#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#ラジエーションハウス 10巻 評論(ネタバレ注意)

幼い頃にそれぞれお医者さんとレントゲンの人になって患者さんたちを助ける約束をした女の子と男の子。男の子は約束を果たしさらに研鑽を積み天才的な技量を持つ放射線技師となり、果たして女医になっていた女の子が務める病院に遂に採用された。が、女の子は約束どころか、男の子のことさえ憶えていなかった…男の子は平凡な技師を装いながら、女の子を陰ながら支えるのだった…

というボーイ・ミーツ・ガール・アゲインなラブコメ医療ドラマ。「今日のあすかショー」のモリタイシの現作、原作・監修は別の人。

f:id:AQM:20201221201156j:plain

「ラジエーションハウス」10巻より(モリタイシ/集英社)

放射線医と放射線技師の両方が監修に。

今巻は「脳脊髄液減少症」が取り扱われます。「きまぐれオレンジ★ロード」のヒットで知られ、この10月に亡くなられた漫画家のまつもと泉先生が長い間患っていた病気です。

f:id:AQM:20201221201206j:plain

「ラジエーションハウス」10巻より(モリタイシ/集英社)

発見が困難なこの病気の発見、検査、治療のプロセスが丁寧に描写されます。

レアな病気で症状も一般にあまり知られていないので、まつもと先生大変だったなコレ…

表紙の左のイケメンがいけすかない野郎かと思ってたら、前巻・今巻と「なによアンタいい奴じゃないの」という感じで

f:id:AQM:20201221201216j:plain

「ラジエーションハウス」10巻より(モリタイシ/集英社)

悪い奴がいない漫画だなーと思ってたら、そういえばアイツがいたわ…という感じで次巻に続く。

あとがき読むとモリタイシ先生も引き続きご苦労が絶えないようですが、応援してます。なにげに今月2冊出してんのよね。

新刊お待ちしてますが、どうかご無理のないペースで。

 

 

aqm.hatenablog.jp

#CANDY&CIGARETTE 8巻 評論(ネタバレ注意)

警視庁警備部警護課でSPとして定年まで勤め上げ退職した平賀雷蔵(65)、孫の医療費のために大金を求めて、武道高段者・月給100万の求人チラシに魅かれて再就職した先は政府の外郭団体の裏組織、仕事の中身は女子小学生アサシン・美晴(11)とコンビを組んでの殺し屋稼業だったジジロリ・アクション・ハードボイルド。

ヒロインが可愛い子なんですけど掲載が青年誌別冊ということもあって、小学生にして敵をバンバン撃ち殺しグサグサ刺し殺し「あ、これアニメ化できないやつ…」ってなる。デュナンや素子やレヴィですらこんなに殺してねえw あとパンツ見えすぎ。

f:id:AQM:20201219191549j:plain

「CANDY&CIGARETTE」8巻より(井上智徳/講談社)

武器商人ファルコーネ一家の暗殺指令に、平賀の孫の難病を治す新薬を求めて、流れ流れて中東へ。

現地の武装勢力と武器商人の会合に難民に政府軍まで現れて四つ巴の状況に介入。

表紙の、武器商人の傭兵でヒロインのライバルになりそうな少女殺し屋をめぐる意外な展開。

f:id:AQM:20201219191559j:plain

「CANDY&CIGARETTE」8巻より(井上智徳/講談社)

結構あれよね。少年誌っぽいルックスの作品ですけど、青年誌掲載ってこともあって少女であっても割りと容赦のない流血描写。相変わらずバンバン殺してバンバン死ぬ漫画。

今巻は状況整理と溜めの巻という感じでしょうか。溜まりに溜まった因縁と鬱憤がマグマのように積滞して渦巻いて、

f:id:AQM:20201219191537j:plain

「CANDY&CIGARETTE」8巻より(井上智徳/講談社)

次巻はめちゃくちゃだなコレ。

 

 

aqm.hatenablog.jp

#カナカナ 1巻 評論(ネタバレ注意)

ニコニコ動画のMHP3実況ぐらい以来、ゲーム実況&ミュージシャンのMSSPが好きで、今でもYOUTUBEのチャンネル登録してるぐらいのファンです。

独りでゲームやってる時にラジオ代わりに流しとくとなんか友達とゲームしてるっぽいにぎやかな感じになるので、延べ再生時間が割りとすごいことに。

www.youtube.com

特にeoheohはずっとFPSのCoDシリーズやってることもあって、FB777とのCoD実況シリーズはヘビロテで再生しててTwitterもフォローしてんですけど、公式ブログの新記事が「最近読んだ漫画15」とのことだったので

 「見せてもらおうか!ゲーム実況者の読んだ漫画とやらを!」

という謎の上から目線でブログを見に行ったら

「うわぁあああああ西森博之の新刊出てるぅううううう」

ってなりました。見落としてたわ。ありがとうeoheoh!

 

自分は特に西森博之フリークを強く自認してるわけでもないんですけど、こないだkindleで数えたら

ゆうきまさみ 109
西森博之 96
尾田栄一郎 92
克・亜樹 82
あだち充 69

と「私の蔵書数の多い作家」2位でした。この漫画が97冊目ということになります。

4位の克・亜樹はこないだ「ふたりエッチ」を全巻イッキ買いしたからです。

 

5歳ぐらいの少女・カナカは他人の心が読めるテレパス持ちで幼少期以来、「家族八景」の七瀬のようにその能力に苦しんできた。

f:id:AQM:20201219171121j:plain

「カナカナ」1巻より(西森博之/小学館)

唯一の理解者だった祖母が亡くなり、親戚をたらい回しにされた挙句にその能力を金儲けに利用しようとする男に引き取られかけたカナカは裸足で逃げ出し、公園で元ヤンの経歴と恐ろしい外見に反して単純バカだが裏表のない綺麗な心を持った男・マサと遭遇する。

f:id:AQM:20201219171133j:plain

「カナカナ」1巻より(西森博之/小学館)

マサもまた遠縁で、またヤンキー体質で頼られたら捨て置けない性格だったこと、カナカ自身が強く望んだことから、カナカはマサに引き取られ、マサが営む居酒屋で暮らすことになった…

f:id:AQM:20201219171148j:plain

「カナカナ」1巻より(西森博之/小学館)

という、西森博之の新作は「テレパス少女もの」+「血の繋がらない父娘もの」。

それぞれ人気ジャンルで割りと鉄板、こないだ完結した「ヒナまつり」も超能力少女とヤクザの父娘ものでしたね。

aqm.hatenablog.jp

自分の好きな「お茶にごす。」の主人公・雅矢に名前だけでなく性格も似てて、良き理解者の親友・山田っぽいのまでいます。

内容もヤンキーとお金持ちを絡ませずにはいられない、シリアスとコメディの落差が激しくワイルドな安定の西森ワールド。

端から見たらどう見てもガール・ミーツ・誘拐犯。

不幸な幼少期を過ごしたカナカが、マサに引き取られてとても可愛らしく幸せそうなので、もうこの巻で最終巻でもいんじゃねえかなってぐらい心がぴょんぴょんしますね。

いや、いっぱい巻数出してもらわないと困りますけれども。

 

カナカナ(1) (少年サンデーコミックススペシャル)

カナカナ(1) (少年サンデーコミックススペシャル)

  • 作者:西森博之
  • 発売日: 2020/12/18
  • メディア: Kindle版

 

aqm.hatenablog.jp

 

aqm.hatenablog.jp

 

aqm.hatenablog.jp

 

aqm.hatenablog.jp 

(選書参考)

lineblog.me

#トニカクカワイイ 14巻 評論(ネタバレ注意)

理系天才フリーター・ナサくんと、謎多きクール美少女・司(つかさ)さんの、なんか可愛い男の子と女の子の新婚生活ラブコメ。

SFファンタジーな司さんの秘密を匂わすだけ匂わせつつ、触れずに初々しいラブラブ新婚夫婦の日常に的を絞って、余力を感じるというかまだ変身を残して余裕、みたいな。

前巻以来の洋館での肝試しという謎展開の続き。

f:id:AQM:20201218163452p:plain

「トニカクカワイイ」14巻より(畑健二郎/小学館)

えっ、なんなんソレ。平将門に剣術教えたヒロインのラブコメってもうどう消化したらいいのかよくわからんわw 謎のアクション展開を経て再び日常回へ。

この漫画でいう「日常回」とはまだセッ久してない初々しい新婚夫婦のぎこちないイチャコラを愛でる回のことです。

相変わらず俺ら金払ってなに読まされてんだっていう、悪い言い方すると似たような話が続くんですけど、

f:id:AQM:20201218163513p:plain

「トニカクカワイイ」14巻より(畑健二郎/小学館)

なにを言っているの?

楽して描いてるとは言わないけど楽しく描いてはいそうですけど、俺らは俺らで可愛いから買って読んじゃうし、そしたらそしたで作者としても路線変更する必要もないですし、という。もう14巻ってマジかよ。

匂わせですがヒロインが古代から大変長生きしてる作品だと思われますけど、気がついたら他にも「寿命ギャップ」のドラマを描く漫画が今年はなんだか増えたなあ、という印象があります。

タイトルで「トニカクカワイイ」言うてる半日常ものラブコメをわかってて読んでるんで全然いいんですけど、この作者は余裕ぶっこいててたまになんかムカつくので、たまにはやろうとしてたネタを他の作品に先を越されてアタフタするところが見てみたいなあ、とか思いました。

 

トニカクカワイイ(14) (少年サンデーコミックス)

トニカクカワイイ(14) (少年サンデーコミックス)

  • 作者:畑健二郎
  • 発売日: 2020/12/18
  • メディア: Kindle版

 

aqm.hatenablog.jp

#ゴールデンカムイ 24巻 評論(ネタバレ注意)

明治40年前後の北海道が舞台。日露戦争の二〇三高地で超人的な活躍をして「不死身の杉元」と呼ばれたけど上官半殺しにしてクビになった元軍人とアイヌの少女・アシリパのコンビを主人公に、網走監獄の囚人たちの刺青に刻まれたアイヌの隠し大金塊の地図を巡る血生臭い冒険もの。

金塊を争う勢力は

①土方歳三一派
②鶴見中尉一派
③杉元・アシリパ一派
④海賊房太郎一派
⑤ソフィア一派

前巻か前々巻ぐらいで登場した海賊房太郎がよりによって初っ端から杉元・アシリパ組に激突、向こうの得意な舞台・水中戦に。

f:id:AQM:20201218031059j:plain

「ゴールデンカムイ」24巻より(野田サトル/集英社)

クッソワロタ。お願いだからバトルの時ぐらいバトルに集中してくださいwww

あとあのアレ。24巻で今更こんなこと書くのもアレなんですけど、グルメ描写は単行本ごとの義務というかノルマなんだね、もう。いいなー、美味しそう。

前巻で発生した札幌の通り魔事件に最初に接触したのは鶴見中尉一派。通り魔犯の意外な正体とは…

f:id:AQM:20201218031110j:plain

「ゴールデンカムイ」24巻より(野田サトル/集英社)

こっちが言いてえよ。なんなんだよこの漫画。頭おかしんじゃねえのかこの作者www

そんなこんなのうちにソフィア一派以外の全勢力が札幌に集結してガチンコな展開になっていく気配です。ソフィアも札幌来ないとどうにもなんねえべコレ。

はー、バカだねえこの作者。ほんとバカだねえw

 

 

aqm.hatenablog.jp

#葬送のフリーレン 3巻 評論(ネタバレ注意)

80年前、魔王を打ち倒し平和をもたらした伝説のパーティ。

勇者ヒンメル。戦士アイゼン。僧侶ハイター。魔法使いフリーレン。

王都に凱旋した彼らには、世界を救った功績に対する歓待と、その後の長く平和な人生が待っていた。

80年が経ち、勇者も僧侶も寿命で世を去り、戦士(ドワーフ?)も老いた中、長命種エルフの魔法使いフリーレンだけがひとり変わることなく魔法を求めて彷徨いながら、かつての仲間の死と追憶に触れていく異色のファンタジーもの。

ヒロインからしたら一瞬にすぎない間しか同じ時間を過ごせない、エルフと人間の寿命と時間感覚のギャップの哀愁を淡々と。

グラナト伯爵領編が完結、舞台は更に北の地へ。

f:id:AQM:20201218020500j:plain

葬送のフリーレン 3巻(山田鐘人/アベツカサ/小学館)

フリーレンの修行の過程はなんだか「ハンター」の念能力の修行みたいで面白いねw

1巻の時点でコンセプトも表現も素晴らしいと思ったものの、「伝説の魔法使いのその後」を中心とした哀愁・追憶もので、ある意味で出オチであとは設定なりでたまに水戸黄門的にちょこちょこっと俺TUEEEEする小品に落ち着くのかな、と思ってたんですけど、どうも作者はフリーレンにもう一花咲かせる算段というか、この設定で描きたい事がもっとたくさんあるようです。

「手足がぶっとい犬はでっかくなる」とはよく言いますが、この漫画の手足のぶっとさを感じさせる展開。ダーク・シュナイダーももともと伝説の魔法使いでしたけど、作中も現役でイケイケで大暴れしてましたしね。

淡々としていつつもバトル描写も俺TUEEEEもコメディも追憶パートも読ませる描写で、心の中で出オチ扱いしてすみませんでしたという感じ。

f:id:AQM:20201218020512j:plain

葬送のフリーレン 3巻(山田鐘人/アベツカサ/小学館)

地味だけど良いエピソードだなコレ。

予想に反して尻上がりに面白く盛り上げていく作品っぽく、今後の展開への期待が更に膨らむ3巻でした。

早くもこの作品の最終回をあれこれ想像してるんですけど、どのパターンでも泣いちゃうやつだなあコレ。

 

aqm.hatenablog.jp

aqm.hatenablog.jp

#あつまれ!ふしぎ研究部 10巻 評論(ネタバレ注意)

高校に入学した大佑。部活を悩んでたところに頼まれごとで倉庫だと思って荷物運んだ先の木造の掘っ建て小屋は、オカルト担当の鈴(1年)、マジック担当の千晶(2年)、催眠術担当のことね(3年)、の3人の美少女の寄り合い所帯、「ふしぎ研究部」の部室だった!的な1話8ページの学園コメディ。

イカ娘の作者のやることなので、女の子は可愛く、ラブ・エロ・ハーレム・ギャグ・オチ・設定、あらゆる要素がユルく、昭和というか戦前みたいセンスのほのぼのギャグ、という他が真似し難い膝から崩れ落ちそうになる独特の雰囲気、イイ味出してる。

最近ハーレムラブコメについて思うところがありまして。

可愛いヒロインがたくさんいれば読者は嬉しいし、たくさんいるヒロインの誰かを好きになってくれれば作者側も嬉しいんですけど、そこに真面目に恋愛感情を乗せるのは元々無理があって、三角関係ぐらいならともかく、普通にそれぞれのヒロインと恋愛をやったら男主人公は五股六股どんとこいの人間のクズです。

その「ハーレムラブコメのジレンマ」をなんとかするために、多くのハーレムラブコメでは朴念仁・恋愛音痴・難聴などの属性で男主人公の恋愛感情を裏返したカードのように場に伏せて、恋愛における「中立性」を保つわけなんですが、このデクノボーのような主人公のポーカーのカードのようにラスト近くに初めてオープンになる恋愛感情に、真面目に感情移入するのはだいぶ無理があるように思います。

リアリティというよりあくまで感情移入の問題です。

近年、「この作者こそは!」と2〜3の作品にこの「ハーレムラブコメのジレンマ」を打開してくれそうな期待をしていましたが、結果あまり成功しているようには感じられず、「このジャンルは真面目に読むもんじゃない」との思いがかえって強くなりました。

f:id:AQM:20201217104646j:plain

「あつまれ!ふしぎ研究部」10巻より(安部真弘/秋田書店)

「可愛いヒロインがたくさんいれば嬉しい」というのは基本的にバカの発想で、バカな土台の上で真面目に恋愛感情を描こうというのはそもそも無理があるんじゃないかと。

「男が登場しない漫画」も一つの解ですが、それ以外に脱却しつつあると思っている一つが恋愛感情に発展しない、多くのヒロインが主人公との恋愛対象にならない作品で、

f:id:AQM:20201119100739p:plain

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」20巻より(赤坂アカ/集英社)

もう一つがこの作品のように徹底的にバカバカしい作品です。

褒め言葉と受け取ってもらえるかわかりませんが、この漫画の「誰とくっつくか」への興味の湧かなさ、すごい。「ヒロインを好きになるのは主人公ではなく読者」と言わんばかりに、主人公の恋愛感情、「特定のヒロインとくっつく期待」をぶん投げて捨てているように見えます。

f:id:AQM:20201217104733j:plain

「あつまれ!ふしぎ研究部」10巻より(安部真弘/秋田書店)

暴論ですが、ハーレムラブコメは本来バカが描いて(自分のような)バカが読むものです。

「可愛いヒロインがたくさんいれば嬉しい」というバカな動機だけでドライブしているこの作品を歴史に残る大傑作だと思いこそしないものの、ヒロインが競走馬のように恋愛ポイント獲得レースを繰り広げるでもない、この潔くて平和でバカバカしいこの作品世界が、最近なんだかとても心地よく感じられてしまいます。

そんなん言ってこの作品も最後どうなるかわかんないんですけど、最後までこのバカバカしさを貫いて欲しいなーと思います。

なんだろ、自分は要するにただ単に「無理してくっつけんな」派なだけのような気もしますね。

 

 

aqm.hatenablog.jp

#声がだせない少女は「彼女が優しすぎる」と思っている 2巻 評論(ネタバレ注意)

転校生の少女・真白 音は失声症、声を出すことができない。筆談で会話する彼女に最初こそ話しかけてきたクラスメイトたちも、2週間もすると面倒がって彼女との会話を避けるようになった。

そんな落ち込む彼女にぶっきらぼうに話しかけてきたのはツインテでぶっきらぼうで無愛想なクラスメイト・心崎菊乃。菊乃は他人の心が読めるテレパス、超能力者だった。

という、喋れない少女と心が読める少女の友情を描いたファンタジー日常もの。「喋れない」と「心が読める」の、重くて暗くなりがちなテーマを掛け合わせたら、こんなに優しく楽しく可愛らしい漫画に。

1巻というか初期設定の時点でどう転んでも優しい話なので「設定なり」と言ったら創作者に対して大変失礼ですけど、日常回を回すだけで自然と優しい話になります。

音は設定的にもビジュアル的にも一見大人しげに見えますけど、結構いい性格をしてますねw

望む望まないに関わらず他人の心が読める菊乃は、便利な能力のように、失語症の音の良きサポート役になれそうに一見思えますが、これまでその能力のせいでたくさん傷ついてきて、その分他人に対してとても臆病です。

f:id:AQM:20201215180359p:plain

「声がだせない少女は「彼女が優しすぎる」と思っている」2巻より(矢村いち/秋田書店)

音と菊乃の事情はそれぞれ違っていて、どっちが大変だったかなんて他人にも本人たちにもわかりませんし比べることでもないですが、他人に相談できない・理解されない悩みと言う意味で菊乃の境遇はとても特殊です。

母親は知ってるのね。当然か。

もしかしたら「きまぐれオレンジ★ロード」の改訂版のラストのように最終回の後のことになるかもしれないですけど、いつか菊乃が音に「本当のこと」を話せる日がくると良いなと思います。

 

 

aqm.hatenablog.jp

#働かないふたり 21巻 評論(ネタバレ注意)

無職ながら、実家で両親に扶養されながら雲のように風のように楽しく暮らす、兄・守と妹・春子の日常コメディ。

資質に恵まれ、家族に恵まれ、周囲に恵まれ、無職でいることのネガティブな面はあまり描かずに、ニートに関わるドキュメンタリーではなく、精神的なファンタジーに近い。

無職は哲学や詩と相性が良いということなのか、哲学的で詩的な毎日。ギャグコメディと、日常あるあると、良い話と、人生のヒントのようなもの。まあ、ファンタジー。

f:id:AQM:20201214220008j:plain

「働かないふたり」21巻より(吉田覚/新潮社)

マンネリなのにエピソードは常に新しく、平成後期〜令和の「サザエさん」のようなもの。

日常ものなんで「続きが気になる」って作品ではないですが、ラストはちょっと気になりますね。

テーマのベースはニートという社会問題?から始まった話ですけど、社会問題の側や「親が働けなくなったら将来どうするの?」という誰もがニートについて思う余計なお世話な問題が特に解決をみたわけでもなく横たわり続けている中で、

f:id:AQM:20201214220034j:plain

「働かないふたり」21巻より(吉田覚/新潮社)

ユルい生き方を肯定的に描いてきたこの作品が「実はすごい才能を持っていて最後はニート卒業して二人とも仕事に就きました」で終わるのも違和感があるし、「日々は続いていく」エンドしかないんですかね。

f:id:AQM:20201214220021j:plain

「働かないふたり」21巻より(吉田覚/新潮社)

とかつらつらと考えていたら、今巻では巻末に特別編で「10年後」が描かれました。未来の時間軸が描かれるのは初めてだっけ?

どんな10年後だったかは、ぜひ本編で。

 

働かないふたり 21巻: バンチコミックス

働かないふたり 21巻: バンチコミックス

  • 作者:吉田覚
  • 発売日: 2020/12/09
  • メディア: Kindle版

 

aqm.hatenablog.jp

#ねこ、はじめました 8巻 評論(ネタバレ注意)

車に撥ねられた男子高校生が気がついたら猫になってて女子高生・チカちゃんに拾われて飼われる日常もの。そんな非日常な日常ものがあるか。

ラノベみたいな設定だけどエロ要素ゼロなのと人類の目がデカいのは自分からちゃおコミックス読みに行っといて文句言ってはいけない。

「猫になって一人暮らしの可愛い女子高生に飼われてもふられる」と言えば「教室に乱入してきたテロリストをやっつける」と並んで男子7大妄想と言われていますが、入れ替わりというか正体が人間のアドバンテージをまったく活かせてない猫の、自分や飼い主にモノローグでツッコミまくる間抜けで癒し系な日常もの。チカちゃんポンコツ可愛い。

前巻ラストで特に何の理由もなく入れ替わりが元に戻った(2回目?)ので、「すわ完結か」と一瞬思いましたが、

f:id:AQM:20201214115707j:plain

「ねこ、はじめました」8巻より(環方このみ/小学館)

特に何の理由もなく再び入れ替わって主人公は再び猫になりました。なんなんお前ら。

というかこの状況で積極的に人間に戻ろうと思ってない主人公すごいし、自分の人間の体に猫の魂が入って生活してるのを割りとスルーしてる主人公すごい。

あとはいつもの、これまで楽しかったのと同じように楽しい日常回です。割りとシュールな投げっぱなしオチも相変わらず。

f:id:AQM:20201214115726j:plain

「ねこ、はじめました」8巻より(環方このみ/小学館)

登場人物がほぼニャオとチカちゃんしかいない漫画とは言え、いつもよりチカちゃんの出番が多くて嬉しい。

電子書籍のメリット・デメリットは様々ありますが、大の大人の男が普通にちゃおコミックスを何の葛藤もなく買えるのはメリットだなあ、と毎巻思います。

 

ねこ、はじめました(8) (ちゃおコミックス)

ねこ、はじめました(8) (ちゃおコミックス)

 

aqm.hatenablog.jp

#新九郎、奔る! 6巻 評論(ネタバレ注意)

室町後期(戦国初期)の武将、北条早雲の幼少期からの伝記もの。享年64歳説を採用。

中世代を舞台にした作品ながら、現代の話し言葉を大胆に採用、横文字もガンガン出てくる。おっさん達の政争劇は作者の本領発揮なイメージ。

北条早雲の伝記を漫画の上手のゆうきまさみが、の時点で面白いに決まってんだけど、日本史の中でも複雑で難解なことで有名な応仁の乱がらみ。渋すぎるテーマをどう捌くのか。

京都の戦乱が地方に飛び火。兄の死で伊勢備前守家の嫡男に繰り上がり、数えで十六となった新九郎も領主である父の名代、次いで正式に当主を継いで領地・荏原郷(岡山県井原市)へ。

いわゆる「平盛時禁制」も描かれ、荏原郷編も今巻で完結。

f:id:AQM:20201213185217j:plain

「新九郎、奔る!」6巻より(ゆうきまさみ/小学館)

ようやく主人公が跡取りのボンボンを卒業して能動的に動くようになって、エンジンかかってきた感じ。煩悩に苛まれ金欠に喘ぐ若輩ながら小気味良いですね。やってることは政治家というよりサラリーマン金太郎みたいですけど。あと、ついでにいろいろ卒業してますけど。

f:id:AQM:20201213185244j:plain

「新九郎、奔る!」6巻より(ゆうきまさみ/小学館)

作品全体というか、この後は関東を中心に活躍の場を移していく新九郎の生涯を鑑みると、荏原郷編はせいぜい「若かった頃の武勇伝」ぐらいの位置づけじゃねえのかなと思うんですけど、盛頼といい弦姫といい良いキャラがいたので今後出番があまりなさそうと思うと結構もったいない気もします。あんま歴史詳しくないけど、どうなん? もう出てこない系?

並行して新九郎の次の活躍の舞台、東国の情勢が丁寧に描かれますが、これがまた現時点の新九郎とあまりにも関係なさすぎて浮きっぷりがすげえ。セリフも説明も目が滑って全然頭に入ってこねえw

この辺は次巻・次々巻で本格化したらもっかい読み返そう。

 

ちなみに今月はゆうきまさみ関連ではこんなんも予定されてますが、

ゆうきまさみのまだまだはてしない物語

ゆうきまさみのまだまだはてしない物語

 

こんなんも予定されてるそうです。

f:id:AQM:20201213185318j:plain

「新九郎、奔る!」6巻より(ゆうきまさみ/小学館)

なにげに祭りだワッショイやんけ。

いま自分のkindleで数えたら、

ゆうきまさみ 109

西森博之 96

尾田栄一郎 92

克・亜樹 82

あだち充 69

で、ゆうきまさみの著作は109冊持っててうちのkindle書棚の全作家中トップなんですが、毒を食らわば皿まででもう全部揃えようかな。

毒て。失礼な。

 

新九郎、奔る!(6) (ビッグコミックス)

新九郎、奔る!(6) (ビッグコミックス)

 

aqm.hatenablog.jp

#君は放課後インソムニア 5巻 評論(ネタバレ注意)

進学高の1年生、不眠症に悩む少年と不眠症に悩む少女が、昼寝場所にしようとした学校の天文台で出会うボーイミーツガール。

夏休み!ということで二大イベントの二、能登半島、古民家を拠点に二人天文部の撮影旅行の巻き。

お目付役でヒロインの姉も帯同ながら…

正直もうこのイベントやっちゃったらこの漫画あと何すんのってぐらいの甘々でピュアピュアでサザンの新曲のPVかなんかですかっていう蜜月な巻。

f:id:AQM:20201213011537j:plain

「君は放課後インソムニア」5巻より(オジロマコト/小学館)

このヒロインは作品当初から心臓に病気を抱えていて、今巻登場の姉も少年にあらためてそれを告げます。

この巻が甘々すぎるのがかえって美しい思い出が今まさに作られてる感があって、なんか世界の中心で愛を叫んでいるような、この作者らしくない展開が待っているんじゃないかとイヤな予感さえしてしまう。

はあ、学生時代に戻ってやり直してえような、戻ったってこんな青春送ってたわけでもねんだよな、っていう。

f:id:AQM:20201213011557j:plain

「君は放課後インソムニア」5巻より(オジロマコト/小学館)

今巻が割りと最高潮すぎて、次巻からマジどうすんだべな、この漫画。とりあえずまだ撮影旅行の続きかな?

試しに「真夏の果実」をエンドレスに聴きながら読み返すと…「アレこれ『真夏の果実』のコミカライズかな?」ってなりました。

 

 

aqm.hatenablog.jp

#あそこではたらくムスブさん 3巻 評論(ネタバレ注意)

「今日のあすかショー」のモリタイシの、コンドームを製造する会社の商品開発を舞台にした「協力:相模ゴム工業株式会社」がクレジットされる、コンドームの新製品開発担当の白衣の美女・結さん(26)と、彼女に惚れてしまった営業企画担当の気が小さくてお人好しの若手・砂上くん(24)のお仕事ラブコメ。医療漫画「ラジエーションハウス」と並行して連載。

f:id:AQM:20201211224203j:plain

「あそこではたらくムスブさん」3巻より(モリタイシ/小学館)

砂上くんと2人で残業して厳しい実家の門限も終電も逃してしまった結さん。とりあえずこの夜をどうするか、ファミレスで食事しながら策を練る2人。

というまあまあ、ラブコメの定番展開。奥ゆかしい2人が延々ああでもない、こうでもない、と焦れったいはずの展開ですけど、あんまり読んでて焦れてイライラしないのは、どこかピュアな2人の人徳と、結さんをとにかく可愛らしく描く眼福な作者の画力のせいでしょうか。

f:id:AQM:20201211224226j:plain

「あそこではたらくムスブさん」3巻より(モリタイシ/小学館)

というか、モタモタした割りに大胆なことするね君たち。という展開から二段オチで更に大胆な展開に。今なの!????

なんか昔、自分が告白したときの女の子のリアクションそっくりでいろいろ思い出すね! 2人とも不器用で見ててドキドキするわ。

なんつーかいきなり距離がものすごく縮まったんですけど、次巻で完結とかしちゃわないかAQM心配。

あと、

f:id:AQM:20201211224329j:plain

「あそこではたらくムスブさん」3巻より(モリタイシ/小学館)

巻末に協力のサガミオリジナルのでっけー広告入っててクソワロタ。

 

aqm.hatenablog.jp

aqm.hatenablog.jp

aqm.hatenablog.jp

#アルスラーン戦記 14巻 評論(ネタバレ注意)

田中芳樹の高名なファンタジー戦記を荒川弘がコミカライズという鉄板漫画。

原作でいうと第一部の後半戦、原作全7巻の5巻相当ぐらい、「征馬孤影」あたり。

一冊丸ごとトゥラーン襲来編、という感じです。ジムサ登場。

f:id:AQM:20201211151119p:plain

「アルスラーン戦記」14巻より(荒川弘/田中芳樹/講談社)

相変わらず丁寧で高クオリティなコミカライズ。

田中芳樹作品は並行して「銀河英雄伝説」がヤンジャンで藤本竜がコミカライズ中ですけど、どちらも大ヒット経験済みのベテラン漫画家による贅沢なコミカライズ。

どちらの作品も登場人物が大量にいて更にそのほとんどがおっさんということで、おっさん描き分けのバリエーションをが豊富なベテランじゃないと中々難しいですね。

美少女ヒロインの顔にオールバックにメガネに口髭にほうれい線描いてスーツ着させて「お父さん!」とかたまに目にしますが、普段描いてる作風上仕方がないとは言え読んでて体がエビ反ります。

 

この作品は中盤に入ってトゥラーンのむさくるしいおっさんが追加で大量に登場しましたが、全コマ「トゥラーン軍 〜将軍」とか毎回キャプチャを入れる必要もなく、慌てず騒がずキャラデザインから印象付けからセリフでのさりげないサポートまでお上手で、読んでて誰が誰だかわからないストレスがありません。

鼻を描かない漫画が増えましたが、この作品は逆に鼻が特徴的なキャラデザ多いですよね。

f:id:AQM:20201211151202p:plain

「アルスラーン戦記」14巻より(荒川弘/田中芳樹/講談社)

敵役のおっさん2人のシーンですけど、いいシーンだなあコレ。

将来、歴史ものやSFの大河ものなどを描きたい志向の漫画家の先生は、ぜひ大量のおっさんを描き分ける練習をしてストックを増やしておいていただけると、読みやすくて助かります。

あと、

f:id:AQM:20201211151328p:plain

「アルスラーン戦記」14巻より(荒川弘/田中芳樹/講談社)

とのことです。

 

 

aqm.hatenablog.jp

 

aqm.hatenablog.jp

FSS (NT2021年1月号 第17巻相当) 評論(ネタバレ注意)

ファイブスター物語、連続掲載継続中。

「第6話 時の詩女 アクト4-4 カーマントーの灯火 Both 3062」。

扉絵コミで13ページ。

  

他の号はこちらから。

aqm.hatenablog.jp

  • (宣伝)
  • (余談)
  • (扉絵)
  • (本編)
  • (所感)
    • ミラージュナイト(星団暦3062〜3070年時)全メンバー
    • アイシャ
    • セイレイ
    • ナルミ
    • ホウレ(ホルレ)
    • 班長の少年
    • マグダルの飯パクったガキ
    • マグダル
    • バランシェ邸
    • アララギ・ハイト
    • アウクソー
    • ミース
    • マキシ

以下、余談のあとにネタバレ情報を含んで論評しますので閲覧ご注意。

続きを読む