#AQM

I oppose and protest the Russian invasion of Ukraine.

#アトワイトゲーム 1巻 評論(ネタバレ注意)

『四月は君の嘘』『さよなら私のクラマー』作者の現作。

期待の大きかった女子サッカー漫画『さよなら私のクラマー』が、作者的な満足感・達成感はともかく、多くの読者的には「ええ!?ここで終わり!?」とやや不完全燃焼な完結の仕方だったこともあり、

「見せてもらおうか、『さよなら私のクラマー』を描くのを終わらせてまで描きたかった漫画を!?」

というところ。

新作は、飛竜が空を飛び剣士や銃士が闘う、中世ファンタジー世界。

バーランド領の貿易都市・クーロン。10万人の人口の10人に1人が所属するとされるマフィア組織「蛇輪」が支配していた。

『アトワイトゲーム』1巻より(新川直司/講談社)

組織の末端に所属し、周囲に侮られながらモンスターの死体漁りで生計を立てていた黒髪の少年・マルコは、街に巨大な飛竜(運搬竜)が墜落する現場に遭遇。

人に使役され口内に貴重な荷物を収納して運搬する運搬竜の口をこじ開けると、中には幼い少女が。

野望と陰謀のために領主の娘である少女を拉致した「蛇輪」幹部によって彼女が回収されることを見かねたマルコは、平穏に暮らす決意と昼行燈の仮面を脱ぎ捨てて、「蛇輪」幹部に剣を向けた。

『アトワイトゲーム』1巻より(新川直司/講談社)

という、「空から女の子が降ってきた」系ボーイ・ミーツ・ガールの、冒険ものというか逃避行もの。

領主の娘で幼いながら剣の達人である少女・アトワイト。

少女を領主のもとに送り届けるべく逃げる、能ある鷹は爪を隠す系の少年・マルコ。

派閥争いを繰り広げつつ二人を追うマフィア各派。

少女の奪還に来たのであろう、異形の大剣を振るう女剣士。

『アトワイトゲーム』1巻より(新川直司/講談社)

空から女の子が降ってくる冒険譚という意味で『ラピュタ』、マフィア主義が主導して話を転がす世界観は『ジョジョ五部』、「ドラゴンころし」は『ベルセルク』、あとなんでしょね、をちゃんぽんにしたような立て付けの作品。

剣、マスケット銃、リボルバー銃で戦うバトル描写。

顔・人体・体重移動・ポジショニングを描ける漫画家であることは『クラマー』で既に示されていたこともあり、殺陣の描写も並みのバトル漫画以上。

作品の「映像化ぐせ」が付いている作家ですが、プロットの段階でアニメ映画化が内定しているような雰囲気。

「ヒロイン争奪戦」的な作品タイトル『アトワイトゲーム』のとおり、作中で何年も時間が経つ感じではなく、ボーイ・ミーツ・ガールからの逃避行の短い期間の顛末をラピュタ的に「一本の映画サイズ」で、という感じに見えます。

『アトワイトゲーム』1巻より(新川直司/講談社)

まあまだ始まったばっかりですけど、作家が作家なので質には担保がついてますが、量的には「映画一本分の原作」になったらあっさり完結しそうで、あんまり長期連載の作品にはならないんじゃないかな、という予感もします。

騒乱期におけるマフィアの成り上がりと、静かに平和に暮らす人生観の対比もテーマのようなので、少女を領主に届ける逃避行をしつつ、少年が「蛇輪」かバーラント領の支配者に成り上がるサクセスストーリーになっていくんかしらね。

主人公の少年も「戦える知謀派」という『アルスラーン戦記』のナルサス的な、なんかハクつきの過去有りで弱点が見えない便利キャラ。

『アトワイトゲーム』1巻より(新川直司/講談社)

なんにせよ、まあまだ始まったばっかりですけど、作風を広げようとの異ジャンル挑戦で「見よう見まね」や「個性的なファンタジー解釈へのこだわり」で中世ファンタジーを描いて盛大にずっこける大家も珍しくない中、なかなかの出だしに見えますが、さて。

 

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#刷ったもんだ! 8巻 評論(ネタバレ注意)

元ヤンキーな青春を送り、SNSで漫画クラスタに入り浸る漫画好きの真白悠(♀)は中小企業の虹原印刷(株)に就職。

企画デザイン課に配属され、印刷物のデザイン、データ作成・出力、校正を担当。担当する仕事は選挙のチラシからエロ同人誌までなんでもあり。

「刷ったもんだ!」8巻より(染谷みのる/講談社)

という印刷会社のお仕事日常漫画。

取材もしてんでしょうけど、1巻巻末の「Special Thanks」に「元勤め先の皆さま」とあり、作者が経験者なんですね。「NEW GAME!」と同じパターン。

人の生き死にに関わらない、世界も救わない、地味で実直ですけど、ウェルメイドなお仕事もの。

「刷ったもんだ!」8巻より(染谷みのる/講談社)

こなれてきたと言うか、虹原印刷の人間関係も巻を重ねてキャラに愛着も湧いてきて、読んでてどんどん楽しくなってきましたね。

今巻は巻の大部分を使って、前々巻から仕込んでいた、「全日本職人技能チャンピオンシップ」、印刷部門の部。

このエピソード限定の主人公として出場するのは真白の同期で生産部印刷課、「印刷職人」見習いの桃川。

「刷ったもんだ!」8巻より(染谷みのる/講談社)

東京ビッグサイトで開催(その後、移動)された大会には、桃川の家族に加え、虹原印刷の面々、そして桃川と両片想いの女子大生・ほのかちゃんも。

筆記試験、実技試験を潜り抜けた、23歳以下の印刷職人たちの中から選ばれた6人による本選・決勝戦。

なんつか、グルメものでよく職人バトル展開になりがちですけど、やたら「ラーメン対決」を繰り広げた『らーめん才遊記』みたいw

つーかね、決勝のライバルたち、この巻以降二度と出番なんかないくせに、曲者強者キャラっぷりの作り込みがすごいw

「刷ったもんだ!」8巻より(染谷みのる/講談社)

なんの漫画なんだよというか、「あれ、このまま印刷バトル漫画になるのかな?」という、使い捨てるにはもったいないイイキャラ揃いでした。

トラブル続きの展開も、エピソードの締めも良いよね。

一方作品の縦軸たる、真白と黒瀬くんの淡い恋も、逆方向に進展中。

「刷ったもんだ!」8巻より(染谷みのる/講談社)

あんま穿ったこと書くもんじゃねえというか、みっともないとは思うんですけど、あと2冊、って感じですしょうか。

さてさてさてさて。さて。

 

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#機動戦士ガンダム ラストホライズン 1巻 評論(ネタバレ注意)

『ガンダム』のスピンオフ・コミカライズですが、「ガンダムエース」のKADOKAWAではなく、集英社のヤンジャンコミックス、連載はグランドジャンプなのかな?

0079、一年戦争後期。

『機動戦士ガンダム ラストホライズン』1巻より(吉野弘幸/寺田ケンイチ/矢立肇/富野由悠季/集英社)

ホワイトベース隊の活躍によりジオン軍が指揮官のガルマ・ザビを喪った直後の北米大陸。

地球連邦軍のマッカラン基地のジム小隊(?)は、宇宙から戦艦サラミスのカプセル(大気圏突入挺)で降下する新隊長を回収するために出撃。

しかし降下中に攻撃を受けたカプセルはジオン軍の勢力圏に降下。小隊の任務は新隊長の救出となった…

で始まる、宇宙世紀(U.C.)もの。

小隊の少年兵・ナナオは主人公というか狂言回しですかねコレ。

『機動戦士ガンダム ラストホライズン』1巻より(吉野弘幸/寺田ケンイチ/矢立肇/富野由悠季/集英社)

主人公はその隊長、レオ・バルナーク中佐っぽい。

体力測定もMS適性もD判定、商社上がりで子持ちながらレビル将軍の姪と再婚して中途で入隊、という異色の経歴。

『踊る大捜査線』の青島くんと『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリーと『課長 島耕作』を足して割ったようなキャラ造形。

『機動戦士ガンダム ラストホライズン』1巻より(吉野弘幸/寺田ケンイチ/矢立肇/富野由悠季/集英社)

モビルスーツ描写、戦闘描写も上々の出来ですが、主人公はMSに乗らず、ヤン・ウェンリーばりの戦術指揮と人脈と商才?で活躍する、ありそでなかった『ガンダム』。

ぶっちゃけハズレも多い『ガンダム』スピンオフ・コミカライズの中では十分「当たり」の部類。

『機動戦士ガンダム ラストホライズン』1巻より(吉野弘幸/寺田ケンイチ/矢立肇/富野由悠季/集英社)

ちなみに片手で数えられる程度の女性キャラも「可愛い」というより「セクシー」で、どこか『フロント・ミッション』ぽい世界観にマッチしてます。

脚本と作画が分かれてまして、脚本家は『SEED』『SEED DESTINY』『オルフェンズ』などアナザーガンダムのアニメ本編にも参加していたとのことです。

『機動戦士ガンダム ラストホライズン』1巻より(吉野弘幸/寺田ケンイチ/矢立肇/富野由悠季/集英社)

ガルマ死亡後なのでホワイトベースとシャアはもう北米にいない時期ですが、UC、特に一年戦争ものはそれだけでちょっと得ですね。

意味ありげな未来回想は先が楽しみですが、表紙の「黒いガンダム」はまだ2〜3コマしか登場してないのと、知将型の主人公のバトル描写って作戦・戦術が生命線でご都合主義が入るとイッキに陳腐化しちゃうので扱いが難しいのが心配。

『機動戦士ガンダム ラストホライズン』1巻より(吉野弘幸/寺田ケンイチ/矢立肇/富野由悠季/集英社)

ながらも質が高そうな「変わり種ガンダム」で期待したい。

 

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#リコリス・リコイル 1巻 評論(ネタバレ注意)

Amazonのレビューで低評価ついてたので「あら、おもんないんかな」と思ったら、配送の防水対策がなってなくてフニャフニャだったみたいな中身に関係ないレビューでワロタ。Amazon、交換したれよ。

TVアニメが話題だったので。

「そのうちサブスクで観るか」と思ったまま、時間がなくてまだ観てまっせーん。漫画だと読むのにねw

『リコリス・リコイル』1巻より(備前やすのり/KADOKAWA)

『セーラー服と機関銃』の「カ・イ・カ・ン」なんか今更誰も思い出しもしねえ、昭和は遠くなりにけり、近未来(?)の日本。

孤児を集めて女子高生エージェント「リコリス」に仕立て上げ、凶悪犯を捕まえたり殺したりする公的機密機関「DA」。

DA本部のリコリス"たきな"は、現場で命令無視して凶悪犯に味方ごとライトマシンガンをぶっ放し、味方こそ無事だったものの犯人たちを全員射殺し、

『リコリス・リコイル』1巻より(備前やすのり/KADOKAWA)

左遷。

新たな配属先はDAの潜伏サイト、喫茶店「リコリコ」だった。

「リコリコ」先任の千束は「東京一のリコリス」と高名だったが、千束とバディを組むことになった たきな を待っていたのは、「町のなんでもお助け屋さん」の日々だった…

『リコリス・リコイル』1巻より(備前やすのり/KADOKAWA)

という美少女ガンアクション・ハードボイルド? アニメ観てないからまだイマイチ、ジャンル的なあのアレがわからん。

『ガンスリ』や『デストロ』に『攻殻』と『シティーハンター』を混ぜて4で割って、最後に『ごちうさ』で仕上げた感じです。

作画のレベルは全体的に弱点なし、過不足なし、というところ。

自分は銃ものに詳しくないですが、ガンアクションものとして銃器や射撃の描写はなかなかの出来。こだわりありそう。TVアニメもそうなのかな。

『リコリス・リコイル』1巻より(備前やすのり/KADOKAWA)

この子のハンドガンの構え方、初めて見たけど面白いなあ。

こういう撃ち方の技法というか合理性って実在すんですかね。ひと昔前の「ハンドガンを横構えする殺し屋」は後にアレな感じの扱いになっちゃいましたけど。

FPS用語で言うところの、いわゆる「腰撃ち」で、いわゆる「ADS」しにくそうな撃ち方。彼女は今んとこ近距離銃撃しかしてねえので、当たりそうには見えますけど。CQCとかの撃ち方なんかな。

とか思ってググったらなんかあったわ。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

「C.A.Rシステム」というらしい。なるほど、右肘を上げて左肘を下げればADSできるのか。

dic.pixiv.net

あー、『ジョン・ウィック』観よ。あと『CODMWⅡ』の迷彩解除、shipmentでがんばろ…

設定は厨二病全開で話もほとんど進んでないので、面白いのかどうかまだよくわかりませんが、女の子の絵も可愛いし、よさそうなんでねえでしょうか。

キャラ造形的には、冴羽獠的に「能ある鷹は爪を隠す」系おとぼけキャラの千束、ジャンプ漫画の相棒キャラ定番みたいな無愛想無口の意識高い系真面目のたきな、という感じ。

貴重なガンアクションものということで続巻に期待。

『リコリス・リコイル』1巻より(備前やすのり/KADOKAWA)

今のところ「続きが気になる」ってほども話が進んでないので、アニメはとりあえず置いといて続巻を待とう。原作アニメ観ちゃうと、続巻読むモチベがやっぱ落ちますしね。

「原作アニメ観た方がコミカライズをもっと楽しめるよ」的な要素あったら、誰か教えてくらさい。

 

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#メダリスト 7巻 評論(ネタバレ注意)

現役時代を不完全燃焼で終えた新米コーチ・明浦路 司(あけうらじ つかさ)(26歳♂)が、高い身体能力を持ち競技への情熱を燃やす小学5年生の少女・結束(ゆいづか) いのりと出会う、フィギュアスケートもの。

『メダリスト』7巻(つるまいかだ/講談社)

基本シリアス進行ながらこまめにコメディで空気を抜いてくれて、エモくて泣けるのと同時に読んでて楽しく、読みやすい。

6年生になり6級に。ノービスへの挑戦権を得たいのりは、全日本への道・ノービスA予選中部ブロック大会に出場、優勝。

『メダリスト』7巻(つるまいかだ/講談社)

脇役の小さなエピソードがいちいち重くて、良いんだよな。この漫画。

しかし「ブロック大会で優勝するための構成」を選んだいのりには、代償として「3回転ルッツと3回転フリップをまだ跳べない」という、全日本大会で勝つには重たすぎる課題が残された。

全日本ノービスAまでの時間は残りわずか…

ということで、今巻はブロック大会と全日本大会の幕間の特訓編。

『メダリスト』7巻(つるまいかだ/講談社)

読者の意表をつく展開の後に更に意表をついて、大変エキサイティングな特訓編。

イヒョ〜! 小学生の伸び代ェ…

あとわけあって新潟に向かう車中でいのりのハイテンションが、お子様すぎてとても可愛らしい。

全日本ノービスA開幕に向けて、新たなライバルたちも続々と登場。脇役ライバルのキャラデザインのみならず、その人生の描き分けの幅が広くて大変よいです。

『メダリスト』7巻(つるまいかだ/講談社)

ということで、次巻より全日本ノービスA開幕。

「オリンピック編」まで描かれると、期待して良いんだろうか。このテンションで保つんだろうか。

「まだ7巻」の「まだ小学生編」、まだジュニアですらない、「お子様すぎて可愛らしい」まだノービスなんだよな、こいつら。

『メダリスト』7巻(つるまいかだ/講談社)

この面白さは、「にも関わらず」なのか、「だからこそ」の二面性故なのか。

 

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#かぐや様を語りたい 8巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

「お似合いですわ〜」って言う役のMOBからネームドに出世したマスメディア部のエリカ(尊かぐや派)とかれん(白銀×かぐや主義)の二人を主人公にした「かぐや様」スピンオフ4コマ。

『かぐや様を語りたい』8巻(赤坂アカ/G3井田/集英社)

本編と同じ世界観で裏話的に進行。本編で起こったあれやこれやのエピソードを柱の陰から目撃して妄想を膨らましたり、エリカとかれんの妄想会議に早坂や石上や藤原がゲスト的に招かれて巻き込まれたり、

本編に影響しない範囲で裏設定が勝手に増えていく…と思ったら本編のキャラ解釈に逆輸入されるネタも多数。

『かぐや様を語りたい』8巻(赤坂アカ/G3井田/集英社)

本編の進行に遅れて追随する形ながら、前巻で主人公たちが新学年の3年生に進級するところまで追いつき、更に追いついて、本編と同時に連載完結、本編と同時に最終巻発売。

もうこのスピンオフの創られ方に言及するのも野暮ってもんでしょうかw

自分が4コマ漫画というフォーマットが好きなだけ、という気もしますが、形式の制約が発想や表現を洗練して、自由を与えているようにも見えます。

『かぐや様を語りたい』8巻(赤坂アカ/G3井田/集英社)

やりたい放題な分、エピローグモードの本編を上回るギャグコメ密度、そしてキレ。

憧れのかぐや、憧れの白銀と同じクラスになったエリカとかれん。

夢のような日々はまた、ずっと偶像であったかぐやが自分たちと同じただの人間であり、友だちになれる存在であることを知る日々だった。

『かぐや様を語りたい』8巻(赤坂アカ/G3井田/集英社)

当然、かぐやがいろいろあって「孤高の天才」の座から自ら降りたこともあってのことですが、エリカとかれんが偶像をクラスメイトとして認知して友情と親愛を抱くまでに成長(これ成長か?)する様子が細やかに。最終回になっても失神はしていたけれども。

と、理屈をつけるまでもなく、はっちゃけてて今までで一番面白い巻でした。

なんたって、「不在によって却って存在感を大きく見せつつネタを生み出す」ために封印されてきたかぐやと、アホ2人の直接の絡みが、最終巻にしてようやく解禁みたいなもんですから。

『かぐや様を語りたい』8巻(赤坂アカ/G3井田/集英社)

そして同級生ナマモノ妄想を、本人すら知らずに常に真実に突き刺してきた かれん の眼前で繰り広げられる、かぐやと白銀の公然のイチャコラ。

『銀英伝』でフォークだったかラングだったかレンネンカンプだったか、「偏見と妄執の果てに、しかし真実に辿り着いていた」みたいな記述をぼんやり思い出します。

『かぐや様を語りたい』8巻(赤坂アカ/G3井田/集英社)

ナマモノ同人で小学館漫画賞www

スピンオフ4コマのハードルを激しく上げてしまう、またスピンオフ故に本編読者しか楽しめないのが大変もったいない、キレッキレの最終巻。

『堀さんと宮村くん』方式で、最終話後も回想で連載続ければいいのに。というのは言わない約束か。

面白かった。ありがとうございました。連載、お疲れ様でした。

 

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#かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ 28巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

あらかじめお断りしておきますが、この感想はそれっぽい引用をパッチワークのように適当に繋ぎ合わせて並べてそれっぽく憶測というか妄想しているだけで、作者の赤坂アカが何を考えているかなんて私は当然全然わかりません。

 

名門の子女が集う名門学園の生徒会長・白銀御行と副会長・四宮かぐや。プライド高いエリート同士、美男美女同士の「告白した方が負け」。

ヤンジャン編集部が公然と「天才」と呼んで憚らない、稀代のラブコメメーカーによる恋愛マウント駆け引きバトル。

いけ好かない初期設定ながら、「ポンコツは七難隠す」。

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」28巻より(赤坂アカ/集英社)

美男美女の天才たちを敢えてポンコツに描く流行の手法で好感度を稼ぎ、

「どこが『天才たちの恋愛頭脳戦』やねん!」

とのツッコみを誘いながら愛されてきた作品。

最終巻。

ジャンプコミックスとヤンジャンコミックスは伝統の「枠」が邪魔で連結表紙に向かないな。

 

レギュラー陣総出による2冊連結の表紙が示すとおり、27巻〜最終28巻は作品の山場・クライマックスを越えた、エピローグモード。

24巻までは「ものすごく面白い」ラブコメでしたが、作者のモチベが下がっていろいろ雑になったせいで「普通に面白い」ラブコメになって完結しました。

27〜28巻のエピローグ・エピソード群も、まるで

「ずっと前から温めていて、細部はそのうち詰めようと思ってたプロット」

を、細部を詰めずにそのまま漫画にしたような出来でした。

ある意味、義務感で描かれたような最終巻。

TVアニメ3期・アニメ劇場版1作・実写劇場版2作の数字が示すとおり、商業ラブコメ作品としては伝説的な成功を収めた作品。

期せずして「頭脳明晰・成績優秀・実家は裕福ではない男子高校生が主人公」という共通点を持つ『ぼく勉』『五等分』と並んで「ラブコメ三強」と呼ばれた時期もありましたが、自分はずっと『かぐや様』が頭一つ抜けてると思っていましたし、今でもそう思っています。

 

自分はこの作品の途中までは、具体的にいうと24巻の時点までは、『めぞん一刻』に並んで何十年も語られるような名作ラブコメになるものだと期待していましたし、そういう人は多かったと思います。その期待が重荷だったのかもしれません。

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」28巻より(赤坂アカ/集英社)

重荷ならばやめれば良い。自由にすれば良い。縛られる必要はねぇ。

その通りですし、作者自身、その通りにしたのかもしれません。

選択肢として、「第一部 完」とか「高校編 完」とかつけて、「無期限の連載休止」という手もあったというか、そちらの方が評価を下げずに延々と語られ続ける作品になっていたと思いますし、作者も編集部も一度はそれを考えたんじゃないかと思います。

完結しないことによって名作であるかのように語られ続ける作品はたくさんあります。

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」28巻より(赤坂アカ/集英社)

でも漫画家は情を持つ生き物でもあるから、キャラクターたちが幸せじゃないのは作者もイヤだったのかもしれない。

あるいは、飛び級で海外に進学したためにみんなと一緒に卒業できなかった白銀のように、

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」28巻より(赤坂アカ/集英社)

愛すべき代表作を、自分が生んだキャラクターたちと共に卒業したかったんじゃないのか?

先ほど「ある意味、義務感で描かれたような最終巻。」と書きましたが、義務感がないよりもよほど読者に対して誠実であると思います。

でもその作者の誠実さは読者よりも、

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」28巻より(赤坂アカ/集英社)

キャラクターたち、そして自分自身に対する誠実さであったようにも思います。

 

この作品で描かれたテーマはもちろん、若者たちの成長でした。

義務感で描かれたような最終回でありながら、それまでの貯金や含蓄もあって、エピローグは結局、面白かったし、感無量でした。

なんで最終回に早坂一コマも出てねんだとか、圭ちゃんの幼少期のかぐやとの思い出どこ行ったんだとか、マキちゃん編の取ってつけたような最終コマ要らねえだろとか、石上をハメた中学生が学園追放で黄光が四宮財閥幹部に居残るとかカタルシスのバランスおかしいだろとか、その他思わせぶりな伏線めんどくさくなって全部捨てやがったなとか、不満もいっぱいあるんですけど。

マキちゃんの痛みを経験しても折れることのない気高さ、本音を語ることによって自由を手に入れて青春を謳歌する早坂、ルールの正しさの更にその奥を見つけたミコちゃん、他人を支える側になった石上、敢えてトリックスターを貫いた藤原書記、自分のみならずその影響でかぐやをも成長させて彼女との対等な人間関係を手に入れた白銀。

すべてが愛おしい。

中でもヒロインのかぐやにとっての成長は、繰り返し語られた「孤高の天才でいることから降りること」でした。

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」28巻より(赤坂アカ/集英社)

愚かで良いから、もっと人と愛し合おうと。

一貫していました。

随所で『竹取物語』をモチーフにした作品でしたが、まるで月の孤高に身を置く孤独なお姫様に「もう一度、地球に降りておいで」と願って伸ばし続けた迎えの手が、その月まで届いたような。

 

今作の完結をもって、作者の赤坂アカは原作と作画を兼ねる独立した漫画家(そろそろ漫画家にも「シンガー・ソングライター」のような呼称が必要だと思います)を引退して、原作専業・兼・「情報発信する何か」になるんだそうです。

自分はずっと好きですが、根本的に「画があまり上手くない」ことがコンプレックスであるようで、かといってこれ以上、上手くなりたいモチベも高くなさそう。社会人男性のスーツを描くのが下っ手くそなのと、白銀と並べた時にかぐやの頭をデカく描く悪癖は、とうとう最後まで直りませんでした。

というか「やりたいこと」の優先順位で「画を描くこと」以上のものが生まれたように見えます。

昔ネトゲやってた時に所属していた血盟の盟主が

「ネトゲで問題を抱えてる人の相談にはのってあげなさい

 でもネトゲの他にもっとやりたいことを見つけた人は引き止めちゃダメよ」

と言ってました。

 

7年半ですか、週刊連載に加えて複数回のメディア化に(好きで始めたとはいえ)他作品の原作担当との二毛作もあって、早坂以上の非人道的なクッソ忙しさだったことは想像に難くありません。

「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」28巻より(赤坂アカ/集英社)

そのクリエイティブな才能というか天才を発揮する場を「選択と集中」して描きたいものを描きつつ、本音を語ることで自由を手に入れた早坂のように人生を謳歌して欲しいと思います。

あなたの描く魅力的な女の子がもう見れないと思うと、本っ当に寂しいですけどね!

描きたくなったら恥ずかしがらずにいつでも描けよな!

 

みなさんにとってはどうでもいいことですが、

「14巻でそうしたように、『かぐや様』の最終巻には★6をつけよう」

とずっと思っていました。

でも★5です。★6ってほどじゃなかったです。

でも★5でも十分以上に面白いし、そもそも人生には木っ端ブロガーから著作に★6をつけられるより大切なことが沢山あります。

友達と呑んだり、まぁあとは、色々とね。

 

さて、もう一度お断りしておきますが、この感想はそれっぽい引用をパッチワークのように適当に繋ぎ合わせて並べてそれっぽく憶測というか妄想しているだけで、作者の赤坂アカが何を考えているかなんて私は当然全然わかりません。

この作品について自分が確信を持って言えることなんて、7年半お疲れ様でした、自分はこの作品を愛しています、ぐらいしかありません。

ということで。

7年半お疲れ様でした。自分はこの作品を愛しています。

 

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#ウマ娘 シンデレラグレイ 9巻 評論(ネタバレ注意)

実在の競走馬を美少女擬人化した育成ソシャゲ『ウマ娘』の派生コミカライズ。

日本の競馬史に残る名馬・オグリキャップの現役時代をモチーフにしたスピンオフ。

1〜2巻で地方レース(カサマツ)編が終わり、3巻から中央に移籍。

ウマ娘世界観でいう「中央トレセン学園」に編入し、並み居る名バ達と本格的にシノギを削る展開に。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』9巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

モチーフとなった史実が日本競馬史上最大級のシンデレラストーリーにして、トウカイテイオーと並ぶ日本競馬史上最大級の復活劇というドラマで、かつ現役時代を通じて魅力的なライバルにも恵まれていた馬のお話なので、更にifを加えた作話の骨組みの時点で優勝です。ありがとうございました。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』9巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

前巻まででオグリキャップのクラシック年、現役最強タマモクロスとの連戦「第二章 白い稲妻」編が完結。

タマモクロスが去ったターフで、新たなライバルたちとの激闘が開幕、題して「第三章 永世三強」編。

現実のオグリキャップのキャリアは昭和と平成を跨いでいまして、タマモクロスと走った年末の有馬記念、「昭和最後の名勝負」は昭和63年、1988年。年が明けた1989年1月7日に昭和天皇が崩御され、平成となりました。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』9巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

ので、今巻相当から平成相当に入りました。ウマ娘世界観には元号の概念が描かれないですが。

現実世界ではタマモクロスが去った平成元年に活躍したオグリキャップ、スーパークリーク、イナリワンを称して「平成三強」とスポーツ新聞らしい少々気の早いキャッチフレーズがつきました。

ja.wikipedia.org

歴代最強議論の答えは人それぞれではありますが、産まれる前に「平成最強」を決められちゃった、後の平成年間に活躍したナリタブライアンや、ディープインパクトなどのサンデーサイレンス産駒の立場は…

『ウマ娘 シンデレラグレイ』9巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

というわけでもないでしょうが、元号の概念が描かれない『ウマ娘』世界観では、この3頭あらため3人を称して「永世三強」に。

dic.pixiv.net

…。

最強論争の範囲にルドルフやマルゼンスキーまで巻き込んで余計アレになってねえかw

というわけで、イナリワンの本格的な顔見せ巻。

オグリが故障してた春シーズンはダイジェストとオグリが飯食ってるシーンで飛ばして、季節は再び馬肥ゆる秋に。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』9巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

イナリワンの後ろ姿について連載時に「なんか太くね?」と話題になったんですが、「馬肥ゆる秋」ってそういう…(※春のシーンです)

描いた本人もw

ということで、スーパークリークも含めた三強対決は次巻以降に持ち越し。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』9巻より(久住太陽/杉浦理史/伊藤隼之介/Cygames/集英社)

あとマルゼンスキーが今巻のセリフで「なるへそ」っつってて「『なるへそ』って久しぶりに聞いた(見た)な」と思いました。

 

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#ムラサキ 5巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

難解な作品を前にして「かっこよく評論してるっぽく見せる」常道というかコツとしては、

「わかったような雰囲気を醸しつつも言葉は濁し、後に『正解』が提示された時に恥をかかないよう、致命的な誤読をしている証拠を残さない」

ことです。

内容に対する具体的な言及は避けて、「すごい」「尊い」「ヤバい」「天才」「漫画が上手い」「涙が出た」「エヴァ」とか、わかってる風でなるべく言質を取られないフワッとした文言を選んで並べるとそれっぽくなります。

さて。

『ムラサキ』5巻より(巌男子/LINE Digital Frontier)

コンテンポラリーダンスに魅せられた小太りメガネおさげ少女・一条ムラサキ。

創作ダンス部を立ち上げようとするも人望がなく頓挫。多くのフォロワーを生む美術部の美少女・菫ソラのカリスマ性に嫉妬する。そんなソラのストーカー、翡翠翔之助は紫峰山神社の神凪にして天才ダンサーだった。

翔之助の才能に惚れ込んだムラサキは、2ヶ月で体重を72kgから47kgに落とす約束を果たし、彼をダンス部創設メンバーに引き込むことに成功する。

本気の翔之助のダンス、その凄み。しかしムラサキもまた、体を絞ったことによって秘めた才能が覚醒しつつあった…

『ムラサキ』5巻より(巌男子/LINE Digital Frontier)

怪作です。今巻で完結。

表面上のストーリーは冒頭に挙げたとおり、女子高生がダンスに魅了されダンス部を立ち上げ、仲間を集めつつ、ダンスの高みを目指す作品です。

「普通」の漫画であれば、地方大会・全国大会・世界大会と駆け上がり、ライバルたちと切磋琢磨し、「ビッグに」「メジャーに」「伝説に」を志向します。

この作品は、ネタバレですが、学校の中庭で練習中に風紀委員との(表面上は)原因不明の乱闘が始まり、これを前座として集まった野次馬を前に、覚醒した主人公たちが踊ります。そして2年後、エピローグ。終わり。

ストーリー、というより描かれるダンス描写に付随して語られたのは、ダンスの起源が神事における「神話の再現」であったことを契機に、「神とは何か」「人間とは何か」「個とは、自分とは何か」というテーマです。ダンスの他、宗教・哲学・格闘技・セックスとも絡めて思索されます。

『ムラサキ』5巻より(巌男子/LINE Digital Frontier)

漫画は第一義的にエンタメであるべき、という考えに則れば、他人に気軽にお勧めできる漫画ではないです。

なんかようわからん漫画ですし、複数の意味で失敗している漫画です。

一に、観念的でわかりにくく、マス向けエンタメとして失敗している点。

二に、一の原因として、漫画という、画と言葉の複合のメディアを選んだにも関わらず、大事なところは画に偏重してしまった点。

三に、二にも関わらず、補助線として言葉に頼りすぎた点。

『ムラサキ』5巻より(巌男子/LINE Digital Frontier)

漫画の読者全員が作者の興味の向かう先の分野に関する教養が十分であれば必要のないテキストでもあって、言葉に頼ったことを瑕疵とするのは酷かもしれません。

要するに、「描きたいことが漫画のテーマとして間違っていた」というより、「描きたいテーマの表現手段として漫画を選んだことが間違っていた」いた、というイメージ。

「神話を刻む壁画」の描き手が現代で選んだメディアが漫画だった、みたいな場違い感。「漫画」扱いして評論するこっちが間違っているんじゃないかという不安。

読んでいて、

「絵にここまでの情熱を持つこの作者はなぜ画家ではないのか」

「ダンスにここまでの情熱を持つこの作者はなぜダンサーではないのか」

とずっと不思議に思っていました。特定分野にのめり込んだは漫画作品は珍しくありませんが、こんなことを思ったのは初めてでした。

自分が知らないだけで実は兼業の画家もしくはダンサーなのかもしれません。

エンタメ作品というよりも、「神事から派生した、人体を駆使する娯楽・競技・性行為に関する考察」と題された卒業論文のような、あるいは「ダンスという神」を崇める宗教の聖典のような漫画。

ただ、成功している点もまた漫画というメディアを選んだことで、モノ言わぬ絵画やダンスであればこっちが理解できずに伝わらなかったはずのテーマが、この媒体を選んだことで少しだけ私に伝わりました。ような気がします。

茶化すわけではないですが、人の祈りの起源について思索を巡らせたのは、このブコメ以来でした。

【ウマ娘】メモ:全身全霊をもらうにはリライトをどのタイミングから流せばいいか - 白悠咲美のブログ

古代人類が歌や踊りで降雨や豊作・大漁を祈ったのも起源はこういう感じだったんだろうな、と人類の歴史に思いをはせる

2021/04/24 14:51

b.hatena.ne.jp

記憶が曖昧ですが2021年のブコメなので、既に『ムラサキ』の影響を受けてのブコメのように思います。

作者の情動はおそらく小説や論文などの文章でもおそらく私に伝わらなかったはずで、「画と言葉」の組み合わせという最適解に最も近かった媒体が「漫画」だったに過ぎないようにも思います。

映画という手もあったでしょうけど、このテーマに共鳴する出資者と、作者と思索を同じくし作者の脳内イメージを体現できる現役のダンサーを探すのは至難だろうと思います。

 

テーマとしては普遍です。

神と人、自分と他人、個の孤独、一つになりたい。

「人類補完計画」をエヴァではなくダンスでなそうとする無限の営み。

川本真琴のセックスをテーマにした名曲『1/2』の歌詞の一節、

境界線みたいな身体がじゃまだね

です。じゃまだから踊ってみようホトトギス。

『ムラサキ』5巻より(巌男子/LINE Digital Frontier)

百合もあるよ!

この、すごいものに一瞬触れたと思った瞬間にフッと消える感じ、もどかしさが、画以上にヒロイン・ムラサキと翔之助の葛藤をよく現しているように思います。

なんか…読んでいて「真実」「本質」に触れた瞬間があったよ。たぶん。

 

「次なにを描くのか」というより「まだ漫画を描くんだろうか」という印象ですが、次回作を楽しみにしています。

すごくてヤバくて天才ですが、面白いかどうかはよくわからないし、(マス(AQM)向けエンタメという意味で)どちらかと言えば漫画は下手です。

それでもやっぱり、できればまた、漫画でお願いします。

『ムラサキ』5巻より(巌男子/LINE Digital Frontier)

結局、自分が作品意図を十全に理解できたとは全然思えず、あなたが言いたいことはよくわかりませんでしたが、踊れない、漫画を読むことしかできない自分は、あなたの描く漫画を、その訳のわからない情熱を、もっと読んでいたいと思いました。

 

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#トニカクカワイイ 22巻 評論(ネタバレ注意)

基本は理系天才フリーター・ナサくんと、謎多きクール美少女・司(つかさ)さんの、なんか可愛い男の子と女の子の新婚生活ラブコメ。

SFファンタジーな「かぐや姫」伝承にまつわり不老不死であることを匂わせつつ隠してきた日常ラブコメの、隠してきたその謎の真相が「第一部 完」として15巻で明らかに。

『トニカクカワイイ』22巻より(畑健二郎/小学館)

当初、司さんは「かぐや姫」その人、もしくは生まれ変わりじゃないかとか思ってたんですよ。

というのも、「竹取物語」についての読み物や映像作品をじっくり見たことがなくて、「蓬莱」も「不死山」についても知りませんでした。

今巻を読んで、とりあえずWikipediaで初めて「竹取物語」について読んだんですけど、

ja.wikipedia.org

『トニカクカワイイ』、モチーフにしただけじゃなくて『竹取物語』に結構忠実だったんだ…と今更知りました。

先にWikipediaを読んでいれば、司さんがかぐや姫その人でなく巻き込まれて「蓬莱」を飲んでしまった人、というのも予見できてたかもしれないと思うと、教養って大事だなあ、と思いました。

「不死山」もWikipediaに書いてあるやんけ。

『トニカクカワイイ』22巻より(畑健二郎/小学館)

ということで、今巻は『トニカクカワイイ』を構成する、「かぐや姫」にまつわる過去回想巻。

『トニカクカワイイ』の過去の伏線を回収し、また新たな伏線を仕込むエピソードでもありますが、ほぼ一冊かけた『竹取物語』のリメイク・コミカライズと言っても差し支えがあんまりなさそうな巻。脇役として司さんも出るよ、ぐらいの。

ラストで月に帰る、というところで昔からSF解釈(SF妄想)がされやすいおとぎ話で、正直、展開やディティール自体は凡百のSF妄想を比べてそんなに物珍しいものではなく凡庸とさえ言っていいんですけど、

『トニカクカワイイ』22巻より(畑健二郎/小学館)

「かぐや姫」の悲恋、恋に落ちる男女の感情の美しさやそれを失う哀しさがとても丁寧に情緒的に描写されます。

ラブコメ漫画家に今更こんな感想も大変失礼な話ですけど、誰でも知ってるラブストーリーをこんなに美しく描ける作家だったんだ、と思いました。

『トニカクカワイイ』22巻より(畑健二郎/小学館)

このエピソードを一冊にまとめた構成も良いし、最後はいつもの「コンビニでアイス」で締めるラストも良いです。

なんというか、『トニカクカワイイ』の連載が終わったら、古今東西のラブストーリーの名作を再構成・コミカライズして欲しい。

『トニカクカワイイ』22巻より(畑健二郎/小学館)

この人が描く『人魚姫』とか、読んでみたいなあ。

『フリーレン』に『よふかし』に、これかー。やっぱサンデー購読すっかな…

 

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#よふかしのうた 14巻 評論(ネタバレ注意)

少年・夜守コウ(14)はふとしたきっかけで「上手くやれていた中学生活」が嫌になり不登校に。ある夜、夜の散歩で街を放浪していると「夜と不眠」に一家言持つ謎の美少女・ナズナに声をかけられ、血を吸われる。彼女は吸血鬼だった。

夜に生きる眷属になりたいと願っても吸血鬼化しないコウ。彼女が照れながら語る「吸血鬼になれる条件」は「吸血鬼に恋して血を吸われること」だった。

「だがしかし」作者の吸血鬼ファンタジーな青春ラブコメ。作品全体を通じてアンニュイとそのアンニュイからの解放が夜を舞台に描かれる。

『よふかしのうた』14巻より(コトヤマ/小学館)

探偵さんを中心に回ったハロウィン編、新キャラ複数登場の星見キク編・第一ラウンドを経て、新展開。

前巻ラストで「そこは触らない約束」だと思ってた、コウの保護者(母親)が登場。

コウの最近の行状を知った母親の反応は…

一方、一人孤高を保つ吸血鬼・星見キクと、彼女の眷属候補として目をつけられた、コウの幼馴染・マヒル。彼らが行方をくらました先は北海道。

『よふかしのうた』14巻より(コトヤマ/小学館)

偶然にも中学の修学旅行先が北海道であることが判明したコウは、彼らを追うべく、北海道目当てに不登校だった学校に久しぶりに登校。

そして舞台は北海道へ。

マヒルの毒母親が描写された直後に、対比するようにコウの放任主義の母親が登場。なるほどね、というのと、良い親子関係だね、というのと、

『よふかしのうた』14巻より(コトヤマ/小学館)

母ちゃん美人というかめっちゃサヤ師に似てんなw

コウ君の学校復帰ですけど、ナズナが「ちょっと寂しそう」までもいかない微妙な微妙な反応で、内心が読めません。

勝手にナズナの内心を慮れば、コウ君が昼の世界に復帰したら寂しいだろうなと思う反面、ちょっとホッとするところもあるのかなと思ったり。

『よふかしのうた』14巻より(コトヤマ/小学館)

だからこそ漫画なんですけど、「自分に恋に落ちて吸血鬼になる」ことによって今までの人生捨てる覚悟の男の子って、ぶっちゃけちょっと重いというか、ホラーですよね。

自分だったら、と考えたら、自分に人生捧げてくる相手と恋愛するのは無理です。

その反面(反面か?)、「昼の世界」から逃げるように自分を選ばれるよりも、「昼の世界」の選択肢もあった上で自分を選んで欲しい、とも思います。

『よふかしのうた』14巻より(コトヤマ/小学館)

さくら可愛いというか、この作者が描く女の子ホント可愛いな。

コウ君自身は「夜の世界」で気がつけば吸血鬼たちの輪の中心を経験したことで、どこか達観して前より中学生活を「こなせる」ようになっていますが、これを「精神的な成長」と呼んでいいものかどうか。

特殊な体験をした主人公が、学校という世界の狭さと退屈さ、クラスメイトたちの幼稚さに気がつく、もっと言ったら「外の世界」との繋がりをクラスメイトたちに見せつける展開、クラスメイトたちを見返す展開、というのは、やや病的な承認欲求やマウント欲を満たす上で定番ちゃ定番なんですけど。「厨二病」と名前がつくぐらいで。

『よふかしのうた』14巻より(コトヤマ/小学館)

コウ君が肩の力が抜けて自然体すぎて、「やや病的さ」が薄く、中学生らしい「イキリ」要素も見られず達観して見える点で、作品タイトルも相まって却って不健全なように見えてしまいますねw 大丈夫かこの子w

コウ君、別になんもしてないんですけど、大人っぽくなったなーというか、老成してるよなーというのが、クライメイトと絡むと際立ちます。

バトル描写を伴うシリアス展開ながら、プチ梁山泊のように集った仲間たちの日常が楽しい漫画、という意味で、最近読み始めた『ウィッチウォッチ』に読み味が似てる気もします。

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今巻も好きなセリフ、好きなカラミ、好きなシーンがたくさんあって、とても面白楽しく読みました。

これが縦軸のない純然たる日常ものだとまた読み味が違っちゃうのは、

「シリアス要素からの逃避中の娯楽ほど楽しい」

というか、

「勉強しなきゃいけないときに部屋を片付けてる途中で読む漫画めっちゃ面白くて止まらん現象」

みたいなもんなんでしょうか。

マヒルの母親と何を話したのか気になるのと、なんかデンジ君みたいな胡散臭いイケメン出てきたな。続き早よ読みてえな。

『ハコヅメ』と『かぐや様』終わってモーニングとヤンジャン買わなくなったし、これと『フリーレン』のためにサンデー買おかな、もう。

 

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#め組の大吾 救国のオレンジ 6巻 評論(ネタバレ注意)

1995〜1999年に週刊少年サンデーで連載され小学館漫画賞・文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞するなどして大好評を博した往年の名作「め組の大吾」の、同作者による続編。

今作は掲載誌というか出版社まで移って、週刊少年サンデー(小学館)から月刊少年マガジン(講談社)に。

『め組の大吾 救国のオレンジ』6巻より(曽田正人/講談社)

旧作の主人公は「朝比奈大吾」でしたが、今作の主人公は「大吾」違い。

個人の才能だけではなく、尖った才能を規律・規範を超えて臨機応変に受容・許容できる組織論的な話に。なるんかしらん。

新エピソードシリーズとして「消防救助技術大会」に向かう感じっぽく、ヒロインの雪の他、大吾(新)・駿のコンビも出場、サリエリ役の纏がライバルとして出場、予定。

訓練場の近くで起こった雑居ビル火災、満員のはずのネットカフェに救助に向かった大吾たちが見たのは、ほとんど無人のフロアだった…

『め組の大吾 救国のオレンジ』6巻より(曽田正人/講談社)

結果的に「ゴースト・レスキュー」というか、隠密部隊的な。

かっこいいシーンですが、人間相手に「敵を欺くにはまず味方から」を採り得る軍や警察と違って、「エリート部隊」はともかく、災害を相手に安全確保・リソース計画の上での総力戦と緊密な情報連携を旨とするレスキューの現場における「隠密部隊」はナンセンスです。

前作の大吾(旧)の「スタンドプレー」もある意味ナンセンスでしたが、物語上は「若手の暴走」「理解されない天才」として消化していました。

『め組の大吾 救国のオレンジ』6巻より(曽田正人/講談社)

「颯爽と現れてピンチを救う謎のゴースト・レスキュー」は絵ヅラは確かにとてもかっこいいですが、大吾(旧)のスタンドプレーを意図して組織的に再現しようとする、ナンセンスの最たるもので、「誰だかわからない救助隊員が現場にいる」って普通に考えて有り得ない。

が、今巻ではナンセンスにならないギリギリのリアリティラインで、描きたいシーン・絵ヅラを描き切った、という感じ。その皺寄せが全部、甘粕にw

結果的に「ゴースト・レスキュー」的になっちゃった経緯も偶発的でしたし、たぶん二度は描かれないシーンなんじゃないかな。

『め組の大吾 救国のオレンジ』6巻より(曽田正人/講談社)

作者が意図的に情報をマスクしているせいで、前作主人公・大吾(旧)たる朝比奈大吾の現況が不明、生きてるか死んでるかすら不明でしたが、今巻で、

・生きてる

・現役引退に至るような負傷や後遺症もなく健康

・現在はどこか南国に居住している模様? 東南アジア?

・しようと思えば自分の意思で千石市消防局?に復帰できる立場らしい

・甘粕と私的に連絡を取り合っている

ことが示されました。

前作における大吾(旧)の「スタンドプレー」は今作登場キャラたちのリスペクトの対象で、甘粕が組織として再現したい伝説である反面、その欠点も各自によって指摘され、大吾(旧)本人すらも否定しているのがちょっと面白いですね。

丸くなったというより、大人になったというかw

『め組の大吾 救国のオレンジ』6巻より(曽田正人/講談社)

前作以来ついて回っていた、「人の不幸の現場で輝く才能」のあるべきマインドセットの問題に、地味に答えが出たのもちょっと感慨深い。

 

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#女の園の星 3巻 評論(ネタバレ注意)

女子高の国語教師を務める30代の星先生(♂)の日常もの。

あらすじ・設定はこの1行以上は言いようがなく、ジャンルとしては会話芸よりの職業もの日常コメディかなと思います。

『女の園の星』3巻より(和山やま/祥伝社)

高校教師あるあるっぽい内容ですが、既読の作品でいくと『動物のお医者さん』が雰囲気的には一番近いかなと思います。

主人公の星先生がハムテルで、動物の代わりに女子高生。キレで勝負、というよりジワジワくる系のパンチ力高い系。

『女の園の星』3巻より(和山やま/祥伝社)

「え?」じゃないが。

女子高生がいっぱい出てくる漫画はファンタジーというか嘘くさい会話が多いんですが、本作は女子高生の会話が珍妙なのに「あるある」というか、リアリティライン高いところの上澄を上手に拾ってくるなあ、という感じ。

なんというか、「突飛すぎると逆にリアルになる」パターンの芯をついてくるというか。

『女の園の星』3巻より(和山やま/祥伝社)

「それも鶴よ」じゃないが。

今巻も日常短編の連作で、作品を貫く縦軸・あらすじらしいものは特にありません。

星先生が風邪をひいて教師の仕事を休む話、人前で食事ができない生徒とアイドル推し活の話、期末テスト中の監視の仕事でくつろぐ星先生の話、三者面談の話、掃除の時間に男子トイレに現れたGをなんとかする話。

『女の園の星』3巻より(和山やま/祥伝社)

こうして数えると1冊に5話しか入ってないので、単行本が半年に一度出てもいいペースなんかな。早く次巻読みたいわ。

「笑ってはいけない教師生活24時」のようにも、三谷幸喜の舞台喜劇のようにも、4コマ漫画でもいけたようにも思います。

舞台化とかしたら楽しそうですけど、細かすぎるかな。

『女の園の星』3巻より(和山やま/祥伝社)

ユルいというか、抑揚のないローテンションにジワジワくる面白さを込めるタイプなので、すごい面白いんですけど、読んでるこっちも情熱的な感想も書きにくいというか、テンション上げにくいわw

何を書こうかな。

案の定というか、古森さんの出番が増えてきて俺得ですけど、香川さんとの見分けは前髪で見分けたらいいのか。

↓この左の子、古森さんですよね。

『女の園の星』3巻より(和山やま/祥伝社)

「え…!?」じゃないが。

鳥井さんには世界がどう見えてんだよ。

 

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#あそこではたらくムスブさん 5巻 評論(ネタバレ注意)

コケティッシュというか、色っぽい表紙だな。

「今日のあすかショー」のモリタイシの、コンドームを製造する会社の商品開発を舞台にしたコンドームの新製品開発担当の白衣の美女・結さん(26)と、彼女に惚れてしまった営業企画担当の気が小さくてお人好しの若手・砂上くん(24)のお仕事ラブコメ。医療漫画「ラジエーションハウス」と並行して連載。

「あそこではたらくムスブさん」5巻より(モリタイシ/小学館)

コンドームを作る会社が舞台ですけど、「協力:相模ゴム工業株式会社」が正々堂々クレジットされているだけあって、下ネタ・エロネタ・茶化しがほとんどなしのピュアで奥ゆかしい恋愛コメディ。

砂上くんは奥手、結さんは箱入り娘で、社会人の恋愛ものですけど、2人とも自分の気持ちより相手の気持ちを思いやって動きが取れない、小学生の恋愛もののようにピュアっピュア。

「あそこではたらくムスブさん」5巻より(モリタイシ/小学館)

巡り合わせで二人で仙台出張、飲み会終わりに酔っ払いの面倒を見た深夜、巡り合わせでビジネスホテルの部屋で二人。

という、社会人ラブコメの定番展開。

結さんは、砂上くんの告白の返事をする覚悟だった。

ということで、未満恋愛の二人の初めての夜。まあネタバレですけど、今巻で晴れてお付き合い開始となります。

「あそこではたらくムスブさん」5巻より(モリタイシ/小学館)

男女交際経験のない結さんは、「告白→セックス」がセットだと勘違いしていた…

奥ゆかしく、ピュア(純粋)ではありますが、コンドーム作ってる会社で働いているだけあってセックスそのものに対して無垢ではないんですよね。

という、セックス中の行動様式については仕事で研究しているぐらいに詳しいのに、セックス周辺の人間関係にはまるで疎い、というギャップが可笑しいやら可愛いやら、という。

「あそこではたらくムスブさん」5巻より(モリタイシ/小学館)

仕事柄、セックスが「商品の検証」みたいな面が出ちゃってるのも、見たことのない背徳感に繋がっています。コレ背徳感か?

過激な恋愛もの・ラブコメが多い昨今、可愛らしいながらコケティッシュな絵柄の割りに、誠実で優しくて読んでてホッとするような、それでいて『モブ子の恋』よりも刺激的という、

「あそこではたらくムスブさん」5巻より(モリタイシ/小学館)

なんだかよくわからない独自の地歩を固めつつあるな、という。

 

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#わざと見せてる? 加茂井さん。 8巻 評論(ネタバレ注意)

実録ガチ系の下ネタ・風俗ネタ・ドMネタ、お下劣でやたら面白い怪作 、「エムさん。」の作者。無駄に女の子が可愛く「ヒロイン立ててストーリーもの描いてくんないかな」と思ってたら、カースト「下の中」の漫画オタクの男子中学生と、カースト上位でスカート短い美少女ギャルの、王道の隣の席ラブコメ。やったぜ!

「わざと見せてる? 加茂井さん。」8巻より(エム。/双葉社)

作品としては「中学生の未満恋愛」の同じセグメントに「僕の心のヤバイやつ」という超強力な作品があって、その陰に隠れている感じはあります。開始時期も同時期で巻数も近く、また作者がラブコメ畑の外から参入してきたあたりも似ていて、桜井のりおとはまた違った意味で従来のラブコメにない切り口や視点が提示されて、自分もとても期待している作品。

「僕ヤバ」と比べるとヒロインをもうちょいエッチに、主人公をもうちょいキモくした感じです。

「わざと見せてる? 加茂井さん。」8巻より(エム。/双葉社)

いや、作者もキモいです。

わかるけどさ、青春ラブコメ漫画でアンタは一体ナニを語っているの?www

陰キャな青春を過ごした作者が陰キャな少年を主人公に飛び切りの美少女との恋愛未満を妄想で付け加えて描くという、外形的に大きな共通点があるんですけど、それ以上に「あー、青春時代の後悔をずっと大切に抱えている作者なんだな」と強く感じて、だからこそ同じように後悔を抱えている自分はこの作品にも惹かれるんだろうなー、と思います。

「わざと見せてる? 加茂井さん。」8巻より(エム。/双葉社)

この闇堕ち描写はなかなかの…

陰キャな青春に妄想上のヒロインを放り込んでもフィクションでやり直しても、後悔は形を変えただけで結局存在していることは変わらない、苦い何か。ルックス的には一見して「売らんかな」なラブコメでありながら、どこか「ラブコメの勝利の方程式」に背を向けちゃってる漫画。

主人公たちが3年に進級、クラス替えに伴って新キャラも大量に登場して、「ラブコメの青春群像劇化」かと思われたんですが、今巻。

「わざと見せてる? 加茂井さん。」8巻より(エム。/双葉社)

あー、なるほど…主人公の「青春百人組手」の相手たちなのか…

今巻、主人公の闇堕ち描写も大概でしたけど、この野球部も出オチ感が大概というか、「女は野球のトロフィーじゃねえよ」というか、要するに主人公を成長させるための「噛ませ犬」ではあるんですけど、作劇上、好感度低い役回りをやらされて、最後は少し不憫というか、シンパシーというか。

「わざと見せてる? 加茂井さん。」8巻より(エム。/双葉社)

一応、「ミステリアス扱い」だったヒロインの心情がハッキリと語られ、「青春百人組手」と併せて、ラストまでの道筋は見えた気はします。

ラブコメと呼ぶにはラブ要素と鬱展開の高低差が激しく、またラブコメのテンプレにハマってるようでハマってない作品。

コメディ面はさておき、シリアス面ではヒロインの言葉どおり主人公が「空回ったり傷ついたり」、初恋のトキメキよりも青春期の葛藤が先行しがちで、読んでる方にも苦しい苦しいシーンを強いてきますけど、この苦味がなんかこう、どこか懐かしくて癖になんだよな。

でも、もし成就の暁には、どうか甘々のご褒美を、どうか。

 

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