまで、ある意味ドラえもん以上に面白ければなんでもアリな感じ。

「ぶんぶくティーポット+」6巻より (森長あやみ/まんだらけ)

高橋留美子の言う「(シチュエーションに放り込んだら)キャラが勝手に動いてくれる」状態なのか、発想が「降りてくる」タイプなのか、どうやってネタ考えてんのかちょっと興味ありますね。

「職人肌」なのか「天才肌」なのか未だによくわからんというかw

「その発想はなかった」というネタの飛び方も良いんですけど、いわゆる「萌え絵」の文脈とは異なりながらもキャラがみんな可愛いです。

女子高生たちが主人公の日常コメディ、というのもド定番なんですけど、むしろその親世代や学校の先生たちもチャーミングなキャラばかり。

「ぶんぶくティーポット+」6巻より (森長あやみ/まんだらけ)

正直、俺もアリ。

 

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#ワンダンス 8巻 評論(ネタバレ注意)

共感性羞恥でダンスを観ることすら苦手な新入生・小谷 花木(こたに かぼく♂)、通称「カボ」。

長身でバスケ部出身、吃音症(どもり)で言葉での自己表現が苦手。

他人に合わせて生きつつどこか窮屈さを感じている少年が、高校でダンスに夢中な少女とダンス部と出会う、ボーイ・ミーツ・ディスティニーなダンスもの。

『ワンダンス』8巻より(珈琲/講談社)

ジャンルで言うと「ストリートダンス」でいいのかな?

初心者ながらバスケ経験者で運動神経は良好、長身なのでダンスも映えるという素質持ちの主人公が部活のレッスン、コンテスト、ダンスバトルを通じてダンサーとして開花していくオーソドックスな展開。

『ワンダンス』8巻より(珈琲/講談社)

美少年・美少女がクールに踊りたくる、眼福な作品。漫画で音を表現しようとするファナティックな志向も見てとれます。

高校対抗ダンスバトル編が前巻で終わって、ワンダに導かれるように夢中でダンスを始めたカボ自身の「踊りたいダンス」が芽生え、彼女と進む道が分かれていく。

『ワンダンス』8巻より(珈琲/講談社)

ブレイキンとダンスバトルにのめり込むカボ、Poppinとショー中心のワンダ。

シンプルな物語展開ですが、情熱とダンスの表現、主人公の急成長の高揚感や「ドヤ感」、思春期の心理の機微、などに主眼を置いた作品で、ストーリー的にあんま難しいことやどんでん返しはかえって邪魔になりそうなので、この漫画はこれでいいと思います(えらそう

『ワンダンス』8巻より(珈琲/講談社)

成長して踊ってドヤ! 成長して踊ってドヤ!

私はそれが見たい。この作者の絵で。

『ワンダンス』8巻より(珈琲/講談社)

あとラブコメもちょっとだけ見たい。

 

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#ゴールデンカムイ 30巻 評論(ネタバレ注意)

明治40年前後の北海道が舞台。日露戦争の二〇三高地で超人的な活躍をして「不死身の杉元」と呼ばれたけど上官半殺しにしてクビになった元軍人とアイヌの少女・アシリパのコンビを主人公に、網走監獄の囚人たちの刺青に刻まれたアイヌの隠し大金塊の地図を巡る血生臭い冒険もの。

「ゴールデンカムイ」30巻より(野田サトル/集英社)

金塊を争う勢力は

①土方歳三一派
②鶴見中尉一派
③杉元・アシリパ一派
④海賊房太郎一派
⑤ソフィア一派

でしたが、同盟などで段々と二極化に近づいて札幌で色々あって、

①土方歳三・杉元・アシリパ・海賊房太郎・ソフィア連合(一部死亡)
②鶴見中尉一派

に二極化・集約されました。

鶴見一派vsそれ以外全部とも言う。

「ゴールデンカムイ」30巻より(野田サトル/集英社)

アシリパが知る「暗号を解く鍵」が両方(つまり全員)に知られることとなり、ついに金塊の在処が明らかに。

運命の地、そして土方歳三にとっては因縁の地、金塊争奪戦の最終決戦は函館・五稜郭へ。

『Zガンダム』の最終話の一つ前、第49話のエピソードタイトルは「生命散って」というもので、最終決戦で個性的な名脇役たちが次々に戦死していくエピソードでした。

世の中には自らを「皆殺しの●●」と形容して喜ぶ、趣味の悪い変態作家も複数います。

「ゴールデンカムイ」30巻より(野田サトル/集英社)

「人が死んだら悲しくて泣ける」というと安い感動のようにも思いますが、特に戦記もののキャラの死に様というのは生き様の裏返し、「何に命を賭けたのか」という話で、醍醐味の一つではあるんですよね。

自分はヘンケン艦長の死に様というか生き様というか、まさに「何に命を賭けたのか」という不器用な最後の選択がとても好きでした。

「ゴールデンカムイ」30巻より(野田サトル/集英社)

「ゴールデンカムイ」を分類しても「戦記もの」には当たらないでしょうが、でもそういう、たくさんのキャラたちの生き様と死に様が交錯する、「生命散って」と副題をつけたくなるような30巻。

あとこれは自分の趣味嗜好によるものかもしれませんが、「Zガンダム」絡みで話すとシャア・アズナブルのごとく、アフター明治維新のフィクション作品に土方歳三が出てくるとどうしても話の中心を主人公から持って行ってしまうきらいはありますねw

「あの」後、土方歳三がどう生きてどう死んだのか、「この作品ではどう描かれるのか」と、興味がついついそっちに…

「ゴールデンカムイ」30巻より(野田サトル/集英社)

次巻31巻で完結。五稜郭の戦いを経て、最後の最後のラスボスとの直接対決、汽車の決戦とエピローグを残すのみ。

読者の皆さんもそれぞれにご贔屓のキャラがいると思います。

もはや「生き残って欲しい」とは口にしないものの、それぞれに本懐を遂げて欲しいものだと思います。

 

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#明日ちゃんのセーラー服 10巻 評論(ネタバレ注意)

学年に1人しか児童がいないド田舎の小学校で育った運動神経抜群で天真爛漫な美少女・明日小路(あけびこみち)が、田舎の私立の名門中学に入学して友達を少しずつ増やしながら過ごす日常をフェティッシュに。
夏休み編が終わって新学期に入って、小路は演劇部に入部。

『明日ちゃんのセーラー服』10巻より(博/集英社)

キマシタワー。

やや番外編的な「小路 自転車初めて物語」の後は、前巻初登場した演劇部の千嵐部長と、ギター弾けるって嘘ついちゃったクラスメイト・蛇森さんの流れの続き。

文化祭に向け、小路は絵莉花と一緒に、古城さんの脚本で演劇を主演することに。絵莉花はこの舞台に期するものがあった…

『明日ちゃんのセーラー服』10巻より(博/集英社)

一方、蛇森さんは小路についた「ギター弾ける」嘘を「嘘から出た誠」にすべく猛練習をするが…

という、まあ相変わらずちっちゃい話なんですけど、思春期の喜怒哀楽を、絵でフェティッシュに、間でどこか詩的に。

ちっちゃい話なんですけど、「蛇森ー! がんばれー!」ってなっちゃいますねw

『明日ちゃんのセーラー服』10巻より(博/集英社)

というか小路の言動が直情的すぎて、もはや「女ルフィ」みたいになってるんですけどwww

「うるせえ! アイドル王に! 俺はなる!!!(ドンッ」

とか言いそう。俺とは言わねえよ。

あと蛇森さんのルームメイトの戸鹿野さん、のバスケットボールの描写が、動いて見えて良いですね。

『明日ちゃんのセーラー服』10巻より(博/集英社)

いつかこの作品が終わったら、スポーツ漫画描いてくれねえかな、この人。

次巻は文化祭、の前に1年生の合宿、「お月見会」なんかな?

 

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#バトゥーキ 13巻 評論(ネタバレ注意)

女子中学生・三條一里はブラジル・マフィアの現ボスの落とし胤だったが、本人はそのことを知らず、組織の末端構成員の夫婦に日本で育てられた。

組織構成員B・Jは組織の跡目争いに一里を参加させるべく、育ての両親を誘拐。

同じ頃、カポエイラ(カポエラ)と出会い夢中になった一里は、両親を人質にとったB・Jの脅迫と指示により、高校生となって以降もカポエイラの腕を磨き、B・Jが充てがう強者たちを相手に実戦を重ねていく。

半グレ組織「悪軍連合」vs一里組の全面対決の決着がつき、物語を引っ張ってきた悪役の黒幕が失脚して新展開。

「バトゥーキ」13巻より(迫稔雄/集英社)

一里が自らの意志で戦いたいと思った強者、次の対戦相手は人気動画配信者で総合格闘家の遊佐春麻。

遊佐が一里につけた条件は、「コラボするに見合うチャンネル登録一万人の配信者になること」だった…

というわけで前巻終盤より、一里組それぞれによる「めざせチャンネル登録一万人配信者大作戦!」。

「バトゥーキ」13巻より(迫稔雄/集英社)

なんの漫画やねんw

ギャグコメ風味ながらいろいろあって(いろいろありすぎや)目標を達成した一里組は、強者だったらカポエリスタ以外でも誰でも乱入アリのオープンホーダ"ニーニョ・ジ・バンバ(猛者の巣)"を開催し遊佐を誘う。

ということで、ヤクザになった純悟と一里との予期せぬ再会して二人とも泥酔、

「バトゥーキ」13巻より(迫稔雄/集英社)

ぼったくりバーでぼったくられかける悪軍鉄馬など、わけのわからない展開が続き、あんま格闘シーンもないギャグコメ中心の巻でした。

その割りには事件というか状況は色々動いて、箸休め巻とも言い難い。なんなんだよこの巻w

あとは遊佐の過去とか、カポエイラの精神・歴史など。

「バトゥーキ」13巻より(迫稔雄/集英社)

カポエイラの天下一武道会みたいのが始まったので、次巻からしばらくはタイマン連戦の格闘シーン続きになりそう。

 

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#【推しの子】 8巻 評論(ネタバレ注意)

地方の病院に務めるアイドルオタな産婦人科医師・ゴローのもとに双子を妊娠したお腹を抱えて訪れた少女は、彼が熱狂するアイドル・アイ(16)だった。驚きショックを受けたゴローだったが、身近に接するアイの人柄に魅了され、彼女の出産を全力でサポートしようと決意する。

だが出産予定日の当日、ゴローはアイのストーカーに殺害される。驚くべきことに、ゴローはアイが出産した男女の双子のうち一人として転生する…

「【推しの子】」8巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

「かぐや様」の赤坂アカの作話を「クズの本懐」等の横槍メンゴが作画、という期待作。

要約すると二周目人生は伝説のアイドルの双子の子どもだった転生チートな芸能界サクセスストーリー、ミステリー付き。

縦軸はありつつも、横軸は主人公の2人が芸能界の様々な仕事を渡り歩いて、作者が見知った芸能仕事の機微を描写していく建て付けに。アイドル編、リアリティショー編ときて、「2.5次元舞台編」。

「【推しの子】」8巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

も、ひと段落して、幕間というか繋ぎの巻なんですけど、よく考えたら縦軸的には本編ですねコレ。

ここ、あかねが気づいたこと、概要としては「別の男」はぼんやり理解できるんですけど、具体的にあかねが想像している人間相関図が自分はイマイチ理解できてない気がします。

「抜け穴」? アクアと同じく視野が狭くなってんのかな。

どっかいい「【推しの子】考察サイト」ねえかなw

アクアとルビーが前世で出会いそれぞれに死んだ地、そしてアクアとルビーとして生まれ変わった地、宮崎県、高千穂町。

「【推しの子】」8巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

自分去年転勤で引っ越していま宮崎なんで、聖地が向こう(誌面)からやってきた、という感じです。

さすがに宮崎グルメツアーやんないですね。当たり前。

横軸・芸能界もの、縦軸・ミステリーものながら、縦軸にそういえば「転生」のファンタジー要素も混じってたな、というのを久しぶりに意識させる新キャラ。

「【推しの子】」8巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

死神ですかね、この子? 宮崎編でスポット一回きりの登場なのか、今後もポイントで継続登場していくキャラなのか。

アクアの決断、そして期せずしてアクアとルビーの目的が、示し合わせることもなく一致してしまいました。

お互いの前世の縁をここに至ってまだ知らず、知るときはもう作品のクライマックスなんでしょうけど、早く見てみたくカタルシスを味わいたく、

「【推しの子】」8巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

気が急いてしまいますね。

次巻より少し時系列が飛んで新章とのことです。

役者も揃って舞台も揃って、作品として一番脂が乗って美味しい時期ですね。

 

 

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#かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ 26巻 評論(ネタバレ注意)

名門の子女が集う名門学園の生徒会長・白銀御行と副会長・四宮かぐや。プライド高いエリート同士、美男美女同士の「告白した方が負け」。稀代のラブコメメーカーによる恋愛マウント駆け引きバトル、現役最強ラブコメ。

「信者」と言っていいぐらい自分はこの作品が好きなので、新刊の度に何を書こうか悩ましいです。褒め言葉のバリエーションがあんまり多くないので。

この作品の新刊に関する自分の感想記事を次の日に読み返すと、毎回「ちょっと気持ち悪いなあ…」と思います。

白銀とかぐやが3年生になり、新キャラも登場し、飛び級でスタンフォード大への進学を決めた白銀に残された高校生活は残りわずか。

四宮家と四条家の抗争がついに勃発・表面化。

それを契機に、幽閉同然にかぐやは登校しなくなりついには白銀への別れをすら切り出し、高校生たちの手の届かないところで事態は進んでいく。名門校の生徒会長とは言え一介の高校生に過ぎない白銀は、それでもまだ、かぐやを救い出すことを諦めていなかった。

ということで最終章、秀知院学園生徒会 vs かぐやを呪縛する四宮家、クライマックス、&決着。

 

連載時以来、正直、評判悪いです。

自分も珍しくこの作品を少々DISります。

この大事な最終盤にきて失速したというよりは、これまであれほど裏設定や要素の膨らましで読者を唸らせてきた同じ作家とは思えないほど、竜頭蛇尾というか、いろいろ雑に。

「描きたいシーン」「描かれるべきシーン」はきっちり押さえていて流石ながらも、そこに至る道程・描写のディティールが、まるで打ち切り漫画が決まった作品のような無理をしたダイジェストな駆け足感で、細かいツッコミどころがノイズになって肝心のシーンで感情移入を損ねています。

なんかスケジュール的に早々に『かぐや様』を畳まなければいけない事情が発生したのか、vs四宮家シリーズが重すぎて読者のストレスになっている自覚からなのか、ネームの資質の本領がコメディであってシリアスではないという自己分析なのか。

でも『【推しの子】』のシリアス展開は面白いんですよねえ…

 

この人が戦犯の主犯です。

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」26巻より(赤坂アカ/集英社)

悪役としてあまりにもテンプレ的に卑俗で小物すぎて能力的にも人格的にも何の魅力もない上に、コメディ適性も皆無で、登場すればするほど読者のストレスになって作品の評価を下げるだけでした。

この人が戦犯の共犯です。

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」26巻より(赤坂アカ/集英社)

当初の大物感と比較して、「実はいい人」のパターンで、蓋を開けたら中途半端な無責任さも含めてあまりにも普通に人間的すぎました。

コメディ適性はね、高くて好きなんですけど。

結局、読んでいて頷かされたり、「悪のカリスマ」の快感を感じるような悪役が描かれず、それゆえに対決そのもののスケールも思っていたより二回りぐらい小さいものに感じ、それゆえにカタルシスに欠けました。

 

展開が雑で性急に感じた原因は、10億円余りまくりとか、物理的に無理がある描写とか、他にもあるんですけど、最終章の直前にいかにも重要ポジションぽく登場した新キャラ、四条帝・担任教師・不知火ころも、あたりの見せ場が前フリに反して全く作られなかったことが、「予定変更=打ち切り」感、雑な性急さを感じさせているように思います。

思ったより人気出なかったんで、早々に見切りをつけた、ということなんでしょうか?

四条帝、

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」26巻より(赤坂アカ/集英社)

かぐやにこのセリフを言わせるためだけの「装置」で終わってしまいました。

シーン自体、セリフ自体は、いいシーン、いいセリフなんですけどね。

 

一連のシリアスなエピソードに挟まるギャグコメ回のキレは相変わらずなので、あるいは「重くて不評な四宮家エピソード」をさっさと片付けることにした、と言うことなんかな。

同じシリアスなエピソードシリーズでも、泣かされた花火大会・体育祭・スマホの写真などの名エピソードに比べると、「宿題をこなした」感がどうしても拭えません。

それでも本屋のコミックコーナーに並んでる漫画の、上位10%に入る面白さではありますけど、読者の、というか私の期待は上位3%とか1%とかに入ってくれることなので、期待のハードルが上がりすぎたせいかもしれません。

 

まあでも、

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」26巻より(赤坂アカ/集英社)

二転三転ブレブレで強引な「為めにする展開」の果てに辿り着いたシーンですけど、このシーンを描きたかったんだと思うし、俺も見たかったシーンなんですよね。

ちょっと笑みを浮かべて、自信と希望を抱えて走り出すかぐや。

 

ヘリのローターに当たって死ぬだろとか、会長の腕力どうなってんだとか、東京からの移動時間計算は大丈夫ですかとか、物理的なツッコミ入れたくはなりつつも、

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」26巻より(赤坂アカ/集英社)

聞きたかった白銀の言葉、見たかったかぐやの表情、見たかった肝心のツボだけはキッチリ押さえて見せてもらったので、いいかな、と思います。

このかぐやの泣き笑いの表情さえ描いてくれたなら。

「終わりよければ全てよし」と言いますが、なによりまだ作品終わってないですし、なんつったって自分、信者ですし。

チープな感想なんか吹き飛ばして手のひらクルクルさせるようなエンディングを期待してます。

 

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#カノジョも彼女 11巻 評論(ネタバレ注意)

幼馴染の咲に小学生以来ずっと片想いで何回フラれても告白し続けた直也。

高校入学を機についに咲にOKしてもらい付き合いだした矢先、直也はクラスメイトの超美少女・渚に告白される。彼女の可愛さと健気さに胸を打たれた直也は…

というガチもんのハーレムラブコメ。

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「カノジョも彼女」1巻より(ヒロユキ/講談社)

いや、ハーレムラブコメのガワを被ったメタ・ラブコメネタのバカギャグコメです。真面目なラブコメと間違って買わないように気を付けてください。

作者は「アホガール」の人。

「借金が雪だるま式に増えていく」とは聞きますが、「彼女が雪だるま式に増えていく」とは聞いたことがない。正々堂々と二股かけて更に彼女候補が2人いて現在ヒロイン4人体制。

「カノジョも彼女」11巻より(ヒロユキ/講談社)

咲の親友として直也の二股を解消させるはずがいつのまにか直也に心惹かれてしまった、作中唯一の(比較的)シリアス要素だった紫乃さんの秘めた片想いが炸裂した沖縄編が終わり、紫乃さんの恋も晴れてオープンに。

紫乃さんは直也を成績学年一位に押し上げ、直也の両親に咲と渚との二股を認めさせ安定させた上で、三股目の彼女を目指すことに。

「カノジョも彼女」11巻より(ヒロユキ/講談社)

いや、その発想はおかしい。

他、二股彼女たちに先んじて直也と紫乃がキスしてしまった波紋。

夏休みの終わりに宿題やりたくない→勉強したくない→プロゲーマーになりたい→プロゲーマーより収益が得られそうな配信者になりたい、と世の中のプロゲーマーや配信者の苦労をナメきった咲が、人気配信者のミリカに弟子入り、コラボ配信でスタートダッシュを狙うことに。

「カノジョも彼女」11巻より(ヒロユキ/講談社)

直也を巡って犬猿のライバルの仲の咲とミリカのコラボ配信の行方は…

と、作者のあとがきにあるとおり、前巻・前々巻が比較的シリアスだった反動か、今巻は完全にギャグコメ中心巻。

なんつーか、やっぱコイツらDISり合いと狂気じみたバカ発言こそが本領発揮というか、

「カノジョも彼女」11巻より(ヒロユキ/講談社)

イキイキして輝いてんねw

 

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#トニカクカワイイ 20巻 評論(ネタバレ注意)

基本は理系天才フリーター・ナサくんと、謎多きクール美少女・司(つかさ)さんの、なんか可愛い男の子と女の子の新婚生活ラブコメ。

SFファンタジーな「かぐや姫」伝承にまつわり不老不死であることを匂わせつつ隠してきた日常ラブコメの、隠してきたその謎の真相が「第一部 完」として15巻で明らかに。

「トニカクカワイイ」20巻より(畑健二郎/小学館)

月読時子の死後、ナサくんと司さんのToDoになっていた、「京丸の屋敷」の遺産整理のための訪問。日常展開で数巻ほどイチャイチャしていたがようやく重い腰を上げて訪問することに。

時を同じくして、ナサが教える女子高生たちも「秘境の撮影旅行」と称して偶然「京丸の屋敷」の辺りを訪れる計画を立てていた。

彼女たちの中には勘が鋭く頭も回る、「輝夜(かぐや)」を名乗る少し不思議な少女もいた…

「トニカクカワイイ」20巻より(畑健二郎/小学館)

信長の墓標もあったりするんかしらん。

ということで、亡くなった月読時子が司さんのために私財を投じて隠し維持していた「京丸の屋敷」の謎を、謎の多い少女・輝夜を狂言回しに探る巻。

「トニカクカワイイ」20巻より(畑健二郎/小学館)

輝夜はどうも月のかぐや姫の転生体っぽいんですけど、意識というか記憶が完全に覚醒してないっぽくもありますね。

京丸の屋敷の地下の貯蔵庫、その奥の不審な扉。その扉の向こうには…

ということで、再び司さんの1400年にわたる過去に迫る、前フリ巻。なんというか続きが気になる面白そうな前フリがお上手ですね。

「トニカクカワイイ」20巻より(畑健二郎/小学館)

ナサくんはいいとして、我々読者も全部聞かせてほしいところですけど。

予告編効果というのか、前フリ・風呂敷広げるのが上手な漫画家は珍しくはないんですが、風呂敷畳む段になってがっかりすることの方が多かったりしますけど、この漫画、この作者に関しては第一部の鮮やかな手際を見せられたので、信用というか、安心してワクワクできる感じします。

あとは、シリアスげな描写に挟まるように相変わらずのギャグコメ展開、

「トニカクカワイイ」20巻より(畑健二郎/小学館)

イチャラブ展開と、硬軟織り交ぜながら。

今巻割りと繋ぎの巻だったし、完結までに時間がかかりそうな話ですけど、その途中をクオリティ高く飽きずに楽しく読ませてくれるのは、美徳ですよね。

 

 

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#よふかしのうた 11巻 評論(ネタバレ注意)

少年・夜守コウ(14)はふとしたきっかけで「上手くやれていた中学生活」が嫌になり不登校に。ある夜、夜の散歩で街を放浪していると「夜と不眠」に一家言持つ謎の美少女・ナズナに声をかけられ、血を吸われる。彼女は吸血鬼だった。

「よふかしのうた」11巻より(コトヤマ/小学館)

夜に生きる眷属になりたいと願っても吸血鬼化しないコウ。彼女が照れながら語る「吸血鬼になれる条件」は「吸血鬼に恋して血を吸われること」だった。

「だがしかし」作者の吸血鬼ファンタジーな青春ラブコメ。作品全体を通じてアンニュイとそのアンニュイからの解放が夜を舞台に描かれる。

前々巻、急展開で非日常日常ラブコメがシリアスサスペンスに変貌しましたが、前巻で更に急展開して1周回って非日常日常ラブコメに、今巻では更に話の焦点が謎の多い吸血鬼・キクと彼女に魅了される少年マヒルに移り、再びシリアスに、そしてバイオレンス風味に。

「よふかしのうた」11巻より(コトヤマ/小学館)

謎多き吸血鬼・キクは一体なんなのか、一体いつから「居る」のか、そんな彼女に魅了されるマヒルには過去なにがあったのか。

初期の吸血鬼日常ラブコメに比べると、コメディからサスペンス・バイオレンスに作品ジャンルそのものが変わったと言えば変わったようでいて(作者もそれは気にしているみたいなんですが)、

「よふかしのうた」11巻より(コトヤマ/小学館)

夜を舞台にしたアンニュイな青春ものとして共通していて、ジャンルの移行というより乱高下も意外とスムーズにシームレスに進んでる気がします。

なによりも、作者自身が制御できるギリギリを攻める漫画というのは、作者自身もどうなるかわからないと言うとおり予定調和の対極というか、

「よふかしのうた」11巻より(コトヤマ/小学館)

バイオレンスな青春。

読んでいて予想がつかずスリリングでやはり良いものだな、と思います。

どんどん筆すべっちゃえすべっちゃえ〜、と無責任なことを。

「よふかしのうた」11巻より(コトヤマ/小学館)

久しぶりにアキラを、そしてミドリを見た気がしますが、ミドリやっぱかんわいい。

あ、そういえばアニメ化決まったんでしたっけか?

これは観よう。

 

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