#AQM

あ、今日読んだ漫画

#アオのハコ 13巻 評論(ネタバレ注意)

週刊少年ジャンプ、本誌連載の青春恋愛漫画。

中高一貫校、バドミントン部の1年のホープ・大喜(♂)と、同じ体育館で練習する女子バスケ部の2年で学校のアイドルで大喜の憧れである千夏先輩(♀)。

部活違い・学年違いながら、早朝自主練で千夏先輩と言葉を交わすようになった大喜が、ある朝自宅で目覚めてリビングに降りると、そこには千夏先輩の姿が!

『アオのハコ』13巻より(三浦糀/集英社)

千夏先輩は親の海外転勤に際してもバスケの夢を諦められず、バスケ部OG同士の母親同士のツテで大喜の家に下宿することになった。

という同居設定の青春恋愛もの。コメディ要素ももちろんありますが、成分比的にラブコメ作品じゃないですね。青春恋愛もの。

千夏先輩のバスケにかける覚悟を知った大喜は、彼女にふさわしい男になるべく、自分もバドミントンでインターハイ出場を目指すことに。

新体操部の期待のホープで大喜の幼馴染で片想い中のサブヒロイン・雛を交えた片想い三角関係。王道のメロさ。

『アオのハコ』13巻より(三浦糀/集英社)

図にするとこうなる。

雛→(好き)→大喜→(好き)→千夏先輩

要るか、この図?

前巻が青春恋愛漫画の華、告白巻・くっつき巻。

スポーツと恋愛が同時進行の作品なので、盛り上がりはインターハイと告白・くっつきを同時に、なのかなと思ってたんですけど、先に来ましたね。

今巻はその余波、後始末、二人の距離とこれからについて、という巻。

『アオのハコ』13巻より(三浦糀/集英社)

恋愛・ラブコメ漫画の「くっついた後」というのは昔は割りと鬼門、というより「くっついたら最終回」がお作法でしたが、近年は「くっついた後」を描く作品も増えました。

増えた分、「くっついた後」の描き方・描かれ方の良い見本・悪い見本のサンプルのバリエーションも増えました。

連載漫画の難しいところは「作家の描きたいこと」と「面白さこと」に加えて、「売れること」を両立しなければ作品が続かないことですが、「研究が進んだ」と言っても良いかもしれません。

『アオのハコ』13巻より(三浦糀/集英社)

それでもまあ、恋愛・ラブコメの「一番おいしいところ」が「未満恋愛」「くっつきかけ」なのは変わらないですけど。

現在のヒット作でも「くっついた後」で苦戦してる恋愛ラブコメ漫画は少なくないです。

本作は最初から軸が「恋愛」と「スポーツ」の2つあったことで、「くっついた後」に描くべきことがまだたくさん残されているんですが、読んでて、

「大喜と千夏先輩がそれぞれインターハイで自分が納得できる活躍ができること」

「大喜と千夏先輩が恋人としてうまくいくこと」

のどちらか一つだけ選べ、と言われたらなかなか難しいというか、自分はスポーツ面の成功を願ってしまうなーという。

もちろん、両方うまくいくのが理想だし、そこに向かう作品なんですが。

『アオのハコ』13巻より(三浦糀/集英社)

ハーレムものが隆盛した経緯もあって、こういう漫画は久しぶりだな、いつ以来かなと思うと、あだち充の『ラフ』だなあ、と思いました。

『ラフ』7巻より(あだち充/小学館)

いずれも全国大会レベルの男女の恋愛ものですが、『タッチ』またちょっとニュアンス違いますよね。

そうかー、『ラフ』の後継の文脈なのかー、と今巻を読んでていて思い至って、何か得心がいったというか、この漫画の自分なりの読み方がわかった気がしました。

とか思って、「『アオのハコ』に『ラフ』を重ねてる人っているんかしらん?」と思ってググったら、

www.google.com

自分の過去記事が出てきてびっくりしました。

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自分で1〜3巻や7巻の感想で既に同じこと書いてたことをすっかり忘れてました。

まあ、同じ脳みそが考えて書いたら、同じようなこと書くよね…2年前の俺、えらいなあ…

しかし、こんっなに自分で書いたこと忘れるもんかね…「この漫画の自分なりの読み方がわかった気がしました」とか書いちゃったよ…何回わかった気がするんだよ俺…

あとは雛ちゃんがショックを受けて、それから立ち直るまで、が描かれましたけど、大喜の親友のメガネ、良いこと言うよな。

『アオのハコ』13巻より(三浦糀/集英社)

恋愛漫画だけど青春漫画でもあって、「恋愛至上主義」から降りてる視線があるの、良いですよね。

大喜と千夏先輩の関係が一旦落ち着きつつスポーツ面に集中する分、恋愛面では今後は、雛ちゃんとメガネとツインテジャーマネの三角関係?に比重が置かれるっぽい予感がしますね。

 

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#最果てのソルテ 3巻 評論(ネタバレ注意)

大魔法戦争で汚染され、魔法が禁じられた世界。

『最果てのソルテ』3巻より(水上悟志/マッグガーデン)

孤児として村長に引き取られて育った少女・ソルテは、魔界へ続く「デタラメ洞窟」の入り口で瀕死の女・サリエラと出会う。

サリエラはソルテと同じく孤児で、村長に奴隷商に売られ、魔界と人界を行き来するサルベイジャーとして名を挙げた女だった。

サリエラの今際の際に立ち合い秘密を知ったソルテは同じく奴隷商に売られるが、それはソルテの冒険の序章に過ぎなかった。

『最果てのソルテ』3巻より(水上悟志/マッグガーデン)

というガール・ミーツ・ディスティニーなファンタジー冒険もの。

「惑星のさみだれ」「スピリットサークル -魂環-」で知られる水上悟志の新作。まあ作者買い。

中世ヨーロッパ風世界観ですが、魔法の禁じられた世界、魔界の毒、魔法少女、封神演義の宝貝のようなアイテムに、現代日本からの異世界転生者、ループ要素、「前の周と違う!」ループメタまで。

『最果てのソルテ』3巻より(水上悟志/マッグガーデン)

昨年末のまとめ記事でこんなことを書いたんですが、

『ハンター』や『ワンピース』といろんな意味で同じ土俵にいる作品ですが、もともと季刊連載でゆっくりしたペースの作品が、今年は更に先生なにかとお忙しくて連載更新は11ヶ月ぶりの11月下旬の1回のみでした。なので来年は新刊たぶん出ません。

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前巻が2022年1月、今巻が2023年12月と、約23ヶ月ぶりながら、ギリギリ2023年に新刊が出ました。

勝手に「来年は新刊たぶん出ません」なんて書いてすみませんでした。

『最果てのソルテ』3巻より(水上悟志/マッグガーデン)

でもまあ、急かすつもりはないというか、漫画家急かしてロクなこと起こらないのでご無理のないペースで描いていただければと思います。

語弊のある言い方ですが、それぞれの漫画家の先生がご無理をなさらなくても、次巻を待つ間を埋めてくれる他の面白い漫画は、たくさんあります、ので。

『ガラスの仮面』あたりはさすがに、待ってる間に読者の方が…というのはありますけども。

『最果てのソルテ』3巻より(水上悟志/マッグガーデン)

要素をたくさん詰め込んだ作品ですが、作者の本領、「衝撃の事実」「衝撃展開」抑えめで、今巻は割りと「普通に」冒険してます。

冒険と舞台となる魔界の絶景や、エッジの効いた心理描写・セリフのキレは相変わらずながら、「繋ぎの巻」とは言いませんが、転生設定や「ループ2周目」設定を活かした描写は抑えめ。

逆に、

「こんだけ要素を詰め込んどいて、なんで平気な顔で『普通の冒険』が描けるんだ」

という気もしますがw

『最果てのソルテ』3巻より(水上悟志/マッグガーデン)

2年や3年でどうこうなる作品でもなし、読む方も泰然と引き続き次巻を待ちましょう。

 

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#宇崎ちゃんは遊びたい! 11巻 評論(ネタバレ注意)

既にラノベ風のタイトルをあえてラノベ風にすると「目ツキ悪くてボッチ好きの俺の後輩がバカうざ可愛い"ッス"口調のショートカット構ってちゃんチビ巨乳のわけがない」という感じ。

『宇崎ちゃんは遊びたい!』11巻より(丈/KADOKAWA)

目つきが鋭く細マッチョでガタいがデカく一見ちょっと怖そうな男子大学生・サク、

彼の高校時代の水泳部以来のつきあいで大学でも後輩で「ッス」口調で押しが強い割りに恋愛ヘタレな宇崎ちゃん。

の、彼氏彼女未経験ヘタレ同士の未満恋愛ラブコメ改め、数巻前に告って付き合いだしたラブコメ。

『宇崎ちゃんは遊びたい!』11巻より(丈/KADOKAWA)

今巻は亜美さんの大学卒業、宇崎ちゃん花粉症の巻き、宇崎ちゃん両親の馴れ初めなどなどがありつつも、メインは「恋のABC」進捗編。

引き続き「付き合いたて」期間中、スキンシップ的にはまだキスまで、という感じだったが、宇崎ちゃんはラブラブのイチャイチャでムラムラのエロエロだったが、基本的に堅物のサクはスキンシップでドキドキしすぎて気絶する・真っ白い灰になるなど漫画みたいなコミカル童貞状態に陥り、「恋のABC」の進捗は捗々しくなかった…

『宇崎ちゃんは遊びたい!』11巻より(丈/KADOKAWA)

ということで、付き合いたての若い男女が性と性欲と向き合う11巻。サク、宇崎ちゃんのおっぱいを揉む!

近年の男性向けラブコメ漫画はヒロインが「チョロい」分、障害としての「めんどくせー男」主人公が増えましたねw

『宇崎ちゃんは遊びたい!』11巻より(丈/KADOKAWA)

自分の大学時代を思い出すといろいろアレなんで、さっさとヤリたいようにヤリなさいよ、ってなもんですが、一般向け漫画で描けるかというか、この漫画を連載してる雑誌ってなんでしたっけ?

大丈夫かなコレ、このペースで「恋のABC」をじっくりやってくと、15巻あたりから成人向けの雑誌に移籍するか、

『宇崎ちゃんは遊びたい!』11巻より(丈/KADOKAWA)

『ふたりエッチ』コースになっていくのではないだろうかw

 

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#ワンナイト・モーニング 10巻 評論(ネタバレ注意)

「一緒に一夜を過ごした男女が」「一緒に朝ごはんを食べる」「短編」を描きなさい。

というお題に則って描かれたようなオムニバス恋愛短編連作の第10集。

『ワンナイト・モーニング』10巻より(奥山ケニチ/少年画報社)

最近再びこの作品の感想記事への検索流入が妙に多いのは、以前に実写ドラマ化されたやつの再放送でもやってるか、ドラマ化第二弾でも発表されたんですかね?

ハイソなキラキラへの無心な憧れに無心で同意するのは難しい、「春雨スープ」の「前中後」の三部作の後編。

『ワンナイト・モーニング』10巻より(奥山ケニチ/少年画報社)

会社の地味系メガネ&マスク女子は一皮剥くとピアスだらけのワイルド女子だった、「フランクフルト」。

転入生と転出生、「転校生」同士の短い恋、「ショートブレッド」。

元ヤン系アネゴをデートに誘ったら思ってた以上に可愛かった、「クレープ」。

セックスして汗かいてクーラー壊れて汗かいてファミレス行って涼んでトムヤムクン食って汗かいたら恋人未満が彼氏彼女になった、「トムヤムクン」。

『ワンナイト・モーニング』10巻より(奥山ケニチ/少年画報社)

同窓会で再会して昔の純な片想いが再燃しての一夜限りの恋のその後、「梅茶漬け」その1〜その3。

とうとう二桁、10巻到達、おめでとうございます。

キャラ人気で引っ張りにくい縛りのキツい建て付けで、よーやるわー。

『ワンナイト・モーニング』10巻より(奥山ケニチ/少年画報社)

スイートなイチャラブ、オトナな関係、ビターな失恋、ピュアな思い出、と「ワンナイト」と「グルメ」を絡めて読んでみないとわからない「恋愛・ラブコメ福袋」みたいなw

続きが見たくなる二人の話、たまに本当に描かれる続きの話。

『ワンナイト・モーニング』10巻より(奥山ケニチ/少年画報社)

「梅茶漬け その1〜その3」って、これ「その4」に続くのかしらね。ここで終わったとしても割りと好きだけど。

 

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#ローカル女子の遠吠え 10巻 評論(ネタバレ注意)

勤勉ながらデザイナーの仕事に適性を見出せず、東京から地元の静岡にUターン転職した有野りん子(27)。

仕事をバリバリこなしメロンパンも肉まんもバリバリ食って「メロンパンはそんな音しない」と周囲を心配させる学級委員長タイプの女を待っていたのは、東京と地方の価値観のギャップと懐かしい「しぞーかあるある」だった。

なんだか可愛い静岡ご当地社会人4コマ。

『ローカル女子の遠吠え』10巻より(瀬戸口みづき/芳文社)

気がついたら登場人物がすごく多くなりましたけど、キャラ立ってるので覚えやすいし忘れても読んでるうちに思い出せる上に、極端な話その辺に置いてあった「まんがタイム」を手に取って初見で途中から読んでもちゃんと面白い、というザ・4コマ漫画。

ご当地あるあるネタと、個性的な登場キャラたちの絶妙なミルフィーユ?アルマーニ?マリアージュ?トリアージ?的なそういう感じです。

主要キャラはおおよそ立派な社会人のアラサーたちで「女の子」「男の子」って歳でもないんですけど、女の子も男の子も読んでてみんな可愛いんですよねw

この漫画目当てに「まんがタイム」の電子書籍定期購読始めてしまった。

『ローカル女子の遠吠え』10巻より(瀬戸口みづき/芳文社)

ギャグコメの「系」としてはシュール・ナンセンス系ではなく、「(静岡/社会人)あるある」を絡めてボケてきっちりツッコむ、クラシックでオーソドックスなスタイルですが、「オチのためのフリ」を全然感じさせない、滑らか・スムーズな前フリからのオチへのライン。

「ネタ強」というか「ストロング・スタイル」な面を持つ作品。

ですが、そんな漫画家の先生には不本意な褒め言葉かもしれませんが、「キャラ漫画」「萌え漫画」として最強に強まってもいる作品。

「子ども向け」に端を発して「少年少女向け→青年向け」と客層を拡げてきた経緯や、現実時間が経過しても「キャラが歳を取らない」ことも可能なメディア特性もあり、漫画におけるヒロインポジションを10代の少女に求めるのは、今でも定石です。

が、本作のヒロインたちは一部を除いて、いずれもアラサー。

『ローカル女子の遠吠え』10巻より(瀬戸口みづき/芳文社)

が、その一人一人がまるで四番打者ばかりを集めた打線のように、チャーミングなヒロインばかり。自分がこれだけ全部のヒロインを好きになる漫画はちょっと記憶にありません。

漫画好きに伝わりやすいように喩えると、『GS美神』ルシオラと『超電磁砲』御坂美琴と『Re:ゼロ』レムと『ぼく勉』真冬先生と『僕やば』萌子と『めぞん』響子さんが、一作品で共演しているかのような、しかし日常・あるある・コメディ・4コマな漫画。

必ずしも「感情移入」「共感」によるものとも限らない気がするんですよね。

それぞれが「客体」としてすごくチャーミングで可愛らしい。

『ローカル女子の遠吠え』10巻より(瀬戸口みづき/芳文社)

かわよw

漫画読んでて「ヒロイン全員好き!」とかあります? 自分初めてな気がするんですけど。諸星あたる状態。

今巻で二桁の10巻到達、あとがきによると作者のキャリアハイ更新とのことです。

近刊で顕著に思うのは、1巻の頃は「古い価値観」「井の中の蛙」「向上心のなさ」の象徴、イケメンと結ばれて寿退社目当ての腰掛けOL、メインヒロイン・りん子さんが否定する対象として描かれていた桐島さんが、めっきり「それもまた愛おしいキャラの一人」として可愛く描かれるようになりました。

『ローカル女子の遠吠え』10巻より(瀬戸口みづき/芳文社)

作者自身が1巻の頃と比べて明らかに桐島さんに愛着湧いてますよねw

自分は漫画メディアが好きなので、好きな漫画作品がアニメ化されても「おー」と思いはしてもアニメ自体は視聴しないことが多いんですが、

「『ローカル女子の遠吠え』百巻の計」

のために、ぜひアニメ化してもっと作品の知名度を上げて欲しいなと思います。

俺が、100巻まで読み続ける、そのためだけに!

『ローカル女子の遠吠え』10巻より(瀬戸口みづき/芳文社)

なにこれ可愛いというか、もはや愛おしい。

はー。俺も静岡に左遷されて彼女ら彼らの人間関係の日常の輪に加わりてー。もうそういう夢小説でも描こうかな。

 

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#あかね噺 9巻 評論(ネタバレ注意)

浅草の阿良川一門の落語家(二ツ目)阿良川志ん太の娘、小学生・朱音(あかね)は父親の落語を誇りに思い憧れていた。

朱音も応援する父親の真打昇進試験、しかしその顛末は予想だにしないものだった。

内密かつ非公認に、父に倣って一門ナンバー2の落語家・阿良川志ぐまに師事して6年、高校生となった朱音は父親の意志と夢を継ぐべく、正式に志ぐまに弟子入りし阿良川一門に入門。

『あかね噺』9巻より(末永裕樹/馬上鷹将/集英社)

父の叶わなかった夢、真打を目指す朱音の落語家人生が始まった!

という、落語をモチーフにした成長譚の青春譚のサクセスストーリー。

週刊少年ジャンプ本誌連載ながらモチーフが落語という変わり種ですが、まあ「なにやってもジャンプ」というか「落語やってもジャンプ」というか。

ジジババイメージが強い伝統芸能の世界の中心で元気で可愛いJKが主人公、というのもギャップがありつつ、いかにも今どきでキャッチーで、世代間コミュニケーションの楽しみや「男社会の中の女」という切り口にも派生できそうで、見た目の印象以上に拡張性が高い作品だな、と。

『あかね噺』9巻より(末永裕樹/馬上鷹将/集英社)

当面の目標を「前座」から「二ツ目」への昇進に定め、阿良川一門の昇進ルールに則って、レベルの高い阿良川一門の「前座」たちがシノギを削る、実質「予選」の錬成会、そして「本戦」の選考会へ。目指すは若手の登竜門「四人会」の最後の一枠。

実質「荒川一門前座ナンバーワン決定戦」たる前座錬成会・選考会編が今巻冒頭で完結。

勝負で勝ってルールに負けたが、得たものの方が大きかった、という決着。

『あかね噺』9巻より(末永裕樹/馬上鷹将/集英社)

特に原動力にも聖域にも呪いにもなっていた「父の背中」を、盲信の対象ではなく客観視した上で朱音が飲み込んで、自らの血肉にしたことが大きかったですね。

主人公の動機そのものを超克させるのを10巻いかないうちに、というのは割りと早い気がする。

コンペのギリギリの緊張感が緩和されて幕間的なエピソードを踏みつつ、朱音の当面の目標が「二ツ目」昇進に絞り込まれ、そのためのルートや次の目的地が再設定された巻。

『あかね噺』9巻より(末永裕樹/馬上鷹将/集英社)

どうでもいいけど、師匠・先生が弟子・教え子の女の子に「褌を締めろ」っつってスベってる漫画、他でも最近見ましたw

『かげきしょうじょ!!』14巻より(斉木久美子/白泉社)

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次々と登場する大物と主人公が対峙していく展開や描写は、ジャンプバトルものの定番というか『ワンピース』に非常によく似ていますが、大物をぶん殴って倒すことで成り上がっていくルフィに対し、大物に稽古をつけてもらうことで成長していく朱音、という感じ。

本作における阿良川一門、その中でも四天王の「阿良川志ぐま」の「志」も、なんだか「Dの一族」っぽくも「紅天女」っぽくもなってきましたねw

『あかね噺』9巻より(末永裕樹/馬上鷹将/集英社)

「志の字の芸」をめぐる、同門ながら阿良川志ぐまの阿良川一生に対する屈折と確執、名跡の謎。

それらが明かされる頃には作品自体にクライマックスでしょうか。

そういえば、本作を本作たらしめていたのは他でもない主人公の朱音が「女子高生落語家」であることでしたが、昇進にモタモタしてたら女子高生じゃなくなっちゃうな、と思いながら過去巻読み返してたら、忘れてたけどとっくに高校卒業してました。

どうりで最近この子、学校行ってる様子がねえなと思ったわ…

『あかね噺』9巻より(末永裕樹/馬上鷹将/集英社)

という、主人公が高校卒業したことを読者がすっかり忘れちゃうぐらいのめり込んだ熱血落語漫画、前座から二ツ目への昇進目指して、次巻に続く。

 

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#ELDEN RING 黄金樹への道 4巻 評論(ネタバレ注意)

「死にゲー」で有名なフロム・ソフトウェアのオープンワールド「ライク」な大ヒットアクションRPG『エルデンリング』の公式コミカライズ。

退廃的で陰鬱で重厚な雰囲気の世界観、かつて美しくも陰鬱な「狭間の地」から追われそして帰還した「褪せ人」を主人公に、王を目指して戦う血生臭くダークでシリアスな冒険を描く。

という原作ゲーム。

『ELDEN RING』より(フロム・ソフトウェア)

公式コミカライズはなぜかバカ系ギャグ漫画だった…

『ELDEN RING 黄金樹への道』4巻より(飛田ニキイチ/KADOKAWA)

なんでだよwww

と思わなくもないですが、原作を「真面目に」コミカライズしようと思ったら、重厚な超本格派のファンタジー戦記としての展開・描写が必要で、なかなか大変だったろうなと思います。暗いシーンが長大に続いてエンタメ性も低くなりそう。

奇策の変化球のようでいて、コミカライズするにあたっては唯一の解のような気もします。

『ELDEN RING 黄金樹への道』4巻より(飛田ニキイチ/KADOKAWA)

自分は存じ上げなかったんですが、WEB連載開始時のネットの反応を見るにギャグ畑で有名な作家さんらしく、冒頭のシリアスなカラーページを見ても画力もなかなか尋常じゃないですが、描いてる内容は完全にギャグ漫画、ノリとしては『ピューと吹く!シャガー』を彷彿とさせます。

そもそも今更『エルデンリング』の販促にはならないわ、『エルデンリング』プレイヤーしか楽しめないわ、「そもそも誰得のコミカライズだよ」ってのは置いといてw

自分は『エルデンリング』既クリアなので楽しく読めてます。

『ELDEN RING 黄金樹への道』4巻より(飛田ニキイチ/KADOKAWA)

今巻は湖のリエーニエ・魔術学院レアルカリア編のクライマックス、を相変わらずギャグコメタッチで。

自分は引き続き、ダークでシリアスで陰鬱で悲壮だった原作ゲームでは見られない、ラニラニ、メリメリのヒロイン陣のコミカルなシーンに萌えながら。

今巻ではローデリカも再登場。ローデリカはいい娘さんだよね…

『ELDEN RING 黄金樹への道』4巻より(飛田ニキイチ/KADOKAWA)

展開はリエーニエとレアルカリアを終えて、メリメリに何度言われても褪夫が行きたくなさそう、というより作者が本当に描きたくなさそうなケイリッド編を先延ばしにして、啜り泣きの半島へ。

数々のGOTYを総なめにしたゲーム『エルデンリング』の盛り上がりもひと段落して、このコミカライズが始まった頃は正直、

「セールスに関わらず作家が途中で飽きて巻きが入ってダイジェストで早期に完結だろう」

と思っていたんですが、思いのほか丁寧に、でも着実に、しかもギャグコメ化しながら、気がつけば次巻で5巻目。

『ELDEN RING 黄金樹への道』4巻より(飛田ニキイチ/KADOKAWA)

お見それしました、舐めててごめんなさい、という気持ちと、ありがとうございます、という気持ち。

あと、原作ゲームで心を亡くしてしまったはずのレナラが一瞬だけ正気を取り戻した際の、

『ELDEN RING 黄金樹への道』4巻より(飛田ニキイチ/KADOKAWA)

この優しくて少し切ないセリフを、コミカライズで拾ってくれて、ありがとう。

あと、

『アーマード・コアⅥ』のコミカライズはまだですか。

読みたいけど、原作ゲームにキャラのビジュアルがほとんどないし、難しいかねえ。

 

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#株式会社マジルミエ 10巻 評論(ネタバレ注意)

アニメ化決定!とのことです。めでてえ。

natalie.mu

突如発生し人と社会に害をなし損害を与える怪異を、退治するサービスが「魔法少女」と称され、複数の企業が魔法少女サービスを提供する社会。

就職活動中の女子学生・桜木カナは、面接に連戦連敗の最中、大手金融企業の面接中に会場の会議室で発生した怪異に巻き込まれる。

通報で現場に駆けつけた魔法少女の怪異退治「業務」を手伝った縁で、カナは魔法少女ベンチャー企業「株式会社マジルミエ」にスカウトされ、魔法少女として就職することになった…

という、ジャンプ+の魔法少女お仕事漫画。

『株式会社マジルミエ』10巻より(岩田雪花/青木裕/集英社)

『パトレイバー』の「レイバー」のように、現実社会に「魔法少女」という大きな「嘘」を一つ放り込んで、魔法少女を企業サービスとして現代社会ナイズ。

嘘の周辺を現実的な描写・展開で固めることで、ファンタジー世界観のリアリティラインを部分的に押し上げてシミュレーションして、お仕事漫画のテイに。

現実のお仕事で起きそうなストーリーラインで展開するので、特に本作はIT系のシステム開発屋さんが感情移入しやすい作りに。

「今日も一日がんばるぞい!」が『GS美神』よろしくバケモノ退治する漫画、でざっくり説明できちゃいそうな世界観。

『株式会社マジルミエ』10巻より(岩田雪花/青木裕/集英社)

本編作中にはっきりした記載はありませんが、前巻カバー裏のおまけ漫画に今巻より「第二章」となることが示唆されており、今巻のあらすじにもその旨記載されているなど、実質的に今巻から「第二章」になるかと思います。

ライトスタッフが揃って、魔法少女業界注目の、名実ともに「最強のベンチャー」になった裏で、しかし業界の暗部では大規模魔法の規制緩和と利権に関わる、官民の癒着・不正と陰謀が進行していた…

ということで、ライトスタッフの陣容をフル活用した総力戦!熱血!クール無表情ダークヒロインなライバルの心の氷を溶かした熱い友情!という王道熱血展開の果てに、突然訪れたカタストロフ。

『株式会社マジルミエ』10巻より(岩田雪花/青木裕/集英社)

自ら怪異災害を引き起こし怪異を退治している、という自作自演の不正の汚名を着せられたマジルミエは、実質解散。社長の重本、営業担当の翠川は音信不通の行方不明。

しかしバラバラになったメンバーは、マジルミエの再起を期してそれぞれにスキルを磨きながら雌伏。

1年の後、魔法少女大手「ミヤコ堂」に転職しつつ勉強を進めていたカナちの魔法利用業務の資格免許試験合格をもって再結集、マジルミエ再興の準備会社「桜木企画」を立ち上げた。

しかし、相変わらず重本・翠川は音信不通の行方不明、そして魔法少女業界は利権目当てに不正に手を染めるトップ・鎌倉のもと、有害な「大規模魔法の規制緩和」は既に既成事実となっていた…

『株式会社マジルミエ』10巻より(岩田雪花/青木裕/集英社)

という、「そして1年後」な第二章。

総力戦のカタストロフから「そしてN年後」で章が飛ぶのは、大メジャー『ワンピース』もやってる近年の王道展開ですね。

自分が初めて見たのは、カタストロフの有無を無視すれば『キャプテン翼』の中学生編か、『機動戦士Zガンダム』か、というところ。

『キャプテン翼』kindle版8巻より(高橋陽一/集英社)

『機動戦士Zガンダム Define』1巻より(北爪宏幸/矢立肇/富野由悠季/KADOKAWA)

もちろん、自分が知らない・思い出せないだけで、もっと古い作品もあるだろうと思います。

この頃の『キャプテン翼』の絵、いま見るとめっちゃ『タッチ』と似てんな。

『マジルミエ』の第二章も、王道展開の形をただなぞるだけでなく、「1年間の空白」をフルに利用したエキサイティングな展開。

第一章ラストの謎を残しつつも、環境の大きな変化、それぞれのキャラの足跡・成長・イメチェン・立場の変化、新戦力となる新キャラも登場。

なにより新卒ツインテの悩める新入社員だったカナちが、コツコツ勉強して資格取得して起業、若干20代前半にしてメンバーたちを社長として束ねるリーダーに頼もしく成長しました。

ルックスも特徴だったツインテをバッサリ切って「デキる女」らしく、と思いきや…

『株式会社マジルミエ』10巻より(岩田雪花/青木裕/集英社)

という。すんげー魔法少女らしいギミックだ、熱くてかっこいい変身シーン。

時制が飛んで「そしてN年後」になれば自動的に面白くなる、ってもんでもないですが、本作は第二章は読んでて新展開に大変ワクワクさせられる開幕。

業界最大手だったはずのアスト社と、そのエース魔法少女で第一章ラストでカナちと友情を結んだ土刃さんが未登場ですが、どんな見せ場でどんだけカッコよく登場してくれるか、今から楽しみです。

『株式会社マジルミエ』10巻より(岩田雪花/青木裕/集英社)

アニメも楽しみね。

声優さんそこまで詳しくないんですけど、カナち役のファイルーズあいさんは先日『AC6』のエア役、越谷役の花守ゆみりさんは『かぐや様』の早坂役と、めっちゃ好きな声なんですよね。

 

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#チェンソーマン 16巻 評論(ネタバレ注意)

父親の借金を背負って臓器を売りながら生き延びてきた野良犬少年デンジ。

悪魔ポチタとコンビを組んでヤクザの下で搾取されながら悪魔狩りを営むも、ヤクザが悪魔に乗っ取られ絶体絶命のピンチ。

ポチタと融合してヤクザを皆殺しにしたデンジは、チェーンソーの悪魔として公安幹部の美女・マキマにスカウトされ、美少女魔人・パワーと組んで公安デビルハンターとして悪魔と戦う。

悪魔との戦いを通じて知己や友人を得て、そして喪って、裏で全ての糸を引いていたマキマをすら打倒して、あれほど渇望した愛をささやかながら与える側になったデンジ。

第一部・完。

『チェンソーマン』16巻より(藤本タツキ/集英社)

作者の数本の読み切りを挟んで約1年半ぶりの連載再開、第二部開始。同じ世界観で新キャラを主人公のように扱って、従来の主人公のデンジをはじめ旧作のキャラが登場しない導入、からの満を持してのデンジ登場。

「黙示録の四騎士」と称される「戦争の悪魔」「飢餓の悪魔」が登場、「死の悪魔」は未登場、いろんなキャラがチェンソーマンたるデンジに、やれ戦え、やれ戦うな、やれ崇拝する、やれ軽蔑する、やれニセモノ登場、とデンジ本人の意思をよそに策謀し、あるいは妄動する展開。

『チェンソーマン』16巻より(藤本タツキ/集英社)

『チェンソーマン』という漫画作品と作者・藤本タツキ本人に対する現実社会の期待や毀誉褒貶のメタファーと読み取ることが自然なんでしょうか。

そうであれば、漫画がヒットして自分を取り巻く状況が変わったことに対する心境もまた「作者が本当に描きたいこと」であることには間違いなんでしょうが、おそらくそれを本作のメインテーマに据えるつもりがないであろう藤本タツキの「客イジリ」には、自分はあんまり興味が湧きません。

「第一部で激戦を生き抜いた主人公が第二部で第一線を退いて」

という展開も王道というか、別に奇を衒った展開ではありません。

お約束に従えば、

『チェンソーマン』16巻より(藤本タツキ/集英社)

「そのうちやる気を取り戻して戦いの渦の中心に復帰するんでしょ」

ってなもんで。

「支配の悪魔」が第一部でああだった以上、同じく「黙示録の四騎士」と称される「戦争の悪魔」、「飢餓の悪魔」、未登場の「死の悪魔」を含めて真正面からチェンソーマンと対峙して勝てる器とも思えませんし、

「チェンソーマンをいかにまともに戦わせないか」

が作品の現在の肝です。

同じく主人公自身がデウス・エクス・マキナな『FSS』の天照みたいなもん。

なので、「デンジ=チェンソーマン」以外がやたら「勝手に」アレコレしてます。クァンシ先輩、大復活からの大活躍!

『チェンソーマン』16巻より(藤本タツキ/集英社)

「『チェンソーマン』=デンジの物語」

という意味では、割りと「ほっといてもいい巻」のように一見、見えてしまうんですけど、ほっとけない理由が、今巻でデンジが何をしたいと言っているか、アサの「何をしたい」がどう変化してるか。

デンジって別に悪魔を倒すことが目的なんじゃなくて、その結果ヒーローになってチヤホヤされて、その結果としての「たくさん女とセックスしたい」が、相変わらずの生きる目的の一つなんですよね。

でも夜な夜なトイレでシコりながらも、夜な夜な抱き合って眠るナユタには決して手を出さないのは、「デンジがロリコンじゃない」ということ以外に、父性愛や兄妹愛とも何か違う、なんか性欲と愛がデンジの中で完全に分離しているように見えますね。

『チェンソーマン』16巻より(藤本タツキ/集英社)

第一部のラストに還っているというか。

「男女の愛と性欲は分離可能か」

というのは数多くの恋愛もの・ラブコメもので取り上げられてきたテーマですが、「愛のある暮らし」を既に手に入れたデンジが、性欲のために(「第二部」を)これ以上戦う必要があるのか、という疑問はなかなか面白いな、と思います。

そう考えると、

「第二部の主人公・アサちゃんの役割ってなんだろう」

ってのは、「愛のある暮らし」の象徴・ナユタの対比としての、性欲の象徴としての

「代わりに戦ってくれてセックスの対象にもなる女」

なんでしょうか?そんな少年漫画あるかな。

それともデンジが「愛」と「性欲」の他に、

『チェンソーマン』16巻より(藤本タツキ/集英社)

泣きながら戦う理由を見出す話になるんでしょうか。

そうやって考えていった辺りで、

「『チェンソーマン』がこれからどうなるか」

なんて考えたって、楽しくはあるけどどうせ当たりゃしねえよな、とも思いました。

 

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#ダンダダン 12巻 評論(ネタバレ注意)

霊媒師の家系(かけい)のギャルと、いじめられっ子気味で孤独なオカルトオタクの少年の同級生ガールミーツボーイから始まる、オカルトバトルなバディもの。

『ダンダダン』12巻より(龍幸伸/集英社)

「ボーイ・ミーツ・ガール」、「オタクに優しいギャル」、「ラブコメ群」、「ちょいエロ」、「呪術廻戦、チェンソーマンなどの最近のジャンプのオカルトバトル漫画群」、「うしおととら」、「東京入星管理局」、「GANTZ」、「メン・イン・ブラック」、「漫☆画太郎」、

あたりを足して適当に割ったような感じ。

いろんなジャンルのごった煮、カオスな闇鍋みたいな漫画。クリーチャーも宇宙人から妖怪から幽霊から割りとなんでもあり。

『ダンダダン』12巻より(龍幸伸/集英社)

今巻もいろんな過去作品を想起させるオマージュが散りばめられています。

ちょっと奥浩哉的とでもいうか、「描きたい画」が先に在って、そこから逆算してエピソードを繋げていってる作り方?と思わなくもないですが、よくわからんねw

倒すべきラスボスも、辿り着くべき約束の地も、提示されないまま、ただただ降りかかり続ける火の粉を払い続け仲間が増え続け経験を重ね続けてより強く成長していき続ける、ステージ制のタワーディフェンス・ゲームのようにエピソードが重ねられます。キンタマ以外。

『ダンダダン』12巻より(龍幸伸/集英社)

「海賊王を目指す」でもなく「ひとつなぎの大秘宝」を求めるでもなく。

作品を貫く縦軸、キンタマしかない。あとラブコメ。

テンプレのような学園ラブコメ展開と既知の「学校の怪談」のエピソードパートに、何の説明もなく突如襲来するタワーディフェンスバトルパート、ユニークで精緻なクリーチャー&メカの動かせるデザインを、体重が乗った肉弾戦と溜めの開放感がある遠隔攻撃を組み合わせたガンカタのようなバトル描写、作者の漫画読者としての原体験、必ずしも順風満帆ではなかったキャリア、ガンダムA、編集担当・林士平との出会いと編集作品の共通点、アシスタントとして師事した作家たち。

躍動感あふれる見応えのあるアクション描写、奇想天外な風景を緻密に描画する画力。

に対して、ストーリーテラーとしてはおそらく短中編に特化した作家さんなのかな、と思うようになってきました。

『ダンダダン』12巻より(龍幸伸/集英社)

ということで、…これは「なに編」って呼ぶべきなんかしら。「バモラ&カシマレイコ編」?

その「バモラ&カシマレイコ編」のクライマックスの舞台が整って、大挙して押し寄せてくる侵略異星人、まさに「インベーダー」たちを相手の総力戦が満を持して開幕。

しかし、いつもながらの最強キャラ・星子の不在はもちろんのこと、呼ばれなかった最強ロボパイロット・坂田、誤解がもとで桃に追い出されてしまったバモラ、重症治療中で幽体離脱中のオカルン、などなどが不在と、飛車角落ちどころか戦力半減の陣容。

えーと、桃ちゃん、愛羅、ジジ、シャコ星人+セルポ星人の5人か。

相変わらず躍動感に満ちた画力に「どうしてこうなった」という奇想天外なモチーフと構図による、見応え十分なバトル描写ながら、展開自体は善戦するもジリジリ押される曇らせ展開。

『ダンダダン』12巻より(龍幸伸/集英社)

桃ちゃんの大ピンチに現れ自身の重傷と引き換えに彼女を助けるバモラ。

治療のために超能力で彼女に触れた桃ちゃんと、接続されたメンバーたちの脳に流れ込む、バモラの体験してきた壮絶な過去。

クライマックス・バトルの更にクライマックスに過去回想を挟んで、主人公たちの哀しみと怒りを増幅させる手法を始めたのは誰なのかしら?

今となっては『ワンピース』のイメージが大変強いですけど、元祖は誰なんだろうか。

という感じで、エピソード完結は次巻に持ち越し。

ピンチの地球を救うこともさることながら、バモラの笑顔を取り戻せ!!

次巻! オカルン!! 大・復・活!!! してくれ!!!!

『ダンダダン』12巻より(龍幸伸/集英社)

という熱い展開で、また次巻。

 

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#怪獣8号 11巻 評論(ネタバレ注意)

現代、ただし頻繁に怪獣に襲来され「怪獣大国」となった日本。「防衛隊」が組織され、襲来の都度、怪獣を討伐することで社会が保たれていた。

『怪獣8号』11巻より(松本直也/集英社)

かつての防衛隊志望に挫折した怪獣死体処理清掃業者・日比野カフカ(33♂)は、防衛隊志望の後輩に触発され再び入隊試験受験を決意するものの、いろいろあって人間サイズの怪獣に変身する体質となってしまう。

目撃情報から防衛隊に「怪獣8号」として指名手配されたまま、怪獣変身体質を隠したカフカの防衛隊入隊受験が始まった。

という、「SF」でいんだよねこれ。「バトル」もつけていいんかしら。という王道変身ヒーローもの。

『怪獣8号』11巻より(松本直也/集英社)

作品コンセプトとして他とは毛色の違う「ディザスター(災害)もの」として期待した向きには、怪獣のヒト型化・人間サイズ化によって「結局、普通のジャンプバトルもの」に落ち着いちゃったな、ってのはあります。

防衛隊隊員でありながら密かに怪獣8号に変身して怪獣を倒す、「ザ・変身ヒーロー」な展開でしたが、既に防衛隊内で「正体バレ」が発生済。

主人公は隊により隔離され処断が検討されたものの、どうにか存在を許され、現在は他の隊員から隔離されたまま幹部による戦力アップと「変身に頼り過ぎない戦い」のための修行モード。

『怪獣8号』11巻より(松本直也/集英社)

主人公が後ろに下がってる間、仲間の主要メンバーたちもそれぞれ主にネームド怪獣の力を取り込んだ強化が図られた後、新展開。

強力な怪獣が同時多数に発生する、「群発災害」編。

展開的には強化された主要メンバーたちのお披露目バトルと、主人公の前線復帰・仲間との合流へ、という流れ。

肝心な場面での見開き、ケレン味たっぷりのセリフと大見栄、強さがエスカレートしていく展開、ピンチになると覚醒する主人公たちや颯爽と現れるパワーアップした味方たち、という、ジャンプのバトル漫画のお手本のような漫画作品。

『幽★遊★白書』の有名なシーンですが、

『幽★遊★白書』14巻より(冨樫義博/集英社)

このシーンが収録された14巻の発行は1993年、およそ30年前です。

『幽★遊★白書』の作品史上、このコマが描かれたのは、肉弾戦・格闘戦中心のバトルから「仙水編」に入って変則的な能力バトルへの転換期における主人公の幽助の

「それでもやっぱり俺は肉弾戦と霊丸のスピードとパワーで勝負するぜ」

という宣言でもあり、幽助のこのスタイルは後に『ハンター』の強化系のゴンにも引き継がれました。

同時期に『JOJO』とかもあって、ジャンプバトル漫画史においてもざっくり言えば、バトル描写の王道が肉弾・格闘バトルから変則的な異能力バトルに移行していく過渡期の始まりだったように思います。

『怪獣8号』は「ジャンプバトル漫画の王道」というか、「王道しかない」というか、

『怪獣8号』11巻より(松本直也/集英社)

30年経っても相変わらず主人公が真っすぐいって右ストレートでぶっとばすシーンが見せ場の漫画です。

ドラマ作りも、バトルのクライマックスに回想シーン絡みのクソデカ感情でキャラが覚醒する、近年のジャンプバトル漫画の王道そのもの。

バトル展開も「1on1のタイマン×5」で、同日発売で自分もさっき読んだ絶賛バトル展開中の『ウィッチウォッチ』の最新刊と「再放送か」ってぐらいそっくり同じです。

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この辺はもう、新規性とかオリジナリティとかを求めるの野暮ってもので、

『怪獣8号』11巻より(松本直也/集英社)

伝統芸能というか、『水戸黄門』の印籠というか、『遠山の金さん』の桜吹雪というか、むしろ作り手というよりは読み手側の

「予定調和」「実家のような安心感」「やっぱりジャンプはこうでなきゃ」

という希求もあるんだと思うんですよ。

実際、ド王道・伝統芸能の燃える展開としてはよくできてるし、全部が全部の漫画に「作家性」を強く求めるのもちょっと息苦しいし、たくさん漫画がある中でそういう漫画が未だにあったって、未だに売れてたって、それはそれで良くね?と。

定石通りで目新しさはないんですけど、嫌いになれないというか、読んじゃうというか、ぶつぶつ言いながらたぶん結構この漫画好きなんだよな、俺。

などと言いながら、今巻冒頭の東雲小隊長、すげえ人間的でよかったなあ。

『怪獣8号』11巻より(松本直也/集英社)

東雲さんを助けたカフカ、よくやった。それでこそ主人公だ。

いい加減しつこい9号を、真っすぐいって右ストレートでぶっとばせ。

 

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#ウィッチウォッチ 14巻 評論(ネタバレ注意)

『SKET DANCE』『彼方のアストラ』の作者の現作。

乙木守仁は、超人的な身体能力を持つ鬼の末裔であることを隠して普通に暮らしていた。

守仁の高校入学を控えた春休み、長期出張で海外へ出発する父と入れ替わりに、魔女の聖地に修行に出ていた幼馴染のニコが帰還。

両家の同意のもと二人は一緒に暮らし、守仁はニコの使い魔として彼女を予言された災いから護衛することに。

6年ぶりに再会したニコは可愛らしく、しかし強力ながらどこかポンコツな魔女に成長していた…

『ウィッチウォッチ』14巻より(篠原健太/集英社)

という、幼馴染の鬼ボーイ・ミーツ・魔女ガール・アゲインに、ニコの使い魔となる同居仲間が守仁以外にも天狗、狼男、吸血鬼と増えて、同居日常ギャグ学園ラブコメたまにシリアスバトルな漫画に。

シリアスなバトルもので人気を博したカッコよ可愛いキャラたちの、ギャグだったり緩かったりする日常や恋愛・ラブコメをもっとじっくり見てみたい、というのは人気作であれば多かれ少なかれ発生して、多くの場合その役割は公式スピンオフや二次創作に託されることになるんですが、

『ウィッチウォッチ』14巻より(篠原健太/集英社)

「一次創作内で自分で全部やっちゃおう!」

「バトル・ギャグ・コメディ・ラブコメ・日常・ホラー・ファンタジー、少年漫画のジャンルを全部一作品内でやっちゃおう!」

という作品。

ギャグコメディな日常をやりつつ、シリアスに悪役と対峙するバトル要素と、ニコと守仁のラブコメ要素が大きな縦軸に。

『ウィッチウォッチ』14巻より(篠原健太/集英社)

ねむたそ! って「眠たそう」みたい。

魔女の能力「アラート」によって平穏な日常が突然ぶっ壊される感覚を、読者として共有させられる展開。突然訪れるクライマックス。

ラブコメ展開からシームレスに、ジャンプらしいタイマン×4展開へ。

今巻は全編、「災いの日」編のバトル巻。決着も次巻に持ち越し。

『ウィッチウォッチ』14巻より(篠原健太/集英社)

もちろん、この日のために彼らは力と技を磨いてきたわけですし、「相手の弱点を見極める」近年のバトル漫画らしい能力バトル描写、また自分の弱さを超克しつつ仲間との絆によって自分の強さを増幅する、まさに「友情・努力・勝利」なジャンプ王道のバトル展開。

なんですが。

普段の日常回が情報量の多い「ネタ強」な作品だけに、対比として「たまに」のシリアスなバトル回は情報量が少なくは感じちゃいますねw

『ウィッチウォッチ』14巻より(篠原健太/集英社)

じゃあバトル回どうすればよかったんだというと、別にバトル回がどうとかよりも日常回が面白すぎるだけの話で、バトル回自体は十分見応えあって面白いので、別にどうもしなくていいと思いますが。

シリアスバトルに無理やりギャグコメ要素テンコ盛りにすればもっと面白くなるかというと、それも違うでしょうし。

ただ作品のツボというか「大トロ」の部位が、シリアスなバトル回じゃなくて日常回のギャグコメディという、おかしなジャンプ漫画だな、というw

自分は時期的な問題で読んでなかったんですが、本作作者の師匠筋の『銀魂』も、こんな感じだったんですかね。

『ウィッチウォッチ』14巻より(篠原健太/集英社)

ただこの『いろいろミルフィーユ』でしたっけ、作中作とのセルフコラボ、「メタの反対」って概念ってなんか名前ついてるんですっけ?

ちょっとすごい発想だな、と感心してしまった。

というところで、「災いの日」編決着に向けて、次巻に続く。

 

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#逃げ上手の若君 12巻 評論(ネタバレ注意)

「魔人探偵脳噛ネウロ」「暗殺教室」の松井優征の現作は、鎌倉時代末期〜南北朝時代〜室町時代初期を舞台にした歴史物。

設定・登場人物は史実ベース。

デビューから3作連続10巻到達は「週刊少年ジャンプ」本誌史上、初めてになるとのことです。

『逃げ上手の若君』12巻より(松井優征/集英社)

あ、アニメ化も決まったんでしたっけか。

ひと昔前は「南北朝時代もの」はどう描いてもクレームがつくイメージでしたけど、ちょっと時代が変わった感じはしますね。

これを契機に「南北朝時代もの」が増えると良いなあ。

『逃げ上手の若君』12巻より(松井優征/集英社)

鎌倉幕府のトップ・執権として世襲で地位を継いできた北条氏の嫡子の少年・北条時行。しかし、幕府と敵対する後醍醐天皇側に寝返った足利高氏(尊氏)により、鎌倉幕府は滅ぼされてしまう。

北条氏の滅亡により大切なものを全て奪われた時行は、信濃国の国守にして神官の諏訪家を頼りに落ち延び、足利への復讐を誓う。

『逃げ上手の若君』12巻より(松井優征/集英社)

という伝記もの。シリアスに史実を追いつつも、演出としてギャグコメディ色も強い作品。

主人公・時行の持ち味は強い生存本能に基づく逃げの天才。

1335年3月、信濃動乱を経て、時行が歴史にその名を轟かしWikipediaに載るレベルの「中先代の乱」。「為に作品が始まったエピソード」、時行の人生のハイライトの一つ。

信濃国での諏訪一党による挙兵、北条時行としての名乗りを経て、破竹の勢いで庇番衆を半壊させ、鎌倉の眼前で最後に迎え撃った足利直義をも蹴散らして鎌倉入り。

主人公・時行の念願の、鎌倉帰還。

『逃げ上手の若君』12巻より(松井優征/集英社)

堅牢とされる鎌倉がバスケットボールのように奪還され合うのは、ちょっと『銀英伝』のイゼルローン要塞を思い出しますねw

同時に、「魔術師、還らず」の展開も思い出してしまいますが。

今巻は奪還した鎌倉で束の間のひと時。

元・首都ということで、兼好法師、初代政宗など、戦の外の史上の有名人も登場。その他、鎌倉観光巡りなどしつつ、新キャラ新戦力の登場に、郎党は政宗の手による新武器も入手。

『逃げ上手の若君』12巻より(松井優征/集英社)

というところで、足利尊氏本人による鎌倉奪還の軍が進発。

連載時にも話題になった、足利尊氏その人に関わる人物評と、その活躍(?)。

前田慶次郎や島津豊久など、漫画作品をきっかけにブレイクというか、それまで以上に広く知られるようなった歴史上の武将がいますが、

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今巻の足利尊氏はそれらに劣らぬ強烈なキャラクター。

『逃げ上手の若君』12巻より(松井優征/集英社)

ある意味、信長よりヤベー奴じゃねえかwww

もともと超有名な歴史上の大英雄なので今更「ブレイク」もクソもないですが。

こう言われると、主人公だろうが味方だろうが悪役のラスボスだろうが、自分でも調べて「新解釈」で足利尊氏を描く作品が増えると良いなあ、とか思います。

超絶知名度の割りに「わけのわからない」分、フィクション化する余白も多い、「美味しい武将」として、株価(?)が上がりそうですね。

 

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#ぶんぶくティーポット+ 8巻 【完】 評論(ネタバレ注意)

4~6コマの変則ページ、フルカラーで絵本みたい。

人間に化けて暮らすのたぬき一家、主人公はたぬき妹"ふみ"になろうかと思います。ふみの友達のキツネ女子、ネコ女子、コウモリ女子との学園生活など。

まんだらけ刊という変わり種。

『ぶんぶくティーポット+』8巻より(森長あやみ/まんだらけ)

作画担当とネーム担当のコンビによるペンネームだそうなんですけど、絵がおしゃれで可愛くて、でもネタが絵の可愛さに甘えずにゆるくてシュール、たまに哲学、大喜利っぽいネタも。打率も高いけど長打も多い。

一見ファンシーっぽい絵ヅラですけど「毒入りファンシー」というか、売り文句みたら「キュート&ブラック」って書いてて「上手いこと言うなあ」と言う感じ。

ネタの発想の飛び方とキレに加えて、キャラものとして見ると女子高生の非日常な日常コメディなはずなのに、気がついたら女子高生ヒロインの母親・あやさんが一番可愛いという、珍妙な美少女日常ものにw

『ぶんぶくティーポット+』8巻より(森長あやみ/まんだらけ)

あやさん、かわよ。

テイストをコメディ基調に絞りつつも、日常要素に加えて時世を取り込んだ社会風刺、シュール・リアリズム、ファンタジー、SF者としての素養もアリ、となんというかトキワ荘作家じみた古き良き万能漫画家感あります。毒入りの。

良い知らせと悪い知らせがあります。

良い知らせは、今巻8巻が本作今年2冊目であるということ。嬉しい!

悪い知らせは、今巻8巻が最終巻となったことです。悲しい…

『ぶんぶくティーポット+』8巻より(森長あやみ/まんだらけ)

愛する作品が終了する度に、『動物のお医者さん』の最終巻のあとがき漫画のこのコマを思い出します。

『動物のお医者さん』12巻より(佐々木倫子/白泉社)

永遠に読み続けていたい願望に反して終わってしまうので、自分も子どものように理不尽に感じてしまいますが、作者自身が語る以外の「終わる理由」についてアレコレ憶測するべきではない、という程度には大人の分別も一応あるつもりです。

描いてくれた作者陣と併せて、本作を長く出版してくれた「まんだらけ」にも感謝の拍手を贈りたい。

『ぶんぶくティーポット+』8巻より(森長あやみ/まんだらけ)

最終巻もこれまでと変わることのない、愛らしいキャラクターたち、わかりやすさと切れ味を両立したギャグコメディ。

そして

「人間に化けて人間社会に紛れて暮らすタヌキの一家」

という設定を活かした「アウトサイダー」「マイノリティ」としての視点からの社会風刺、その家族の中でも唯一人間に化けられない、更なるマイノリティとしての「お兄ちゃん」の存在。

「風刺」というのは、結局のところ世界や社会の理不尽に対する怒りや悲しみ、失望や愚痴を伴う抗議、その婉曲表現であろうと思います。

本作は更に婉曲に、日常ギャグコメディに垂らしたたった一滴の「風刺の毒」で、癒して笑わせると同時にほんの少しだけ、怒り・悲しみ・失望・愚痴などのマイナスの感情と、その背景にある世界の理不尽に対して、本当にほんの少しだけ読者の目を向けさせます。

その「シニカル」「ニヒル」と呼ぶにはあまりに押し付けがましさのない奥ゆかしさが、自分はとても知的で優しいものであるように感じます。

今巻作中の言葉を借りれば、

「日常ギャグコメ漫画を通して、人と社会をほんの少しだけ良く変えようとしてる」

かのような。

このポップでキュートな画面とシンプルなネームの裏に、どれだけの知識や思索や感情の含蓄、願いが込められているんだろうか、と。

『ぶんぶくティーポット+』8巻より(森長あやみ/まんだらけ)

何気なく、シンプルで、謙虚ながら、裏打ちする膨大な「人類の学び」を感じさせる、お兄ちゃんの一言一言。

そして最終巻らしくドラマチックながら少し甘くて優しい、この作品らしい最終エピソード。

すべての登場人物が愛おしく、彼女たちの新エピソードがこれ以上増えないのは本当に残念ですが、前シリーズ5冊+今シリーズ8冊は、最終エピソードのお兄ちゃんのように時間を超えて、私の今後の人生で何度も読み返して何度も新たな気づきを与えてくれる、「人生のお供」になる作品だろうと思います。

『ぶんぶくティーポット+』8巻より(森長あやみ/まんだらけ)

新作でまたお会いできることを楽しみにお待ちしています。

お疲れ様でした。

こんなに面白い漫画を描いてくれて、本当にありがとう。

 

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#ねこ、はじめました 12巻 評論(ネタバレ注意)

車に撥ねられた男子高校生が気がついたら猫になってて女子高生・チカちゃんに拾われて飼われる日常もの。そんな非日常な日常ものがあるか。

ラノベみたいな設定だけどエロ要素ゼロなのと人類の目がデカいのは自分からちゃおコミックス読みに行っといて文句言ってはいけない。

『ねこ、はじめました』12巻より(環方このみ/小学館)

※言うてるほど探してません

というか、

『ねこ、はじめました』12巻より(環方このみ/小学館)

お前んとこの作者、あんま元に戻す気なさそうだぞ。大丈夫かお前。

「猫になって一人暮らしの可愛い女子高生に飼われてもふられる」と言えば「教室に乱入してきたテロリストをやっつける」と並んで男子7大妄想と言われていますが、正体が人間のアドバンテージをまったく活かせてない猫の、自分や飼い主にモノローグでツッコミまくる間抜けで癒し系な日常もの。チカちゃんポンコツ可愛い。

『ねこ、はじめました』12巻より(環方このみ/小学館)

巻数もめでたく二桁に到達。アニメ化!アニメ化!(願望

人間が猫になって、という作品なので、当たり前と言えば当たり前なんですが、今巻特に、人間の心を持ったニャオの目線で「猫の不思議」というか、

「猫の身体になってもなお納得いかない猫の行動原理」

が語られます。

人の心と猫の身体を持つニャオは、口の中が毛だらけになるのがイヤなので毛繕いをしないし、他の猫がなぜあんなに寝てばかりなのかもわからないし、猫の縄張り意識もキレるポイントもよくわからないし、猫向けの遊具も何が楽しいのか理解できません。

『ねこ、はじめました』12巻より(環方このみ/小学館)

人間から見た「猫の不思議」を実体験として感じつつ、「やっぱ猫わからん」というw

科学漫画でも生物漫画でもないので、それを解明するところまでは当然いかないんですが、それでも「人間(の身体)から見た猫」と「猫の身体から見た猫」のギャップが実体験としてどう描かれるかは、この先も少し楽しみ。

『ねこ、はじめました』12巻より(環方このみ/小学館)

猫の身体に引き摺られて思考が「猫寄り」になることもあるだろうし、ニャオにとっては「猫を識る」は「(人間に戻るルートを諦めて)猫として生きていく」ことに寄って行ってしまうんじゃないか、「身体が精神を規定するのであれば、人間の尊厳とは、実存とは」と、他の漫画・他の作家(例えば士郎政宗)だったら思ったかもしれないところですが、先述の作者コメントのとおり、「そういう作品」ではないので、野暮な話になっちゃいますね。

自分もニャオが面白くてチカちゃんが可愛ければ、それでいいです。

『ねこ、はじめました』12巻より(環方このみ/小学館)

そんなこの漫画が好きです。(なんだこの〆…

 

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